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2020年11月30日 (月)

カーリン・アリソン Karrin Allyson 「'ROUND MIDNIGHT」,「BLLADS」

本格的ジャズを歌い上げる ~ ~ ~

カーリン・アリソンKARRYN ALLYSON  

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1w_20201130172101  オーディオ・マニアが結構気に入っているアルバムに PREMIUM RECORDS の『BEST AUDIOPILE VOICES』というコンピレーション・アルバムがあるが、これは主としてJazzy not Jazz パターンから、Jazzにいたる女性ヴォーカルが主体である。目下7巻目の「Ⅶ」がお目見えしている。実はその記念すべき2003年の第1巻(→)においては、ここで何度も取上げているEva Cassidyが2曲収録されて主役の役を果たしているが、この米国女性ジャズ・ピアニストにしてヴォーカリストのカーリン・アリソンKarryn Allysonmも登場。そこで実は気にはしていたが、私は欧州系に寄ってしまうために、これまでアルバムをしっかり聴くということなしで来てしまった。しかしなんとなく気になっていて、この秋にアプローチしてみようと思ったのである。

  そこで、あらためて1963年生れのカ-リンの私の好きなバラード調のアルバムに焦点を当てて、この秋向きに2枚のアルバムを仕入れた次第。それは、2001年の『BALLADS』と、2011年の『Round Midnight』である。

 <Jazz>
KARRIN ALLYSON  「BALLADS-Remembering John Coltrane」
Concord Jazz / USA /  CCD-4950-2 / 2003

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Karrin Allyson : Vocals, Piano
James Williams : Piano
John Patitucci : Bass
Lewis Nash : Drums
Bob Berg : Tenor Sax
Lames Carter : Tenor Sax
Steve Wilson Soprano Sax

71tsoackrml_ac_sl850  彼女は1963年生れであるが、丁度30歳の1993年から何枚かジャズ・ヴォーカル・アルバムをリリースしていて、なんと30歳後半に恐れ多くも7枚目のアルバムにおいて、ジョン・コルトレーンに挑戦しているのだ。
  彼女はピアニストであるからして、そのあたりの流れは知るよしも無いが、ライナーに"何年も愛してきたジョン・コルトレーン"と記していることより、彼の演ずるジャズに惚れ込んでいたんでしょうね。とにかくJohn Coltrane の代表作『Ballads』( 1963 →)を、このアルバムでそっくり彼女のヴォーカルで演じきっているのである。

(Tracklist)

1. Say It (over And Over Again)
2. You Don't Know What Love Is
3. Too Young To Go Steady
4. All Or Nothing At All
5. I wish I Knew
6. What's New
7. It's Easy To Remember
8. Nancy (With The Laughing Face)
9. Naima
10. Why was I Born ?
11. Everytime We Say Goodbye

 このように、M1-M8 までコルトレーンのアルバムと完全に曲順も同じに演じきった。ピアノ演奏はここでは彼女はM5.の一曲のみで、他はJames Williamsがピアノ・トリオのパターンで演じ、それにSaxが加わる。
 とにかく彼女はヴォーカルに専念し、力んで気負っていることも無く例のハスキーがかった声で、当時のまだ若き年齢を考えると深みのある心を寄り添っての歌に驚きだ。全体に明るいジャズでなくバラードでやや暗めの線を行くも、なかなかの表現力があって聴き応えは十分。なにせコルトレーンですからサックスのウェイトが気になるが、彼女のヴォーカル以上の位置には出ずに、本来のコルトレーン・パターンとは異なった世界を築いていることは、むしろ好感が持てる。
   冒頭のM1."Say It"から、サックスとデュオのパターンで進行して、この女性ヴォーカルを生かしたパターンはそれなりに花があり、こうしたこのアルバム造りはスタートから面白いと感ずる。ジャズ・アルバムはスタンダードが人気があるのは、曲だけを聴くのでなく、その演奏者の解釈と演者自身の魅力を味わうところにあるのであって、ここまで徹底して自己のジャズ世界で、トリビュート・アルバムを作り上げた意欲に脱帽する。M5."I wish I Knew"はサックス抜きの彼女のピアノ・トリオで演じたことにその意欲が表れているところだ。又M7."It's Easy to Remember"のようにピアノ主体のバックで、アカペラに近いところも聴き応えあり。
 全体に決して軽さの無い深みのある女性ヴォーカル・アルバムに仕上げてくれたことに私は寧ろ大きく評価したい。

        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

 <Jazz>
KARRIN ALLYSON 「'ROUND MIDNIGHT」
Concord / US / CJA-32662-02 / 2011

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Karrin Allyson: vocals, Piano, Fender Rhodes
Rod Fleeman: guitar
Bob Sheppard: woodwinds
Randy Weinstein: harmonica
Ed Howard: bass
Matt Wilson: drums

  カーリン・アリソンのアルバムとして、実は今回はこっちが本命でした。彼女のバラード調のヴォーカルがこうしてスタンダードを如何に個性を発揮しつつも聴かせてくれるかというところに評価のポイントをおいていたんです。このアルバムは上の『BALLADS』から約10年後の50歳直前の円熟期ですから、もう頂点に近い状況でジャズを如何に歌い込んでいるか興味津々であった。

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1. Turn Out the Stars (Bill Evans-Gene Less)
2. April Come She Will (Paul Simon)
3. Goodbye (Gordon Jenkins)
4. I'm Always Chasing Rainbows (Harry Carroll-Joseph McCarthy)
5. Spring Can Really Hang You Up the Most (Fran Landesman-Tommy Wolf)
6. Smile (Charlie Chaplin)
7. Sophisticated Lady (Duke Ellington-Irving Mills-Mitchell Parish)
8. There's No Such Thing As Love (Ian Fraser-Anthony Newley)
9. The Shadow of Your Smile (Johnny Mandel-Paul Francis Webster)
10. Send In the Clowns (Stephen Sondheim)
11. 'Round Midnight (Thelonious Monk-Cootie Williams-Bernard Hanighen)

  このアルバムでは、彼女のピアノを中心としたベース、ドラムスのトリオがバック演奏だ。そして曲によりギター、サックス、ハーモニカが加わるパターン。
 曲は聴き慣れたスタンダードが中心で、彼女のジャズ・ミュージシャン活動の真髄を集めたようなプロのアルバムであり、彼女の評価には十分な代物だ。
 
 やはり持ち前の米国には珍しいやや陰影のある中に、情感豊かにして曲の描く世界を十分に歌い込んでいる。
 驚きはM1."Turn Out the Stars"はジャズで、M2."April Come She Will "はフォーク調と、その変化も自在である。
 M3."Goodbye "のポピュラー・ナンバーが良いですね、低音の深く厚い歌声の魅力を発揮。
 M5."Spring Can Really Hang You Up the Most"の語りかけるように歌い上げ、ジャズとしては美しさを強調して聴かせる。
 M6."Smile" 彼女の得意のレパートリーの一つ、ピアノが美しく、編曲をこらしてゆっくりじっくり歌い込む。途中のハーモニカは不要か。
 M7."Sophisticated Lady"は彼女の思い入れが感ずるし、M9."The Shadow of Your Smile "これは私の好きな"いそしぎ"ですね、alto FluteとAcoustic Guitarの演奏の中で、ゆったりとしっとりと歌い込んでナイスです。
   M.10."Send In the Clowns"ギターとともに静かさが描かれていいですね。M11." 'Round Midnight"はアルバム・タイトル曲で、夜の静かさと寂しさをベースとの語るようにしっとり歌うところも魅力的。

 哀愁を帯びたハスキー・ヴォイスと曲の内容によって変幻自在の歌声が彼女の魅力でしょうね。つまり上手いのである。私自身の女性ヴォーカルに求める声質とは残念ながら若干異なってはいるが、ジャズ心の質によってそれは十分カヴァーしている。スローなバラード調は彼女の得意の世界でしょうね、従って、私にとっては、ちょっと何時も流しておきたいアルバムとなっている。

(評価)
□ 選曲・編曲・歌  88/100
□ 録音       85/100

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(参考)

<Karrin Allyson Discography>

I Didn't Know About You (Concord Jazz, 1993)
Sweet Home Cookin' (Concord Jazz, 1994)
Azure-Té (Concord Jazz, 1995)
Collage (Concord Jazz, 1996)
Daydream (Concord Jazz, 1997)
From Paris to Rio (Concord, 1999)
Ballads: Remembering John Coltrane (Concord Jazz, 2001)
Yuletide Hideaway (Kas, 2001)
In Blue (Concord Jazz, 2002)
Wild for You (Concord, 2004)
Footprints (Concord Jazz, 2006)
Imagina: Songs of Brasil (Concord Jazz, 2008)
'Round Midnight (Concord Jazz, 2011)
Many a New Day: Karrin Allyson Sings Rodgers & Hammerstein (Motema, 2015)
Some of That Sunshine (Kas, 2018)
Shoulder to Shoulder: A Centennial Tribute to Women's Suffrage, as The Karrin Allyson Sextet (eOne Music, 2019)

(参考試聴)

 

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2020年11月26日 (木)

フレッド・ハーシュ=ソロ・ピアノFred Hersch 「SONGS FROM HOME」

知性の豊かさと共にどこか真面目さが漂ってくる心安まる演奏

 

<Jazz>

Fred Hersch 「SONGS FROM HOME」
Palmetto / IMPORT / PM2197 / 2020

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Fred Hersch  : Piano

  ピアノの詩人と言われるフレッド・ハーシュが、本年(2020年)8 月に録音したピアノ・ソロ・アルバムの登場。今年の新型コロナ・ウィルスのパンデミックの波にのまれて、ライブ活動が不可能になった状況下で、録音のためのスタジオでなく、自らの家で、と言ってもペンシルベニアにある第2の家に於いて、雑多な日常から離れての約1週間の間での録音であったようだ。そこにはスタンウェイがあり、高い天井の音場空間が確保されていて納得の環境下での録音であったらしい。
 どうも、ハーシュ自身のライナーからみると、コロナ感染で亡くなった音楽の友への追想の意味もあるようだ。
 何故か、Søren Bebe Trio のアルバム『HOME』(FOHMCD008/2016)をふと思い出したが(ジャケまで似ている)、アルバム通しての全体の印象としては、あの欧州的美の感動にはちょっと及ばなかった、と言うのが偽らざる感想。


Fredherschauthorphotocolor_photo_by_joan (Tracklist)

01 Wouldn’t It Be Loverly (Loewe)
02 Wichita Lineman (Webb)
03 After You’ve Gone (Layton)
04 All I Want (Mitchell)
05 Get Out Of Town (Porter)
06 West Virginia Rose (Hersch) / The Water Is Wide (traditional)
07 Sarabande (Hersch)
08 Consolation (A Folk Song) (Wheeler)
09 Solitude (Ellington)
10 When I’m Sixty-Four (Lennon/McCartney)

 ハーシュ自身の2曲の他は、彼の人生の中から何らかの意味のある曲を選んだようであるが、その為かドディッショナルからジョニ・ミッチェル、コール・ポーター、デューク・エリントン、ビートルズと多彩。
 全体にこんな状況下であるため、激しさとか、情熱といったタイプでなく、どちらかというと、やや明るさをも感ずる心に響く落ち着いた世界のどちらかというと端正な演奏というタイプである。
 まあ私自身は、実はもう少し静謐にして叙情的、そして哀愁漂う美しい世界を期待したのだが、その点はヨーロッパ的な叙情というので無く少々違っていた。つまりそれ程拘った特徴というものも無く、所謂スウィング・ジャズとは一線を画したややクラシカルな派手さの無い落ち着いたもので、ややしんみり感と同時に自己への対話的な真面目な世界を演じていると言って良いだろう。

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 オープニングの映画『マイ・フェア・レディ』の曲M1."Wouldn't it be Lovely"には、静かなクラシック調で、ややロマンティックらしさもあるが、感動と言うより心を静めてくれる展開。
 このアルバムの一つの聴きどころであるM4."All I Want "のジョニ・ミッチェルの曲は、彼の高校時代に思い馳せる心入れもあるというところで、気合いが入っている。と、いっても激しいという世界で無く、小躍りするところ、静かに物思いになるところ、そして美しい人生と、多彩な描きを演じてみせる。
 しかし私にとっては、M6."West Virginia Rose / The Water Is Wide "のように彼自身の曲とトラディッショナルを結合した曲の中には、どこか人生を回顧するしんみり感が漂っていて良い。
 又デューク・エリントンってこんなだったのかと不思議に思ったほどM9."Solitude"には、彼の手でなんとも心にしみいる情感が生まれ響いて驚いた。

 とにかく、このコロナ渦において、静かに自分の人生に思いを馳せつつ、不安を駆り立てるので無く、動揺するので無く、安定した心によってこの時代に生きてゆこうという知性の豊かさを感じさせてくれるアルバムである。しかしあの心に染み入るな叙情的・哀愁にみちた美旋律が留めも無く襲ってくると言った感動的なものというところのものではなかった。

 
(評価)
□ 編曲・演奏  85/100    
□ 録音     80/100

 

(試聴)

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2020年11月22日 (日)

エレン・アンデション Ellen Andersson 「YOU SHOULD HAVE TOLD ME」

ジャズ・ヴォーカルはこれだ !!・・・・と、
スウェーデンからの4年ぶりの待望本格派ジャズ・ヴォーカル・アルバム

<Jazz>

Ellen Andersson 「YOU SHOULD HAVE TOLD ME」
Prophone Recpords / sweden / PCD204 / 2020

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Ellen Andersson エレン・アンデション (vocal) 
Joel Lyssarides ヨエル・リュサリデス (piano except 3, 4, 5)
Anton Forberg アントン・フォシュベリ (guitar on 4, 5, 8, 9)
Niklas Fernqvist ニクラス・フェーンクヴィスト (bass)
Johan Lötcrantz Ramsay ユーハン・ローヴクランツ・ラムジー (drums)
Peter Asplund ペーテル・アスプルンド (trumpet on 1, 4)
Johanna Tafvelin ユハンナ・ターヴェリーン (violin on 2, 6, 8)
Nina Soderberg ニーナ・ソーデルベリ (violin on 2, 6, 8)
Jenny Augustinsson イェニー・アウスティンソン (viola on 2, 6, 8)
Florian Erpelding フローリアン・エーペルディング (cello on 2, 6, 8)

 四年前にスウェーデンからの新人女性ジャズ・ヴォーカリストの有望株として紹介したエレン・アンデション(『I'LL BE SEEING YOU』(PCD165/2016))の待望のニューアルバムの登場だ(1991年生まれ)。とにかく嬉しいですね、あのセンス抜群のジャズ演奏とヴォーカルの協演がここに再びと言うことだ。ダイアナ・クラール、メロディ・ガルドーとこの秋、期待のニュー・アルバムが登場したが、彼女らの円熟には及ばずとは言え、あのJazzy not Jazz路線と違って、香り高きジャズ本流のヴォーカル・アルバムに挑戦していて感動であり、しばらく聴き入ってしまうこと間違いなし。
 彼女はデンマークのヴォーカル・グループ「トゥシェ」のメンバーとしても活躍しているが、これは彼女のソロ・アルバム。
 今回はジャズ・スタンダードそしてビートルズ、ミッシェル・ルグラン、ランディ・ニューマンなどの曲(下記参照)を、ジャズ色濃く編曲して妖艶さも増して披露している。

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(Tracklist)

1. You Should Have Told Me (Bobby Barnes / Redd Evans / Lewis Bellin)
2. Once Upon A Summertime (Michel Legrand / Eddie Barclay)
3. You've Got A Friend In Me (Randy Newman) (vo-b-ds trio with 口笛)
4. Just Squeeze Me (Duke Ellington / Lee Gaines)
5. Too Young (Sidney Lippman / Sylvia Dee) (vo-g-b-ds quartet)
6. The Thrill Is Gone (Ray Henderson / Lew Brown)
7. ‘Deed I Do (Fred Rose / Walter Hirsch) (vo-p-b-ds quartet)
8. Blackbird (John Lennon / Paul McCartney)
9. I Get Along Without You Very Well (Hoagy Carmichael / Jane Brown Thompson)

 
 エレン・アンデションの声は、なんとなくあどけなさの残った瑞々しい可憐さが感じられる上に、意外にも前アルバムでも顔を出した妖艶さが一層増して、ちょっとハスキーに響く中低音部を中心に、高音部は張り上げず優しく訴える端麗ヴォイスだ。
 M1." You Should Have Told Me "のように、バックがジャズの醍醐味を演ずると("M7." ‘Deed I Do"なども)それと一体になりつつも、彼女の特徴は失わずに協演する。
 M2."Once Upon A Summertime"はミッシェル・ルグランの曲、とにかく一転してピアノとストリングスでの美しさは一級で、彼女の心に染み入る中低音のテンダーなヴォーカルが聴きどころ。
 M4."Just Squeeze Me"は、トランペットの響きから始まって、彼女のあどけなさとけだるさと不思議な魅力あるヴォーカルでベースの語り歌うような響きと共にジャズの世界に没頭させる。

Pressellenanderssontr  女性叙情派ユーロ・ジャズ・ヴォーカル・ファンにお勧めは、なんと言っても素晴らしいM6." The Thrill Is Gone"だ。ストリングスの調べが加味した美しいピアノの音とメロディーに、しっとりと優しく囁きかけるように歌い上げるところだ。中盤にはピアノ・トリオがジャジーに演ずる中に後半ストリングスも加わって、再び彼女のヴォーカルが現れると静かに叙情的な世界を演ずる、見事な一曲。
 M5."Too Young"のナット・キングコールの歌で歴史的ポピュラーな曲は、冒頭からアカペラで彼女の世界に引っ張り込み、静かに現れるバックのギターとジヤズ心たっぷりに描いてくれる。次第にベース、ドラムスが続き「静」から「動」にスウィングしてゆく流れはお見事と言いたい。

 とにかく演奏陣が手を抜かない演奏が魅力的な中に、彼女のテンダーにして語りかけるロマンティックなヴォーカルと、なかなかアッシーな味付けの世界もみせ、それが一転してハードボイルドな色合いの強い演奏とのマッチングも出現し、そんな変幻自在な味付けが見事なアルバムである。一曲づつも良いがアルバム・トータルに是非聴くべき一枚。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌   90/100
□ 録音        85/100

(試聴)    "The Thrill is gone"

*
       "Too Young"

 

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2020年11月18日 (水)

エマ・パスク EMMA PASK 「Some other Spring」

ジャズ・シンガーの道を着実に歩む・・・・
スタンダードそしてラテン~ブルースまで幅広く演ずる

<Jazz>

EMMA PASK 「Some other Spring」
EMMAPASK / IMPORT / EMMA2011 / 2019

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Emma Pask - Vocals
James Morrison - Piano on tracks 2,4,5,6,7,8 and 13 Trombone on tracks 6,11
Phil Stack - Bass
James Muller - Guitar
Blaine Whittaker - Saxophone
Kevin Hunt - Piano on tracks 1,3,9,10 and 14
Tim Firth - Drums on tracks 2,4,5,6,7,8,11,13 and 13
Andrew Dickeson - Drums on tracks 1,3,9,10 and 14

 オーストラリアの有望歌姫エマ・パスクの2011年にリリースされた自主製作アルバムである。今ここでこのアルバムを取上げるのは、先日リリースされた寺島靖国の『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』で紹介されて、彼女は、知る人ぞ知るということだが、私にとっては初もので、取り敢えず2019年再リリースされたアルバムで聴いてみたという一枚であるからだ。
 彼女は1977年生まれであるから、このアルバム作成当時33歳ぐらいの丁度これからジャズ・シンガーの道になれてきた時と思われる。シドニーで育ち14歳で高校のバンドと一緒に歌っている間に、1994年の16歳で学校の公演で大御所ジェームス・モリソンによって発見された。 その後、彼女はモリソンのバンドのボーカル担当となっている。彼女はまた、アクターの背景を持っていて、1995年、国立演劇芸術研究所の若手俳優スタジオで1年間のパートタイムコースを受講したりしているとか。

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 このアルバムはいずれにしても彼女の本格的ジャズアルバムであり、バックを支えるメンバーには同郷出身の精鋭たち(ジェームス・モリソンは当然で、ケヴィン・ハント、ジェームス・ミューラー、ブライアン・ウィタッカー、アンドリュー・ディッケンソン)ら豪華メンバーがしっかりサポートしていて、ヴォーカル・アルバムとはいえ、しっかりジャズ演奏も聴くことの出来る物だ。

(Tracklist)

Epask7 01. Just Squeeze Me
02. I've Got the World On a String
03. I Only Have Eyes For You
04. Hallelujah I Love Him So
05. Stardust
06. Wild is Love
07. Gee Baby Ain't I Good to You
08. I'm Old Fashioned
09. Some Other Spring
10. Hard Hearted Hannah
11. It Might As Well Be Spring
12. Easy Living
13. On the Sunny Side of the Street
14. Down With Love

 ジャズスタンダードからラテン,、ブルースまで幅広く聴かせるアルバム。そして彼女の歌声は曲のパターンによってガラッと変わって歌い上げる。そんな意味では変化があって飽きないところだ。

 寺島靖国の選んだ曲はM5." Stardust"であるが、おなじみの曲のここでは彼女の最も女性としての魅力を訴えるややセクシーな発声と節回しの披露だ。このアルバムでの一つのポイントの曲。そこに至るまでも大きな起伏がある。M1."Just Squeeze Me"は、まさにピアノ・トリオ、サックスがスイング・ジャズを展開、彼女のヴォーカルは負けずとややキュート感ある声で歌い上げる。
 M3."I Only Have Eyes For You"となると、やや押さえた発声でしっとりムードからスタート。このあたりに大人というよりは、ややあどけなさを感ずる処に魅力がある。M4." Hallelujah I Love Him So "のベースから始まるピアノ・トリオ・ジャズにも、演奏にかなりのウェイトがあって、そこにジャズ向きに低音にちょっと力みをいれたりと、それまでと異なる発声で歌い上げている芸達者なところに注目。
 圧倒的なジャズ・ヴォーカルはM7." Gee Baby Ain't I Good to You "だ。やはりお御所の前ではうかうかしていられない。女性モノと言うよりジャズ・ヴォーカリストの力を展開。その点はM13." On the Sunny Side of the Street "も同様だ。演奏もそれなりにジャズを楽しめる。
 M9."Some Other Spring "は静かなベースとピアノをバックに、M12."Easy Living "はギターをバックにと、バラード曲であるが優しい静かな演奏と共に、やはり女性の魅力を訴えてくる。私としてはちょっとした聴き処の曲である。

 声の質そのものは、ジヤズの中でも迫力を求めるところで無く、むしろキュート感、ソフト感が魅力のように思う。現在は40歳代前半と思うが、これから更に充実したヴォーカリストとして展開するだろうと期待したい。

(評価)
□ 曲・歌    85/100
□ 録音     80/100

(試聴)
 

 

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2020年11月14日 (土)

ベス・ゴールドウォーター Beth Goldwater 「vintage」

マイナー「ヴォーカル・ジャズ・アルバム」の出来栄えは ?

<Jazz,  Rock>

Beth Goldwater 「vintage」
自主製作 / IMPORT / BETH1901 / 2019

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Beth Goldwater   Vocals
Kyle Swartzwelder   Guitar
Nate Gonzalez   Piano, Organ
Owen Osborne   Drums 

  フィラデルフィア出身の女性シンガー、べス・ゴールドウォーターBeth Goldwater の全編スタンダード曲によるアルバムだ。これに至るには先日リリースされた寺島靖国の『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』に取上げられていたことによる。彼女は私にとっては初物で収録されていた曲"I'll Be Seeing You"が聴き応えあって、取り敢えずアルバムを取り寄せてみたという処だ。

 スタンダード曲を単なるジャズ分野と言うだけで無く、カントリー、米国南部の泥臭い白人ロックなどの要素の感じられるところなど結構多彩なヴォーカル世界を構築している。ちょっとマデリン・ペルーぽかったり、バラードの低音部はカレン・ソーザであったり、張り上げた高音はがらっとイメージが変わったりと、簡単に一概に言えないシンガーだ。

78543022_2532299556883257_88937962611073 (Tracklist)

1. All of Me
2. Perhaps, Perhaps, Perhaps
3. The Very Thought of You
4. Fly Me to the Moon
5. It Had to Be You
6. My Funny Valentine
7. Someone to Watch over Me
8. Whatever Lola Wants
9. Don't Get Around Much Anymore
10. I'll Be Seeing You
11. L-O-V-E
12. What a Wonderful World

 私が聴いてみようと思ったのは、バラードのやや暗めジャズ・ヴォーカルの雰囲気が良いと思っての事であったが、このアルバムではM1."All of Me", M2."Perhaps, Perhaps, Perhaps"(これは"キサス、キサス、キサス"ですね)のように軽快なテンポで、しかも声は高音部で結構張り上げてイメージは大違い。はっきり言ってそれ程の魅力は感じない。
 しかし、M3."The Very Thought of You" となるとガラッと印象は変わって、なかなか味のあるバラード・ヴォーカルで魅力的だ。スローな低音のヴォーカルが良いですね。
 上にみるように、12曲収められているが、そかなところから私がなかなか魅力があるぞと思ったのはバラード曲で、このM3M6."My Funny Valentine"そしてM10."I'll Be Seeing You"ですね。

Sl1600  ただ、所謂ジャズっぽいM4."Fly Me to the Moon"も無難にこなしてはいる。同様にM11."L-O-V-E", M12."What a Wonderful World"も聴き慣れている曲のせいか、納得した。そんな意味では全体的には合格点で、寺島靖国も迷いながら推薦していたのが良く解るところであった。

 ところで、ニュー・アルバムとしてこの続編といえる『Vintage Ⅱ』(→)がリリースされたようで、聴いてみようかどうしようかと・・・・迷っている今日この頃というところである。

(評価)
□ 選曲・歌   83/100
□   録音     80/100

(視聴)

 

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2020年11月10日 (火)

寺島靖国 Yasukuni Terashima Presents 「For Jazz Vocal Fans Only vol.4」

華やかに14歌姫の登場

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「For Jazz Vocal Fans Only vol.4」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1093 / 2020

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  今年も無事リリースされた寺島靖国のコンピレーション・アルバム「ジャズ・ヴォーカル・ファン 第4巻」、今年も14人の女性のオンパレードだ。このところのジャズ・ヴォーカルは完全に女性に席捲されている現在、当然と言えば当然のことである。
 さて今年は、選ばれた14枚のアルバムだが、私が所持しているのは5枚止まりだった。寺島靖国は、このアルバム作成においてはできるだけマイナーなミュージシャンを選ぶようにしているようで、その為ここでは実は私は知らなかったアルバムが多いことを期待しているところがある。つまり新しい発見が大歓迎なんですね。そんな訳でこれはなかなか良さそうだと初めて知ったアルバムがあると手に入れて聴くのが例年の楽しみでもあるのである。

(Tracklist)
1. Close Your Eyes [Saskia Bruin] 3:26
2. Manha De Carnival [Karen Lane] 4:05
3. I'll Be Seeing You [Beth Goldwater] 3:34
4. From The Inside Out [Lauren Henderson] 6:30
5. Johnny Guitar [Carol Welsman] 2:28
6. That Old Feeling [Alma Mi?i?] 3:47
7. I Didn't Know About You [Sidsel Storm] 3:36
8. Get Out of Town [Hetty Kate] 3:11
9. Stardust [Emma Pask] 6:35
10. I Concentrate On You [Callum Au & Claire Martin] 6:57
11. Deep In A Dream [Gretje Angell] 5:25
12. Let's Face The Music And Dance [Cajsa Zerhouni] 4:24
13. Windmills Of Your Mind [Stefanie Schlesinger] 6:55
14. The Carioca [Kimba Griffith] 5:05

  収録曲は、取り敢えず上のリストにみるような14曲だが、オープニングは低音の魅力のサスキア・ブルーイン、彼女は何時も聴いている一人。そしてまあ何と言ってもこの中でもガッチリ自己の立場を固め、トップクラスの圧力が感じられるのはキャロル・ウェルスマン(M5)、クレア・マーチン(M10)でしたね。何時もアルバムを持っていて聴いているこの二人の他に、私が既に聴いてきたのはシゼル・ストーム(M7)、ヘティー・ケイト(M8)、キンバ・グリフィス(M14)あたりである。従って彼女らは初ものでなくちょっと空しかったが、初もので結構興味を持ったヴォーカリストも何人かいて喜んでいる。

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 私にとっての初もの、まずその一人がM3."I'll Be Seeing You "のベス・ゴールドウォーター(上左)ですね、ちょっと一瞬カレン・ソウザを思い起こす歌いっぷりで面白いし、高音がひっくり返るところは、ヘイリー・ロレンだ。早速アルバム注文した。
 そして
 M4."From The Inside Out"のローレン・ヘンダーソン、ここではデュエットものだが魅力的。
 M6."That Old Feeling "のアルマ・ミチッチ、セルビアの出身とか、力みの無いところがむしろ刺激的。
 M.9." Stardust"のエマ・パスク、オーストラリア出身とか、なんとなくあどけなさの残った発声が引きつける(上中央)。
 M11."Deep In A Dream"のグレッジェ・エンジェルもなかなか柔らかさがあっていいですね(上右)。
 M13." Windmills Of Your Mind"のステファニー・シュレジンガー、彼女はドイツ出身で、歌のこなしがお見事。
 以上、この6人のアルバムは聴いてなかった中でも注目株として捉えた。是非ともそれぞれのアルバムにアプローチしたい。(下にアルバム取上げる)

(試聴 ↓ Beth Goldwater)

      ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ところで注目したアルバムの中で、何と言っても「ジャケ」が気に入ったのが、M13のステファニー・シュレジンガーだ。これは取り敢えず"ジャケ買い"をしてみようと仕入れてみた。(↓)

<Jazz>

Stefanie Schlesinger 「REALITY」
HIPJAZZ RECORDS / GERM / HIPJAZZ 012  / 2017

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STEFANIE SCHLESINGER(vo)
WOLFGANG LACKERSCHMID(vib)
MARK SOSKIN(p)
JOHN GOLDSBY(b)
GUIDO MAY(ds,per)
RYAN CARNIAUX(tp-3,8,9,12)

  どうですか、なかなかジャケ買いしそうなのが解りますか、彼女はドイツ・ハンベルグ出身1977年生まれのシンガーだ。声も低音から高音まで標準的に見事に美しく歌う。曲もなんとビートルズの"Fool on the Hill"があったりして是非聴いてみたいと思ったところ。
 私的には彼女は高音は張り上げずに静かに歌い上げた声の方がいい。寺島靖国がライナーで書いているように歌が旨い、そしてその特徴の出ているこのアルバムのM9."Windmills of Your Mind"のスタンダード曲が彼によって選ばれている。
 アルバム冒頭M1."Parole, Parole"は、ラテンタッチだが、彼女が好きなのか、しかしあまり向いていないように思うが。
 M2."The Summer Knows"、M7."With You"、M11."Munich Butterfly"のバラードものはなかなかいけると言う感想で、私は彼女はその方が魅力的で良いと思う。
 注目したM10."Fool on the Hill"は見事にジャズに変身してバック陣もそれなりの演奏で聴き応え十分だった。

Stefanieschlesinger20170616074135 (Tracklist)
1.Parole, Parole
2.The Summer Knows
3.Reality
4.Hotel Shanghai
5.Com Amor, Com O Mar
6.Ganz leise
7.With You
8.Hurra, wir leben noch
9.Windmills of Your Mind
10.Fool on the Hill
11.Munich Butterfly
12.The Winner Takes It All

(評価)
□ 編曲・歌  85/100
□ 録音    85/100

(参考視聴)

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2020年11月 6日 (金)

レベッカ・ピジョン超人気アルバム Rebecca Pidgeon 「THE RAVEN」

オーディオ界での人気曲"Spanish Harlem"収録盤
二十数年ぶりにMQA-CDでも復刻されていた

<Jazz>

Rebecca Pidgeon 「THE RAVEN」
Chesky/Universal music / JPN / MQA-115 / 2018

Theravenw

Rebecca Pidgeon (vocals, guitar)
Anthony Coote (guitar, background vocals)
George Naha (guitar)
Laura Seaton, Robert Chausow (violin)
Juliet Haffner (viola)
Erik Friedlander (cello)
Joel Diamond (piano)
Mitch Margold (synthesizer)
David Finck (bass)
Gary Burke (percussion)
Coco Kallis, Paul Miller, Stephanie Smothers, Elise Morris (background vocals)

Recorded on February 12th, 14th and 15th 1994 , at Mastersound Studios, Queens, NY.

 

D39eb190d8207fe3591b7799a819feb9  レベッカ・ピジョンRebecca Pidgeon (→)の1994年のアメリカ・デビュー盤『THE RAVEN』が、過去にCD, HQCD, SACD そしてアナログLP盤と、その録音・音質の程度の良さから復刻リリースされてきたが、一昨年にはなんと25年ぶりに、今や話題のハイレゾ音源であるMQA-CDにて刷新盤が出ていたんですね。

 このアルバムの日本での注目点は、なんといっても下に見る収録曲のNo12."SPANISH HARLEM"であって、この曲はオーディオショップやオーディオ展示会等のデモ用として定番の曲である。愛好家の多い『BEST Audiophile VOICES Ⅵ』にも収録されていた。とにかく音量をあげると、彼女のリアルな歌声が中央に声質がハッキリ分かって浮き上がってくる。その臨場感はただ事で無い。バックの演奏陣もベースを始めその配置もハッキリ奥行きまで感じられる録音で見事。そんな事から現在もオーディオ機器の試聴などには無くてはならない存在なのである。私を始め多くがこの曲だけでも満足するいう曰く付きアルバム。

 レベッカ・ピジョンは、1965年生れ、アメリカ・マサチューセッツ州出身。1994年にアメリカのジャズ系レーベルChesky でソロ・デビューがこのアルバム。彼女の世界は欧州トラッド色のニュアンスのあるところにあるが、それは英国のトラッド色の濃いフォーク・ロック・グループ「ルビー・ブルー」に参加していることによるようだ。映画監督のデイヴィッド・マメットと結婚。女優としても活動しているのは知られるところである。

 

(Tracklist)
01. Kalerka (03:03)
02. Witch (02:48)
03. Raven (02:51)
04. You Need Me There (03:40)
05. Grandmother (06:34)
06. You Got Me (03:02)
07. Heart And Mind (03:16)
08. Her Man Leaves Town (03:32)
09. Seven Hours (04:00)
10. Wendy's Style Shop (03:29)
11. Height Of Land (03:43)
12. Spanish Harlem (03:35)
13. Remember Me (02:31)

 全曲レベッカ本人による作詞作曲であり、そこがアルバム全体を通して彼女のパターンを実感できるところにある。M1."Kalerka"の冒頭からトラディショナルな味わいが強くどこか懐かしのおとぎ話の歴史世界に導かれる。声は透明感があってそこが又好まれるポイント。、歌唱法も力まずに自然でどこか清純感もあって聴いていて気分は良い。バックは曲により多彩な楽器の搭乗となるも、歌唱を支えるアコースティック響きでな演奏はジャズという世界とは別物で、下手な技巧というところはなく、これも好感の要因だ。

 自ら作詞・作曲のオリジナル曲で歌詞もロマンティックな女心世界。とにかく冒頭に書いたようにM12."Spanish Harlem"が凄い人気。ハーレムの奥深くに黒い瞳の麗人を見いだしての、可憐なバラの花に喩えて歌うという美しい歌だ。しかしそれにもましてアカペラに近い彼女の歌声が聴くものに汚れない純真な声が染みこんでくるところにファンが群がるのだ。さて、これを何処まで描けるかという処にオーディオ機器の能力評価に結びついている。

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 とにかくアルバム全編米国フォークソングとは一線を画す、欧州のトラッドにみる伝承物語に寄り添うと行った世界でそこに美が隠されていて、M10."Wendy's Style Shop"においても夢見る少女たちを素直に歌い上げていて好評。彼女の魅力とオーバラップして、このアルバムはいまだにファンが多いのだ。
 とにかく都会派でなくローカルな地方の自然との対話での人間模様という感じが、なにかホッとさせる安堵感がある。
 今夜もM12を聴いて自己のオーディオ装置に浸って欲しいのである。恐らくこれからも聴いてゆかれるもの思う。

(評価)
□ 曲・歌    95/100
□ 録音     95/100

(視聴)

 

*

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2020年11月 2日 (月)

マイケル・ベック・トリオ michael beck trio 「michael beck trio」

淡々としていてスリリングな新世界を探求する若き叙情派トリオ

マイケル・ベック・トリオ MICHAEL BECK TRIO

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  今年リリースされた寺島靖国の「Jazz for Audio Fans Only Vol.13」に収められた中で、少々気になったトリオがあったので、アルバムを探して取り寄せてみた。それがこのスイスのマイケル・ベック・トリオ Michael Beck Trioである。それが目下2枚のアルバムのみに行き着いたのだが、両者2003、2005年リリースもので15年以上前のものであった。
  そもそもは寺島靖国には、おそらくベースとドラムスのリアルな音からスタートしてピアノの淡々とした演奏が気に入られたのであろうと推測するが、特に選ばれた曲"928"は、スタートから澄んだ繊細なシンバル音が響いてくることが重要であったと思われる。私もドラムス、ベースの協演は好きで、寺島靖国の言うところのトランペット、サックスが共に鳴り響くものはちょっとゴメンというところにあり、そこも納得してこのアルバムを手にすることにした。

 しかし、若きこれほどのトリオが何故、その後15年間もアルバムが見当たらないのも不思議である(探せばあるのだろうか)。そんな事を考えながら聴いた2枚のアルバムを紹介する。

 

<Jazz>

█ michael beck trio 「michael beck trio」
  SOUNDHILLS / IMPORT / FSCD2025 / 2003

Triow_20201030140301

michael beck (p)
bänz oester (b)
samuel roher (ds)

Recorded at Radio DRS Zurich, Switzerland, February12-13, 2000

(Trackjlist)
01. Loose Ends *
02. 928 *
03. Poin Turnagain * 
04. Farewell
05. The Theme Of The Defeat
06. Open Doors
07. Three Men In A Boat * 
08. Everything I Love
09. Detour Ahead
10. Loose Ends (alt. take) *

 10曲のうち(*印)5曲はピアニストのマイケル・ベックの曲で、彼がリーダーと思われるが、スイス・ベルンに1968年に生まれていて、もともとはベルン大学で物理学と数学を専攻していたのだが、幼少期からクラシックのピアノを学んでいたこともあって、その後スイス・ジャズ・スクールに転学したという。ここでジョー・ハイダーの弟子となった。1992年にはウンブリア・ジャズ祭で入賞。奨学金を得て1994年から1997年までバークリー音楽院へ留学している。このアルバムは2000年の録音で、彼の32歳の作品である。
 淡々としたタッチで演じられるピアノ、そしてベース、ドラムとの三位一体となってのインプロヴィゼーション。この流れがなんとしても新時代タッチで、私が重要視するテンポ・ルバート奏法が洗練されていて、そのタイム感にどこか美しさがかんじられるところが味噌のように感じられる。
 そして時には、アヴァンギャルドな展開も加味して、究極は叙情派の流れを展開するところがいいですね。このアルバム、全編を通じて美事である。
 渡米中に映画音楽の作編曲を学んでいたこともあったようで、メロディアスで甘美さが見えるところも私好み。

       ~~~~~~~~~~~

█ michael beck trio 「ANOTHER DAY」
  Mons Records / IMPORT / MR874411 / 2005

Anotherdayw

Michael Beck(p)
Thomas Dürst(b)
Samuel Rohrer(ds)

Prodused for DRS2 by Peter Burli
Recorded Martin Pearson

(Tracklist)
1.Another Day
2.Rubato
3.Subsistence
4.Wind Dreams
5.Topic
6.Tune 101
7.Incubo
8.Otherwise
9.Dove
10.Rubato 2
11.Swing Sketch

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  数年後のこちらのアルバムは、ベースが変わってのトリオですね。今作は全曲ピアニスト・マイケル・ベックのオリジナルだ。
 冒頭から美しいピアノの調べ、そして繊細にして響くスティック、ドラムスの音、確かに録音も優れている。やっぱり、旋律はヨーロッパ的で、リリカルでいて、しかもしつこさが無く淡々と進行し、ベースとドラムスとの交錯インプロヴィゼーションが、なかなか近代的である。テンポは主体はミディアムで聴きやすい。なかなか例のルバードが有効に迫ってくる。そこにはかなり計算ずくの世界であろうと思うが、洗練された世界を印象づける。
  M2."Rubato"では、ベースのアルコ奏法をバックに、ピアノとスティック、シンバルを主体としたドラムスとの交錯には、近代性とクラシック奏法の美をも感ずる。
   M7."INCUBO"は、ピアノ、ベース、ドラムスがそれぞれ分離良く繊細に美しく録音されていてオーディオ・ファンにはたまらない曲。「ジャズは音で聴け」という寺島靖国の言葉が頭に浮かんでしまった。    
 とにかく全編に漲る淡々としたピアノの物語にふけってしまう世界である。
   
 このトリオの近況が解らないが、是非ともニュー・アルバムにたどり着きたいところである。寺島靖国の努力に期待するところだ。
   

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     90/100

(参考視聴)

 

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