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2021年1月 2日 (土)

2021年の幕開け -「原子心母」「原子心母の危機」

今年は辛丑(かのとうし)年(牛)・・・・・「帰馬方牛」を願いつつ

「帰馬方牛」
戦争が終わって平和になることのたとえ。
または、二度と戦争をしないことのたとえ。
戦争のための馬や牛を野性にかえすという意味から。
(殷の紂王を討ち取った周の武王は、戦争で使った馬を崋山の南で放ち、牛を桃林の野に放って二度と戦争に用いないことを示した故事から)
出典 『書経』

 2019年は全世界「コロナ渦」にのまれ、影に隠れていた世界情勢、そして日本の情勢には、甚だ疑問の姿を感じざるを得ない。歪んだポピュリズム、ナショナリズムの台頭、戦後の平和を維持するリベラリズムに対しての新自由主義の負の部分の支配、人種問題。そして日本での安倍政権以来顕著となった政府の独裁化と道義崩壊、対近隣諸国との政策の危険性、原子力政策の危険性、国民無関心化の助長などなど、新年に当たって多くの問題を考えざるを得ない。

 「丑(牛)」にちなんで、Pink Floyd「原子心母 Atom Heart Mother」そしてMORGAUA QUARTET「原子心母の危機 Atom Heart Mother is on the edge」へと流れるのである
 それはウォーターズの"人間と社会への不安"から荒井英治の"音楽は現実から逃避してはならない"へとの流れである。

 

91pv5nyeiklw  █ <Progressive Rock> Pink Floyd
   「原子心母」 Atom Heart Mother
    Harvest / UK / SHVL-781 / 1970

 
 (Tracklist)

    1. Atom Heart Mother, 2.If, 3.Summer'68, 4.Fat Old Sun, 5.Alan's Psychedelic Breakfast 



1970年発表。
 全英チャート初登場1位、全米でも55位を記録するなど世界的にヒットして、ピンク・フロイドを世界的バンドとして押し上げられたアルバム。
 プログレッシブ・ロックというものを世界をはじめ日本でも認知させた。
 ここには、ペース・メーカーで生き延びている妊婦を見てのウォーターズの人間観から生まれた不思議なタイトル「原子心母」、ロックとクラシック更に現代音楽を融合させたロン・ギーシン。そして既にB面には、ウォーターズにまつわる人間や社会への不安が頭を上げ、それを美しく歌ったM2."If"が登場、これ以降彼の曲はその不安との葛藤が続くのである。M4."Fat Old Sun"はギルモアのギターによる音楽的追求が始まっている。
 アルバム『モア』以降、ギルモアを呼び込んでバンド造りに努力したウォーターズ。しかし四人の音楽感の違いから分裂直前であったが、この『原子心母』ヒットで彼らは嫌が上でもバンド活動を続け、その後の『おせっかい』、『狂気』と最高傑作に向かう。

 

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  <Classic> MORGAUA QUARTET
 「原子心母の危機」 Atom Heart Mother is on the edge
     日本コロンビア/ JPN / CD-COCQ85066 /2014


 

 


(Tracklist)
1. レッド(キング・クリムゾン) Red(King Crimson)
2. 原子心母(ピンク・フロイド) Atom Heart Mother(Pink Floyd)
3. 平和~堕落天使(キング・クリムゾン) Peace~Fallen Angel including Epitaph(King Crimson)
4. ザ・シネマ・ショウ~アイル・オヴ・プレンティ(ジェネシス) The Cinema Show~Aisle of Plenty(Genesis)
5. トリロジ-(エマーソン・レイク&パーマー) Trilogy(Emerson Lake and Palmer)
6. 危機(イエス) Close to the Edge(Yes)
    i) 着実な変革 ⅱ) 全体保持 ⅲ) 盛衰 iv) 人の四季 
7. ザ・ランド・オブ・ライジング・サン(キ-ス・エマ-ソン) The Land of Rising Sun(Kieth Emerson)

Arai0618 MORGAUA QUARTET
荒井英治(第1ヴォイオリン、東京フィル交響楽団ソロ・コンサートマスター)
戸澤哲夫(第2ヴォイオリン、東京シティ・フィル管弦楽団コンサートマスター)
小野富士(ヴィオラ、NHK 交響楽団次席奏者)
藤森亮一(チェロ、NHK 交響楽団首席奏者)

編曲:荒井英治
録音:2013年 9 月 30日、2014 年1月27日、2月7日、クレッセント・スタジオ

   プログレ至上主義者、ヴァイオリンの荒井英治による入魂のアレンジにより、クラシック・カルテットの演奏アルバム。宣伝文句は「この危機の時代に、新たな様相で転生するプログレ古典の名曲群」で、まさにそんな感じのアルバム。
 このモルゴーア・カルテットは、ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲を演奏するために結成されたカルテット。東大震災に衝撃を受けたキース・エマーソンが書き上げたピアノ小品の弦楽四重奏編曲に荒井英治(第1ヴァイオリン)は心を打たれた。震災に伴っての世紀の世界的人災「福島の危機」とピンク・フロイドの「原子心母」、そしてその同一線上にクリムゾン「レッド」、イエス「危機」を見ることで、このアルバム製作となったと。

「音楽は現実からの逃避になってはならない。逆に立ち向かうべきことを教えてくれるのではないか」 (荒井英治)

 

(視聴)

pink floyd "Atom Heart Mother"

*

morgaua quartet "Atom Heart Mother is on the edge"

*

morgaua quartet "atom heart mother"

 

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コメント

謹賀新年、本年もよろしくです。

早速ながら、この手があったか、と。
最近クラシックにも手を出しつつあるので、morgaua quartetから聴き始めればよかったのか、とも思った次第…。

最近は…、はい、思う所あり、でガッツリ聴いてガッツリ書きたい、とは思ってますね。

投稿: フレ | 2021年1月 3日 (日) 23時16分

フレさん
早々のコメントありがとうございます
こちらこそ今年もよろしくお願いします
クラシックもロックもジャズもない私でして・・・この新年は「展覧会の絵」をELPそしてクラシック・ピアノ・ソロ、オーケストラ版と楽しみました。
ムソルグスキー万歳でした。
そしてマーラーでひと段落。
音楽は、コロナ騒ぎの中では最も有力な手段ですね。^^) ロックも忘れていませんのでよろしくお願いします。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年1月 4日 (月) 15時07分

イエス危機・こわれものかな・・?と思って覗いてみたら小生が最も愛する「原子心母」ではないですか!丑年に感じた憂慮記事だったのですね!A面は戦争映画のオープニングを彷彿するブラス演奏から始まり「①父の叫び②ミルクたっぷりの乳房③マザー・フォア④むかつくばかりのこやし⑤喉に気をつけて⑥再現」という連続6曲構成で実にスケールが大きく見事な展開でしたね!B面は個性的なケルト情緒溢れる曲が散りばめられていますが、今も最も愛する曲は「サマー'68」です。静かなピアノイントロと叙情詩漂うボーカルから入り、やがて一転して激しい演奏へ展開、壮大なトランペット演奏でクライマックスを迎えて行きます。この曲は何度聴いても感動するんですよね~!
RWは一般的に最高名盤と謂われる「狂気」は好きになれず、このアルバムでピンク・フロイドをついに見限ってしまいました。ロジャー・ウォーターズが主導を取り始めてからのサウンドには神秘性・ケルト的な叙情性が全然感じられず、期待感を持って購入した「狂気」への愛着も全く芽生えず、ついに売り飛ばしてしまいました。とにかく初期フロイドで中心となっていたリック・ライトのキーボード・メロトロン・シンセサイザーの叙情的な演奏「原子心母」「おせっかい」時代が今も一番大好きです。

投稿: ローリングウエスト | 2024年8月22日 (木) 16時26分

ローリングウエスト様
ピンク・フロイドもののコメント有難うございます
久々に「原子心母」もののお話ですね、昔リアルタイムにこのタイトルもバンド名も全くなしのジャケに圧倒され、帯に「プログレッシブ・ロックの道なり」とあって、日本でも"プログレッシブ・ロック"という言葉が展開する元となったアルバムですね。丁度来日の今では伝説となったアフロディーテ・ライブでも、この曲がメイン曲となった頃のアルバムです。
しかし、物としては纏めようもなく彼らは投げ出してしまって、ロジャーが友人のロン・ギーシンに預けて出来上がったアルバム。ブラスバンド・オーケストラとの演奏で世間を驚かせました。彼らは分裂危機であったのですが、このアルバムが売れてしまってレコード会社からも次作への期待が高まって、高評価の「おせっかい」に繋がることになったという、いずれにしても貴重なアルバム。
私はブートも山ほどありますが、ブラスバンドなしの彼ら四人での演奏の方が実は好きなんです。このあたりは人によっての好みですが・・・
いずれにしても、ピンク・フロイドにとっても、ロック界にとっても貴重なアルバムですね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年8月25日 (日) 17時54分

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