アンドレア・モティス Andrea Motis 「do outro lado do azul もう一つの青」
女流 「歌うトランペッター」の世界を演ずる
<Jazz>
andrea motis 「do outro lado do azul もう一つの青」
VERVE / JPN / UCCM1251 /2019
Andrea Motis : Vocals, Trumpet, flugelhorn, sax
Josep Traver : Guitar
Ignasi Terraza : piano
Joan Chamorro : double bass
Eateve Pi : drums
etc
アンドレア・モティスは1995年バルセロナ生まれの若き女流トランペッターにしてシンガーのジャズ・ミュージシャン。彼女はスペインの天才少女的存在で、7歳からトランペットを吹いてきたと言うが、サン・アンドレウ市立音楽学校でジャズを学び、2012 年クインシー・ジョーンズが彼女をステージに上げたことがきっかけとなり一躍脚光を浴び2017 年にデビュー。まだ二十歳代半ばというには日本では名が売れている。再三の来日効果であろうが、それなりのジャズを演ずるからこそ、そして若き女性の魅力とともに話題を誘うのである。
実は私はちょっと敬遠していたのだが、今年の秋の「ジャズ批評218」の"いま旬の歌姫たち2020"にもトップを飾って紹介されていて、それならばとアルバム入手に踏み切ったというところ。
どちらかというと、ヴォーカルはキュート系でスペイン語、カタルーニャ語、ポルトガル語などもこなす言語達者、トランペット・プレイは可愛い彼女から発する音に聴く者はうっとりしているようだ。これは彼女のセカンドアルバムでブラジル音楽の世界へ接近していて彼女の歴史になろうと言われる作品。コロナ騒ぎのこのところは、丁度出産もあってお休みしているようだ。
1.Antonico
2.Sombra De La
3.Brisa
4.Sense Pressa
5.Mediterraneo
6.Filho De Oxum
7.Pra Que Discutir Com Madame
8.Danca Da Solidao
9.Saudades Da Guanabara
10.Choro De Baile
11.Record De Nit
12.Samba De Um Minuto
13.Baiao De Quatro Toques
14.jo vine
曲は、オリジナル及びカヴァーの曲によって構成されている。
M1."Antonico" やや物憂いように歌うサンバが意味ありげで気を引きますね。
M2."Sombra De La"は、彼女のオリジナル曲で、ヴォーカルとFlugelhornが演じられている。特に印象に残るという程ではない。
M3."Brisa" 快調なテンポで展開する。トランペット、ヴァイオリン、ピアノ、ドラムスのソロを後半並べて展開するが、聴く方より演者が楽しんでいるような曲仕上げ。まあメンバー紹介のようなものとして聴きました。
M4."Sense Pressa"も彼女自身の曲。スローに展開する中にバックも小コンポで控えめ、何か意味深に訴えているようで、Flugelhornもしっとりしていて若き彼女としては成熟感あり聴き応えあり。
M5."Mediterraneo"は典型的ラテン・タッチでありながら、スペイン・ムードを描く。彼女のソプラノ・サックスが後半に聴かせるところが味噌。
M6."Filho De Oxum" 彼女のアカペラで始まり、カヴァキーニョ(ギター)の弦の響きに乗って艶のあるヴォーカルに焦点のある曲。
M7."Pra Que Discutir"はサンバの古典をハイテンポで、M8."Danca Da Solidao"は三つのローカル色の高いギターが列び、クラリネットが旋律を流し、彼女の充実ヴォーカルはこうだとブラジルの名曲をフラメンコ調でゆったりとひとりコーラスを含めて聴かせ魅力的。
M9."Saudades Da Guanabara"はコーラスとトランペット・ソロというだけのもの。
M10.".Choro De Baile" インスト・ナンバー、彼女のミュート・トランペットが登場しこれが聴きたかったがようやく登場。ヴァイオリンとの共演が珍しくテンポの良く明るめの曲であるが、私的にはちょっと期待外れ。
M11."Record De Nit" なかなか味わい深い7弦ギターと彼女のヴォーカルのデュオ。この世界はいいですね。
M12."Samba De Um Minuto" は、ムードはどっちつかず。
M13.".Baiao De Quatro Toques"は、彼女のポルトガル語世界で締めくくる。このアルバムの意味づけがここにあることを強調している事が解るが、挿入曲からしてもブラジルをも関連して意識させるところがにくい。
彼女のスペイン、ポルトガル、ブラジルの世界のそれぞれの文化や言語、リズムの意味に入っていこうとしての意欲が強く感ずるアルバムだ。若き天才と言われるのもそうした姿勢にも現れているのか、聴き応えのあるアルバムである。さて年輪を重ね侘(わ)び寂(さ)びがもう少し加わるとこれ又魅力が増すと思われた。
(評価)
□ オリジナル曲、カヴァー選曲、歌、演奏 85/100
□ 録音・ミックス 80/100
(視聴)
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コメント
ジャズ・アイドル。愛くるしさと周りのおじさんたちのノリノリのはしゃぎぶりからそんな感じがします。こんなアイドルがどんどん出てきたら、うれしいのですが ・・。
投稿: 爵士 | 2020年12月30日 (水) 10時00分
爵士さん
こんばんわ、もう今年も終わりですね、今年もいろいろと有り難う御座いました。
本日も行事がありましてようやく一息ついています。
アンドレア・モティスは評判は聞いていましたが、初めてアルバムをしっかり聴いてみました。確かにキュートなところがありながら、それなりにジャズを深めているところもあって、楽しみですね。トランペットを主体に演ずるところも発展性は大きく秘めているところを感じました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年12月31日 (木) 22時45分
何ともキュートで魅力的な方が…
変わらず安定のジャズ女史のご紹介常々拝見しておりますので、またどこかでつまみ食いなど…、いえ、失礼(笑)。
2021年も楽しませて頂きます。
写真の方も素晴らしくチョコチョコ拝見させてもらってますよ♪
投稿: フレ | 2021年1月 1日 (金) 00時38分
フレさん
今年もよろしくお願いします
このモティスは、ジャズといっても私の求めるところとちょっと違ってますが、聴いてみると成る程、お父さん方が寄ってくるのも解らないでは無い。
彼女がいつかはそれから脱皮してトランペッターとヴォーカリストで唸らせて欲しいと思ってます。
ところで、フレさんの最近のブログの充実度が半端でないところ、何か思うところがあったのでは・・・と、今年も期待しています。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年1月 1日 (金) 21時14分