メロディ・ガルドーのニュー・アルバム登場 Melody Gardot 「Sunset in the Blue」
原点回帰 : ガルドー節に更なる充実感が、そして相変わらずの陰影濃いブルーの世界が・・・・
<Jazz>
Melody Gardot 「Sunset in the Blue」
DECCA(universal music) / JPN / UCCM-1260 / 2020
待ちに待ったメロディ・ガルドーのニュー・アルバムだ。2015年の彼女の心をぶつけた意欲作『カレンシー・オブ・マン〜出逢いの記憶〜』以来 実に5年振りとなる。恐らくあそこまで意欲的に社会に立ち向かって訴えた後であるので、しばらくは静かな時を迎えるだろう事は解っていたが、この5年間は少々長かった。そしておそらく次の作品は原点に返っての最も世界に受け入れられた2ndアルバム『マイ・オンリー・スリル』の続編と言えるものであろうと予想していたが、やはりその通りのアルバムの登場となった。
実際、プロデューサーはグラミー賞受賞のラリー・クライン、そしてアレンジを作曲家のヴィンス・メンドーサが担当するという2ndアルバムのコンビである。
近作のライブ・アルバムを見ても、かって彼女が来日して私が彼女と話することが出来た2009年のサングラスにステッキという交通事故後の体調回復期と違って、全力投球できる体力が戻ってきているため、作品に内容の変化があるかどうかも実は興味津々でこのアルバムを聴くのである。それはボーナス曲を除いての12曲中なんと8曲は彼女のオリジナル曲で占められている為で、それによりここには完全と言ってもいい彼女の意志が込められているだろうと思うからである。
(Tracklist)
01 イフ・ユー・ラヴ・ミー(Dadi Carvalho,Melody Gardot)
02 セ・マニフィーク(Dadi Carvalho,Melody Gardot,Pierre Aderne)
03 ゼア・ホエア・ヒー・リヴズ・イン・ミー(Melody Gardot,Phillipe Baden Powell,Pierre Aderne)
04 ラヴ・ソング(Lesley Duncan)
05 ユー・ウォント・フォーゲット・ミー(Fred Speilmann,Kermit Goell)
06 サンセット・イン・ザ・ブルー(Jesse Harris,Melody Gardot)
07 ウン・ベイジュ(Melody Gardot)
08 ニンゲイム・ニンゲイム(Melody Gardot)
09 フロム・パリ・ウィズ・ラヴ(Melody Gardot,Pierre Aderne)
10 アヴェ・マリア(Melody Gardot,Reese Richardson)
11 ムーン・リヴァー(Johnny Mercer,Henry Mancini)
12 アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー(Jule Styne,Sammy Cahn)
13 懐かしき恋人たちの歌 (日本盤のみのボーナス・トラック)(Gerard Emile Jouannest,Jacques Brel)
14 リトル・サムシング (feat. スティング)(Melody Gardot,Antoine Chatenet, Dominic Miller,Hilda Stenmalm,Conor Blake,Nora Abakar,Sting)
ほぼ全曲という9曲にストリングス・オーケストラがバックを支えている。そして例の如く彼女のヴォーカルをトランペット、サックス、ギター、ピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションという演奏陣が曲により色を添えてサポートする。
冒頭のM1."If you love me"から、情緒たっぷりのガルドー節が聴かれ、おおこれがあの『マイ・オンリー・スリル』の当時の彼女の世界の再現かと感ずる処に浸れる。
そして得意のブラジル世界の曲M2."C'est Magnifique"ここでは珍しく男性ヴォーカルとのデュオで、このアルバムに色を添える。それに加えてしかもボーナス曲として、これは日本のみならず世界盤につけられたもので、スティングとのデュオ曲M14."Little Something"(メルドーのオリジナル曲)が登場する。実はこれらは彼女のこのアルバムに変化をもたらす役割をなしているのだ。この作品はアルバム・タイトル曲の彼女の曲M6."Sunset in the Blue"を中心としたところにあって、それは決してブラジル色のサンバ調の明るさのある世界ではなく、究極は"ブルー"であることが、このアルバムを通して聴くと解ってくる (実はこのアルバム・ジャケが彼女の過去のアルバムと比較しても異色である。このブルーの世界は何かと思ったが、こうして聴いてみると理解できるのだ)。そんなことからもスティングとのボーナス曲は、このアルバムのムードとは一致しないながらも、その影の部分を補う効果があって、聴く者にとって面白いボーナス曲効果を上げているのであった。
米国フィラデルフィア生れ(1985年)の彼女は、母親がフランス人だったことにより、フランス語は得意、そして彼女の気質からパリに現在住んでいて、M9."From Paris with Love"が、なかなかそんなヨーロッパのムードもあって聴き応え十分。
又注目は M5."You won't forget me "で、例の如くストリングス・オーケストラに乗って、そこにピアノ、ギターとサックスのバックに支えられてのガルドーのしっとりとしたヴォーカルがたまらなく良いですね。
ポピュラーなM11."Moon River"にほっとしつつ・・・・、
M12."I Fall In Love Too Easily"がギターの静かな音と彼女のしっとりヴォーカルが描く恋に落ちやすい女心の世界が全てであるが如くこのアルバムを閉めるのである。
日本盤ボーナス曲には、シャンソン名曲"懐かしき恋人たちの歌"の登場で楽しませてくれるのも余興として受け入れよう。
この秋になって、季節と合致して久々のメルドー・ガルドー世界の良さに浸ることが出来るアルバムの登場で、今年も私にとってのジャズ・ヴォーカル界に良い色をつけていただいたと思いつつ聴いたところである。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 95/100
□ 録音 90/100
(視聴)
*
Melody Gardot "Little Something" with Sting
*
Melody gardot "C'est Magnifique"feat. Antonio Zambujo
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コメント
Amazonで予約したのですが、遅延トラブルが生じていまだ届かず。このブログで一層期待感が強まりました。
投稿: 爵士 | 2020年10月24日 (土) 10時37分
爵士さん
炭焼きで又忙しい秋ですね。コメントどうも有り難う御座います。
メロディー・ガルドーは落とせませんので、3ケ月前から予約してまして、きちっと届きました。注文済みならゆっくり期待して待つのもオツなものかも知れませんネ。前作とはガラっと変わって本来のガルドー節が楽しめます。恐らく又彼女流のジャズ的編曲しての歌も更にこれからライブで聴けるのではと期待していますが・・・。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年10月24日 (土) 17時40分
コンバンワ。私も聴きました。ジャケットのアートワークから良さそうな予感がしましたが、ご紹介の通り、しっとりと秋の夜長を過ごすには最高の一枚ですね。
投稿: zawinul | 2020年10月27日 (火) 22時30分
zawinulさんの感覚にもマッチしているようですね。11年前に日本に来ての際、彼女の音楽や日本に対する姿勢にも私は十二分に納得して以来のファンです。話も本当に丁寧でした。
前作の迫力とこのアルバムの対比が圧巻ですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年10月27日 (火) 23時31分