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2020年12月29日 (火)

ウォルター・ラング Walter Lang Trio「TENS」

コロナ渦における欧州活動のみの制限から生まれた名曲再演盤

<Jazz>

Walter Lang Trio「TENS」
ENJA Yellowbird / Germ / ENJA9785 / 2020

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Walter Lang : piano
Thomas Markusson : bass
Magnus Öström : drums]

   今年もあとわずかになりました。とにかく今年はCovid-19の世界的流行の年、全てが人類原点に戻っての対応が強いられたような年でした。今だに第三派の波が襲ってきて、本来の活動が取り戻せない環境に甘んじなければならない状態である。これが今年の締めくくりとは情けない現実だ。

 さてそこで今年最後は、そんな事情であるからこそは出来たアルバムを取上げる。それはあの過去の名曲が新しいアレンジで収録で登場した一枚。Covid-19の流行の中、ミュージシャンは活動をいやが上でも制限された。日本でのライブもキャンセル。そこで新生ウォルター・ラング・トリオのセカンド・アルバムとも言えるものの登場なのだ。実はこのウォルター・ラングはなんとドイツ人でありながら、欧州より日本の方に圧倒的に知名度が高い。従って、現在彼は欧州圏内にての活動に制限されたため、まずは今となってドイツにてのプロモーション活動を行わざるを得なかった。そんな事情から、過去の名曲に目を付けここに再出発のような展開をしたわけだ。

 そしてこの2月にドイツにての録音となり、ドイツのジャズ・レーベル enja / Yellowbird Recordsと澤野工房のコラボレーションによるものという結果になったのである。
 又、これもいろいろと私の場合不手際があって、このアルバムの到着が遅れた。従って今になってレビューということになった。
 このメンバーでの前作『PURE』(2019)が良かったため、前作からのドラムスの元E.S.T.のMagnus Ostom もこの刺激の少ない美旋律にどう対応するかも聴きどころだ。

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1. The Beginning And The End
2. Soon
3. Little Brother
4. Meditation in F mi
5. Snow Castle
6. Branduardi
7. Misty Mountains
8. No Moon Night
9. Kansas Skies
10. I Wonder Prelude
11. I Wonder
12. When the day is done

 M1."The Beginning And The End"はアルバム『The Sound of a Rainbow』からだが、タイトルからして何やらこの現状の彼らを物語っている雰囲気ですね。そしてこのアルバムを聴いてみて、アレっこんな曲があったのかと思うのは、彼のトリオ・アルバムというのは刺激の無い優美にして安心感の強い曲だけあって、意外に覚えていないことに気がついた。

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 M2."Soon "のバラッド曲は、アルバム『Translucent Red』からで、私の好きな曲。落ち着いた心の流れを感じ取れる。
 アルバム『PURE』からの2曲、M3."Little Brother "は、7分以上の長曲で、愛情の感じられる曲であり、終盤に高揚してゆくところが聴きどころ。さらにM4."Meditation in F mi"も良いですね。スローな流れの中に、やや不安げな心の描写。
 M5、M6は、いつものラング流の軽い展開。
 アルバム『Starlight Reflections』からは、M7."Misty Mountains "M8."No Moon Night"で、M7.は広大な山岳風景をイメージさせる。M8.は、ちょっと現実離れの不思議な世界に、そして深遠な美しいメロディー。
 M9."Kansas Skies" カントリー・ロックの登場、『FULL CIRCLE』から。
   M10."I Wonder Prelude" ベースの物語からら始まる。なんと不思議な世界へ導かれることか。アルバム『Moonlight Echoes』の締めの曲。

 相変わらず、メロディーとピアノの音からウォルター・ラングと解る優しく何か整った安心感のある世界が展開している。トーマス・マークソンのベースも歌心を展開しているし、マグナス・オストロムもラングの世界にブラシ、スティックなど多彩な音で盛り上げている。特にオストロムはBugge Wesseltoft Trioとの関係もあるので、何かいろいろと微妙なところがありそうだ。かえってラングのもう一つの顔であるTRIO ELFの世界に意外にマッチングが良さそうにも思える、これからラングのトリオもいろいろと変化があるかも知れない。 

 みなさん、良いお年をお迎えください。

(評価)
□ 曲・演奏     85/100
□ 録音       85/100

(視聴)  "Meditation in F MI"

 

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2020年12月25日 (金)

アンドレア・モティス Andrea Motis 「do outro lado do azul もう一つの青」

女流 「歌うトランペッター」の世界を演ずる

<Jazz>

andrea motis 「do outro lado do azul もう一つの青」
VERVE / JPN / UCCM1251 /2019

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Andrea Motis : Vocals, Trumpet, flugelhorn, sax
Josep Traver : Guitar
Ignasi Terraza : piano
Joan Chamorro : double bass
Eateve Pi : drums
etc

 アンドレア・モティスは1995年バルセロナ生まれの若き女流トランペッターにしてシンガーのジャズ・ミュージシャン。彼女はスペインの天才少女的存在で、7歳からトランペットを吹いてきたと言うが、サン・アンドレウ市立音楽学校でジャズを学び、2012 年クインシー・ジョーンズが彼女をステージに上げたことがきっかけとなり一躍脚光を浴び2017 年にデビュー。まだ二十歳代半ばというには日本では名が売れている。再三の来日効果であろうが、それなりのジャズを演ずるからこそ、そして若き女性の魅力とともに話題を誘うのである。

 実は私はちょっと敬遠していたのだが、今年の秋の「ジャズ批評218」の"いま旬の歌姫たち2020"にもトップを飾って紹介されていて、それならばとアルバム入手に踏み切ったというところ。
  どちらかというと、ヴォーカルはキュート系でスペイン語、カタルーニャ語、ポルトガル語などもこなす言語達者、トランペット・プレイは可愛い彼女から発する音に聴く者はうっとりしているようだ。これは彼女のセカンドアルバムでブラジル音楽の世界へ接近していて彼女の歴史になろうと言われる作品。コロナ騒ぎのこのところは、丁度出産もあってお休みしているようだ。

Andreamotisemotionaldance (Tracklist)

1.Antonico
2.Sombra De La
3.Brisa
4.Sense Pressa
5.Mediterraneo
6.Filho De Oxum
7.Pra Que Discutir Com Madame
8.Danca Da Solidao
9.Saudades Da Guanabara
10.Choro De Baile
11.Record De Nit
12.Samba De Um Minuto
13.Baiao De Quatro Toques
14.jo vine

 

 曲は、オリジナル及びカヴァーの曲によって構成されている。
   M1."Antonico" やや物憂いように歌うサンバが意味ありげで気を引きますね。
 M2."Sombra De La"は、彼女のオリジナル曲で、ヴォーカルとFlugelhornが演じられている。特に印象に残るという程ではない。
 M3."Brisa" 快調なテンポで展開する。トランペット、ヴァイオリン、ピアノ、ドラムスのソロを後半並べて展開するが、聴く方より演者が楽しんでいるような曲仕上げ。まあメンバー紹介のようなものとして聴きました。
 M4."Sense Pressa"も彼女自身の曲。スローに展開する中にバックも小コンポで控えめ、何か意味深に訴えているようで、Flugelhornもしっとりしていて若き彼女としては成熟感あり聴き応えあり。
 M5."Mediterraneo"は典型的ラテン・タッチでありながら、スペイン・ムードを描く。彼女のソプラノ・サックスが後半に聴かせるところが味噌。
 M6."Filho De Oxum" 彼女のアカペラで始まり、カヴァキーニョ(ギター)の弦の響きに乗って艶のあるヴォーカルに焦点のある曲。

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 M7."Pra Que Discutir"はサンバの古典をハイテンポで、M8."Danca Da Solidao"は三つのローカル色の高いギターが列び、クラリネットが旋律を流し、彼女の充実ヴォーカルはこうだとブラジルの名曲をフラメンコ調でゆったりとひとりコーラスを含めて聴かせ魅力的。
 M9."Saudades Da Guanabara"はコーラスとトランペット・ソロというだけのもの。
 M10.".Choro De Baile" インスト・ナンバー、彼女のミュート・トランペットが登場しこれが聴きたかったがようやく登場。ヴァイオリンとの共演が珍しくテンポの良く明るめの曲であるが、私的にはちょっと期待外れ。
 M11."Record De Nit" なかなか味わい深い7弦ギターと彼女のヴォーカルのデュオ。この世界はいいですね。
 M12."Samba De Um Minuto" は、ムードはどっちつかず。
 M13.".Baiao De Quatro Toques"は、彼女のポルトガル語世界で締めくくる。このアルバムの意味づけがここにあることを強調している事が解るが、挿入曲からしてもブラジルをも関連して意識させるところがにくい。

 彼女のスペイン、ポルトガル、ブラジルの世界のそれぞれの文化や言語、リズムの意味に入っていこうとしての意欲が強く感ずるアルバムだ。若き天才と言われるのもそうした姿勢にも現れているのか、聴き応えのあるアルバムである。さて年輪を重ね侘(わ)び寂(さ)びがもう少し加わるとこれ又魅力が増すと思われた。

 

(評価)
□ オリジナル曲、カヴァー選曲、歌、演奏  85/100
□   録音・ミックス             80/100

(視聴)

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2020年12月21日 (月)

年末恒例の寺島靖国プレゼンツ「Jazz Bar 2020」

ピアノ・トリオ一点張りから、今年はサックスものも登場

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2020」
Terashima Records / JPN / TYR-1094 / 2020

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 しかし驚きですね、なんとこのコンピレーション・アルバムは20年の経過で20巻目のリリースとなったことだ。今こうしてみると過去のアルバム全てが棚に並んでいて、私にとっては好きなシリーズであったことを物語っている。

 プロデューサー寺島靖国(右下)は常々「歳と共に変化を楽しみ、常に新鮮な気持ちと興味を維持すべし」と口にしているとか。ピアノトリオへのこだわりは相変わらずだが、オーディオ的好みはその録音やミキシングのタイプにも確かに変化は出てきている彼だ。近年は前へ前へと出てくるリアル・サウンドから、音楽としての臨場感、奥行きの感覚に磨きがかかってきた感がある。
 そして「哀愁の名曲」探しは相変わらずで、我々日本人の心に沁みるメロディーを追求くれている。その為私も好きな欧州系をかなり探ってくれたという印象がある。新世代のミュージシャンの発見にも寄与してきてくれているし、私にも大いに影響を与えてくれたこのコンピレーション・アルバム・シリーズはやはり楽しみなのである。

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01. Night Waltz / Enrico Pieranunzi Trio
02. Elizete / The Chad Lawson Trio
03. Morgenstemning / Dag Arnesen
04. C'est Clair / Yes Trio
05. Tangorrus Field / Jan Harbeck Quartet
06. Danzon del Invierno / Nicki Denner
07. Bossa Nova Do Marilla / Larry Fuller
08. Contigo en la distancia / Harold Lopez-Nussa
09. La explicacion / Trio Oriental
10. Soft as Silk / David Friesen Circle 3 Trio
11. Vertigo / Opus 3 Jazz Trio
12. The Miracle of You / Niels Lan Doky
13. New York State of Mind / Harry Allen

 冒頭のM1."Night Waltz"は、昨年ここでレビューしたエンリコ・ピエラヌンツィのアルバム『NEW VOSION』(2019)(下左)からの曲。そしてM3."Morgenstemning "が北欧ノルウェーのダグ・アネルセンのかなり前の三部作のアルバム『NORWEGIAN SONG 2』(LOS 108-2/2011)(下中央)からであり、この2枚のアルバムが私の所持しているものであった。その他11曲は、幸運にも私にとっては未聴のアルバムからの選曲であり、初聴きで期待度が高い。
 そもそもこのアルバムを愛してきたのは、結構日本にいる者にとって一般的に知られていないモノを紹介してくれていること、又私のジャズ界では最も愛するピアノ・トリオものが圧倒的に多い、更にどことなく哀愁のある美メロディーを取上げてくれていることなどによる。そして初めて知ったものを私なりに深入りしてみようという気持ちになるモノが結構あることだ。更になんとなく欧州系のアルバムも多いと言うことが私の好みに一致しているのである。

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   M1."Night Waltz"と続くM2." Elizete "は、哀愁というよりはどちらかというと優美という世界。
 M3."Morgenstemning" 聴きなれたグリークのクラシックからの曲。ノルウェーのミュージクですね。美しい朝の光を浴びて・・・と言う世界。とにかく嫌みの全くないダグ・アネルセンの細工無しの美。
 M5."Tangorrus Field" (上右) 寺島にしては珍しくテナー・サックスの登場。デンマーク出身のヤン・ハルベック。私はうるさいサックスはちょっと苦手だが、彼の演ずるは豪放と言うが、この曲では何故か包容感のある優しさと幅の広さが感じられ、ピアノとの演じ合いに美しさすらある。今回のアルバムには、最後のM13."New York State og Mind"にはHarry Allenのサックスがやはり登場する。
 M7."Bossa Nova Do Marilla" は、ボサノバと言いながらも、驚きのLarry Fullerのピアノの旋律を演ずる流れはクラシックを思わせる。
 M8." Contigo en la distancia"(下左)、キューバのHarold Lopez-Nussaにしては、信じれないほど哀愁の演奏。いっやーー驚きました。
 M10."Soft as Silk" (下中央)、ベーシストのDavid Friesenの曲。どこか共演のGreg Goebelのピアノの調べが心の奧に響くところがあって、この人の造る曲にちょっと興味を持ちました。ベーシストって意外に美旋律の曲を書く人が多い気がしますが・・。
 M12."The Miracle og You" (下右)、このピアニストの Niels Lan Dokyって、実は名は知れているにもかかわらず過去に聴いて来なかった一人で、今回ちょっと興味をそそる技巧派ピアノに聴き惚れて、興味を持たせて頂きました。

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 今回は大きな獲物に飛びつけたという衝撃は無かったが、やはり寺島靖国の選曲にはやはり優美さ、美しさ、哀愁などはそれぞれにどこかに感ずる処があって、やはり年末恒例でこうして聴くことはベターなコンピレーション・アルバムと言うことことが出来る。
 とにかく20周年の成人となったこのシリーズにお祝いしたいところであった。

(評価)
□ 選曲、演奏           88/100
□ 録音(全体的に)      85/100

(参考試聴)

jan Harbeck Quartet "TANGORRUS FIELD"

*
Dag Amesen  " MORGENSTEMNING"

 

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2020年12月17日 (木)

カジサ・ゼルフーニ Cajsa Zerhouni 「ESTUARY」

スウェーデンから有力ジャズ・ヴォーカリストの登場

<Jazz>

Cajsa Zerhouni 「ESTUARY」
Do Music / Sweden / DMRCD075 / 2019

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Cajsa Zerhouni, vocals
Birgitta Flick, tenor saxophone
Mattias Lindberg, piano
Arvid Jullander, bass
Peter Danemo, drums

  スウェーデンで注目の(名前の読み方の難しい)女性ヴォーカリスト、カジサ・ゼルフーニの初の完全アルバムが登場、なかなかオーソドックスなジャズ・ヴォーカルを演ずる。バックはスウェーデンのピアニストのマティアス・リンドバーグ、ベーシストのアルビッド・ジュランダー、ドラマーのピーター・ダネモと、それに加えてベルリンを拠点としているというテナーサックス奏者ビルギッタ・フリックからなるカルテットであり、ジャズを究めんとしている様がしみじみ感じられる演奏、これも一つの注目点。

 そして彼女の全域にわたって温かみのある親近感があって居心地の良い歌声で、アメリカン・スタンダーズと自身のオリジナル2曲を歌っています。彼女は2018年に”My Billie”というビリー・ホリデイ・トリビュートのEPアルバムでデビューしたようだが、それは知らなかった。 

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1. September In The Rain
2. Let's Face The Music And Dance
3. Estuary *
4. How Deep Is The Ocean
5. Humdrum Blues
6. I Only Have Eyes For You
7. You Don't Know What Love Is
8. Contemplating Moon *
9. Dearly Beloved
10. Blame It On My Youth
( *印 : 彼女とメンバーなどとのオリジナル )

 こういった言い方も変だが・・・彼女自身、そしてバック・メンバー含めて、なかなか真面目にジャズを演じているという印象。それもスタンダード曲の編曲のパターンがそう思わせるのか、演奏の形、彼女の歌い方と共にそんな響きである。
 そして彼女の歌声は全域にわたって比較的ソフトでクリアで、むりやり技巧を凝らすいうところでなく素直な印象。それが魅力といった方が良さそうだ。

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   冒頭のM1."September In The Rain"そしてM2." Let's Face The Music And Dance"を聴くと、彼女のヴォーカルが如何にも中心であるという曲仕上げで、その曲のアレンジがスウェーデン流なのか、なんとく未完成っぽくて逆に新鮮度がある。バックの演奏もサックスが演ずるところでも、いやに出張ってくることもなく、ヴォーカル・アルバムを意識して仕上げているところに好感度高い。M2.などのピアノもなかなか中盤に熱演して見せて、ジャズの面白みもある。
 M3."Estuary "はアルバム・タイトル曲。スロー・ナンバーに仕上げていて、ヴォーカル、ピアノ、サックスが交互に展開の主役を演じながらも、何か一つの物語を聴かせてくれているようで引き込まれる。それはM4."How Deep Is The Ocean"でも同様で、聴く方にとってはゆったり感の中で、ジャズを楽しる。
 M5."Humdrum Blues"のブルース・リズムが異色で、楽しさもありこのアルバムでいい色を添える。   
 M6."I Only Have Eyes For You"などを聴くと、スウィングする中に極めてオーソドックスなジヤズ演奏である。
 M7."You Don't Know What Love Is" のバラードにしてもピアノ、サックスが美しく力みが無いところが良いし、歌声は嫌みが全くない。 

 とにかく、ちょっと希なジャズに接した印象で聴いたアルバムだ。おそらくこれは何回か聴いてゆくに味が出てくるというタイプだと思っている。私の評価は良い。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌  88/100
□ 録音       85/100


(参考視聴)

*

 

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2020年12月12日 (土)

ローレン・ヘンダーソン Lauren Henderson 「Alma Oscura」

叙情派ラテン・ヴォーカルにセクシーアッピール度も増して

<Jazz>

Lauren Henderson 「Alma Oscura」
BRONTOSAURUS RECORDS / IMPORT / BSR201901 /2019

Alma-oscura

Personnel:
Vocals - Lauren Henderson
Bass - Michael Thurber
Piano - Sullivan Fortner (4, 7, 8) & Damian Sim
Drums - Allan Mednard & Joe Saylor (4, 7)
Percussion - Moses Patrou
Violin Soloist - Tessa Lark
Violins - Lavinia Pavlish and Brendan Speltz
Harp - Charles Overton
Guitar - Gabe Schneider
Clarinet - Mark Dover
Flute - Emi Ferguson
Trumpet - Jon Lampley
Viola - Rose Hashimoto
Cello - Tara Hanish
Guest Vocals - Leo Sidran

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 ローレン・ヘンダーソンの実力評価については既に知られているところだが、今回私は初めて彼女のアルバムに手を付けてみた。これも寺島靖国の誘導ですね。もう8年前の『Jazz Bar 2012』、そして今年の『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』です。
 ラテン・タッチのヴォーカルが特徴あるが、マサチューセッツ州生まれだ。ただしもともとメキシコ、スペインに住んでいたことがあるようでスペイン語OKで、又フラメンコもこなしているという。
 収録曲は8曲で少なめのアルバム。プロデューサーはベーシストのMichael Thurberで4曲提供している。又彼女自身のオリジナル曲も4曲登場。うち両者の共作が1曲。

(Tracklist)
1. From The Inside Out (Leo Sidran)
2. Something Bigger (Michael Thurber)
3. Alma Oscura (Lauren Henderson & Michael Thurber)
4. El Arbol (Lauren Henderson)
5. Ven Muerte (Michael Thurber)
6. Where Are You Now? (Michael Thurber)
7. Protocol (Lauren Henderson)
8. Dream (Lauren Henderson)

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 M1."From The Inside Out" このアルバムの技術陣のMix担当のLeo Sidranの曲を、物憂げなラテンタッチで描き、なんと中盤から彼とのデュエットで仕上げた曲。意識的にセクシーにしたというのでなく、彼女の歌うところなんとなく不思議な女性としての魅力が漂う。
  M3."Alma Oscura" はアルバム・タイトル曲、プデューサーと彼女の共作曲で、このアルバムでの私の一押しの曲。しっとりとスペイン語で歌い込んで、これもなんとなくどこかセクシーなのだ。
 M5."Ven Muerte"も囁き調のヴォーカルで、雰囲気が女性ならではの味を出してうまい。
 M6."Where Are You Now?"、柔らかくソフト・タッチ・ヴォーカル、美しく歌うのだが、どこかこの作曲者のベーシストのMicheal Thurberの曲とはマッチングが良い感じで、彼女の女性的魅力を引き出している。
 M3.は、フルート、M5.はクラリネット、M6.はハープが入って曲作りも上手いし、M7."Protocol"はタンゴ調で、アルバムの曲の配列にメリハリを付けている。

 とにかく、オリジナル曲で作り上げていて、女性ヴォーカルとしてはなかなか引きつけるものがあるのが特徴。ラテン・タッチといっても、やや妖艶なムードをしっかり演ずるところは心憎いところがあるアルバムだ。今後も注目すべきヴォーカリストとしておきたい。

(参考)
Profile_vrt_raw_bw <Lauren Henderson : Discpgraphy>
Lauren Henderson (2011)
A La Madrugada (2015)
Armame (2018)
Alma Oscura (2019)
The Songbook Session (2020)

 

(評価)
□ 曲・演奏・歌   88/100
□ 録音       85/100

(参考視聴)

*

 

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2020年12月 8日 (火)

ティル・ブレナーand ボブ・ジェームス TILL BRÖNNER and BOB JAMES 「ON VACATION」

静かなトランペットは「都会の夜」
ヴォーカルは軽めにソフトに軽快に

<Jazz>

TILL BRÖNNER and BOB JAMES 「ON VACATION」
MASTERWORKS / IMPORT / 1943970012 / 2020

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Till Brönner  :  Flugelhorn, Trumpet, Vocal
Bob James :  Piano ,  Keyboards
Christian von Kaphengst :  double bass
Yuri Goloubev :  double bass
Harvey Mason : drums
David Haynes :  drums

 私にとっては"うるさいトランペット"は願い下げ、"静かなトランペット、ミュートを効かせた優しいトランペット"は「都会の夜」をイメージさせ大歓迎・・・と、両極端なんですね。
 そんな訳でドイツ出身のこのところ人気のティル・ブレナー(1971年生まれ)は良いですね。久々にトランペットとフリューゲルフォーンのアルバムを楽しんでいる。それもベテランのボブ・ジェームスの美しいピアノがあるのですから。これはどうも初めてのコラボレーションなんですね、そしてアルバム・ジャケも素直に細工無しで良いですね、これも手にする一条件(テイルの撮影作品のようです)。

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1.Save Your Love for Me
2.Lemonade
3.Late Night
4.Lavender Fields
5.September Morn
6.Elysium
7.I Get it From You
8.Miranda
9.Scent of Childhood
10.On Vacation
11.Sunset Vale
12.Basin Street Blues
13.If Someone had Told Me (ボーナストラック)

 オープニング曲M1."Save Your Love for Me"で、さっそく優しいテイルのフリューゲルフォーンとボブも力みの無いピアノとキーボードで応じていて、なかなかナイト・ムードも感じられいいです。
 M3."Late Night" の三曲目で、初めてティルの深遠なるトランペットが登場するが、意外にボブのピアノは軽快でその対比が面白い。
  M10."On Vacation"がアルバム・タイトル曲であるが、どちらかというと軽快に演じられ、ティルのヴォーカルもので、どこか洗練された軽いヴォーカルも味わい深い。M2."Lemonade"のボサノバも彼のヴォーカル入りで軽快にソフトに流す。成る程ここにこのアルバムのテーマを彼流の世界でしっかり生かしている。
 しかし私にとっての究極の曲はM8."Miranda"で、そこに描かれる静かなトランペット、美しいピアノの夜の語り合いムードがいいですね。やはり私はこの世界を聴くことがティル・ブレナーへの期待ですね。彼はチェット・ベイカーをちょっと連想させるところが、期待度の高いところだ。

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 しかし今回はアルバム・タイトルが、多分"秋の「On Vacation」"ですから、私の期待の「夜」を求めてはいけないのかも・・・、そんな意味ではM4."Lavender fields"では、トランペットもピアノも"のどかな風景"を連想させる世界を描いている。
  しかしながら締めくくりの曲のM11."Sunset Vale", M.12"Basin Street Blues"となると、フリューゲルフォーンではあるが、究極の持ち味の都会派ナイト・ムードになっていた。
 いずれにしても、ちょっと洗練された力みの無いジャズが聴けて心地よい。
 

(評価)
□ 編曲・演奏・ヴォーカル   85/100
□ 録音            85/100

(参考視聴)

 

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2020年12月 4日 (金)

グレッジェ・エンジェル Gretje Angell 「...in any key」

ヴェルベット・ヴォイスで・・・温かくソフトタッチで

<Jazz>

Gretje Angell 「...in any key」
GREVLINTO RECORDS / IMPORT / / 2018

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Gretje Angell (vocals)
Dori Amarilio (guitar)
Kevin Axt (Bass)
Gabe Davis (Bass)
Kevin Winard (Percussion)
Steve Hass (Drums)

Produced, arranged, recorded, mixed, mastered by Dori Amerilo

  このグレッジェ・エンジェルも私にとっては初物。彼女はオハイオ州アクロン生まれ、LAで活躍しているジャズヴォーカリストで、なんと遅咲きデビューアルバムだ。これも寺島靖国『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』で知ったもの。
 2世代に渡りジャズドラマーであった祖父と父親のもとに育った彼女は"幼少の頃からスモーキーで薄暗いジャズクラブで過ごした。そういう環境から物心つかないころから常にジャズが横にあった"と紹介されている。しかし音楽はクラシック、オペラを学んだ経歴があるようだ。
 このアルバムは、LAのギタリスト、プロデューサー、アレンジャーのドリ・アマリリオDori Amarilioによる企画のようだが、その彼とのデュオ作品。曲はスタンダーズやボサノバの比較的ポピュラーな曲が中心で、曲によってはPercussion 、Bass、 Drums 、Trumpet などの入る曲もあるも、 どちらかというとインティメイトな仕上がりである。

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1. Love Is Here to Stay
2. I'm Old Fashioned
3. Fever
4. Deep in a Dream
5. Berimbau
6. Do Nothing 'Til You Hear from Me
7. One Note Samba
8. Tea for Two
9. Them There Eyes

 

 もともとは、ソプラノ・オペラ歌手として活動していたという彼女だが、それとは信じられないほどのソフトで力みの無い優しいヴォーカルを展開する。主としてギターを演ずるプロデューサーのアマリリオの自宅での録音のようであり、その為か非常にリラックスした雰囲気である。
 流れはボサノバを中心とした軽めにソフトに軽快にといった流れで聴く方もリラックスできる。彼女の声も紹介ではベルベット・ウォイスと表されているが、とても好感度の高いところにある。

 ただ一曲だけオーケストラの入った曲M4."Deep in a Dream"があり、このアルバムでは異色。いわゆるJazzy noy Jazzのパターンでゆったりした美しく優しさ溢れた歌声であり、バックにミュートの効いたトランペットも入ってムード満点の仕上げ。これは寺島靖国に選ばれた曲。
 とにかくオープニングのM1." Love Is Here to Stay"からボサノバ・ギターのバックで、リラックスした雰囲気が盛り上がってくる。
 M3." Fever"は、彼女らしい世界。Percussionが流れを刻み、押さえたギター、ドラムスなどがリズムが快く展開。この曲は強烈に歌い上げることが出来るが、そうではなく力みが無くソフト・タッチ。これが彼女流なんでしょうね。
 M7."One Note Samba"、M8."Tea for Two"も、ギターとのデォオで、手慣れたヴォーカルを展開。途中にはアドリブも入って個性的作品にしている。

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 全9曲で36分24秒という短めのアルバムで、あっという間に終わってしまったという感のあるところ。これはアルバム番号も無く、自己出版なのか、いずれにしてもデビュー・アルバムとはいえ、彼女はキャリアも十分の既に円熟歌手の風格すらある。もっと頑張って欲しいヴォーカリストだ。

(評価)
□ 編曲・歌  88/100
□   録音    85/100

(視聴)   "One Note Samba"

 

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