キンバ・グリフィス・セプテット Kimba Griffith Septet 「EACH TIME THE FIRST TIME」
ヴォーカル・演奏=寺島靖国お気に入りの二流ジャズ
<Jazz>
Kimba Griffith Septet 「EACH TIME THE FIRST TIME」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1087 / 2020
Kimba Griffith (vocal)
Adrian Perger (trumpet, arrangement)
Ben Gillespie (trombone)
Gideon Brazil (tenor saxophone, flute)
Ryan Griffith (guitar)
Mark Elton (bass)
Sam Bates (drums)
ジャズCD界も今や低調の中で、何となく頑張っている寺島靖国によるTERASHIMA RECORDS からの一枚。いつも通りそろそろリリースされるのが、『For Jazz Audio Fans Only Vol.13』(2020年版)であるが、その前にちょっとコロナ渦の中、Stay Homeで暇つぶしに聴いてみたという代物。
全く聴いたことの無いオーストラリアの歌手のキンバ・グリフィス・セプテット Kimba Griffith Septet、何が特徴なのかも知らない。ライナー・ノーツの寺島靖国によると、オーストラリア、メルボルンでの生れで、現在もそこのジャズ・クラブで活躍とか、いずれにしても気に入って売り物になるだろうと、日本発売に踏み切ったのだろう。彼女に関しては詳しい紹介もないので解らないが、人々の終末期のケアに携わる仕事もしているとか、ちょっと変わった存在でもある。
(Tracklist)
01. Too Close For Comfort
02. From This Moment On
03. Getting To Be A Habit
04. A Good Man Is A Seldom Thing
05. That's All
06. The Carioca
07. Comes Love
08. Old Devil Moon
09. How Long Has This Been Going On?
10. Dream Dancing
11. Sickness & Health
12. The Endless Queue (日本限定ボーナストラック!)
とにかく変なアルバムです。何を歌おうとしているか解らないジャズ・アルバム。そうジャズ・アルバムに仕上げようとして訳がわからなくなったと言った方が良いのか。
前半は、ホーンが頑張って華々しいビック・バンドっぽいバック、彼女のヴォーカルが少々音程を外しての健闘。このパターンで進行する。
最後まで聴くと、この歌手のほんとの目指すところはこうしたジャズじゃ無いのだろうと思ってしまった。M4."A Good Man Is A Seldom Thing"はスロー・バラード調だが、このパターンはどうかと聴くと、比較的素直で変な技巧は無くて良いのだが、どうも情感という処では描くところが薄い。
寺島靖国もこれにぞっこんというなら彼のジャズ心はどこに焦点を当てて、しかもお気に入りになったのだろうか。ちょっと疑問に思うのである。
あるところには、なんと「澄みきった清潔感や透徹さと、落ち着いた渋味や陰影っぽさ、がナチュラルに一体化した、中音域の折り目正しく涼やかな美声(ちょっとハスキーに掠れるところもある)による、中々のハイテクニシャンでスウィンギン・グルーヴィーなノリにノッた躍動的側面もあるものの、基本はあくまで歌詞とメロディーを大切にした優しい真心溢れる、自然体で語りかけてくるような抒情指向の柔和な演唱」と書かれているものがある。・・・ほんとかなぁと思いつつ聴いているのだが、確かに癖の無い歌声、力みとか、過度の装飾の無いところは好感持てる。しかしそうはいっても歌の情感、テクニックなどちょっと高度とは言えない、むしろ平坦で一生懸命歌っているといった感じ。ジャズ心という一つの世界はあまり感じない。
又バックの演奏陣も曲の情感が余り感じられなく、一生懸命演奏しているといった感じ、そしてちょっとサックス、トランペット、トロンボーン等がうるさい印象で、二流クラブのジャズ演奏かと思ってしまう。
曲の出来は、寺島靖国推薦のM6."The Carioca"と、私的にはM7."Comes Love"、そしてM9." How Long Has This Been Going On?"のように静かなギターをバックにしっとり歌うというのが、強いて言えばこのアルバムの中では聴きどころなんでしょうね(最後のフォーン・セクションは要らない)。
ところが、M11."Sickness & Health"となると、一変してトラディッショナルなフォークっぽい曲で、バッキング・ヴォーカルが入ってガラッとムードが変わって、異色な雰囲気。ところが彼女のヴォーカルはこれには合うんですね。おそらく彼女はこのパターンなんじゃないだろうか。つまりスウィング・ジャズにはどうも向いていないのではと・・・。
オマケのM12."The Endless Queue " は、単なるポピュラー・ソングで、このアルバムの前半とは別物でちょっと不自然ある。
私は一枚のアルバムを通して聴く方なので、このようなアルバムを敢えてジャズ・ヴォーカルものとしてリリースしたところに、ちょっと疑問を感じつつ聴いたアルバムだった。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 70/100
□ 録音 75/100
(視聴)
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