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2020年7月28日 (火)

欧州ブルース・ロック歌姫 = ジョアンJoanne Shaw Taylor と イリア Erja Lyytinen

ギター・テクニック抜群で熱唱とソフトヴォーカルと・・・

 つい最近、ブログ友フレさんのブログで知ったこの歌姫二人、かなりレベルの高いギタリストにしてブルース・ロックを演ずるところは興味津々であった。なにせ、彼女らは欧州のブルース・ロッカーで、どのようにして育って来たのかとちょっと不思議に思いつつも、聴いてみるとなかなかそれぞれ魅力的であったので、ここに取上げた。

<Blues-Rock>

█ ジョアン・ショウ・テイラーJoanne Shaw Taylor 
  
CD「RECKLESS HEART」
  Sony Music / Import /SNY5948142 / 2019

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All Songs Written by Joanne Shaw Taylor

Joanne Shaw Taylor : Guitor , Vocals
Ron Otis : Drums , Percussion

James Simonson : Bass

Taylorjoanneshaw2w_20200728151901 (Tracklist)
1. In the Mood
2. All My Love
3. The Best Thing
4. Bad Love
5. Creepin'
6. I've Been Loving You Too Long
7. Reckless Heart
8. Break My Heart Anyway
9. New 89
10. Jake's Boogie
11. I'm Only Lonely

  彼女は英国出身のブルース・ロックを演ずるギタリスト、ヴォーカリストそして作曲者である。こうゆうのが英国でヒットするのはちょっと不思議な感あると思って、この3rdアルバム聴いてみたが、うーーん、これはブルース・ロックと言ってもややハードがかったロックですね。アルバム・タイトルのようにやや無謀な味付けのロック味を演じたのでしょう。ブルースっぽい味のある曲は M6."I've Been Loving You Too Long"、これはなかなかのもので、泣きギターも頂きだ。もともとはこの線で頭角を現してきたのではと思うのだが。
 彼女の声はちょっとハスキーっぽい、本来はもっとクリーンな声だと思うのだが、ブルース曲向きに作為的にスモーキー・ハスキー系に仕上げているのだろう。
 M10."Jake's Boogie"、M11."I'm Only Lonely"のスローな線は、味があって良い。やっぱりブルースが良さそうだ。
 いずれにせよ、ギターの腕前もなかなかでギブソンを使いこなして格好いい。今は米国に渡って活動しているようで、その結果が今回のアルバムの方向性に影響したのかと思うのだが、更にロックに磨きがかかったようだ。

CD+DVD「Joanne Shaw Taylor / SONGS FROM THE ROAD」
    Ruf Records / IMPORT / RUF 1197/ 2013

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  これは、CDに加えDVD映像付きのライブ盤。ブルース系でそんなに大きくない会場で、たっぷり彼女の演奏と歌が楽しめる。
 彼女は1989年英国生れ、8歳からギターブルースに傾倒。16歳でデイヴ・スチュアートに見出され、翌年、彼とキャンディ・ダルファー、ジミー・クリフからなるスーパーグループ、D.U.P.のツアーにギタリストとして参加。2009年のデビュー作『ホワイト・シュガー』は全米・全英でブルース・ミュージック・アワードを受賞するという快挙あげたとか。

                  *          *          *          *          *

█ イリア・ライチネン Erja Lyytinen

<Blues-Rock>

① CD + DVD  「Erja Lyytinen / SONGS FROM THE ROAD」
      Ruf Records / IMPORT / RUF1179  /2012

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Erja Lyytinen : Guitar, Vocals
Davide Floreno : guitar , Backing vocals
Roger Inniss : bass , Backing vocals
Miri Miettinen : drum , Backing vocalss

161014_elyytinen3  こちらの歌姫イリア・ライチネンは、なんとフィンランド出身のブルース姫というから驚きですね。15歳から音楽学校でギターを学び2001年にCDデビュー、もう20年のキャリア。もともとはジャジーな世界で、フォーク系のムードのある曲を演じていたようだ。Rufレコードと契約し、会社の企画のブルース・ギターで注目を浴びたという。ここでのライブもギター・プレイ中心のインスト曲も演じ、何と言ってもギターの名手で、女子スライド・ギターでは世界トップ・クラスと言われている。
 このアルバムは2011年にヘルシンキで収録されたライブ盤で、映像DVDも付いている。
 曲は、典型的なブルース・ロック。映像もあって観れるのが嬉しいが、カラーの派手なテレキャス・モデルを赤そしてブルーと持ち替えて更にシルバー色も出てくる。まさに女流ギタリストの面目躍如の演奏を展開する。
 彼女のヴォーカルは、そのままの素直な歌声で私にとっては好評、あまり作った声は好きで無いのでこれでよい。
 M6."Can't fall in Love"、M8."Steamy Windows"のバラード・ナンバーがギターの情感と共に良いですね。
 M9."No Place Like Home"もうっとりだ。
 M10."Crossroads" 如何にもカントリー・ムードとスライド・ギターのハイテクニカル・プレイとうねりが聴き所。ほぼインスト曲。
 このアルバムは、後半に行くに従ってブルース色と、ギター・プレイが濃厚になって良い感じで聴き終える。

  参考までに、61f9laxf1fl_acw イリア・ライチネンの近作アルバムは 
『Another World』(BSMF Records /BSMF2661 / 2019)である。(→)

      *          *          *          * 

 今回、ここに英国とフィンランドのブルース・ロック歌姫を取上げたが、両者とも女流ギタリストとしては優れた業師であり、その上ヴォーカルはそれなりにこなしている。私の場合は発声の素直さと聴きやすさ、更にブルース色の濃さからイリア・ライチネンに軍配を上げたが、曲の演奏を楽しめるブルース系世界としてもイリアの出来に納得した。ロッカーとしてはジョアン・ショウ・テイラーですかね、彼女の作曲者としての才能も注目しておこう。
 
 いずれにしても、この両者の世界はなかなかそれぞれ貴重であって、2019年には両者ともニュー・アルバムをリリースしている。まだまだこれからも健闘して欲しいと願っている。

(参考視聴)

Joanne Shaw Taylor

*
Erja Lyytinen

 

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2020年7月22日 (水)

ピンク・フロイドの「the best of tour 72」の完全版の出現

まだまだ続くピンク・フロイドの「72'レインボーシアター名演」の完璧録音盤への道

 

<Progressive Rock>

PINK FLOYD  「LIVE  THE BEST OF TOUR72  - DEFINITIVE EDITION」
Sigma / ITA-JPN / Sigma 249-1,2 /2020

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Rainbow Theatre, Finsbury Park, London , UK  20th February 1972

(Tracklist)

Uktour <Disc1>  (74分14秒)
Breathe

Variation Of "On The Run"
Time
Breathe Reprise
Variation Of "The Grate Gig In The Sky" Part One
Variation Of "The Grate Gig In The Sky" Part Two
Money
Us And Them
Any Colour You Like
Brain Damage
Eclipse
One of These Days
Careful with  That Axe, Eugene 

<Disc-2> (66分49秒)
Tuning
Echoes
A Sauceful Of Secrets
Blues
Set The Controls for The Heart Of The Sun

 ここにフロイド・ファンにとっては、かけがいのない「72年レインボーシアターライブ」(右上)の決定版アルバムの出現をみた。
   これは1972年の冒頭を飾る「UK TOUR '72」において、1年後にリリースした彼らの最も最高傑作のアルバム『The Dark Side of The Moon狂気』の全容を、初めてステージで公開した最も注目されるライブであった (これは前年71年の11月29日から12月10日までロンドンのDecca Studiosにてアルバムとライブの為にデモ・レコーディングを行い、'72になって1月17-19日リハーサルを行い、1月20日からUKツアーをスタートさせ、2月20日に打ち上げたもの)。 つまりその最終日の録音ものだ。
  更に注目は、この直後3月には「JAPANESE TOUR」を(東京、大阪、京都、横浜、札幌)行ったのだっだ。しかし当然日本ではまだ知らざる曲の披露で戸惑ったというのも事実であった。

 そしてこのアルバムを語るには、少々歴史を語る必要があり、下のこのライブを収録したアルバムに話しを持って行かざるを得ない。

█ PINK FLOYD 「Live , THE BEST OF TOUR' 72」Lp11973 (→)
  We Did It For You / UK / LP / 1973

 ピンク・フロイドの多くの歴史的名ライブ録音盤の中でも、ファンにとって貴重で5本の指に数えられるものの一つが、注目の1972年2月20日のレインボーシアター公演を収録したこのコレクター盤(当初はLP、後に当然CD化された)である。これは翌年1973年リリースの世紀の名盤『The Dark Side Of The Moon 狂気』の原型が聴けるとして注目されたもの。以来この50年近く、このアルバムに関してはLP盤、CD盤、別テイク盤も含め、音質の改善がなされつつ現在解っているところでもなんと61枚が手を変え品を変えリリースされてきた。
   非公式音源盤(Bootleg)であるが、この"親子ブタ"のジャケは、知る人ぞ知る忘れられない逸物だ ( 右のように、ジャケ表には何の文字も無いのが初期LP盤の特徴。アルバム『原子心母』の"牛"は傑作と言われているが、それにも匹敵する出来映え)。

 そしてこのブート盤は幾度となく改良が加えられてきたが、更なる改良が加えられた"究極の完全版"といえる代物が、なんと今年になってイタリアと日本の力によってリリースされたのだ。それがここで取上げる「 DEFINITIVE EDITION」と名付けられたものだ。ピンク・フロイド専門レーベル「Sigma Records」 からのもので、それが今日のテーマである。


 私が以前から所持しているこの改良版CDは、既に音質の良さから究極のモノとされている「THE SWINGIN' PIG RECORDS」の"TSP-CD-049"盤 PINK FLOYD「LIVE」(1990年↓)であるが、これはこのライブの中の第一部での公式アルバム『The Dark Side of The MOON 狂気』(1973)に関する音源のみを収録したものだ。従ってその他のこの日の演奏曲は入っていない、それでも私は満足していたのだが・・・更に全容を求める声もあった。
 更にこの名盤でも、フロイド・ファンなら良く聴くと解るとおり、編集では上手く繋いでいるのだが、曲("time"、"eclipse"など)の一部、音の欠落している部分が少々あったりしている。従ってこんな感動モノでありながら更にその上を求めるのがファン心。

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Japantourx  そもそも、ピンク・フロイドは、ライブ演奏を繰り返しながら曲を完成させてゆくバンドであり、この名盤『The Dark Side of The MOON 狂気』がリリースされたのは1973年3月で、その内容はなんと一年以上前には、ここに聴けるが如く既にほぼ完成させライブ演奏していたのである。そんな中の1972年7月には映画音楽曲集のニューアルバム『OBSCURED BY CLOUDS 雲の影』がリリースし、『The Dark Side of The MOON 狂気』はその更に後のリリースであるから、このレインボーシアター公演は新曲を求めるファンにとっては注目の公演であり、それが又高音質で聴けるとなれば当時大騒ぎになったのも当然の話である。更に一方その直後の3月に「JAPANESE TOUR」(S席2800円→)が行われた歴史的年だ( 当時は日本では当然未発表アルバム『狂気』は知らない訳で、キャッチフレーズが "吹けよ風 呼べよ嵐"であった)。

 私の関心もピンク・フロイドとなると、1983年の『THE FINAL CUT』までが興味の対象で、それ以降はオマケの部類であって、特に1970年代がほぼ最高潮の時であったと言っても良い。そんな事情から、現在もこの1972年のレインボーシアター公演は注目されるのである。
 そうして50年近くを経過しようとしている今日においても、この『THE BEST OF TOUR 72』をなんとか完璧にと求める作業は続いていたのである。そしてここに出現したのが、究極の1972年レインボーシアター盤であるピンク・フロイド専門レーベルSigmaの「DEFINITIVE EDITION」である。これはこのレーベルの意地によって究極版を仕上げたと言って良い。

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(三つある有名録音)

 実はこの日のライブ音源というのは、雑多であるが、基本的にほぼ認められているものは三っあるのである。
① Recorder 1 (デレクDerek・A氏録音) : 過去最高の音質を誇る。上に紹介した名ブート盤「Live , THE BEST OF TOUR' 72」だ。曲の一部に欠落あり。マスターテープは盗難にあって現存しない為修復不可。 
② Recorder 2 (スティーヴSteve・B氏録音) : 平均以上の音質を維持、曲間は欠落。近年音質の改善が行われ再び注目。
③   Recorder 3 (ジョン・バクスターJohn Baxter氏録音) : 当日のショーの曲間も含め完全録音。しかしやや音質に難。
  それぞれこの3つともこのように何らかの難点を抱えていて、特に高音質の①は、内容の完璧さに欠けているのが最も残念なところである。そこで、②がここに来て音質の改善が高度な技術でかなり為し得てきたと言うことで注目された。

 そこで、この三録音を如何に組み上げるかによってこの日の実質2時間30分のショーを完璧再現出来ると、幾多の試みがなされたが、根本的にそこには甘さがあって、イマイチというのが偽らざる実情であった。

 しかしいずれの時代にも頑張るところが出現する。今回のこの「Sigma」においては、この三つの選び抜かれた最良のソースを使って、音質は勿論、演奏内容にも忠実にハイレベルな位置を目指して作り上げたのである。

 

(究極の「DEFINITIVE EDITION」の内容)

 この注目のSigmaの「DEFINITIVE EDITION」においては、まず上のTracklistにみるDisc1の「第一部」は、音源は最高音質の「① Recorder 1」をベースに仕上げている。冒頭は「③   Recorder 3」 を使って、ライブ開始までの臨場感と観衆の興奮を伝え、"Spek to me"は「③   Recorder 3」を使い、続く"Breathe"は最高音質の「① Recorder 1」が登場すると言った流れで、冒頭のロジャーのベースの迫力と続くギルモアのギターのメロディーのリアル感はスタジオ版と違って圧巻である。
 "Time"においては、欠落のあった3:36-56の間は完全に補填されて完璧な姿となっている。"Eclipse"も後半知り切れ部分を「③Recorder 3」で補填して完璧な姿に。
 チューニングの部分も「③Recorder 3」を使って臨場感ありだ。"Careful with That Axe, Eugene"も冒頭のロジャーの曲紹介などが入っていてライブそのものの形が出来ている。
 後半のDisc2の「第二部」は、「①Recorder 1」の音源が無いため「②Recorder 2」をベースにして曲間、チューニングなどは「③Recorder 3」で補填している。ここでもおなじみの"Echoes" は尻切れから完全型となり、"Set The Controls for The Heart of The Sun"も、中間部の当時の彼らの得意のミステリアスな世界が浮き彫りになっている。終演部も十分当時のライブの様を聴かせてくれる。とにかくその補填の技術が違和感なくスムーズに移行させていて、このあたりの技術の高さも感ずるところだ。

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 こうして、50年前のライブを完璧なものにとエネルギーを注ぐと言うことは、今の若き人達にも聴く方からとしての要求があり、そしてそこにはレーベルの意地と努力がこうして答えるというコレクター・エディションの姿なのだ。70年代のピンク・フロイドの歴史的価値というのは今だに失せていないどころか、まだまだ探求が盛んになっている。
 こんなマニアアックな道は、究極ファンが支えているわけで、1960-1970年代のロックの潮流は恐ろしい。いずれにしてもこの状況みるにつけ、これを喜んで聴いて感動している私も何なんだろうか・・・と。

(評価)
□ 内容・演奏  90/100
□ 録音     80/100 (歴史的なコレクターものBootlegとしての評価)

(参考視聴) 当時のこの名盤はLPであり、スクラッチ・ノイズが入っている (後にTSPのCDでは完全に改良された)

 

*

 

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2020年7月18日 (土)

ロレンツォ・コミノーリ、ロベルト・オルサー Lorenzo Cominoli, Roberto Olzer 「Timeline」

ヨーロッパの伝統の中から生まれた叙情的な耽美な世界はここにあり

<Jazz>

Lorenzo Cominoli, Roberto Olzer 「Timeline」
abeat for Jazz / Italy / ABJZ 218 / 2020

Timeline

Lorenzo Cominoli (guitar)
Roberto Olzer (piano)

Recorded at Artesuono Recording Studio, Cavalicco , Itaria , Sept. 30, 2019
engineered by Stefano Amerio

 イタリアの今や油の乗った日本で人気のピアニスト・ロベルト・オルサー(Roberto Olzer下左)は、ここでも既に何回か登場してきたわけだが、今回は、ギターのロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli下右)とのデュオと言うことで注目のアルバムがリリースされた。これはイタリアの中堅叙情派という世界であって私としては見逃せない。更にそこにステファノ・アメリオのレコーディンク・エンジニアとくるからたまりませんね。又、ロベルト・オルサーが弾くピアノはイタリアの誇るFAZIOLI GRAND PIANO F278 MKⅢ と、音にうるさい人にも注目されるところである。
・・・と、言うことで早速聴いたという処です。

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 (Tracklist)

1. Bibo No Aozora (Ryuichi Sakamoto)
2. Blue Whale (Lorenzo Cominoli)
3. Dance Of Moroccan Veil (Garrison Fewell)
4. Atlantis (Roberto Olzer)
5. Timeless Part I (John Abercrombie)
6. Timeless Part II (John Abercrombie)
7. The Dolphin Jump (Lorenzo Cominoli)
8. Novembre (Roberto Olzer)
9. Blott En Dag (Oscar Ahnfelt)


  聴いたことのあるメロディー、坂本龍一のM1.”Bibo No Aozora 美貌の青空”からスタートする。ここにはしっとりと抑制の効いたエレガントなギターとピアノの調べが流れてくる。
 それは、コミノーリの曲M2."Blue Whale"になって更に瑞々しく流麗なメランコリックな美しいメロディーが情緒豊かな世界を築く。ピアノとギターが交互に旋律部を担当し、お互いがバックも担当してデュオの味の魅力を放つ。それはM3."Dance Of Moroccan Veil"、M4." Atlantis "になって、旋律の性質が変わるも基本的には静謐な雰囲気を作り耽美な世界を演ずるところは変わりは無い。


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  しかしこのまま進行するのかと思いきや、M5."Timeless Part I " になって、彼らの若き世代からの積み重ねの世界が顔を出す。ちょっとダークさのある妖しく不穏なミステリアスな音をギターが響かせ、ピアノが後押ししてちょっとした異世界を浮遊するメロディーを流す。
ある意ではスリリングな世界で、インタープレイの妙も演ずる。ここに彼らの単なる美旋律に終わらないところが聴きどころ。
 そしてM6."Timeless Part II"に流れ、コンテンポラリーな世界は落ち着きのある世界に復帰。
 M7."The Dolphin Jump "では珍しく明るい世界を演じ、M8."Novembre "で、再び繊細にして優雅な中に、どこかオルサーの哀感のあるピアノの調べで叙情的美世界に導くのである。

 まあ若干の変化は見せたとはいえ、メロディアスな叙情的世界をエレガントな感覚で描いたアルバムであり、もう少しダイナミックな面もあっても良かったかとも思うが、まさに伝統あるヨーロッパの耽美な世界はここにありと言ったアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    85/100

(視聴)

*

 

 

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2020年7月14日 (火)

ケリー・ジョンソン Kelley Johnson 「SOMETHING GOOD」

実力派女性ジャズ・ヴォーカリストの深い感情表現が見事だ

 

<Jazz>

Kelley Johnson 「SOMETHING GOOD」
OA2 Eecords / US / OA2 22173 / 2019

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Kelley Johnson (vo)
John Hansen (p)
Michael Glynn (b)
Kendrick Scott (ds)
Jay Thomas (ts on 1, ss on 4, tp on 8)

 これはアメリカの実力派女性ジャズヴォーカリスト:ケリー・ジョンソンKelley Johnsonの最近作。
 ピアノトリオ中心のサポートによる本格的なジャズ・ヴォーカルが聴ける。なかなかムーディーかつエレガンスに歌い上げるので評価は良い。それも大学でも教育者として活動していると言うだけあって王道のジャズを展開。3曲にJay Thomasがテナー・サックス等で参加して色をつけている。

(Tracklist)

1. Anyone Can Whistle
2. Goodbye To Love
3. You Do Something To Me
4. Lullaby of Birdland
5. Let’s Do It
6. Some Other
7. Tip Toe /
8. Unforgettable
9. You For Me
10. Something Good

   彼女に関しては、キャリアがあるにも関わらず、このアルバムが実は私にとっては初物であった。そして印象としては、なかなかソフトにして筋の通った生きの良さとともに、大人の幅の広さが感じられるヴォーカル、それはジャズとしてのポイントを押さえた安定感抜群といったところにある。
 しかも、その選曲がなんともマニヤックである。それはポピュラーなところを狙うのでなく、おそらく彼女のものとして描くアレンジに向くか向かないかで選び抜き、そこにトリオ演奏もいかに生かせるかというところまで配慮しての選曲とみた。

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 カーペンターズのM2."Goodbye To Love(忘れられない)"も、こうジャズに変化するのかと驚かされるし、彼女のジャズ・ヴォーカルものに一変しつつ、後半にはトリオのジャズ演奏に預けたりと充実感ある。
149  M3."You Do Something To Me "のコール・ポーターの曲を聴いても、このケリー・ジョンソンとピアニストのジョン・ハンセン(→)のコンビによる編曲が更に幅広いジャズの味を作り上げるに貢献していると想像する。聴きなれたジョージ・シァリングのM4." Lullaby of Birdland "なども登場するが、その変化も恐れ入る。ここまで本格的ジャズ・アルバムに仕上げた実力は相当なものとみる。
 いずれにせよ、彼女の歌声の魅力も大きい。やや抑えてのアンニュイなナイト・ムードを作り上げての世界が、如何にもジャズ向きなんですね、M8."Unforgettable"では、ゲストのジェイ・トーマスのミュートを効かしたトランペットとの協演で歌い上げるが、そこに深い感情が感じられその相性の良さがお見事。
 やはりアルバム・タイトル曲M10."Something Good"は、演奏陣の安定感とその不安ないヴォーカルの完成度の高さに聴いていても気持ちが良い。

  まあ女性ヴォーカルものというのは、後は声の質や雰囲気等に感覚的に聴く方に合うかどうかですね。私の場合は70%位はOKでした。 
 このアルバムはそれぞれの曲が単に聴き慣れたものの再現でないだけに、キャリア十分のトリオの演奏とともに彼女のヴォーカルをこれから何回と聴いて味わえる楽しみもある。

(評価)
▢ 編曲・演奏・歌   90/100
▢ 録音        85/100

(視聴)  

"Lullaby of Birdland"

*
"Anyone Can Whistle"

 

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2020年7月10日 (金)

ディナ・ディローズ Dena DeRose 「Ode To The Road」

叙情性と風格のある円熟ヴォーカルの本格的ジャズ・アルバム

<Jazz>

Dena DeRose 「Ode To The Road」
HIGH NOTE / US / HCD 7323 / 2020

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Dena DeRose (vocal, piano)
Martin Wind (bass)
Matt Wilson (drums)
Sheila Jordan (vocal on 04, 06)
Houston Person (tenor saxophone on 07, 11)
Jeremy Pelt (trumpet on 02, 08)

2019年10月1&2日ニュージャージー州ティーネックのTeaneck Sound録音

 

  ピアノ弾き語りの、もうベテラン組に入る私の注目女性歌手ディーナ・ディローズ(1966年ニューヨーク州ビンガムトン生まれで今年54歳)の、前作『United』(HCD7279/2016)以来の4年ぶりのニュー・アルバムだ。なんか非常に久しぶりって感じで聴いている。
 今作もマーティン・ウィンド(b)&マット・ウィルソン(ds)とのトリオ作品だが、シーラ・ジョーダン(vo)、ヒューストン・パーソン(ts)、ジェレミー・ペルト(tp)というゲスト陣を迎えて本格的ジャズ・ヴォーカル・アルバム。
 彼女の演ずるは、NYジャズそのものだが、現在はオーストリアに住んでいてグラーツ音楽大学で教鞭をとっているという。そしてNYには頻繁に戻って活動しているという生活のようだ。

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(Tracklist)

01. Ode To The Road
02. Nothing Like You
03. Don't Ask Why
04. All God's Chillun Got Rhythm / Little Willie Leaps
05. That Second Look
06. Small Day Tomorrow
07. The Way We Were
08. Cross Me Off Your List
09. I Have The Feeling I've Been Here Before
10. A Tip Of The Hat
11. The Days Of Wine And Roses

 

  スタートはアルバム・タイトル曲M1."Ode To The Road"、ピアノ・トリオのバックに堂々の彼女のヴォーカルは、風格すら感ずるダイナミックスさとパッションある躍動感はジャズそのもので、安心してリリカルなハード・パップの世界に身を寄せて聴くことの出来る世界だ。
  そしてM3."Don't Ask Why" 、M6."Small Day Tomorrow"のスロー・ナンバーになると、その叙情性と円熟感あるヴォーカルにうっとりというところ。私はバラード好きであって、このテンダーであるにも関わらずブルージーな情熱の世界を演ずる彼女の世界は貴重である。
 M7."The Way We Were"は、ヒューストン・パーソンのテナー・サックスが加わって、更にスロー・ナンバーを朗々と歌い上げてお見事。
 M8."Cross Me Off Your List"は、今度はジェレミー・ペルトのトランペットが加わって軽快な展開に快活スウィンギン・ジャズ。
   M9."I Have The Feeling I've Been Here Before"のバラードは、説得力十分。
 締めくくりのM11."The Days Of Wine And Roses"は、ミディアム・テンポのトリオ演奏とパーソンのテナー・サックスも快感。

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 彼女はピアニストであり"弾き語り"だけあって、メロディーを十分意識しての歌詞に味付けと叙情性を描いている。その様は風格のヴォーカルでありお見事だ。中音域を中心としての歌声には温かみもあって細かいニュアンスをじっくり訴えてくれる。そして躍動感あるスウィンギーな曲にはドラマティックにパンチ力も備わっていてパッションを感じ、文句の言いようのない歌世界だ。
 もともとの彼女のピアノ・プレイも文句なく快調に流れて快適だ。
 又、このアルバムでのゲストのシーラ・ジョーダンの90歳の若々しいヴォーカルには驚かされた。更にゲスト陣も奮戦していて良いアルバムに仕上げられている。久々の本格ジャズ・ヴォーカル・アルバムを聴いた思いである。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌  90/100
□ 録音       85/100

(試聴)

 

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2020年7月 6日 (月)

ブラッド・メルドー Brad Mehldau 「Concert in Hannover 2020」

オーケストラとの圧巻の協演による・・・
メルドーの欧州伝統クラシックへの挑戦 (歴史的貴重盤登場)

<Classic>

Brad Mehldau,piano
Clark Rundell, conductor NDR Radiophilharmonie
「Concert in Hannover 2020」
HEADLESS HAWK / HHCD-20703 / 2020

Hannover2020

Bm1  ここに来て、コロナ渦への心象のアルバム『Suite:April2020』、そして先般の聴く方はあまり気合いが入らなかったアルバム『Finding Gabriel』と違って、本格的ジャズ・アルバム『Round Again』と発売が続くフラッド・メルドー(→)だが、今年2020年の一月に、ドイツにてのメルドーの古典派からロマン派音楽のクラーク・ランデル指揮によるNDRラジオフィルハーモニーとの共演ライブの模様を収録した最新ライブ盤がコレクター相手にリリースされている。
 つまり今やジャズ・ピアニスト世界ナンバー1とまで言われるブラッド・メルドーの驚きのヨーロッパ伝統クラシック音楽への挑戦だ。考えてみれば、2年前にはアルバム『アフターバッハ』では、バッハ曲のクラシック演奏に加えて、それをイメージしての彼自身のオリジナル曲を展開したわけで、クラシック・ファンにも驚きを持って歓迎されたわけで、そんなことから、今回のドイツでのこんな企画もさもありなんと思うのである。
 このコレクター・アルバムは、音質も期待以上に良好で、メルドー・ファンにとっては彼を語るには是非必要で内緒に持っていたい貴重盤になりそうだ。

 

(Tracklist)

1.Prelude No.10 In E Minor(The Well-Tempered ClavierBbook I), BWV 855 7:50
        プレリュードとE短調フーガ第10号「よりよく:強化クラヴィエI」BWV 855
2.Concerto For Piano And Orchestra 1st Movement      14:17
3.Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement     12:12
4.Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement      12:30
        プレリュードBの後のプレリュード 10の短調
       「フーガの芸術」BWV 1080から:コントラプンクトゥスXIX
        ヨハンセバスチャンバッハ/アントンウェーバーン
       「ミュージカルの犠牲者」BWV 1079/5から:フーガ(2nd Ricercata)

(Bonus Track) ライブ・アット・コンサートホール、ハノーファー、ドイツ 01/31/2020

5.West Coast Blues  /  Brad Mehldau Trio

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Rundell100w_20200705162301   やっぱりスタートは、バッハの楽曲「プレリュードとE短調フーガ第10号「よりよく:強化クラヴィエI」BWV 855」からで、クラークランデル(→)の指揮によるこのオーケストラ(NDR-Radiophilharmonie 右下)にメルドーのピアノが融合というか協演というか素晴らしい刺激的演奏が展開する。しかもこのアルバムはコレクターものではあるが、放送音源を収録しているもので、所謂オーディエンス録音モノとは異なり、プロ収録でクリアな迫力のある音が聴ける。
 パターンはピアノ協奏曲スタイルであって、この録音はオーケストラ自身のそれぞれの音の分離もよく、更にメルドーのピアノは中央にはっきりクリアーに聴ける録音となっていてファンにはたまらない。

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 M3."Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement"は、素晴らしい勢いを描いて演奏され展開するが、管楽器群の高揚をメルドーのピアノがそれをきちっとまとめ上げるが如く響き渡り、それを受け手のストリングスの流れが美しい。普段のジャズの響きとは全く異なったメルドーのピアノ迫力の音に圧倒される。一部現代音楽的展開もみせるところが、なんとメルドーのピアノによってリードしてゆくところが快感。ちょっとショスタコーヴィッチを連想する演奏にびっくり。
   M4."Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement"は、ストリングスのうねりが納まると、ほぼソロのパターンでピアノがやや強めの打鍵音でゆったりしたテンポで響き次第に落ち着く中にホルンが新しい展開を、そして再びストリングスの美しい合奏とコントラバスのひびき、ハープの美音、それを受けてのメルドーの転がるようなピアノの響きを示しつつも次第に落ち着いたメロディーに繋がってゆく。
 こうゆうクラシック・スタイルの評価には何の術もない私であって、感想も至らないのだが、そこにみるメルドーのジャズにおける音との違いがくっきりとしてこれを一度はファンは聴いておくべき処だろう。
 
 なお、このアルバムには、ブラッド・メルドー・トリオが最近よく演奏する曲"West Coast Blues"がボーナス収録されている。こちらは録音はそう期待できないが、演奏の内容はそれなりに楽しい。

 2年前にリリースされた名作『アフター・バッハ』の成功により、クラシック畑からも絶賛を浴びたことで彼の多様なピアノ・スタイルは絶好調だ。今回、ドイツで行われたクラシック・ライブも彼にとっては更なる充実の一歩になることは間違いないところだ。

(評価)
□ 演奏 90/100 
□ 録音 85/100

(視聴)

 現在、このHannoverのライブ映像は、見当たらないので「アフターバッハ」を載せます

 

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2020年7月 3日 (金)

ジュリア・カニングハム Julia Cunningham 「SONGS FROM THE HARP」

ハープ奏者のエレガントな優しさ溢れるヴォーカル・アルバム


<Jazz>
Julia Cunningham 「SONGS FROM THE HARP」
Soul Harp Music / IMPORT / JC1901 / 2019

Songsfromtheharp

Harp & Vocals: Julia Cunningham
Piano: Miles Black
Violin & viola: Richard Moody
Trumpet: Miguelito Valdes
Guitar: Reuben Wier (tracks 1, 2, 4, 5, 10-12)
Adam Dobres (tracks 2, 7, 8, 10, 11)
Quinn Bachand (solos on tracks 1 & 4)
Joey Smith (track 13)
Bass: Joey Smith (tracks 1, 2, 4-6, 10, 12, 13, 15)
Joby Baker (tracks 3, 7, 8, 11)
Congas: Joby Baker
Drums: Kelby MacNayr

Recorded at Baker Stugios, Prospect Lake, BC, Canada

 カナダの美人ハープ奏者でありヴォーカリストであるジュリア・カニングハムが、変動的コンポ編成をバックに録音したアメリカン・スタンダードを中心としての作品。彼女はカナダのブリティッシュ・コロンビア州ヴィクトリアを拠点として活動を続けているという。
 ノスタルジックなムードで優しくエレガントなヴォーカルと彼女のハープ演奏も入ってのなかなか聴きやすいアルバムだ。

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(Tracklist)

1. Medley: Dream a Little Dream of Me & I’ve Got a Crush on You
2. Sunny Side of the Street
3. There’s a Small Hotel
4. Aged and Mellow Blues
5. God Bless the Child
6. My Romance
7. Besame Mucho
8. Bye Bye Blackbird
9. All I Do Is Dream of You
10. Pennies from Heaven
11. L-O-V-E
12. Boy from Ipanema
13. What the World Needs Now
14. Smile

  このハープ奏者がどのような経過でジャズ・ヴォーカリストとなったかは知らないのだが、非常に落ち着いた優しく優雅なジャズ・ヴォーカルを展開する。曲によっては得意のハープの演奏も入って、ジャズとしてはちょっと変わったタイプの味が出ている。
 このアルバムはジャズ特有の夜のムードとか、ちょっとした酒場のムードとかとは違った暗さは全くなく又哀愁という世界でもない。どちらかというと難しさのない自然体での心地よいエレガントな親近感たっぷりの世界を展開する。恐らく彼女はヴォーカルというよりはハープ演奏が主体であったと思われる若干素人っぽいヴォーカルもなかなか聴きどころというか、特別のところがないのが取り柄という面白い世界なのである。
   M7."Besame Mucho"はハープ演奏を主体にビオラも入ってインストでの演奏、久々にハープの良さも堪能した。
 14曲の中で最も長い曲がM6."My Romance"であり5分12秒だが、なかなかシットリとしたムードが漂って彼女の囁き様のヴォーカルで気持ちが休まる。M14."Smile"も同様だ。
 M9."All I Do Is Dream of You" 3分弱の短い曲だが、ハープ演奏に加えて最も彼女らしいやや夢のある展望の曲だ。
 M.11"L-O-V-E" 聴き慣れたこうゆう曲もなかなか軽快に無難にこなしている。

 しかしカナダは後から後から、女性・ジャズ・ウォーカリストが出てきて、ちょっとしたブームを感じますね。そんな中からの一枚だ。とにかく彼女は期待株。

(評価)
□ 選曲・歌     80/100
□   録音       80/100

(視聴)
   このアルバムの曲が見つからないので参考までに・・曲「Fragile」の彼女の演奏

 

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