2021年の幕開け -「原子心母」「原子心母の危機」
今年は辛丑(かのとうし)年(牛)・・・・・「帰馬方牛」を願いつつ
「帰馬方牛」
戦争が終わって平和になることのたとえ。
または、二度と戦争をしないことのたとえ。
戦争のための馬や牛を野性にかえすという意味から。
(殷の紂王を討ち取った周の武王は、戦争で使った馬を崋山の南で放ち、牛を桃林の野に放って二度と戦争に用いないことを示した故事から)
出典 『書経』
2019年は全世界「コロナ渦」にのまれ、影に隠れていた世界情勢、そして日本の情勢には、甚だ疑問の姿を感じざるを得ない。歪んだポピュリズム、ナショナリズムの台頭、戦後の平和を維持するリベラリズムに対しての新自由主義の負の部分の支配、人種問題。そして日本での安倍政権以来顕著となった政府の独裁化と道義崩壊、対近隣諸国との政策の危険性、原子力政策の危険性、国民無関心化の助長などなど、新年に当たって多くの問題を考えざるを得ない。
「丑(牛)」にちなんで、Pink Floyd「原子心母 Atom Heart Mother」そしてMORGAUA QUARTET「原子心母の危機 Atom Heart Mother is on the edge」へと流れるのである
それはウォーターズの"人間と社会への不安"から荒井英治の"音楽は現実から逃避してはならない"へとの流れである。
█ <Progressive Rock> Pink Floyd
「原子心母」 Atom Heart Mother
Harvest / UK / SHVL-781 / 1970
(Tracklist)
1. Atom Heart Mother, 2.If, 3.Summer'68, 4.Fat Old Sun, 5.Alan's Psychedelic Breakfast
1970年発表。
全英チャート初登場1位、全米でも55位を記録するなど世界的にヒットして、ピンク・フロイドを世界的バンドとして押し上げられたアルバム。
プログレッシブ・ロックというものを世界をはじめ日本でも認知させた。
ここには、ペース・メーカーで生き延びている妊婦を見てのウォーターズの人間観から生まれた不思議なタイトル「原子心母」、ロックとクラシック更に現代音楽を融合させたロン・ギーシン。そして既にB面には、ウォーターズにまつわる人間や社会への不安が頭を上げ、それを美しく歌ったM2."If"が登場、これ以降彼の曲はその不安との葛藤が続くのである。M4."Fat Old Sun"はギルモアのギターによる音楽的追求が始まっている。
アルバム『モア』以降、ギルモアを呼び込んでバンド造りに努力したウォーターズ。しかし四人の音楽感の違いから分裂直前であったが、この『原子心母』ヒットで彼らは嫌が上でもバンド活動を続け、その後の『おせっかい』、『狂気』と最高傑作に向かう。
█ <Classic> MORGAUA QUARTET
「原子心母の危機」 Atom Heart Mother is on the edge
日本コロンビア/ JPN / CD-COCQ85066 /2014
(Tracklist)
1. レッド(キング・クリムゾン) Red(King Crimson)
2. 原子心母(ピンク・フロイド) Atom Heart Mother(Pink Floyd)
3. 平和~堕落天使(キング・クリムゾン) Peace~Fallen Angel including Epitaph(King Crimson)
4. ザ・シネマ・ショウ~アイル・オヴ・プレンティ(ジェネシス) The Cinema Show~Aisle of Plenty(Genesis)
5. トリロジ-(エマーソン・レイク&パーマー) Trilogy(Emerson Lake and Palmer)
6. 危機(イエス) Close to the Edge(Yes)
i) 着実な変革 ⅱ) 全体保持 ⅲ) 盛衰 iv) 人の四季
7. ザ・ランド・オブ・ライジング・サン(キ-ス・エマ-ソン) The Land of Rising Sun(Kieth Emerson)
MORGAUA QUARTET
荒井英治(第1ヴォイオリン、東京フィル交響楽団ソロ・コンサートマスター)
戸澤哲夫(第2ヴォイオリン、東京シティ・フィル管弦楽団コンサートマスター)
小野富士(ヴィオラ、NHK 交響楽団次席奏者)
藤森亮一(チェロ、NHK 交響楽団首席奏者)
編曲:荒井英治
録音:2013年 9 月 30日、2014 年1月27日、2月7日、クレッセント・スタジオ
プログレ至上主義者、ヴァイオリンの荒井英治による入魂のアレンジにより、クラシック・カルテットの演奏アルバム。宣伝文句は「この危機の時代に、新たな様相で転生するプログレ古典の名曲群」で、まさにそんな感じのアルバム。
このモルゴーア・カルテットは、ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲を演奏するために結成されたカルテット。東大震災に衝撃を受けたキース・エマーソンが書き上げたピアノ小品の弦楽四重奏編曲に荒井英治(第1ヴァイオリン)は心を打たれた。震災に伴っての世紀の世界的人災「福島の危機」とピンク・フロイドの「原子心母」、そしてその同一線上にクリムゾン「レッド」、イエス「危機」を見ることで、このアルバム製作となったと。
「音楽は現実からの逃避になってはならない。逆に立ち向かうべきことを教えてくれるのではないか」 (荒井英治)
(視聴)
pink floyd "Atom Heart Mother"
*
morgaua quartet "Atom Heart Mother is on the edge"
*
morgaua quartet "atom heart mother"
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- レイヴェイ Laufey 「Bewitched」(2023.09.28)
- ミシェル・ンデゲオチエロ Meshell Ndegeocelle「The Omnichord Real Book」(2023.09.23)
- アロン・タラス Aron Talas Trio 「New Questions, Old Answers」(2023.09.17)
- カレン・ソウサ Karen Souza 「Suddenly Lovers」(2023.09.12)
- ビル・エヴァンス・リマスター・シリーズ Bill Evans 「Waltz for Debby」etc(2023.09.02)
「ROCK」カテゴリの記事
- ウィズイン・テンプテーション Within Temptation 「Wireless」(2023.08.12)
- ピンク・フロイドの頭脳・ロジャー・ウォーターズ「新『狂気』」10月公開 Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」(2023.07.23)
- ロジャー・ウォーターズ 2023欧州ライブ プロショット映像版 Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」(2023.06.23)
- イメルダ・メイ Imelda May 「11 Past the Hour」(2023.05.04)
- レベッカ・バッケン Rebekka Bakken 「Always On My Mind」(2023.04.23)
「ピンク・フロイド」カテゴリの記事
- ピンク・フロイドの頭脳・ロジャー・ウォーターズ「新『狂気』」10月公開 Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」(2023.07.23)
- ロジャー・ウォーターズ 2023欧州ライブ プロショット映像版 Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」(2023.06.23)
- ロジャー・ウォータース Roger Waters 「The Lockdown Sessions」(2022.12.12)
- ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 「Comfortably Numb 2022」(2022.11.25)
- ピンク・フロイド Pink Floyd 「Animals 2018 Remix」(2022.09.20)
「雑談」カテゴリの記事
- 「ジャズ批評」誌=ジャズオーディオ・ディスク大賞2021 (追加考察) セルジュ・ディラート Serge Delaite Trio 「A PAZ」(2022.03.19)
- MQAハイレゾで蘇る・・(1) シェルビィ・リンShelby Lynne 「Just A Little Lovin'」(2021.09.18)
- Sony のやる気は半端でなかった-「Sony α1」の登場(2021.02.03)
- 2021年の幕開け -「原子心母」「原子心母の危機」(2021.01.02)
- セルゲイ・グリシュークSergey Grischukのミュージック(2020.04.28)
「キング・クリムゾン」カテゴリの記事
- 2021年の幕開け -「原子心母」「原子心母の危機」(2021.01.02)
- King Crimson 2019年10月映像版「Rock in Rio 2019」(2019.10.31)
- キング・クリムゾンKing Crimson ニュー・アルバム「AUDIO DIARY 2014-2018」(2019.10.27)
- 72年の キング・クリムゾンKing Crimson 「Live in Newcatle」(2019.10.23)
- キング・クリムゾンKing Crimson Live in Mexico「MELTDOWN」(2018.11.05)
「CLASSIC」カテゴリの記事
- アントニオ・アルテーゼ Antonio ArteseTrio「Two Worlds」(2023.01.17)
- トルド・グスタフセンTord Gustavsen ノルウェー少女合唱団 「Sitlle Grender」(2023.01.12)
- 小曽根真 ピアノ・ソロ「OZONE 60」(2021.10.02)
- Brad Mehldau の試み == 「Suite: Aprill 2020」 「 VARIATIONS ON MERLANCHOLY THEME」(2021.06.18)
- 石上真由子 Mayuko Ishigami 「Janáćek : Violin Sonata」(2021.05.26)
「イエス」カテゴリの記事
- 2021年の幕開け -「原子心母」「原子心母の危機」(2021.01.02)
- ブートDVD鑑賞~イエスYES : 「Pennsylvania,USA 2012」(2013.04.28)
- イエス(3): ニュー・アルバム「YES / FLY FROM HERE」(2011.06.26)
- イエスYESの回顧(2) : ”90125イエス”から”8人イエス”、そして分解(2010.09.27)
- まだまだ続いているロック・バンドのイエス(YES)は?(2010.09.22)
「Progressive ROCK」カテゴリの記事
- ピンク・フロイドの頭脳・ロジャー・ウォーターズ「新『狂気』」10月公開 Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」(2023.07.23)
- ロジャー・ウォーターズ 2023欧州ライブ プロショット映像版 Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」(2023.06.23)
- ロジャー・ウォータース Roger Waters 「The Lockdown Sessions」(2022.12.12)
- ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 「Comfortably Numb 2022」(2022.11.25)
- ドリーム・シアター Dream Theater 「Rock in Rio 2022」(2022.11.21)
コメント
謹賀新年、本年もよろしくです。
早速ながら、この手があったか、と。
最近クラシックにも手を出しつつあるので、morgaua quartetから聴き始めればよかったのか、とも思った次第…。
最近は…、はい、思う所あり、でガッツリ聴いてガッツリ書きたい、とは思ってますね。
投稿: フレ | 2021年1月 3日 (日) 23時16分
フレさん
早々のコメントありがとうございます
こちらこそ今年もよろしくお願いします
クラシックもロックもジャズもない私でして・・・この新年は「展覧会の絵」をELPそしてクラシック・ピアノ・ソロ、オーケストラ版と楽しみました。
ムソルグスキー万歳でした。
そしてマーラーでひと段落。
音楽は、コロナ騒ぎの中では最も有力な手段ですね。^^) ロックも忘れていませんのでよろしくお願いします。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年1月 4日 (月) 15時07分