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2020年7月 6日 (月)

ブラッド・メルドー Brad Mehldau 「Concert in Hannover 2020」

オーケストラとの圧巻の協演による・・・
メルドーの欧州伝統クラシックへの挑戦 (歴史的貴重盤登場)

<Classic>

Brad Mehldau,piano
Clark Rundell, conductor NDR Radiophilharmonie
「Concert in Hannover 2020」
HEADLESS HAWK / HHCD-20703 / 2020

Hannover2020

Bm1  ここに来て、コロナ渦への心象のアルバム『Suite:April2020』、そして先般の聴く方はあまり気合いが入らなかったアルバム『Finding Gabriel』と違って、本格的ジャズ・アルバム『Round Again』と発売が続くフラッド・メルドー(→)だが、今年2020年の一月に、ドイツにてのメルドーの古典派からロマン派音楽のクラーク・ランデル指揮によるNDRラジオフィルハーモニーとの共演ライブの模様を収録した最新ライブ盤がコレクター相手にリリースされている。
 つまり今やジャズ・ピアニスト世界ナンバー1とまで言われるブラッド・メルドーの驚きのヨーロッパ伝統クラシック音楽への挑戦だ。考えてみれば、2年前にはアルバム『アフターバッハ』では、バッハ曲のクラシック演奏に加えて、それをイメージしての彼自身のオリジナル曲を展開したわけで、クラシック・ファンにも驚きを持って歓迎されたわけで、そんなことから、今回のドイツでのこんな企画もさもありなんと思うのである。
 このコレクター・アルバムは、音質も期待以上に良好で、メルドー・ファンにとっては彼を語るには是非必要で内緒に持っていたい貴重盤になりそうだ。

 

(Tracklist)

1.Prelude No.10 In E Minor(The Well-Tempered Clavier, Book I), BWV 855 7:50
     「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 前奏曲とフーガ 第10番 ホ短調」   BWV 855
2.Concerto For Piano And Orchestra 1st Movement      14:17
3.Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement     12:12
4.Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement      12:30
        プレリュードBの後のプレリュード 10の短調
       「フーガの技法」BWV 1080から:コントラプンクトゥスXIX
        ヨハンセバスチャンバッハ/アントンヴェーベルン
       「音楽の捧げもの」BWV 1079/5から:フーガ(2nd Ricercata)

(Bonus Track) ライブ・アット・コンサートホール、ハノーファー、ドイツ 01/31/2020

5.West Coast Blues  /  Brad Mehldau Trio

Mehldau102_vvierspaltig_20200705162301

Rundell100w_20200705162301   やっぱりスタートは、バッハの楽曲「「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 前奏曲とフーガ 第10番 ホ短調」」からで、クラークランデル(→)の指揮によるこのオーケストラ(NDR-Radiophilharmonie 右下)にメルドーのピアノが融合というか協演というか素晴らしい刺激的演奏が展開する。しかもこのアルバムはコレクターものではあるが、放送音源を収録しているもので、所謂オーディエンス録音モノとは異なり、プロ収録でクリアな迫力のある音が聴ける。
 パターンはピアノ協奏曲スタイルであって、この録音はオーケストラ自身のそれぞれの音の分離もよく、更にメルドーのピアノは中央にはっきりクリアーに聴ける録音となっていてファンにはたまらない。

Radiophilharmonie206w_20200706171201

 M3."Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement"は、素晴らしい勢いを描いて演奏され展開するが、管楽器群の高揚をメルドーのピアノがそれをきちっとまとめ上げるが如く響き渡り、それを受け手のストリングスの流れが美しい。普段のジャズの響きとは全く異なったメルドーのピアノ迫力の音に圧倒される。一部現代音楽的展開もみせるところが、なんとメルドーのピアノによってリードしてゆくところが快感。ちょっとショスタコーヴィッチを連想する演奏にびっくり。
   M4."Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement"は、ストリングスのうねりが納まると、ほぼソロのパターンでピアノがやや強めの打鍵音でゆったりしたテンポで響き次第に落ち着く中にホルンが新しい展開を、そして再びストリングスの美しい合奏とコントラバスのひびき、ハープの美音、それを受けてのメルドーの転がるようなピアノの響きを示しつつも次第に落ち着いたメロディーに繋がってゆく。
 こうゆうクラシック・スタイルの評価には何の術もない私であって、感想も至らないのだが、そこにみるメルドーのジャズにおける音との違いがくっきりとしてこれを一度はファンは聴いておくべき処だろう。
 
 なお、このアルバムには、ブラッド・メルドー・トリオが最近よく演奏する曲"West Coast Blues"がボーナス収録されている。こちらは録音はそう期待できないが、演奏の内容はそれなりに楽しい。

 2年前にリリースされた名作『アフター・バッハ』の成功により、クラシック畑からも絶賛を浴びたことで彼の多様なピアノ・スタイルは絶好調だ。今回、ドイツで行われたクラシック・ライブも彼にとっては更なる充実の一歩になることは間違いないところだ。

(評価)
□ 演奏 90/100 
□ 録音 85/100

(視聴)

 現在、このHannoverのライブ映像は、見当たらないので「アフターバッハ」を載せます

 

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コメント

風呂井戸さま、これも素晴らしいアルバムそうですね。

私も『After Bach』は、高得点だったので、
聴けるといいといいなぁ、と、おもいます。
早く、どこかに音源があがるといいな。

『Suite:April202』の投稿で、トラバして良いものか、、
ちょっと、なやみますが、トラバをいただきましたので、トラバいたしますね!

https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-52b842.html#comments

投稿: Suzuck | 2020年7月 6日 (月) 17時59分

Suzuckさん
コメント、TB有り難う御座います。
コロナ渦の心象の世界『Suite:April2020』は、心になんか一休みできるところが良いですね。
しかし、メルドーの意欲的な展開のこのオーケストラとの協演は期待以上に迫力を感じました。彼はまだまだ発展するんでしょうね。凄いです。
メルドー様にかぎらず、又ご指導ください。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年7月 6日 (月) 19時38分

風呂井戸さん,こんにちは。

このブートレッグ,私も聞きました。メーカー違いでジャケは違いますが,ボートラ以外は内容は一緒だと思います。

私は今回の音楽については,若干微妙なレビューになってしまいましたが,ピアノ・コンチェルトであれば,もう少し楽章ごとに緩急をつけた方がいいように思いました。美しい音楽ではあるのですが,まだまだ進化の余地ありというところだと感じました。

ということで,風呂井戸さんとトーンが異なっているので恐縮ですが,当方記事のURLを貼り付けさせて頂きます。
https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2020/07/post-2828db.html

投稿: 中年音楽狂 | 2020年7月11日 (土) 12時09分

中年音楽狂さん・・・こんばんわ、コメントどうも有り難う御座います。
いっやーー、なかなか中年音楽狂さんぐらいのメルドーへの思い入れがあると、これでもまだまだ要求が出てくるんですね。
 私からすれば、選曲の構成でなく、ポイントはM3."3.Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement "ですね。ここでのオーケストラとピアノの駆け引きは、ジャズのインプロにおけるトリオないしカルテットのそれぞれの味が交錯する世界を、オーケストラとの間に展開させたメルドーに喝采を浴びせますね。なかなかここまで、ジャズ畑から入り込むのは至難の業だと評価しますがね。何度聴いてもお見事です。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年7月11日 (土) 22時11分

通りすがりのクラシック畑の人間です。メルドー、もうすぐ来日しますね。
さて、2年近く前の記事にこんな投稿をどうかと思いますが、より翻訳についてコメントいたします。


> 1.Prelude No.10 In E Minor(The Well-Tempered ClavierBbook I), BWV 855 7:50
> プレリュードとE短調フーガ第10号「よりよく:強化クラヴィエI」BWV 855

まず "ClavierBbook" は Clavier Book の typo ですね。
そして、一般に、音楽用語の "well-tempered" は「平均律」と訳され、バッハの作品名である "The Well-Tempered Clavier" は「平均律クラヴィーア」や「平均律クラヴィーア曲集」などと訳されます。
この作品集は全部で2巻書かれましたが、"Book 1" はそのうちの第1巻である、ということをいっています。
「プレリュードとE短調フーガ第10号」の部分は、普通は「前奏曲 (プレリュード) とフーガ 第10番 ホ短調」のように表記されることが多いと思います。
まとめると、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 前奏曲とフーガ 第10番 ホ短調」というような表記が適切だと考えます。


> 「フーガの芸術」BWV 1080から:コントラプンクトゥスXIX

The Art of Fugue (原題: Die Kunst der Fuge) は「フーガの技法」と訳されます。


> アントンウェーバーン

Webern は通常「ウェーベルン」や「ヴェーベルン」などと表記されます。


> 「ミュージカルの犠牲者」BWV 1079/5から:フーガ(2nd Ricercata)

"The Musical Offering" (原題: Das Musikalische Opfer) は通常「音楽の捧げもの」と訳されます。

投稿: | 2022年6月25日 (土) 10時10分

「2022年6月25日のコメント」 お名前がありませんが、クラシック畑の方から頂き有難うございました。
 この私のCD-Tracklistは、このCDの紹介ものの記載をここに取り上げさせていただいたものでして、私のクラシック畑の知識のなさから、このような記載になりまして大変失礼しました。ご説明をお聞きして、おおそうですねと納得し感謝しております。(CDにはこの日本語表記はありませんでした)
 このような表記は常識的なルールに従うべきものでしょうね、私の記載間違いもありますので、この際、修正させていただきます。
 私は、クラシック畑のミュージシャンが一歩発展させてジャズの分野でも活躍してくれる事は大いに歓迎しています(勿論、逆も)。私がもともとジャズを聴くようになったのも、50年も前のフランスのジャック・ルーシェのプレイ・バッハからでした。
 これからもミュージックの発展はいろいろと紆余曲折があるかもしれませんが、新しい挑戦は評価したいと思っています。

投稿: photofloyd | 2022年6月25日 (土) 15時01分

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