« 寺島靖国プレゼント「For Jazz Audio Fans Only Vol.13」 | トップページ | ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 映像盤「US + THEM」 »

2020年10月 1日 (木)

カーステン・ダール Carsten Dahl Trinity 「painting music」

哀愁と美と・・・そして先鋭的な世界と

<Jazz>

Carsten Dahl Trinity 「painting music」
ACT Music / 9891-2 / 2019

71ucac3tnrl_ac900

Carsten Dahl (p)
Nils Bo Davidsen (b)
Stefan Pasborg (ds)

Recorded in 2019 at Rainbow Studio, Oslo

Carstendahl900  デンマークを代表するピアニストのカーステン・ダール(→)は、所謂ジャズの本道をゆくスウィンギーな演奏で結構人気があったのだが、私自身はユーロ系ジャズには、特にピアノトリオとなれば叙情性を描くところを求める事が多く、これまでのめり込むことが無かった。しかし先日紹介の寺島靖国のアルバム『For Jazz Audio Fans Only  Vol.13』に取上げられた曲"Sailing With No Wind"が魅力的で、昨年リリースされたこのアルバムを聴くことになったという経過。
  彼は1967年生れだから55歳ぐらいというところだろうか、もうミュージシャンとしてのキャリアも25年以上もあって丁度円熟したよい年齢だ。しかしその人生の過程において幼少期からメンタルな問題の多難な状況があったようで、次第に変化し現在は内面的な世界も描くようになってきているようである。そのあたりが私が注目することになった点であろう。
 又、絵画的才能も素晴らしく、このアルバムでもカバー・アート、そして作品を登場させている。

 

(Tracklist)

1.Sailing With No Wind (Dahl, Davidsen & Pasborg) (5:33)
2.All The Things You Are (Jerome Kern) (6:07)
3.Somewhere Over The Rainbow (Harold Arlen) (6:43)
4.Jeg gik mig ud en sommerdag (Danish folk song) (4:18)
5.Bluesy In Different Ways (Dahl, Davidsen & Pasborg) (4:11)
6.Solar (Miles Davis) (2:43)
7.Be My Love (Nicholas Brodszky) (8:22)
8.You And The Night And The Music (Arthur Schwartz) (5:08)
9.Blue In Green (Miles Davis) (4:48)
10.Autumn Leaves (Joseph Kosma) (6:30)

Dsc5835mail900

 冒頭のM1."Sailing With No Wind"が私が興味を持った曲だが、彼のピアノの響きに叙情性ある哀愁感も感じられる演奏が魅力がある。とにかく優しさの溢ふるる美旋律が留めなく流れる。どこかキース・ジャレットを思い起こすような展開をみせて、なんと彼のうなりというよりはむしろ歌に近い声も入ってくる。
 M2."All The Things You Are "は本領発揮のピアノの先鋭的なタッチにベース、ドラムスも踊る。
 なんと聴き慣れたM3."Somewhere Over The Rainbow "も登場、どこかしっとりとしかも思索的に流れるのにビックリ。
 M4."Jeg gik mig ud en sommerdag "はデンマークのフォークソング、これが又美しい。
   この他の曲はスタンダードのオンパレードで楽しませる。
 M6."Solar"のようにアップテンポで演じきるところもある。 
 M7."Be My Love"も、美しさと優しさとがピアノからベースにとやりとりし行くところが感動的。
 M8."You And The Night And The Music "がここまで超高速プレイで演じられるのも聴きどころ。
 M9."Blue In Green"これも良いのだが、ダールの歌は要らない。
 M10."Autumn Leaves"これが"枯葉"かと・・・思うところが凄い。ここまで攻撃とも言える編曲とインプロヴィゼーション演ずるのも珍しいが、それが又様になっていて、彼らの本質がここにありと言わんばかりである。シンバルが刺激的に響き速攻演奏でバトルを演ずるピアノとベース。まさに驚きの一曲。

 とにかくここに聴くカーステン・ダールのプレイは、これぞプロという世界。キース・ジャレットの世界にも一脈通ずるところがあると感ずるが、ヨーロッパ的叙情性と思索世界も見せながらの攻撃的な速攻演奏との微妙なバランスの素晴らしいアルバムだ。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏   95/100
□ 録音         90/100

(視聴)

 

|

« 寺島靖国プレゼント「For Jazz Audio Fans Only Vol.13」 | トップページ | ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 映像盤「US + THEM」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

風呂井戸さん、こんにちは。
さっそくですが、
ダール、新録だしたのですね。ACTからというのも惹かれます。
実はダールは以前少し追いかけたことがありますが、その後しばらく注目していませんでした。
彼は、王道ハードバップの顔と切れ味鋭い先鋭的な顔と2つ持っているようですが、私も後者の方に惹かれます。
旧作になりますが"MOON WATER"(2003年)は、衝撃的でした。
あとマッズヴィンディングトリオの"Six Hands Three Minds One Heart"(1999年)・・この「枯れ葉」にも驚かされました。
https://www.youtube.com/watch?v=RTl5RvGL6Pg

「painting music」は近く入手しようと思います。
有用な情報ありがとうございます。

投稿: baikinnmann | 2020年10月 4日 (日) 10時23分

baikinnmannさん
コメントどうも有り難う御座います。
いっやーー、そうでしたか、カーステン・ダールはそれなりに把握されていたんですね。私は殆ど知らないと同じような状態でした。このアルバムが初めての付き合いみたいなモノです。しかし驚愕の世界でした。いっやーーなかなかの本格的ジャズ・ミュージシャンですね。私は過去の古きに少し寄ってみたいと思います。
そうそう、このアルバムでも「Autumn Leaves」には、完全にやられました。^^)

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年10月 4日 (日) 23時13分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 寺島靖国プレゼント「For Jazz Audio Fans Only Vol.13」 | トップページ | ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 映像盤「US + THEM」 »