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2020年6月28日 (日)

ナーマ・ゲーバー Naama Gheber 「Dearly Beloved」

NYシーンのジャズムードたっぷりのロマンティック・ヴォーカル

<Jazz>

Naama Gheber 「Dearly Beloved」
Cellar Live Recors / Canada / CM100119 / 2020

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Naama Gheber (vocal)
Ray Gallon (piano)
David Wong (bass except 09)
Aaron Kimmel (drums except 09)
special guest:Steve Nelson (vibraphone on 01, 05, 08, 10, 12)

2019年3月31日&4月1日Bunker Studios(NY)録音

 名前は初聞きと思いきや、これはイスラエル出身の若手女性ヴォーカリスト:ナーマ・ゲーバーNaama Gheber(1991年イスラエルのベエルシェヴァ=Be'er Sheva生まれ ) のデビュー・アルバム。中身はスタンダード集で、バックはピアノ・トリオにヴィブラフォンのスティーヴ・ネルソンがゲスト参入していてしっかりしたジャズ演奏。
 彼女は テル・アヴィヴの音楽学校でジャズ・ヴォーカルとクラシックの声楽を学び、更に米ニューヨークのThe New Schoolにも学んで修練を積み、2017年に同校卒業後はNYシーンでかなり意欲的にライヴ活動を続けてきたという若手女性ヴォーカリストだ。

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01. Dearly Beloved
02. So In Love
03. 'S Wonderful
04. Since I Fell For You
05. I Can't Give You Anything But Love
06. Get Out Of Town
07. This Time The Dream's On Me
08. You Stepped Out Of A Dream
09. What's New (vocal & piano duo)
10. Just Squeeze Me
11. Sometimes I'm Happy
12. Good Night My Love

 

 久々にこうしてスタンダード曲を演じて、ヴィブラフォンが入ると、如何にも一時代のアメリカン・ジャズを思い出すというところ。そんな落ち着いたジャズの典型的演奏をバックに彼女がしっかりと歌い上げる。声の質はややトーンは高めにあるがどちらかというとかなり純粋な清澄ヴォイスと言っておきたい。しかし曲によっては甘い潤いが大人っぽくあって、そこに若干癖を感ずる。時折イメージの変わる芸をみせるという芸達者ぶりも感ずるし、また時には適度に渋い味もみせハスキーになるところもあって、ジャズ・ヴォーカリストとしてはなかなか良い線をいっているのだ。
 所謂都会派のムードもった世界を描くが、それもコール・ポーターなどの30-40年代の作曲家に興味があるのか、ジャズのある意味でのよき時代を描いている。

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 M1." Dearly Beloved "は、意識してのことと思うが、ちょっと癖のある発声が気になったが、コール・ポーターのM2."So in Love"になって、かなり素直なバラード・ヴォーカルになって、この方は頂けるぞといったところでスタート。
 M4."Since I Fell For You"では、彼女のアレンジもあって大人っぽく歌い上げたり、M5." I Can't Give You Anything But Love "はヴィブラフォン入りのバック演奏のウェイトも多く取って曲を十分楽しめる。
 M6."Get Out Of Town"そしてM9."What's New"もバラード仕上げで、しっかり歌い込んでいて情感の歌唱力は十分。
  その他、スウィングする曲の対応も手慣れていて、バックのトリオもなかなかジャジィな味付け良く、NYシーンを描くには十分の仕上げ。

 スウィート・テンダーなしっとりと艶っぽいバラード・シンガーとしてのアプローチと、スウィンギン調やブルージーな曲では、意外に姉御肌の色合いを見せたりと、若いと言われていても百戦錬磨のイメージのある歌いっぷりだ。私はバラード派だが、これからどう発展していくか楽しみでもある。

 

(評価)
□ 選曲・歌・演奏    80/100
□ 録音         80/100

 

(視聴)

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2020年6月23日 (火)

[デジタル・カメラ改造] フルスペクトラム(Full Spectrum)カメラの世界

フル・スペクトラム・カメラFull Spectrum Camera の多機能の一つ
・・・・・「赤外線(infra red)写真」

 

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                                         1  (初夏の景色)

 

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                                        2   (初夏の樹木と空)

 この二枚は赤外線写真です。緑の木々は冬の雪の着いたような「白」に写る。そして青い空は「黒」、雲は「白」と異様な世界となる。こうしたモノクロ写真はそれなりにかっては愛されたのだが、カメラがフィルムからデジタルとなった現在、デジタル・カメラでは殆ど赤外線写真を撮るのは大変(困難)になった。

  それは現在のデジタル機のセンサーは、本来、近紫外線から可視光、近赤外線の短波長部分までの領域にわたって感度がある。光の波長で約300 nm から 1000 nm位までの範囲です。可視光の波長範囲(400nm - 700 nm)に比べ、非常に広い波長に感光します。しかし紫外線や赤外線などの有害光線まで写ることは、赤みを帯びた異様な色の写真になる。それで普通のデジタルカメラには、センサーの前にローパスフィルター、そしてその上にブルーの有害光線除去フィルターを装着してある。これにより我々の目に見える世界がカメラで写し取ることが出来る。しかしこれは赤外線を殆どカットしてしまうので赤外線写真は簡単には撮れないことになる。

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 そこで、改造としてデジタル・カメラのセンサーの前にあるロ-パス・フィルター、有害光線除去フィルターを外して、無色透明なガラス・フィルターを付けると、全波長領域に渡って感度のあるカメラになる。これが「フルスペクトラム(full spectrum)カメラ」である。(上は、この改造をした私のSony α6000) 

 この「フルスペクトラム(full spectrum)カメラ」は、近紫外線から可視光、近赤外線の短波長部分までの領域に感度がある。光の波長では、可視光(400 - 700 nm) よりかなり広い約300 nm から 1000 nm位までの範囲と非常に広くなっている。そうすると、このカメラは多目的に対応できるようになり、一番はレンズの前に、赤外線のみを通すフィルター(IR760=760nm以下の波長カット)を付け、丁度初夏の今の時季に普通のカラー撮影すると下の(上)のような真っ赤な赤外線写真になる。それをモノクロ写真感度とすると昔のフィルム時代のモノクロの赤外線写真と同様な写真(下の(下)=まるで冬景色ですね)が撮れるようになるんです。(レンズでなくカメラのセンサーの前に赤外線フィルターを付ける方法もある=これは赤外線写真専門機になる)

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 こうしてデジタル機でも改造により赤外線写真を撮って楽しむことが可能になるのである。
 さて、このフルスペクトル改造カメラは、一方天体観測によく使われるのだ。センサーの集光能力を100%発揮出来るので、夜空や天体撮影等でかなり有効な撮影が出来る。又、レンズの各種フィルターを使用して光の波長をコントロールする事で、通常のカメラ同様の「カラー写真」、更にこのような「赤外線写真」、そして「紫外線写真」の撮影にまで可能となるのである。好きな人は改造を試みたらと・・・思うのである。

█ ここで少々、「赤外線写真」を供覧します(↓)    ( クリック拡大 )

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2020年6月19日 (金)

大石 学 OHISHI MANABU TRIO 「飛翔」 

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(今日の一枚)   「初夏の高原にて」
             Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL
                                  - - - - - - - - - - - - - - - -

貫禄の美旋律・叙情派を軸にトリオ・アンサンプルの妙も展開

<Jazz>

OHISHI MANABU TRIO 「飛翔」
月下草舎 / JPN / GEKKA 0006 / 2019

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大石 学(p)
米木康志(b)
則武 諒(ds)
Recorded September 29/2018
Live at GEKKASOSHA
All Manabu Ohishi Composition

  先日、今年リリースされた大石学ピアノ・トリオのニュー・アルバム『ONE NIGHT AT GEKKA』(GEKKA0007)をここで取上げたので、それに至る昨年リリースし好評であった同メンバーによるこのアルバム『飛翔 Hisyou』を、前後するがここに検証し記録しておく。
 こちらは2015年に久々にトリオでリリースしたアルバム『JUST TRIO』(GEKKA0004)に続いて、4年の間をおいて当時からのメンバーによるトリオものである。このところの大石学のCD盤リリースに熱心な月下草舎よりお目見えし、非常に評価高く売れ行きも好調で、一般に手に入れがたい時もあったほどのもの。この月下草舎は山梨県小淵沢町にあるペンションだが、そこでのライブ録音盤である。

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(Tracklist)

1.CRESCENT(大阪北新地)
2.Gemini
3.0607
4.CONTINUOUS RAIN 
5.雨音
6.飛翔
7.Vanguard(気仙沼)

Mo3w  大石学の持ち味である詩情と優しさとが溢るる美旋律がやはり十二分に堪能出来るアルバムに仕上がっている。そんな叙情性がいっぱいであるが、それに止まらずジャズの歴史的に流れてきた醍醐味としてのトリオのアンサンブルの妙と躍動感という意味での曲は、このアルバム・タイトルにもなっているM6."飛翔"にて、ハイレベル技巧を駆使してジャズの楽しさも味合わせてくれる。
 スタートのM1."CRESCENT(大阪北新地)"は、 静かなピアノとべースの音にブラシの音が流れ、優しさの大石トリオがまずお目見え。
 M2."Gemini "  物思いにふける夜に・・・といった落ち着いたピアノ・ムードでスタート。バックは優しいシンバルとベース音。そして次第にピアノの流れは密度のある流れるような旋律を演じテンポを上げて盛り上がり、そして再び静かな世界に、最後は消えるように終わるところが洒落ている。
 M3."0607" やや異色で、強打のドラムス・ソロからスタートし、変調してピアノがおもむろに登場し旋律を流し、ベースの水を得たような展開と相まって、ジャズをトリオで楽しむスタイル。
 M4."CONTINUOUS RAIN "中盤の注目曲。しっとりの世界の最高峰だ。9分以上に演ずる世界はピアノとベースとの協調が聴きどころ。私の好きな世界。そして更に雨をテーマにM5."雨音"が続くが、こちらはリズムカルに流れるようなピアノで美意識を構築。
 最後にM7."Vanguard(気仙沼)"が日本的なメロディーでしっとりと終わる。

 トリオ・メンバーが固定して、おそらく三者による実質中身の充実も図られ、満を持しての2枚目のアルバムのリリースだ。登場する7曲中3曲は10分前後の長曲となり、アルバムを通して、大石の描く世界が十分堪能出来る素晴らしいアルバムとして聴いた。

(評価)
□  曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(参考視聴)  "Continuous Rain" 別バージョン


 

(参考) 大石学のピアノ・ソロ・アルバムがリリース

24p1 Ohisi Manabu 「FAZIOLI F278 AGAIN」
北千住プロジェクト 

(Tracklist)
1. Les Jardins 
2. HANAUTA
3. Pleasure
4. Change
5. 令和の詩
6. ひまわり
7. 雨音
8. Peace
9. TOSCA
 
大石 学(p)
2020年1月12日 豊洲シビックセンターホール収録

  かって澤野工房の録音で、イタリアのピアノ Fazioli(ファッチオリ)F278を弾いた大石学。そしてそのアンコール企画を「北千住プロジェクト」が企画し、10年後となる今年2020年1月12日に同じピアノがある豊洲シビックセンターホールで、ソロコンサートを開催した。演奏は、新曲2曲と" 雨音", " Peace",  "TOSCA" などの代表曲と"ひまわり"など。その模様を収録したアルバムである。

 

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2020年6月14日 (日)

栗林すみれ Sumire Kuribayashi 『Nameless Piano』

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(今日の一枚) 「初夏の高原に咲く花」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS , PL

                                    - - - - - - - - - - - - - - - -

刺激のないスウィート・テンダーな世界が・・・流麗なタッチで

<Jazz>

Sumire Kuribayashi 『Nameless Piano』
SOMETHIN'COOL / JPN / SCOL-1038 / 2020

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Sumire Kuribayashi -Piano,Voice

01, 02, 06-10:
2019年2月13日,14日,8月18日,9月18日録音
(plays Yamaha S400B)

03-05:
2018年10月27日北海道 Rankoshi Palm Hall録音
(plays Yamaha C7)

 どちらかというと親しみやすく、優しく独創性のある詩情世界を描くというところで人気が上昇中であるという栗林すみれ、5作目のアルバムがソロ・ピアノでの作品で登場である。又それに加えてマスタノリングはイタリアのジャズ録音では今や人気者のエンジニアであるステファノ・アメリオということで、我がオーディオ・マニアの友人が演奏が気に入ったのか、録音が気に入ったのかは不明だが薦めてきたアルバム。

 実は私は彼女のことは名前と噂は若干聞いたことがある程度で白紙状態、今回初めてじっくり聴くことになった。

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01. Nameless Piano (栗林 すみれ)
02. Cow Daisy (Jesse Van Ruller)
03. Believe, Beleft, Below (Esbjorn Svensson)
04. Nel Col Più Non Mi Sento (Giovanni Paisiello)
05. I'll Be Seeing You (Sammy Fain)
06. Improvisation "Colored Woods" (inspired by Kaii Higashiyama) (栗林 すみれ)
07. Improvisation "Piangere" (栗林 すみれ)
08. Ship (Giovanni Scasciamacchia)
09. A Lovely Way To Spend An Evening (Jimmy McHugh)
10. Edelweiss (Richard Rodgers)

 

 栗林すみれのオリジナル曲は3曲で、他はカヴァー曲。全体にバラード調でなかなか透明感たっぷりのスウィート・テンダーという世界が流れる。6-7年前にデビューという若き女性と言うことで、なんとなくこのアメリオの録音によるピアノの音も瑞々しさを感ずるところはいいですね。
 とにかくゆったりのうららか気分に心地よく聴けるというところでは、最近聴いたものの中ではピカイチだ。それは特にクラシカルなイメージと、とにかく編曲が優しく難しいところと刺激的なところがないことによる。

 アルバム・タイトルとなっている彼女自身の曲M1."Nameless Piano"を聴くとクラシック練習曲のようなスタートであり、優美に流れは大きくうねっていて、時として聴かれる高音の美旋律があり、いわゆる刺激的な展開はない。もう一つ山があるのかと思ったら終わってしまった。
 M2."Cow Daisy"は通して聴いた結果としては、この曲が最も低音のダイナミズムがある曲かも知れないが、厳しさには至らない。
 一方、三曲目"Believe, Beleft, Below"にはEsbjorn Svenssonの曲が出てきて驚いているのだが、このあたりで少々変化を見せるのかと思いきや、全く彼女のプレイは変わらず優雅な美的世界なのである。
 M4."Nel Col Più Non Mi Sento"は如何にも女性的なクラシカル・ピアノの世界。
 M6."Improvisation "Colored Woods"", M7." Improvisation "Piangere"は彼女のオリジナル即興曲と言うことのようだが、この2曲がちょっとしたクラシック調の演奏ではあるが、ちょっとした宇宙空間を描いていて、やや欧州ジャズのニュアンスも感じ、むしろこのアルバムのなかでも注目曲だ。

 アルバム全体として、一つ一つの音を丁寧に心を込めているところ、端正な流麗なタッチは評価出来るところであり、刺激性の少ない詩情的な世界にスイート・テンダーに迫ると行ったところである。ここが若き女性の一つの世界なのかも知れない。
 さて、そんなところにもう少し哀感や悲壮感が入ると良いのだがと思うし、もう少しジャズ的緊張感に迫るところも場合によっては欲しい。一方こうした世界なら、若干暗めの哲学的深遠さがある曲を交えるところがあるといいのだがと、私好みの要求もしてみたくなる。

(評価)
□ 曲・選曲・演奏  85/100
□ 録音       85/100

Unnamed_20200613130201 栗林すみれ (ネットに見る(KOBE JAZZ.JP)紹介を転載)
 ピアニスト、作曲家。埼玉県立芸術総合高等学校音楽科、尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科 ジャズ&ポップスコース卒。2014年栗林すみれトリオとしてJAZZAUDITORIAにてオープニング・アクトを飾り、その後3回に亘ってブルーノートトーキョーに出演。同年、行方均氏のプロデュースでサムシンクールレーベルからデビュー。 1stアルバム”TOYS”がジャズライフ、ジャズジャパンなどに取り上げられ2014年ディスクグランプリニュースター賞受賞。 2015年早くもセカンドアルバム”Travellin’”をリリース。2017年金澤英明との双頭リーダー作"二重奏"をローヴィングスピリッツから発売。2018年、総勢11名参加のアンサンブル作品とピアノトリオ作品を二ヶ月に渡りリリース。ジャズライフでは3rdAlbum”Pieces of Color”が表紙、巻頭特集でとりあげられる。 溝口肇のジャズアルバムへの参加や、NHKBSプレミアム『美の壺』でオリジナル曲が使用されるなど作曲やアレンジ方面の才能も発揮している。先人への敬意と幅広い音楽性の融合から紡ぎだされるオリジナル曲とインプロヴィゼーションは新たな世界を切り開きながらも心地よく、多くの聴衆の心を掴む。

(視聴)

 

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2020年6月 9日 (火)

大石学 manabu ohishiトリオ 「ONE NIGHT AT GEKKA」

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                                                                                      (クリック拡大)

(今日の一枚)  「初夏の高原」- 赤外線撮影 -
 Sony α6000(full specrrum), Zeiss Vario-Tessar FE 4/16-35,  IR760

                                  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -         

詩情と優しさ溢るる美旋律が・・・・

<Jazz>

Manabu Ohishi Trio 「ONE NIGHT AT GEKKA 月下の一夜」
月下草舎 / JPN / GEKKA0007 / 2020

Onenight

Manabu Ohishi(piano)
Yasushi Yoneki (bass)
Ryo Noritake (drums)

September28 2019
Recorded at pension GEKKASOSHA

  このところ月下草舎からリリースが続くピアニスト大石学のトリオによる最新アルバム。これも取り上げようと思っている昨年リリースされたアルバム『飛翔』(GEKKA0006 / 2019)と同一の米木康志(bass)と則武諒(Drums)との月光草舎にてのライブ・トリオ演奏だ。
 大石学は私としてはAtelier Sawanoからのトリオ・アルバム『Gift』(AS-122, 2012)や『WATER MIRROR』(AS-108, 2011)が過去に素晴らしかったモノとしてあるのだが、『WATER MIRROR』では名器FAZIOLIを演ずるところが印象深いのだ。そんなところから最近リリースされた『FAZIOLI F278 AGAIN』(北千住プロジェクト/2020 ↓)というソロ・アルバムも貴重。

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Profiletrw  さてこのアルバムは大石学にとって1stアルバムから25年経過してのアルバムとなるようだ。この間確かに彼に関してはソロ・アルバムも我々には印象深い。まあどちらかというと、そのソロは近年のヨーロッパ・ジャズ系に近い印象で私には好評なのだが、彼にはジャズのよってきたるところのビ・バップ系も得意と言うこともあって、やはりベース、ドラムスといったオーソドックスなトリオとして演ずることは極めて妥当なところであると思われる。

 このGEKKAレーベルではこのアルバムで6枚目と言うことになる。2018年録音の昨年リリースしたトリオ・アルバム『飛翔』が好評で、ここにこの『月下の一夜』を見ることになった。そしてこのアルバムは彼とこのレーベル立ち上げのきっかけとなったという曲"Peace"が納められている。これは過去にソロとデュオ版があって、ここではトリオ版として新しいイメージを造ってくれている。

(Tracklist)
1.Lonesome
2.GEZELLIG
3.うたたね
4.FORELSKET
5.I've Never Been in Love Before
6.Change
7.Peace

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 5曲目以外は大石学のオリジナル曲で構成されているが、そこには詩情と優しさとが溢るる美旋律が惜しげも無く出てきて、月下の一夜に身を寄せる聴くモノを幸せにしてゆく叙情性がいっぱいだ。ベースの米木、ドラムスの則武はそのあたりは既にこのトリオとしての実績も多く、演ずる世界は見事に一致している。

   F1."Lonesome" から透明感のあるピアノの音に詩情豊かな旋律が流れ、そして曲の後半はトリオのジャズ・スピリットがあふれた演奏が楽しめる。
 F4."FORELSKET" の聴きやすく詩情溢れた曲もいいですね。
 これらの曲の中では若干異色なのがF6."Change "だ。ここでは意外に楽天的にして明快な展開の楽しさが演じられている。
 このアルバムでは、重要な変化のあるところとしては、唯一カヴァー曲のF5."I've Never Been in Love Before "だ。これこそ大石が単なる叙情派だけでなく、スウィング・ジャズの発展系としてのホットであるアドリブの楽しさを加味してのビ・パップの流れを聴かせてくれる。スピード感も抜群で、ここでのベース・ソロそしてドラムス・ソロも聴きどころ。
 最後は恐らくこの夜のアンコール曲だろうと思われる彼の代名詞的曲M7."Peace"が登場する。このアルバムではソロでなくトリオ版だ。これだけしんみりとした曲だけに、シンバルの弱音、ベースは合わせての語り調によってサポート。後半はいつも通りの盛り上がりも美しく説得力ある。トリオもやはり良いですね。

 このところ、月下草舎から立て続けにリリースされている大石学のトリオ・ライブ版の最新盤を取上げた。いずれ昨年の『飛翔』や北千住プロジェクトからのソロ版も取上げたいと思っている。

(評価)
□ 曲・演奏   85/100
□ 録音     80/100

(視聴)

 

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2020年6月 5日 (金)

マルチン・ヴォシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「ARCTIC RIFF」

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(今日の一枚) 「春から初夏へ (高原の湖面)」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS,  PL

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ピアノ・トリオにテナー・サックスをフューチャーしてのカルテット作品
ヴォシレフスキの挑戦は続く・・・

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio, Lovano 「ARCTIC RIFF」
ECM / GERM / ECM 2678 / 2020

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Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Joe Lovano (ts)

Recorded Aug.2019 Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines, France
Produced by Manfred Eicher

 

Wasilewski_triow  もう20年以上前になるんですね、あの1995年のコメダの名曲の演奏アルバム『Komeda』が気に入ってから(Simple Acoustic Trio)マークしているポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年生まれ→)の、今回は当時の学生時代からのレギュラー・トリオに当然初顔合わせとなるアメリカのテナーサックスの大御所たるジョー・ロヴァーノ(1952年オハイオ州クリーヴランド生)をフューチャーしての更なる挑戦の作品。
 このトリオは近年は一貫してアイヒヤー率いるECMからのリリースとなって、その質もトリオとしての美意識の世界が基本ではあるが、このような実験的世界も決しておろそかにしていない。まだまだ前進、開拓のトリオで一枚一枚楽しみでもある。

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 今回、ヴォシレフスキ自身のオリジナル4曲、ジョー・ロヴァーノ(右下)のオリジナル1曲、さらにカーラ・ブレイの “Vashkar” , そして4人によるインプロヴィゼーションと、多彩にして実験色の強い曲とヴォシレフスキ独特の情感あるリリスズムの世界がミックスしたこれまた興味深いアルバムとなった。

Joelovano_byjimmykatz (Tracklist)

01. Glimmer Of Hope
02. Vashkar
03. Cadenza
04. Fading Sorrow
05. Arco
06. Stray Cat Walk (ts-b-ds trio)
07. L'Amour Fou
08. A Glimpse
09. Vashkar (var.)
10
. On The Other Side
11. Old Hat

 M1."Glimmer Of Hope " ヴォシレフスキ独特の美的センスのトリオ演奏が始まり、そこにロヴァーノのサックスが優しく添えるように入り、次第に柔らかく旋律を歌い上げる。そしてカルテットの形で曲を完成させる。ここにはトリオの本来の詩情がたっぷり盛り込まれていて、冒頭から私の心に響いてきた。これは私の期待した姿そのものであり、このアルバムはその流れで展開してゆくのかと思いきや・・・・。
 M3." Cadenza ", M5."Arco ",  M6."Stray Cat Walk (ts-b-ds trio) " ,M8."A Glimpse" は、カルテットによるインプロヴィゼーションの世界が展開する。それは実は驚きでもあったのは、ヴォシレフスキの優しさ、哀愁、甘さのリリシズムの芸風を超越したクールな抽象性に徹したフリー・インプロヴィセイションを果敢に発揮してのプレイがみれたところだ。更に注目は、ベースのクルキーヴィツ(下左)、ドラムスのミスキーヴィツ(下右)が水を得たように活躍していることである。それは特にM5."Arco", M6."Stay Cat Walk"にみるように、異空間をさまようがごとくのトリオ・メンバーのそれぞれの空間を築きつつ交錯し形作るところに、ロヴァーノのアグレッシブな面を誘導するも、そこには独特の深遠さがあってフリーな型破りな吹奏を展開する。究極のところカルテットとしての協調性が長年培ってきたかの如くの緻密に展開してゆくこととなり、そしてシャープにしてリアルな音による異次元の出現に圧倒されるのである。

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 ロヴァーノ自身、ヴォシレフスキ独特のリリスズムを受け入れつつ、彼のメロウな演奏も披露するのだが、それに止まらずインプロヴィゼーション世界に引き込んだところは見事な老獪ぶりである。しかもこうしたカルテットでは、管演奏が主体で演奏して終わってしまう事になりがちだが、ちゃんとピアノ・トリオの場を生かしている間の取り方も熟練の技とみる。そしてそれを十二分に昇華できるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオもここまで成長した姿に偉大なりと喝采するのだ。

(参考)
 [マルチン・ヴォシレフスキMarcin Wasilewski]
ピアニスト、作曲家。1975年ポーランド・スワヴノ生まれ。コシャリン音楽ハイスクール卒。同校在学中に結成したピアノトリオSimple Acoustic Trioで、今日まですでに20数年のキャリアを持ち、それが現在のマルチン・ヴォシレフスキ・トリオである。
 いまや彼はポーランドを代表するジャズ・ピアニスト。我々が知るようになるのは、1995年にGowi RecordsよりSimple Acoustic Trioのデビュー作『Komeda』であった。これは2001年に『Lullaby for Rosemary』と改題して日本でも広く行き渡った。
 その後、ポーランドの名トランペッターTomasz Stańkoとのカルテット結成にともないドイツのECMと契約する。ECM移籍後はWasilewski,Kurkiewicz,Miśkiewicz名義で『Trio』、Marcin Wasilewski Trioと再改名後に『January』『Faithful』『Spark of Life』をリリースしている。Stańkoのカルテットとしてのアルバムは2002年の『Soul of the Things』、続いて『Suspended Night』『Lontano』の3作がリリースされている。更にピアニストとしては、トランペット奏者Jerzy Małekの『Air』があり、女性ヴォーカリストDorota Miśkiewiczの『Piano.pl』等。

(評価)
□ 曲・演奏 :  95/100
□   録音    :   85/100

(視聴)

 

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2020年6月 1日 (月)

ピンク・フロイド PINK FLOYD アルバム「ZABRISKIE POINT」の復活

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(今日の一枚) 我が家の庭から・・ヤマボウシの花
       Sony α7RⅣ,  FE4/24-105 G OSS , PL

                                     - - - - - - - - - - - - - - -

蘇る仮想「ZABRISKIE POINT」の全貌
美しいピアノの調べと、サイケデリックな浮遊感の世界

<Progressive Rock>

PINK FLOYD
VIRTUAL STUDIO ALBUM 「ZABRISKIE POINT」

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Recorded Nov./Dec. 1969 in Rome for the film "Zabriskie Point"

 今や、ブート界もあるべきであったアルバムの復活に力を注いでいる。すでに行き詰まっている現ギルモアとサムスンの主催するピンク・フロイドにおいては、当然復活は望めないため、かってのピンク・フロイドを愛し研究し資料を蓄積した輩の成果として、少しづつあるべき姿の再現が行われている。先日紹介したロジャー・ウォーターズの『PROJECT K.A.O.S.』もその一環である。

61mj6ozaryl_ac_  そしてこれは今年初めに手中にしたもので、1969年にご本家ピンク・フロイドの映画『Zabriskie Point』(→)に提供され、無残にも彼らの曲を理解できなかった監督アントニーニによって消え去られた曲群の集約によって蘇ったアルバム『ZABRISKIE POINT』なのである。実はこれは10年前にリリースされ、即完売。幻の名盤と化していたもので、ここに来て復刻されたものである。
 こうして今、当時のピンク・フロイドの世界を知ることができるのは幸せというものだと、この制作陣に感謝しつつ鑑賞できるのである。しかも音源はライブものでなく、スタジオ録音されたもの、映画からの抜粋など苦労のたまもので、音質も良好で嬉しい。
 当時、この映画に提供されたモノでのアルバム作りをしたらこうなるのではないかと、「仮想ZABRISKIE POINTアルバム」を76分40秒にて作り上げたものから、果たして我々は何を知りうるのか、それは恐らくピンク・フロイドを愛する輩には響いてくるはずである。

 

(Tracklist)

1. Love Scene
2. Intermezzo
3. The Violence Sequence
4. Crumbling Land Pt.1 *
5. Sleep
6. Oenone Pt.1
7. Fingal's Cave
8. Red Queen Prelude
9. Crumbling Land Pt.2 *
10. Rain In The Country
11. Blues
12. Red Queen Theme
13. Oenone Pt.2
14. The Embryo
15. Heart Beat Pig Meat *
16. Oenone(Reprise)
17. Come In Number 51 Your Time Is Up *

  *印 映画に採用された3曲(”Heart Beat, Pig Meat”(”若者の鼓動”),”Crumbling Land”(”崩れゆく大地”),”Come In Number 51, Your Time Is Up”(”51号の幻想”))
  又、採用されなかった曲の内 4曲:”Country ”Song",”Unknown Song",”Love Scene (Version 4)”,”Love Scene (Version 6)” は、後に 2枚組の 『 Zabriskie Point Original Motion Picture Soundtrack 』 に登場。
 更にその他の曲の一部が、2016年のボックスセット「THE EARLY YEARS 1965-1972」に収録された。

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M1-M3 美しいピアノのメロディーが流れる。M1はギターの別バージョンもある。M3.は"us and them"の原型が聴かれますね。
M5."Sleep" 静かな世界は出色。
このあたりまで、当時のライトのクラシック・ピアノを学んだキーボードの効果が甚大に出ている。
M6."Oenone" フロイド得意のサイケデリックな浮遊感たっぷり世界。後半には当時ウォータースがよく使ったドラムの響きと、ギルモアのギターによる音により盛り上がる。当時のフロイドの世界を十分に堪能出来る。これがM13,M16と登場する。
M7."Fingal's Cave"このサイケデリックにしてハード、そしてヘヴィ・メタルっぽい盛り上がりも凄い。
M8." Red Queen Prelude"アコギによるプレリュード
M9." Crumbling Land Pt.2"初期のフロイドの音と歌声と英国ロックを実感する。
M10."Rain In The Country "ギターの調べが優しい。後半は当時のウォータース得意のベースのリズムに、おそらくギルモアのギターの二重録音が聴かせる。
M11."Blues"ギルモアの原点であるブルース・ギターそのものの展開だ。
M12."Red Queen Theme " 珍しい歌モノ、ギルモアが歌う。
M13."Oenone Pt.2 " は懐かしいピンク・フロイドの音がたっぷりと再現されてますね。
M14."The Embryo" ここに挿入されているところが、一つの遊びでもあり、考えようによっては、どのアルバムにも寄りどころの無かった名曲"The Embryo"の住処を見つけたかの如く居座っているところがニンマリです。これがフロイド・マニアにとっては原点だという曲。
M15." Heart Beat Pig Meat " このリズム感が聴きどころ、映画のオープニングに流れる。これは映画サウンド・トラックでしょうね。
M17." Come In Number 51 Your Time Is Up" 当時のピンク・フロイドの代表曲ウォーターズの奇異感たっぷりの"Careful With That Axe, Eugene"の世界で幕を閉じる。映画の最後の爆発のシーンをも思い出すところだ。

 『ZABRISKIE POINT』の為に、1969年11月から12月にかけて、イタリアのローマにてピンク・フロイドは多くの楽曲をレコーディングしたのだが、それらを蘇らせてみると、ここにも、ウォーターズの発想である俗世間から異なる空間を描くというサイケデリック世界が盛り込まれていることが解る。彼らはこうして映画のサウンド・トラックにも、しっかりと自己の世界を築いていて、それが監督アントニーニには気に入らなかったのだろうか。

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  映画は  60年代後半、黒人差別撤廃、公民権運動、ベトナム反戦運動等の学園闘争の嵐が吹き荒れる南カリフォルニアの大学。60年代のアメリカの資本主義的大量消費、学生運動、銃社会、ヒッピー文化とフリーセックスなどが背景にある。
 社会に疑問を持ち、学生運動を展開する中で、現実逃避せざるを得なくなった男(学生)マークとその死、理想像とは全く別の資本主義的世界に疑問を持つ女性ダリアの葛藤を描いているのだが、そこに3曲のみの登場でしかなかったピンク・フロイドの曲、多くは残されたままになってしまった。最後のレストハウスの大爆破シーンは有名だが、アメリカの物質文明への批判であったのか、流れる曲Pink Floydの「51号の幻想」も印象的だった。

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 そんな経過のなかでのこうして、架空の完全版を作成してゆく努力には、おそらくコンセプト主義のロジャー・ウォーターズにしてみれば、作品の完璧主義には異論があっても、歓迎の気持ちは内心あるのではないだろうか。おそらく彼はこれを聞かれると、"そんなことは関係ないことだ"と答えるに相違ない。そこがウォーターズの持ち味である。
 しかし、こうして改めてトータルに聴いてみると、次第に異空間に逃避した世界から現実の文明社会の不正に挑戦するに至るウォーターズの出発点をここに見る思いである。

Zabriskie_point_img_3887 (参考) 「Zabriskie Point」
  ザブリスキーポイント(→)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州 デスバレー国立公園のデスバレーの東に位置するアマゴサ山脈の一部で、 侵食された景観で有名です。 死の谷が誕生するずっと前に、500万年前に干上がったファーネスクリーク湖の堆積物で構成されている地。樹木の無い地の景観が異様で現在観光地となっている。

 

(評価)
□ 曲・演奏・貴重度  95/100
□ 音質        80/100

(視聴)

映画「ZABRISKIE POINT」のエンディングと"Come In Number 51, Your Time Is Up"

 

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