« ダイアナ・クラールのニュー・アルバム Diana Krall 「THIS DREAM OF YOU」 | トップページ | スールヴァイグ・シュレッタイェル Solveig Slettahjell 「Come In From The Rain」 »

2020年10月16日 (金)

ドミニク・ワニアのピアノ・ソロ Dominik Wania 「Lonely Shadows」

即興性に重点の置かれた「静」と「精神性」の世界

<Jazz>

Dominik Wania 「Lonely Shadows」
ECM/ / ECM 2686 / 2020

41hoszpknbl_ac_

Dominik Wania (piano)

 ポーランドと言う国は、所謂ミュージックの世界への造詣は厚い。そしてクラシックは勿論だが、ジャズそしてロックにも魅力あるプレイヤーが多くそして国民の支持も厚く愛されている。
 このアルバムは俊英ピアニストのドミニク・ワニアのソロ・ピアノ・ECMデビュー盤であるが、やはりクラシックで裏打ちされた世界は、一枚格上の世界が感じられる。
 私にとっては初物と言ったところだが、実は彼は私が知らなかっただけで、既にクラシック音楽のジャズ化というところからトリオ作品でデビューを果たし、その内容足るや単なるジャズっぽくアレンジしたというものでなく、ジャズ心をしっかり構築している独創性に評価があったようである (アルバム『Ravel』)。  又Maciej Obara Quartetのメンバとしても知られている。
 彼は1981年生れで40歳になろうという年齢で、学歴はクラクフ音楽アカデミー、ニュー・イングランド音楽院といったところのようだ。
   そして今回ECMつまりManfred Eicherによる企画に感動して、即興演奏家としての実力とセンスをここに投入したようである。

Dominikwaniaw

(Tracklist)
1.Lonely Shadows
2.New Life Experience
3.Melting Spirit
4.Towards the Light
5.Relativity
6.Liquid Fluid
7.Think Twice
8.AG76
9.Subjective Objectivity
10.Indifferent Attitude
11.All What Remains

 実際のところ、スタンダード演奏とは全く異なる自己の即興姓を主張するアルバムとなっており、又更にソロ演奏であることにより、独自性が際立った演奏である。更にメロディーによる共感というところとも一線を画していて、ちょっと単純に感動的であったというアルバムでは無い。

 冒頭のM1."Lonely Shadows"は、このアルバムのタイトル曲であり、全曲の中では最もメロディーの美しさを感じ取れる曲である。そして静寂の中にみる美しい打鍵音は、はっとするぐらい美しい。私にとってはこのアルバムは冒頭の曲に尽きると言ってもよい状態だ。
 続いては強いて言えばM4."Towards the Light",  M8."AG76"に静なる世界に心を引きつけられる魅力の世界は存在する。特にM4は何故か過去の懐かしい世界に連れてゆかれた。
 そしてその他の曲群には、即興性の因子が強いためか、メロディーの美しさというロマンティックな感覚でついてゆくところにはなく、流麗にしてインパクトのあるピアノ演奏が展開してみたり、中にはクラシカルな中にも前衛的な展開をみせるM5."Relativity"のような曲もある。
 最後の曲M11."All What Remains"も静かな演奏の中にいて、大自然の森林の中に置かれ自己の存在を見つめ考えさせられるような世界に置かれる。

 このアルバムは、いわゆる典型的な「ECMの世界」に没頭できるし、やはり演奏そのものもそうであったと思うが、わずかな余韻のある美しいピアノ音はエンジニアのStefano Amerioのセンスと技量が窺えるところであった。
 いやはや、単なるジャズというところから一歩も二歩も前進しているポーランドの音楽世界のそのレベルの高さに驚かされるのである。

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     90/100

(視聴)

 

|

« ダイアナ・クラールのニュー・アルバム Diana Krall 「THIS DREAM OF YOU」 | トップページ | スールヴァイグ・シュレッタイェル Solveig Slettahjell 「Come In From The Rain」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

風呂井戸さん,こんにちは。リンクありがとうございました。

おっしゃる通り,「単純に感動的であったというアルバムでは無い」というのは私にとっても同じです。悪いアルバムだとは決して思わないのですが,感動に随喜の涙を流すなんて感じではなかったですねぇ。美しいアルバムですが...。

ということで,当方記事のURLを貼り付けさせて頂きます。
https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2020/10/post-1d2f20.html

投稿: 中年音楽狂 | 2020年10月17日 (土) 13時34分

中年音楽狂さん
コメントどうも有り難う御座います。
このアルバムには期待が大きかったせいも影響していたかも知れませんが、感心するが感動に溺れるという世界ではありませんでした。
ドミニク・ワニアの技量の確かさと素晴らしさは聴き取れましたし、ジャズの広さと奥深さを感じ取れました。
TB有り難う御座います。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年10月17日 (土) 14時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ダイアナ・クラールのニュー・アルバム Diana Krall 「THIS DREAM OF YOU」 | トップページ | スールヴァイグ・シュレッタイェル Solveig Slettahjell 「Come In From The Rain」 »