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2021年1月15日 (金)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi JAZZ ENSEMBLE 「TIME'S PASSAGE 」

欲張りのヴォーカル入りのクインテット・ジヤズ

<Jazz>

Enrico Pieranunzi JAZZ ENSEMBLE 「TIME'S PASSAGE 」
Abeat For Jazz / IMPORT / ABJZ 219 / 2020

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Enrico Pieranunzi (piano, arrangement) (electric piano on 1, 9)
Luca Bulgarelli (bass except 7)
Dede Ceccarelli (drums except 7)

*special guests:
Simona Severini (vocal except 3, 5)
Andrea Dulbecco (vibraphone except 7)

  日本で圧倒的人気の エンリコ ・ピエラヌンツィ(1949年ローマ生まれ)のピアノトリオを基軸とし、しかも彼のオリジナル曲を中心としたアルバムだが、ヴィブラフォン&女性ヴォーカルのゲスト二人を迎えてのやや異色のアンサンブル編。
 実はエンリコと言うとあのクラシック・ムードのある情緒あるメロディーのピアノの美旋律トリオを私はどうしても期待してしまうので、その世界とは明らかに異なる彼の近年のアグレッシブな姿勢がやはり前面に出てのアルバム。その為少々評価が難しい為に年を越してここに取上げたという次第。

Vvj106_hqf_extralarge  9曲中7曲に登場する女性ヴォーカルのシモーナ・セヴェリーニの歌声が、先ずは重要な役割を果たしている上に、近年ややジヤズ界から後退気味のヴィブラフォンが登場してのピアノの取り合わせが又微妙で、ちょっと意外な世界に流れていくのである。
  そしてもう一つピエラヌンツィとこの女性セヴェリーニのコンビというと、2012年からの関係で、2016年にはアルバム『My Songbook』(VVJ106/2016)(→)だ。これはピエラヌンツィが彼女を全面的にフューチャーしアレンジ、プロデュースを担当した本格ヴォーカル・アルバムだった。その後あのドビュッシーへの想いというちょっと中途半端だったアルバム『Moisieur Claude』(BON180301/2018)にも登場している。そんな流れの中での今回のアルバムなのである。

(Tracklist)
1. Time's passage (Enrico Pieranunzi) 5,40
2. Valse pour Apollinaire (Enrico Pieranunzi) 4,13
3. Biff (Enrico Pieranunzi) 4,33
4. In the wee small hours of the morning (David Mann & Bob Hilliard)*Quartet version 4,58
5. Perspectives (Enrico Pieranunzi) 5,15
6. A nameless gate (Enrico Pieranunzi) 5,04
7. In the wee small hours of the morning (David Mann & Bob Hilliard) **Voice&piano version 3,56
8. The flower (Enrico Pieranunzi) 7,10
9. Vacation from the blues (Arthur Hamilton/Johnny Mandel) 5,53

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 上のように、8曲中6曲はピエラヌンツィのオリジナルと言うことで、さてさてどんな美旋律ピアノの世界かと興味津々といったところ。しかし驚くなかれ、ここは期待に反してと言ったところでもあるが、今回のピエラヌンツィ(p)は、主役の座をヴォーカルのセヴェリーニやパーカッシブにメロディーを演ずるデュルベッコのヴィブラフォンに多くは譲っていて、むしろ引き立て役やリード役に徹した感がある。従って控えめに節度を保ちつつ、ゲスト陣の演ずるところに、端麗な味わい深いピアノを添えて演ずる。ただし時にアクセント聴かせてのリズムカルなプレイも披露もしている。そんなところで所謂ピアノ・トリオものとは全く別のアンサンブルな音作りのアルバムになっているところが特徴だ。

Simonaseverinijbw_20210114205401  そして重要なシモーナ・セヴェリーニのヴォーカルは、なかなかテクニックのある上クラスではあるが、中・低音に質量があるハスキー・ヴォイスでのその発声と声の質にはおそらく好みが分かれそう。

 M1."Time's passage "は、アルバム・タイトル曲で、ピアノ・トリオとゲストのヴォーカルとヴィブラフォンの演奏だが、美しさという世界でも無く、ヴォーカル曲というのでも無く、アンサンブル尊重なのか、意味のあまり理解できない曲。
 まあ、彼女のヴォーカルを主体に聴くならM2., M4.といったところか。M2."Valse pour Apollinaire"は、リズムカルにして、メロディーがよく、彼女は生き生きとしていてパリ・ムード、演奏も躍動感あって良い曲に仕上がっている。一方M4., M7. " In the wee small hours of the morning"はフランク・シナトラが歌った名曲で、しっとり歌い上げて聴き応えあるし、ヴィブラフォンとピアノとの相性が良い美しいヴォーカル曲として上出来。
 ところがM6."A nameless gate"あたりは、ヴォーカルと演奏におけるピアノの美しさが中途半端。何に感動して良いのか考えてしまうという状態。
 とにかく聴くにポイントはそれぞれ多々あるのだが、例えばM7.のヴォーカルと続くM8." The flower"で盛り上げた何か訴えてくるムードはかなり良い線をいっているにもかかわらず、M9."Vacation from the blues "のアンサンブルで全く別世界に連れてゆかれ、描いた世界が台無しになってしまう。描く世界の主体がハッキリしない変わったアルバムであった。

 結論的には、それぞれの曲には聴き所があるにもかかわらず、ヴォーカル・アルバムか演奏のアルバムなのかの聴いた後の感想がまとまらない作品だ。まあヴォーカル込みのクインテット・アルバムとしておこう。


(評価)

□ 曲・演奏・ヴォーカル    80/100
□ 録音            85/100

(視聴)

 

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