栗林すみれ Sumire Kuribayashi 『Nameless Piano』
(今日の一枚) 「初夏の高原に咲く花」
Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS , PL
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刺激のないスウィート・テンダーな世界が・・・流麗なタッチで
<Jazz>
Sumire Kuribayashi 『Nameless Piano』
SOMETHIN'COOL / JPN / SCOL-1038 / 2020
Sumire Kuribayashi -Piano,Voice
01, 02, 06-10:
2019年2月13日,14日,8月18日,9月18日録音
(plays Yamaha S400B)
03-05:
2018年10月27日北海道 Rankoshi Palm Hall録音
(plays Yamaha C7)
どちらかというと親しみやすく、優しく独創性のある詩情世界を描くというところで人気が上昇中であるという栗林すみれ、5作目のアルバムがソロ・ピアノでの作品で登場である。又それに加えてマスタノリングはイタリアのジャズ録音では今や人気者のエンジニアであるステファノ・アメリオということで、我がオーディオ・マニアの友人が演奏が気に入ったのか、録音が気に入ったのかは不明だが薦めてきたアルバム。
実は私は彼女のことは名前と噂は若干聞いたことがある程度で白紙状態、今回初めてじっくり聴くことになった。
01. Nameless Piano (栗林 すみれ)
02. Cow Daisy (Jesse Van Ruller)
03. Believe, Beleft, Below (Esbjorn Svensson)
04. Nel Col Più Non Mi Sento (Giovanni Paisiello)
05. I'll Be Seeing You (Sammy Fain)
06. Improvisation "Colored Woods" (inspired by Kaii Higashiyama) (栗林 すみれ)
07. Improvisation "Piangere" (栗林 すみれ)
08. Ship (Giovanni Scasciamacchia)
09. A Lovely Way To Spend An Evening (Jimmy McHugh)
10. Edelweiss (Richard Rodgers)
栗林すみれのオリジナル曲は3曲で、他はカヴァー曲。全体にバラード調でなかなか透明感たっぷりのスウィート・テンダーという世界が流れる。6-7年前にデビューという若き女性と言うことで、なんとなくこのアメリオの録音によるピアノの音も瑞々しさを感ずるところはいいですね。
とにかくゆったりのうららか気分に心地よく聴けるというところでは、最近聴いたものの中ではピカイチだ。それは特にクラシカルなイメージと、とにかく編曲が優しく難しいところと刺激的なところがないことによる。
アルバム・タイトルとなっている彼女自身の曲M1."Nameless Piano"を聴くとクラシック練習曲のようなスタートであり、優美に流れは大きくうねっていて、時として聴かれる高音の美旋律があり、いわゆる刺激的な展開はない。もう一つ山があるのかと思ったら終わってしまった。
M2."Cow Daisy"は通して聴いた結果としては、この曲が最も低音のダイナミズムがある曲かも知れないが、厳しさには至らない。
一方、三曲目"Believe, Beleft, Below"にはEsbjorn Svenssonの曲が出てきて驚いているのだが、このあたりで少々変化を見せるのかと思いきや、全く彼女のプレイは変わらず優雅な美的世界なのである。
M4."Nel Col Più Non Mi Sento"は如何にも女性的なクラシカル・ピアノの世界。
M6."Improvisation "Colored Woods"", M7." Improvisation "Piangere"は彼女のオリジナル即興曲と言うことのようだが、この2曲がちょっとしたクラシック調の演奏ではあるが、ちょっとした宇宙空間を描いていて、やや欧州ジャズのニュアンスも感じ、むしろこのアルバムのなかでも注目曲だ。
アルバム全体として、一つ一つの音を丁寧に心を込めているところ、端正な流麗なタッチは評価出来るところであり、刺激性の少ない詩情的な世界にスイート・テンダーに迫ると行ったところである。ここが若き女性の一つの世界なのかも知れない。
さて、そんなところにもう少し哀感や悲壮感が入ると良いのだがと思うし、もう少しジャズ的緊張感に迫るところも場合によっては欲しい。一方こうした世界なら、若干暗めの哲学的深遠さがある曲を交えるところがあるといいのだがと、私好みの要求もしてみたくなる。
(評価)
□ 曲・選曲・演奏 85/100
□ 録音 85/100
栗林すみれ (ネットに見る(KOBE JAZZ.JP)紹介を転載)
ピアニスト、作曲家。埼玉県立芸術総合高等学校音楽科、尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科 ジャズ&ポップスコース卒。2014年栗林すみれトリオとしてJAZZAUDITORIAにてオープニング・アクトを飾り、その後3回に亘ってブルーノートトーキョーに出演。同年、行方均氏のプロデュースでサムシンクールレーベルからデビュー。 1stアルバム”TOYS”がジャズライフ、ジャズジャパンなどに取り上げられ2014年ディスクグランプリニュースター賞受賞。 2015年早くもセカンドアルバム”Travellin’”をリリース。2017年金澤英明との双頭リーダー作"二重奏"をローヴィングスピリッツから発売。2018年、総勢11名参加のアンサンブル作品とピアノトリオ作品を二ヶ月に渡りリリース。ジャズライフでは3rdAlbum”Pieces of Color”が表紙、巻頭特集でとりあげられる。 溝口肇のジャズアルバムへの参加や、NHKBSプレミアム『美の壺』でオリジナル曲が使用されるなど作曲やアレンジ方面の才能も発揮している。先人への敬意と幅広い音楽性の融合から紡ぎだされるオリジナル曲とインプロヴィゼーションは新たな世界を切り開きながらも心地よく、多くの聴衆の心を掴む。
(視聴)
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