エレン・アンデション Ellen Andersson 「YOU SHOULD HAVE TOLD ME」
ジャズ・ヴォーカルはこれだ !!・・・・と、
スウェーデンからの4年ぶりの待望本格派ジャズ・ヴォーカル・アルバム
<Jazz>
Ellen Andersson 「YOU SHOULD HAVE TOLD ME」
Prophone Recpords / sweden / PCD204 / 2020
Ellen Andersson エレン・アンデション (vocal)
Joel Lyssarides ヨエル・リュサリデス (piano except 3, 4, 5)
Anton Forberg アントン・フォシュベリ (guitar on 4, 5, 8, 9)
Niklas Fernqvist ニクラス・フェーンクヴィスト (bass)
Johan Lötcrantz Ramsay ユーハン・ローヴクランツ・ラムジー (drums)
Peter Asplund ペーテル・アスプルンド (trumpet on 1, 4)
Johanna Tafvelin ユハンナ・ターヴェリーン (violin on 2, 6, 8)
Nina Soderberg ニーナ・ソーデルベリ (violin on 2, 6, 8)
Jenny Augustinsson イェニー・アウスティンソン (viola on 2, 6, 8)
Florian Erpelding フローリアン・エーペルディング (cello on 2, 6, 8)
四年前にスウェーデンからの新人女性ジャズ・ヴォーカリストの有望株として紹介したエレン・アンデション(『I'LL BE SEEING YOU』(PCD165/2016))の待望のニューアルバムの登場だ(1991年生まれ)。とにかく嬉しいですね、あのセンス抜群のジャズ演奏とヴォーカルの協演がここに再びと言うことだ。ダイアナ・クラール、メロディ・ガルドーとこの秋、期待のニュー・アルバムが登場したが、彼女らの円熟には及ばずとは言え、あのJazzy not Jazz路線と違って、香り高きジャズ本流のヴォーカル・アルバムに挑戦していて感動であり、しばらく聴き入ってしまうこと間違いなし。
彼女はデンマークのヴォーカル・グループ「トゥシェ」のメンバーとしても活躍しているが、これは彼女のソロ・アルバム。
今回はジャズ・スタンダードそしてビートルズ、ミッシェル・ルグラン、ランディ・ニューマンなどの曲(下記参照)を、ジャズ色濃く編曲して妖艶さも増して披露している。
(Tracklist)
1. You Should Have Told Me (Bobby Barnes / Redd Evans / Lewis Bellin)
2. Once Upon A Summertime (Michel Legrand / Eddie Barclay)
3. You've Got A Friend In Me (Randy Newman) (vo-b-ds trio with 口笛)
4. Just Squeeze Me (Duke Ellington / Lee Gaines)
5. Too Young (Sidney Lippman / Sylvia Dee) (vo-g-b-ds quartet)
6. The Thrill Is Gone (Ray Henderson / Lew Brown)
7. ‘Deed I Do (Fred Rose / Walter Hirsch) (vo-p-b-ds quartet)
8. Blackbird (John Lennon / Paul McCartney)
9. I Get Along Without You Very Well (Hoagy Carmichael / Jane Brown Thompson)
エレン・アンデションの声は、なんとなくあどけなさの残った瑞々しい可憐さが感じられる上に、意外にも前アルバムでも顔を出した妖艶さが一層増して、ちょっとハスキーに響く中低音部を中心に、高音部は張り上げず優しく訴える端麗ヴォイスだ。
M1." You Should Have Told Me "のように、バックがジャズの醍醐味を演ずると("M7." ‘Deed I Do"なども)それと一体になりつつも、彼女の特徴は失わずに協演する。
M2."Once Upon A Summertime"はミッシェル・ルグランの曲、とにかく一転してピアノとストリングスでの美しさは一級で、彼女の心に染み入る中低音のテンダーなヴォーカルが聴きどころ。
M4."Just Squeeze Me"は、トランペットの響きから始まって、彼女のあどけなさとけだるさと不思議な魅力あるヴォーカルでベースの語り歌うような響きと共にジャズの世界に没頭させる。
女性叙情派ユーロ・ジャズ・ヴォーカル・ファンにお勧めは、なんと言っても素晴らしいM6." The Thrill Is Gone"だ。ストリングスの調べが加味した美しいピアノの音とメロディーに、しっとりと優しく囁きかけるように歌い上げるところだ。中盤にはピアノ・トリオがジャジーに演ずる中に後半ストリングスも加わって、再び彼女のヴォーカルが現れると静かに叙情的な世界を演ずる、見事な一曲。
M5."Too Young"のナット・キングコールの歌で歴史的ポピュラーな曲は、冒頭からアカペラで彼女の世界に引っ張り込み、静かに現れるバックのギターとジヤズ心たっぷりに描いてくれる。次第にベース、ドラムスが続き「静」から「動」にスウィングしてゆく流れはお見事と言いたい。
とにかく演奏陣が手を抜かない演奏が魅力的な中に、彼女のテンダーにして語りかけるロマンティックなヴォーカルと、なかなかアッシーな味付けの世界もみせ、それが一転してハードボイルドな色合いの強い演奏とのマッチングも出現し、そんな変幻自在な味付けが見事なアルバムである。一曲づつも良いがアルバム・トータルに是非聴くべき一枚。
(評価)
□ 編曲・演奏・歌 90/100
□ 録音 85/100
(試聴) "The Thrill is gone"
*
"Too Young"
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コメント
コンバンワ。アップ動画拝見して、とても気に入りました。確かにあどけさの中に妖艶さもあるなんとも言えない声ですね、あと、Too youngのスキャットを聴いて思ったのですが、チェット・ベイカーのスキャットの語り口をよく勉強しているのではないかと思いました。itunesで全曲ダウロードします。
投稿: zawinul | 2020年11月24日 (火) 22時52分
zawinulさん
コメントどうも有難うございます。
欧州ジャズも板についてきて、なかなか出色の作品もあって楽しいですね。
又、最近は北欧が、なんとなく日本の情緒と密接に感じられることの多い今日この頃です。
zawinulさんのところでもいつも勉強させていただいてますので、よろしくお願いします。^^)
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年11月25日 (水) 09時23分
風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。
おそくなりましたが、購入致しました。
曲に合わせて、楽器を上手に使い分けてましたね。
なにより、彼女も歌もスキャットも素敵でした。
私もリンクを貼っておきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2021/04/post-e97e8d.html
投稿: Suzuck | 2021年4月10日 (土) 12時06分
Suzuck様
こんばんわ
彼女のヴォーカルもいいのですが、所謂バック演奏陣との関係がいいですね・・・バックというよりは共に一曲を仕上げてゆくスタイルが如何にもジャズですね。Jazzy not Jazz路線とは違って、私は大歓迎しました。
リンクどうも有り難う御座います。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年4月10日 (土) 21時20分