マルチン・ヴォシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「ARCTIC RIFF」
(今日の一枚) 「春から初夏へ (高原の湖面)」
Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL
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ピアノ・トリオにテナー・サックスをフューチャーしてのカルテット作品
ヴォシレフスキの挑戦は続く・・・
<Jazz>
Marcin Wasilewski Trio, Lovano 「ARCTIC RIFF」
ECM / GERM / ECM 2678 / 2020
Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz(ds)
Joe Lovano (ts)
Recorded Aug.2019 Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines, France
Produced by Manfred Eicher
もう20年以上前になるんですね、あの1995年のコメダの名曲の演奏アルバム『Komeda』が気に入ってから(Simple Acoustic Trio)マークしているポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年生まれ→)の、今回は当時の学生時代からのレギュラー・トリオに当然初顔合わせとなるアメリカのテナーサックスの大御所たるジョー・ロヴァーノ(1952年オハイオ州クリーヴランド生)をフューチャーしての更なる挑戦の作品。
このトリオは近年は一貫してアイヒヤー率いるECMからのリリースとなって、その質もトリオとしての美意識の世界が基本ではあるが、このような実験的世界も決しておろそかにしていない。まだまだ前進、開拓のトリオで一枚一枚楽しみでもある。
今回、ヴォシレフスキ自身のオリジナル4曲、ジョー・ロヴァーノ(右下)のオリジナル1曲、さらにカーラ・ブレイの “Vashkar” , そして4人によるインプロヴィゼーションと、多彩にして実験色の強い曲とヴォシレフスキ独特の情感あるリリスズムの世界がミックスしたこれまた興味深いアルバムとなった。
(Tracklist)
01. Glimmer Of Hope
02. Vashkar
03. Cadenza
04. Fading Sorrow
05. Arco
06. Stray Cat Walk (ts-b-ds trio)
07. L'Amour Fou
08. A Glimpse
09. Vashkar (var.)
10. On The Other Side
11. Old Hat
M1."Glimmer Of Hope " ヴォシレフスキ独特の美的センスのトリオ演奏が始まり、そこにロヴァーノのサックスが優しく添えるように入り、次第に柔らかく旋律を歌い上げる。そしてカルテットの形で曲を完成させる。ここにはトリオの本来の詩情がたっぷり盛り込まれていて、冒頭から私の心に響いてきた。これは私の期待した姿そのものであり、このアルバムはその流れで展開してゆくのかと思いきや・・・・。
M3." Cadenza ", M5."Arco ", M6."Stray Cat Walk (ts-b-ds trio) " ,M8."A Glimpse" は、カルテットによるインプロヴィゼーションの世界が展開する。それは実は驚きでもあったのは、ヴォシレフスキの優しさ、哀愁、甘さのリリシズムの芸風を超越したクールな抽象性に徹したフリー・インプロヴィセイションを果敢に発揮してのプレイがみれたところだ。更に注目は、ベースのクルキーヴィツ(下左)、ドラムスのミスキーヴィツ(下右)が水を得たように活躍していることである。それは特にM5."Arco", M6."Stay Cat Walk"にみるように、異空間をさまようがごとくのトリオ・メンバーのそれぞれの空間を築きつつ交錯し形作るところに、ロヴァーノのアグレッシブな面を誘導するも、そこには独特の深遠さがあってフリーな型破りな吹奏を展開する。究極のところカルテットとしての協調性が長年培ってきたかの如くの緻密に展開してゆくこととなり、そしてシャープにしてリアルな音による異次元の出現に圧倒されるのである。
ロヴァーノ自身、ヴォシレフスキ独特のリリスズムを受け入れつつ、彼のメロウな演奏も披露するのだが、それに止まらずインプロヴィゼーション世界に引き込んだところは見事な老獪ぶりである。しかもこうしたカルテットでは、管演奏が主体で演奏して終わってしまう事になりがちだが、ちゃんとピアノ・トリオの場を生かしている間の取り方も熟練の技とみる。そしてそれを十二分に昇華できるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオもここまで成長した姿に偉大なりと喝采するのだ。
(参考)
[マルチン・ヴォシレフスキMarcin Wasilewski]
ピアニスト、作曲家。1975年ポーランド・スワヴノ生まれ。コシャリン音楽ハイスクール卒。同校在学中に結成したピアノトリオSimple Acoustic Trioで、今日まですでに20数年のキャリアを持ち、それが現在のマルチン・ヴォシレフスキ・トリオである。
いまや彼はポーランドを代表するジャズ・ピアニスト。我々が知るようになるのは、1995年にGowi RecordsよりSimple Acoustic Trioのデビュー作『Komeda』であった。これは2001年に『Lullaby for Rosemary』と改題して日本でも広く行き渡った。
その後、ポーランドの名トランペッターTomasz Stańkoとのカルテット結成にともないドイツのECMと契約する。ECM移籍後はWasilewski,Kurkiewicz,Miśkiewicz名義で『Trio』、Marcin Wasilewski Trioと再改名後に『January』『Faithful』『Spark of Life』をリリースしている。Stańkoのカルテットとしてのアルバムは2002年の『Soul of the Things』、続いて『Suspended Night』『Lontano』の3作がリリースされている。更にピアニストとしては、トランペット奏者Jerzy Małekの『Air』があり、女性ヴォーカリストDorota Miśkiewiczの『Piano.pl』等。
(評価)
□ 曲・演奏 : 95/100
□ 録音 : 85/100
(視聴)
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コメント
たぶん、、多くの人がオープナーで心掴まれ、、
即興曲で、うむ〜と、、唸り、、
一喜一憂だったのかもしれませんね。笑
書かれているように、ロバーノの見事な老獪ぶりに、
彼らも一皮も二皮もむけた感じですか。
トラバをありがとうございました。
こちらかもトラバいたしますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-3aaa02.html
投稿: Suzuck | 2020年6月 6日 (土) 12時38分
Suzuckさん
こんにちわ。コメントどうも有り難う御座います。
一曲目のスタイルが3曲ぐらいは欲しかったという感じですが、カルテットのインプロがなかなかセンスがあって、この世界も充実感ありました。
ロヴァーノがただ吹き荒れていなくて、又独壇場とならずに、さすが時と場所をこころえての演奏、凄いですね。
TBどうも有り難う御座います。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年6月 6日 (土) 17時00分
風呂井戸さん,こんばんは。リンクありがとうございました。
Suzuckさんが書かれている通り,私も「オープナーで心掴まれ、、即興曲で、うむ〜と、、唸り、、一喜一憂」だった訳です。
おっしゃる通り,ミュージシャンはいろいろ挑戦したくなると思うので,それを含めて評価するべきなんだとは思いますが,こちらの求めるところもありますので,ちょいと微妙なところがあったのは否定しません。
しかし,美的な世界においては,やはりこの人たちのレベルの高さを感じさせましたし,即興も悪いわけではないので,ちゃんと評価したいと思います。
ということで,当方記事のURLを貼り付けさせて頂きます。
https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2020/06/post-5ad559.html
投稿: 中年音楽狂 | 2020年6月 6日 (土) 20時57分
中年音楽狂さん
こんばんわ、コメントどうも有り難う御座います。
一曲目はヴォシレフスキらしくて良かったですね。このパターンからインプロヴィゼーションの世界をどう受け止めるかですね。全く異なった中にもクールでソリッドな面が驚きましたが、どこか美的センスもあって、彼らの特徴が出ていると評価しました。
しかも、ロヴァーノはこのトリオとの関係を上手く生かしていて、ただ吹きまくる独壇場とならずカルテットとしての価値を高めていることに、さすがと・・思いました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年6月 6日 (土) 21時16分
風呂井戸さんコンバンワ。
いつも拝見させていただいてます。
この音楽はヴォシレフスキトリオとロバーノの双方がお互いをリスペクトしているからこそ生まれた、非常に密度の高い対話となっている気がします。確かに、ロバーノも流石、抑制が効いていて、このトリオの良さをしっかり把握して絡んでますね。
私のブログでも紹介してますので、よろしくお願いします。
https://zawinul.hatenablog.com/entry/2020/06/04/224720
投稿: zawinul | 2020年7月 4日 (土) 22時29分
zawinulさん
お早うございます。コメントどうも有り難うございます。こちらこそよろしくお願いします。
ヴォシレフスキの情緒深いメロディーの世界を期待すると、ちょっと??と思いがちですが、トリオ+ロバーノのインプロの世界は実に深遠な世界を描いていて素晴らしかったですね。
zawinulさんの方へも、伺わせていただきますので、これからもよろしくお願いします。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年7月 5日 (日) 09時31分