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2020年12月29日 (火)

ウォルター・ラング Walter Lang Trio「TENS」

コロナ渦における欧州活動のみの制限から生まれた名曲再演盤

<Jazz>

Walter Lang Trio「TENS」
ENJA Yellowbird / Germ / ENJA9785 / 2020

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Walter Lang : piano
Thomas Markusson : bass
Magnus Öström : drums]

   今年もあとわずかになりました。とにかく今年はCovid-19の世界的流行の年、全てが人類原点に戻っての対応が強いられたような年でした。今だに第三派の波が襲ってきて、本来の活動が取り戻せない環境に甘んじなければならない状態である。これが今年の締めくくりとは情けない現実だ。

 さてそこで今年最後は、そんな事情であるからこそは出来たアルバムを取上げる。それはあの過去の名曲が新しいアレンジで収録で登場した一枚。Covid-19の流行の中、ミュージシャンは活動をいやが上でも制限された。日本でのライブもキャンセル。そこで新生ウォルター・ラング・トリオのセカンド・アルバムとも言えるものの登場なのだ。実はこのウォルター・ラングはなんとドイツ人でありながら、欧州より日本の方に圧倒的に知名度が高い。従って、現在彼は欧州圏内にての活動に制限されたため、まずは今となってドイツにてのプロモーション活動を行わざるを得なかった。そんな事情から、過去の名曲に目を付けここに再出発のような展開をしたわけだ。

 そしてこの2月にドイツにての録音となり、ドイツのジャズ・レーベル enja / Yellowbird Recordsと澤野工房のコラボレーションによるものという結果になったのである。
 又、これもいろいろと私の場合不手際があって、このアルバムの到着が遅れた。従って今になってレビューということになった。
 このメンバーでの前作『PURE』(2019)が良かったため、前作からのドラムスの元E.S.T.のMagnus Ostom もこの刺激の少ない美旋律にどう対応するかも聴きどころだ。

Walter20lang2trx (Tracklist)

1. The Beginning And The End
2. Soon
3. Little Brother
4. Meditation in F mi
5. Snow Castle
6. Branduardi
7. Misty Mountains
8. No Moon Night
9. Kansas Skies
10. I Wonder Prelude
11. I Wonder
12. When the day is done

 M1."The Beginning And The End"はアルバム『The Sound of a Rainbow』からだが、タイトルからして何やらこの現状の彼らを物語っている雰囲気ですね。そしてこのアルバムを聴いてみて、アレっこんな曲があったのかと思うのは、彼のトリオ・アルバムというのは刺激の無い優美にして安心感の強い曲だけあって、意外に覚えていないことに気がついた。

15000_walterlangtrio_2020


 M2."Soon "のバラッド曲は、アルバム『Translucent Red』からで、私の好きな曲。落ち着いた心の流れを感じ取れる。
 アルバム『PURE』からの2曲、M3."Little Brother "は、7分以上の長曲で、愛情の感じられる曲であり、終盤に高揚してゆくところが聴きどころ。さらにM4."Meditation in F mi"も良いですね。スローな流れの中に、やや不安げな心の描写。
 M5、M6は、いつものラング流の軽い展開。
 アルバム『Starlight Reflections』からは、M7."Misty Mountains "M8."No Moon Night"で、M7.は広大な山岳風景をイメージさせる。M8.は、ちょっと現実離れの不思議な世界に、そして深遠な美しいメロディー。
 M9."Kansas Skies" カントリー・ロックの登場、『FULL CIRCLE』から。
   M10."I Wonder Prelude" ベースの物語からら始まる。なんと不思議な世界へ導かれることか。アルバム『Moonlight Echoes』の締めの曲。

 相変わらず、メロディーとピアノの音からウォルター・ラングと解る優しく何か整った安心感のある世界が展開している。トーマス・マークソンのベースも歌心を展開しているし、マグナス・オストロムもラングの世界にブラシ、スティックなど多彩な音で盛り上げている。特にオストロムはBugge Wesseltoft Trioとの関係もあるので、何かいろいろと微妙なところがありそうだ。かえってラングのもう一つの顔であるTRIO ELFの世界に意外にマッチングが良さそうにも思える、これからラングのトリオもいろいろと変化があるかも知れない。 

 みなさん、良いお年をお迎えください。

(評価)
□ 曲・演奏     85/100
□ 録音       85/100

(視聴)  "Meditation in F MI"

 

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コメント

風呂井戸さま、一年間お世話になりました。

コロナ禍であり、いろいろな状況もあって、
このアルバムのリリースとなったようですよね。
オストロムは、引く手数多なので、、この先どうなることでしょうねぇ。

来年もよろしくお願いします。

https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2020/10/post-3cc55c.html

投稿: Suzuck | 2020年12月31日 (木) 14時53分

風呂井戸さん、今年もお世話になりました。
いつも上質な音楽を紹介してくださり、大変興味深いです。
自分といえばピアノ音楽に執着した一年だったような、、、(笑)
早く平穏な日々になることを祈りたいですね。
来年もどうぞ宜しくお願いします。
ではでは

投稿: nanmo2 | 2020年12月31日 (木) 22時25分

Suzuckさま、
こんばんわ、もう今年もあとわずかですね、いろいろと楽しませて頂いて有り難う御座いました。
「ジャズ批評」のこのアルバム評価紹介も拝見しました。これから彼は日本だけで無く、欧州でどのような評価を勝ち取るかも興味あります。
 私自身は欲を言えばもう一つ陰影が深いと更に私好みになると思ってます。
 さて来たる年も更なる御活躍期待しています。佳いお年を迎えてください。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年12月31日 (木) 22時53分

nanmo2さん
こんばんわ、今年ももう後わずかになってしまいましたね。
私も一番好きなのはピアノ・トリオです。そして歳がいも無く、女性ジャズ・ヴォーカルもこよなく愛しています。実はプログレシブ・ロックが好きなんですが、何となく話題が少なかったです。
 今年nanmo2さんのご紹介のピアニストも知らなかったミュージシャンも多く参考になりました。有り難う御座います。
 来たる年も御健闘ください。そしてご多幸なる一年になりますよう祈念いたします。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年12月31日 (木) 23時03分

風呂井戸さん、ごぶさたしています、monakaです。
いつも素晴らしい情報をありがとうございます。
お正月ウォルター・ラングもいいかもしれない
と思います。と言っても一枚も持っていないのでこれを聞いてたのしませていただきます。
本年も宜しくお願いします。

投稿: monaka | 2021年1月 1日 (金) 09時27分

monicaさん
今年もよろしくお願いします。
年末年始は、ウォルター・ラングの線は結構いいですね。しっかり聴いてました。
そしてふと昔のロックもついでに聴いたりして、その似合わない両面が新年の気持ちというところでしょうか。
今年もご健闘ください。期待しています。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年1月 1日 (金) 21時18分

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