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2020年8月29日 (土)

エリチン・シリノフ Elchin Shirinov Trio 「Waiting」

民族性の高いエキゾチックな中のスピリチャルなプレイ

<Jazz>

Elchin Shirinov Trio 「Waiting」
SOMETHIN'COOL / JPN /  SCOL-1040 / 2020

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Elchin Shirinov (piano)
Andrea Di Biase (double bass)
Dave Hamblett (drums)

 

  ベースのリーダであるアヴィシャイ・コーエン・トリオの近作アルバム『Arvoles』(RAZDAZ Records / RD4619/2019)のピアニストとして注目さたアゼルバイジャン出身のピアニスト:エルチン・シリノフ(1982年生れ)の彼名義のトリオ作品の日本盤の登場。
 アヴィシャイ・コーエンはイスラエルのミュージシャンで私はどちらかというとファンである。それはイスラエル由来の哀愁漂う美旋律が魅力。そのムードに惹かれてトリオ演奏が好きなのだが、実は彼のこの近作『Arvoles』は、ちょっと民族色が強くなって、それ以前の作品と少々異質になったもので、あまり諸手を挙げて歓迎出来なかったアルバムだった。それでもこのアルバムのピアニストが、自己名義ではどのような世界を構築していたのかというところは興味津々であった。

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 本盤は、トリオによる配信オンリーだった2018年作品で、CD版はエルチン・シリノフ本人の自主製作によるライヴ会場での手売りのみであったという。そんな一般流通はしていなかったものの日本国内盤CD化したもの。アゼルバイシャンというのは、旧ソ連に属していた国であるが、ソ連解体後アルメニアとの民族紛争を経て現在共和国として独立していて、カスピ海に接して居入るが、東ヨーッパとしても存在している。天然資源の油田が産業の核で、日本も経済協力をしており親日国。

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(Tracklist)

1. Sara Gellin
2. Waiting*
3. Durna
4. Missing*
5. Waltz From Seven Beauties Ballet
6. Muse*
7. O Olmasin Bu Olsun

(*印: シリノフのオリジナル曲)

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 トリオのベース、ドラムスはロンドンからの迎えてのメンバー。彼は英国との関係が深く、おそらく現在もロンドン在住と思われる。このアルバムはシリノフの過去の活動からの集大成として作られたモノとみてよい。そんなところからも彼を知るにはよいアルバムだ。

 先ずの特色は、M1."Sara Gellin" 、M3."Durna"のように、アゼルヴァイジャンの民謡を取上げていて、民族音楽の性質が濃い。この点はアヴィシャイ・コーエンの『Alvores』と似ている。なかなかそこにはエキゾティックなトラディッショナルのフォーキーな民族舞踏と云うべき趣を醸し出す。そしてリズムは非常にバライティーに富んでの複雑な面を持っている。そのあたりは聴いていてちょっと目(耳)を離せない。
 しかしこのアルバムでは彼のオリジナルが三曲あるが、M4."Missing"が最も民族的世界から離れての、美旋律が顔が出すしっとりムードの曲で、私にとっては一番聴くに気持ちの良い曲であった。

 Elchinhometrw 彼のこのようなアゼルヴァイジャンのジャズをムガームジャズと言うらしいが、このエキゾチックさが新鮮で、しかもそこに聴き慣れないテクニックが異国情緒たっぷりの中のアドリブとして攻めてくるところがスリリングであり、それと同時に民族的哀感が同席していて、如何にも聴く方にとっては新鮮なんですね。

 しかし私個人的には、ちょっとこの方向には馴染めないところがあって、若干複雑な気持ちである。あまり無理して聴くこともないので、M4あたりで納得しておこうと思うのである。

(参考) ムガームジャズ(Mugham Jazz, Azerbaijani Jazz)とは、ペルシャの古典音楽をルーツとする独特の旋法が特徴的なアゼルバイジャンの民俗音楽であるムガームと、アメリカ生まれの即興音楽ジャズが、1960年代頃より東欧一のジャズの都として栄えたバクーにて融合し生まれた音楽のジャンル。

 

(評価)
□ 曲・演奏   80/100
□ 録音     75/100

(視聴)

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2020年8月24日 (月)

マッシモ・ファラオ・トリオ Massimo Faraò Trio 「Like An Elegant Wine」

ストリングス・オーケストラをバックに、あくまでも優雅に美しく


<Jazz>

Massimo Faraò Trio, Accademia Arrigoni's Strings Orchestra
「Like An Elegant Wine エレガントなワインのように」
VENUS RECORDS / JPN / VHCD-1278 / 2020

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マッシモ・ファラオ MASSIMO FARAO (piano)
ニコラ・バルボン NICOLA BARBON (bass)
ボボ・ファッキネネィック BOBO FACCHINETTI (drums)

with Accademia Arrigoni's Strings Orchestra
Conducted by Bill Cunliffe

2020年2月15日,16日 Magister Recording Area Studios,Preganziol,Italy 録音
Sound Engineers Andrea Valfre’ and Alessandro Taricco
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara
Produced by Tetsuo Hara

  このところ Venus Records の看板になりつつあるあのイタリアのピアニスト・マッシモ・ファラオ( 1965- )が、とにかく美しく優美にと、繊細にしてメロデックな演奏を、ストリングス・オーケストラをバックに優しく演ずるアルバムの登場。

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(Tracklist)

1.ラブ・ケイム・オン・スティールシー・フィンガース
2.Io Che Amo Solo Te 君だけを愛して
3.オールダー・マン・イズ・ライク・アン・エレガント・ワイン
4.Days Of Wine And Roses 酒とバラの日々
5.ホエン・サマー・カムズ
6.ニアネス・オブ・ユー
7.ティズ・オータム
8.イージー・リビング
9.スプリング・ウィル・ビー・ア・リトル・レイト・ディス・イヤー

 とにかく全編優美なストリングス・オーケストラとマッシモ・ファラオ・トリオが輪をかけて優美に演奏するアルバム。そんな訳でジャズ感覚は少なく、ポピュラー・ミュージック感覚で聴いてゆくアルバムだ。
 とにかく、あのジャズの'50-'60年代の典型的なハード・バッブ・スタイルを継承するがごとくのマッシモ・ファラオのピアノ演奏も、ここではただただメロディーの美しさに絞っての演奏である。そんなために曲M1、M2、M3と、私には殆ど同じ曲の流れかと思うぐらいに変化は無くただただ美しいのである。
 M4."酒とバラの日々" になってヘンリー・マンシーニーの耳慣れた曲が現れて、成る程こんな具合に仕上げるのかと、その優美さの引き出しに納得してしまうのだ。続くM5."When Summer Comes" なんかは、オスカー・ピータンソンの美的ピアノを更に美しくといった世界に溺れてしまう。
 その後も、全く変化無しに映画音楽などを取上げて、全編ピアノの音も美しく、ベース、ドラムス陣もこれといっての特徴も出すところもなくストリナグスに押されて流れて言ってしまう。
 時には、こうした疲れないバックグラウンド・ミュージック的な世界も良いのかなぁーと思いながら聴いてしまったアルバムだった。それにしても途中で一つぐらいは暴れて欲しかったが、いやいやそれをしないで通したマッシモに取り敢えず敬意を表しておく。

(評価)
□ 演奏 :    85/100
□   録音 :    85/100

(視聴)    関連映像がないので・・・参考までにトリオ演奏を

 

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2020年8月20日 (木)

キンバ・グリフィス・セプテット Kimba Griffith Septet 「EACH TIME THE FIRST TIME」

ヴォーカル・演奏=寺島靖国お気に入りの二流ジャズ

<Jazz>

Kimba Griffith Septet 「EACH TIME THE FIRST TIME」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1087 / 2020

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Kimba Griffith (vocal)
Adrian Perger (trumpet, arrangement)
Ben Gillespie (trombone)
Gideon Brazil (tenor saxophone, flute)
Ryan Griffith (guitar)
Mark Elton (bass)
Sam Bates (drums)

 ジャズCD界も今や低調の中で、何となく頑張っている寺島靖国によるTERASHIMA RECORDS からの一枚。いつも通りそろそろリリースされるのが、『For Jazz Audio Fans Only Vol.13』(2020年版)であるが、その前にちょっとコロナ渦の中、Stay Homeで暇つぶしに聴いてみたという代物。
 全く聴いたことの無いオーストラリアの歌手のキンバ・グリフィス・セプテット Kimba Griffith Septet、何が特徴なのかも知らない。ライナー・ノーツの寺島靖国によると、オーストラリア、メルボルンでの生れで、現在もそこのジャズ・クラブで活躍とか、いずれにしても気に入って売り物になるだろうと、日本発売に踏み切ったのだろう。彼女に関しては詳しい紹介もないので解らないが、人々の終末期のケアに携わる仕事もしているとか、ちょっと変わった存在でもある。

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(Tracklist)
01. Too Close For Comfort
02. From This Moment On
03. Getting To Be A Habit
04. A Good Man Is A Seldom Thing
05. That's All
06. The Carioca
07. Comes Love
08. Old Devil Moon
09. How Long Has This Been Going On?
10. Dream Dancing
11. Sickness & Health
12. The Endless Queue (日本限定ボーナストラック!)

 とにかく変なアルバムです。何を歌おうとしているか解らないジャズ・アルバム。そうジャズ・アルバムに仕上げようとして訳がわからなくなったと言った方が良いのか。
   前半は、ホーンが頑張って華々しいビック・バンドっぽいバック、彼女のヴォーカルが少々音程を外しての健闘。このパターンで進行する。
 最後まで聴くと、この歌手のほんとの目指すところはこうしたジャズじゃ無いのだろうと思ってしまった。M4."A Good Man Is A Seldom Thing"はスロー・バラード調だが、このパターンはどうかと聴くと、比較的素直で変な技巧は無くて良いのだが、どうも情感という処では描くところが薄い。
 寺島靖国もこれにぞっこんというなら彼のジャズ心はどこに焦点を当てて、しかもお気に入りになったのだろうか。ちょっと疑問に思うのである。

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 あるところには、なんと「澄みきった清潔感や透徹さと、落ち着いた渋味や陰影っぽさ、がナチュラルに一体化した、中音域の折り目正しく涼やかな美声(ちょっとハスキーに掠れるところもある)による、中々のハイテクニシャンでスウィンギン・グルーヴィーなノリにノッた躍動的側面もあるものの、基本はあくまで歌詞とメロディーを大切にした優しい真心溢れる、自然体で語りかけてくるような抒情指向の柔和な演唱」と書かれているものがある。・・・ほんとかなぁと思いつつ聴いているのだが、確かに癖の無い歌声、力みとか、過度の装飾の無いところは好感持てる。しかしそうはいっても歌の情感、テクニックなどちょっと高度とは言えない、むしろ平坦で一生懸命歌っているといった感じ。ジャズ心という一つの世界はあまり感じない。
 
J00483_0095w  又バックの演奏陣も曲の情感が余り感じられなく、一生懸命演奏しているといった感じ、そしてちょっとサックス、トランペット、トロンボーン等がうるさい印象で、二流クラブのジャズ演奏かと思ってしまう。
 曲の出来は、寺島靖国推薦のM6."The Carioca"と、私的にはM7."Comes Love"、そしてM9." How Long Has This Been Going On?"のように静かなギターをバックにしっとり歌うというのが、強いて言えばこのアルバムの中では聴きどころなんでしょうね(最後のフォーン・セクションは要らない)。
 ところが、M11."Sickness & Health"となると、一変してトラディッショナルなフォークっぽい曲で、バッキング・ヴォーカルが入ってガラッとムードが変わって、異色な雰囲気。ところが彼女のヴォーカルはこれには合うんですね。おそらく彼女はこのパターンなんじゃないだろうか。つまりスウィング・ジャズにはどうも向いていないのではと・・・。
 オマケのM12."The Endless Queue " は、単なるポピュラー・ソングで、このアルバムの前半とは別物でちょっと不自然ある。

 私は一枚のアルバムを通して聴く方なので、このようなアルバムを敢えてジャズ・ヴォーカルものとしてリリースしたところに、ちょっと疑問を感じつつ聴いたアルバムだった。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  70/100
□ 録音      75/100

(視聴)
 

 

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2020年8月15日 (土)

ダーリオ・カルノヴァーレDario Carnovale 「I Remember You」

絶妙のスウィング感でバランスのとれた緩急メリハリある抒情派作品

<Jazz>

Dario Carnovale / Alfred Kramer / Lorenzo Conte 
「I Remember You」
FONE / EU / SACD173 / 2019

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Dario Carnovale ダーリオ・カルノヴァーレ (piano)
Lorenzo Conte ロレンツォ・コンテ (bass except 4)
Alfred Kramer アルフレッド・クラーマー (drums except 4)

2016年10月イタリア-イル・カステッロ、セミフォンテ・スコト宮殿(の地下)録音

  イタリアはシチリアの州都パレルモは数年前に訪れたことのある懐かしい美しい街だが、ここはシチリア島の玄関口と交通の要所ということで、なかなかの大都市。しかも教会や宮殿が立派で、ギリシャ、アラブ、フランス、スペインなどが混じりあっての独特の文化が生まれている。更に余談だが、ここのマッシモ劇場は、映画「ゴッド・ファーザー」で有名になったところ。
Dc3    このパレルモ出身の俊英ピアニストに、ダーリオ・カルノヴァーレ (→) がいて、彼のピアノ・トリオ作品を一度しっかり聴きたいと思っていた時に、このSACD盤が目に留まり早速聴いてみたというところだ。高音質に定評のあるイタリア「foneレーベル」のセミフォンテ・スコト宮殿地下録音プロジェクトの一つとして2016年10月に吹き込まれ、2019年にリリースされたアルバムである。
 このカルノヴァーレは、2年ほど前にイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に活動の拠点を移しているそうだが、そんな彼が、高音質レーベルで知られるFone Jazzに、アルフレッド・クラマー(ds)、ロレンツォ・コンテ(b)というトリオでスタンダード中心に録音したスペシャル・セッション版である。

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(Tracklist)

1. I Remember You (Victor Schertzinger) 5:41
2. Madrigale (Carnovale) 4:00
3. I'll Close My Eyes (Reid - Kaie) 7:38
4. Alone (Carnovale) 2:25 (solo piano)
5. What Is This Thing Called Love (Cole Porter) 5:55
6. Emersion (Carnovale) 8:19
7. Ckc (Carnovale - Conte - Kramer) 6:27

Lc1_20200814212401  しかし、メロディアスにしてスインギーな展開にアドリブの効いた流れ、そして時々適度にイタリア独特の美旋律が流れ、しかし時にハードなダイナミックな展開と多彩多芸。特にM4."Alone"のカルノヴァーレのピアノ・ソロでは、やや前衛がかったオルタナティブな世界も見せる。
 私にとっては、なんと言ってもM3."I'll Close My Eyes" いわゆる美旋律のピアノを中心に描くピアノトリオの世界が、何と言えない心地よさだ。ベースそしてシンバルも手頃の余韻を持って響きそれは快適。落ち着いた夜にぴったり。
 しかし、その他の曲で、特にスタートのアルバム・タイトル曲M1."I Remember You"での、ここまで小気味のいい軽やかなスイング感を大切にしたリリカルなプレイを展開してみせるトリオも珍しい。これも彼らのキャリアの蓄積がそうさせるのであろうと思うが、力みの無い洗練された技巧派ジャズなのである。この軽妙さはジャズ心の極致である。
Ak2  M5."What Is This Thing Called Love"、これはドラムスの疾走から始まって迫真のインタープレイの展開、とにかく息詰まるスリル感たっぷりの生々しい演奏は凄絶で圧巻。この三人はこれをやらずには納まらないと言ったところか。
 M6."Emersion"のそれぞれの世界をそれぞれがアクロバティックに流れてゆき、そして演じてゆくうちにトリオとしての交錯そして統一感への世界は面白い。美的という処からは別物だが、これが又このトリオの味なのかも知れない。
 そして続く終曲 M7."CKC"は三者による作品。この"CKC"とは何かと思ったら、どうやら三人の頭文字だ。この曲には三者がクレジットされている。それは緻密に静とその世界の神秘性にも迫る情景に納得。そして次第に現実の世界に目覚めさせる。

 又、音質も極めて自然な録音で、さすがはFONE JAZZだけあってその心意気はSACD盤としてリリースされている。これは派手さで無く自然体を追った録音と行って良い。むしろかってのアナログのLP時代を思い起こさせる。
 とにかくトリオ・ジャズの楽しさ満載のアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     90/100

(参考視聴)

 

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2020年8月11日 (火)

キャロル・ウェルスマン Carol Welsman 「Dance with Me」

"キャロル、ラティーナを歌う"と・・・ラテン・ジャズ・ヴォーカル・アルバム

<Jazz>

Carol Welsman 「Dance with Me」
Justin Time Records / JPN / MZCF-1419 / 2020

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Carol Welsman キャロル・ウェルスマン (vocal, piano, produce)
Justo Almario ジュスト・アルマリオ (tenor saxophone, soprano saxophone, flute)
Rene Camacho ルネ・カマチョ (bass, background vocal)
Jimmy Branly ジミー・ブランリー (drums)
Joey de Leon ジョーイ・デ・レオン (conga, percussion, background vocal)
Juan Luis Guerra フアン・ルイス・ゲラ (guest vocal on 04)
Oscar Hernandez オスカー・ヘルナンデス (arrangement, produce)

200306_042atrw  カナダのベテラン歌姫キャロル・ウェルスマン(1960年カナダ・トロント生まれ) の、なんと「ラテンを歌う」というニューリリース盤。それも私は彼女自身の過去のアルバムでもラテンものはあまり印象に無いし、ピアノ弾き語りのジャズのイメージがあって、実はあまりラテンには合わない印象なんですね。
   以前ここで話題にした『ディス・イズ・キャロルThis is Carol - ラヴ・ソング20』(MUZAK Fab./MZCF1340/2016) がベスト・セラーとなって、日本でもおなじみの彼女だが、本人の話だと、ライブでラテンものを歌うと会場が楽しげに盛り上がると言うところから、ラテンものは従来から考えていたとのこと。
 満を持して作り上げたアルバムで、なかなかバックにはラテン・ジャズ界の雄オスカー・へルナンデス、そしてトロピカル・ラテンの至宝ドミニカ共和国1957年生れのファン・ルイス・ゲラ(1曲デュエットを展開)といったグラミー賞連中をはじめとするトップ・プレイヤー達が集まり、楽しく演ずるところは、ジャジーでゴージャスな明るいラテン・ワールドとなっている。

(Tracklist)

1.You and the Night and the Music 貴方と夜と音楽と
2.A Taste of Paradise
3.Femme Fatale (Amor Fugaz)
4.Dance With Me (Si Tu No Bailas Conmigo)
5.Time to Dance Cha Cha Cha (Ya Llego La Hora)
6.Yesterday (Como Fue)
7.Island Lullaby
8.I Think of You (Hoy Como Ayer)
9.I Won't Dance
10.Revelations
11.Yesterday I Heard the Rain (Esta tarde Vi Llover)

  とにかく難しいことは抜きにして楽しくラテン・ジャズ・ヴォーカルを楽しんでくださいと言ったスタートは、定番曲 M1."You and the Night and the Music 貴方と夜と音楽と"である。サックス、コンガが響いて明るく一気にラテン・ムードに。
 どちらかというと彼女のヴォーカルは、M2."A Taste of Paradise"のように、中・低音域の歌声が印象深い。
 私はこのM3."Femme Fatale"のようなスローな曲での彼女の味のほうが好きなのでこの曲は歓迎。
 いずれにしても英語で歌っているのは殆ど彼女の作詞らしく、そこまで気合いが入っている。
Juanluisguerra2017w  M4."Dance With Me"は、このアルバムで唯一のファン・ルイス・ゲラ(→)とのデュオ、彼のラテン・ヴォーカルがやっぱりラテン・ムードを盛り上げている。これがアルバム・タイトルになっているメイン曲。
 M5."Time to Dance Cha Cha Cha"バッキング・ヴォーカルと楽しいチャチヤチャだ。
 M6."Yesterday "は、楽天的ではない曲で、むしろ彼女らしい味がある。これもスロー・ナンバー。
 M7."Island Lullaby" 大人のラテン・リズムといった雰囲気で、このアルバムでは中核的曲仕上げ。
 
  まあ肩のこらない力みの無いラテン・ミュージック、バック演奏も南米の猛者連を含む強力な精鋭コンボ体制による本格的なラテン・アルバムと言うが、昔ながらのラテンもの演奏で新しいモノは無い。
 私的には、バラード・コンセプトっぽい語りかけるようなヴォーカルでリラクシング・ムーディーな M8."I Think of You "、 M11."Yesterday I Heard the Rain " あたりがお気に入りであった。

 ヴェテランの風格の彼女の味付けは、このアルバムにもちゃんと感じられ安心して聴いていられる。
 いずれにしても、ラテン特有のダンサブルな展開や、快調なテンポで明るい曲を織り交ぜてのアルバムで、ただでも暗いコロナ渦にあっては、気分転換に良いアルバムであった。

 (評価)
□ 曲・演奏・歌   80/100
□ 録音       80/100

(試聴)

 

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2020年8月 7日 (金)

[ カメラの話 ] 陽の強い夏ともなれば・・・KIYOHARA SOFT の世界

ソフト・フォーカスの魅力はフレアと光反射の滲みにあり・・・・??

 

  以前2014年に、ここで紹介したKIYOHARA SOFT レンズですが、このところの長い梅雨の曇天から明るい陽が射してきたとと同時に、暑さも忘れ思い出して取り出したレンズ。このレンズは陽の光の反射の滲みが好きで私は撮ってきたレンズ。もともとはフィルム・カメラ時代の産物ではあるが、このデジタル時代になってみると、いくらでもレタッチ・ソフトでそんな効果は簡単に出来るのだが、やっぱりレンズ効果で描いてみるとその味はひと味違って楽しいのだ。

 ベス単フード外し(1920年頃のコダック社の人気カメラVest Pocket Kodakのレンズ)で、一躍ソフト・フォーカス撮影が注目されたのである。そしてその線を狙って工夫して作られたKIYOHARA SOFTレンズですが、当初1986年70mm(VK70R)であったが、その後ユーザーの期待に応えて出来た50mmレンズ(VK50R)、私の所有しているのはNIKON Fマウントのものを所持しているので、下のようにNIKONのデジタル一眼に装着して遊んで居るのである。

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  ソフト像だとピント合わせが難しいため、撮影時はF8-11あたりでピントを合わせ、この一眼カメラでソフト効果を確認しながら、F4.5-6あたりに開いて撮影するのである。

( 写真:クリック拡大)

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( 下は今年の春の思い出 )

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SOFTKIYOHARA SOFT  VK50R

発売時期 1987年  フィルター径 40.5㎜
レンズ構成 1群2枚+保護ガラス1枚
最近接距離 0.45m  絞り羽根枚数 10枚
絞り f4.5-16  質量 約125g

(参考)

 

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2020年8月 3日 (月)

ジャン・ポール・ブロードベック・トリオ Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」

洗練されたジャズ心とテクニックでジャズの美学を演ずる・・・

<Jazz>

Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」
Solid/Enja / JPN / CDSOL-46459 / 2020

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Jean-Paul Brodbeck : p
Lukas Traxel : b
Claudio Strüby : ds

Adapted By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 5)
Recorded By, Mixed By, Mastered By – Daniel Dettwiler
Written-By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 2-4,6-9), Brahms* (tracks: 5), Schumann* (tracks: 1)

 スイスの若手ピアニストでチャイコフスキーのカヴァーなどをして来たジャン・ポール・ブロードベックJean-Paul Brodbeck がルーカス・トラクセルLukas Traxel(b)とクラウディオ・ストルビーClaudio Strüby (ds)とで結成したスイス産トリオによるアルバム。
 これは2017年にドイツのヨーロッパ良質なジャズ・レーベルと言われるENJA(European New Jazz)からリリースされたもので、メインストリーム・ジャズの名盤を復刻する注目の新シリーズ ”ENJA REAL JAZZ CLASSICS"として今年7月に日本でお目見えしたモノ。
 ブロードベックは、クラシック楽曲を耽美的にジャズ化するなど美にこだわったスタジオ作品をリリースして注目されてきた。

 

Avatars000271845735jfsfjgt500x500 (Tracklist)

1 Ich Will Meine Seele 心を潜めよう 8:51
2 Im Strom Der 潮の流れに 9:33
3 The Night Comes Soon 6:18
4 Song For The Ancestors 7:11
5 Brahms Ballad 3:16
6 Juno Is Touching Down 8:01
7 Return/No Return 6:25
8 Rocka-Roas 4:58
9 Requiem Of A Song 6:28

 曲はクラシックからはシューマンのM1.とブラームスのM5の二曲のみで、その他はピアニスト・ブロードベックのオリジナル7曲によって構成されている。
 スタートのシューマンのM1."Ich Will Meine Seele"で、これは並に迫れないトリオだと、単なるクラシックのカヴァーと言うので無いそのジャズ演奏の意味付けの重さがヒシヒシと実感する。
 M2."Im Strom Der"はオリジナル曲、押し寄せるドラムスの流れに、ピアノ、ベースのテーマが始まり、これは耽美派ということではかたづけられない一歩ジャズを進化すべく試みる世界だ。ピアノ主導で無く三者の描く世界が美しさと共に伝わってくる9分を超える長曲、面白い。
 M3."The Night Comes Soon" ピアニストが浮遊する世界。 
 M4."Song For The Ancestors " ピアノのイントロが美しく、ベース、ドラムスの効果がそれを後押ししてのジャズ美学。
 ブラームスのM5." Brahms Ballad "はしっとりと。
 M6."Juno Is Touching Down " ベースの深層心理に迫ろうとするソロから始まって、トリオ演奏が高まりを造り、ベース主体の中にピアノの美しさが交えて聴き応え十分。コンテンポラリー感が結実して見事。
 M7."Return/No Return" 彼らの本領発揮のピアノの流れのバラードで耽美なトリオ演奏にうっとりといったところ、ちょっと思索的世界に導くところがお気に入りだ。
 締めのM9."Requiem Of A Song " は、ゆったりとしたピアノの旋律が美しい曲。

Jeanpaul_brodbeck223  三年前のこのアルバムを今年ここに復活させた意味は十分感じられるハイレベル・ジャズ・アルバム。しばらく聴いていたくなるのは、その技術的な洗練されたところと、ジャズ心の充実だと思う。

  参考までに、リーダーのJean-Paul Brodbeck は ( →)、1974年スイス・バーゼル生まれ、10歳でピアノに接し、12歳でバンドを組んだとか。11歳から15歳まで正式なピアノ・レッスンを受ける。その後音楽院に進んでクラシック専攻という経歴。28歳でトリオ初リーダー作を発表。チャイコフスキーのカヴァー曲集「Song of Tschaikowsky」等のアルバムをリリースしている。

(評価)

□ 曲・演奏 :   90/100
□   録音   :   85/100

 

(視聴)

 

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