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2021年2月27日 (土)

須川崇志 Banksia Trio 「Ancient Blue」

思索瞑想性とダイナミックな現実性の混在
・・前作より美的詩情性は後退しミステリアスに

<Jazz>

Takashi Sugawa Banksia Trio 「Ancient Blue」
DAYS OF DELIGHT / JPN / DOD-013 / 2021

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須川 崇志 (contrabass except 04, 07, 11) (cello on 04) (electric bass, mbira, bell on 07)
林 正樹 (piano)
石若 駿 (drums, percussion except 11)

  昨年彼らの第1作アルバム『Time Remembered』(DOD-005/2020)をここで取上げたのだが、早、2ndアルバムの登場となった。あの1stを聴いて、「三者の対等にしてスリリングなバトル、美しき詩情性と緊張感ある静かな奥深い心象風景にも迫るという演奏」と実は絶賛したのだが、さてこの2ndではどのような世界に進化しているのか、いずれにしても興味津々。ベーシストの率いる日本ピアノ・トリオということで、期待度も高い。又、彼らについて紹介は既に記したので、そちらを参考にして欲しい。

Btrio

(Tracklist)

Txw 01.Blue in Green
02. Nowheresville
03. Ancient Blue
04. Uncompleted Waltz
05. Armeria
06. Jomon Dance
07. Kothbiro
08. Mimoza
09. Trapezoidal Dance
10. Song For Nenna
11. Anemos (solo piano)

 やはりまたしてもジャズの新展開とも言える世界で楽しませてくれる。このアルバムもオリジナル曲を主力に構成されており、3人の高い技術と創造力が生み出すスリリングな演奏が随所に展開し、"主役は3人"というところを地で行った展開は、聴き応えあるアンサンブルを構築している。

 オープニングのM1."Blue in Green"はM.Davisの曲( 前作はB.Evansの"Time Remembered"でスタート)で、ここでこのアルバムのイメージを印象付ける。この手法は前作と同じであるが、M.DavisとB.Evansの違いを印象づけたいのか、この彼らの手法はなかなか面白い。ところがこれを聴いて、どうしても"M.Davis/Blue in Green"(B.Evans作とも言われているが)が頭に浮かばない、それはあの『Kind of Blue』における"Blue in Green"はバラードだが、この彼らの演奏はドラムスとベースのリズム隊が演ずる快テンポ曲、そこにピアノ演奏が主役にならずに対等なアンサンブルと化す。最初から驚かされて次に流れてゆく。
 そしてM2.からM3のアルバム・タイトル曲"Ancient Blue"に進むに、次第に思索世界に沈み込んで行くも、そこに林正樹のピアノがゆったりとしたテンポで、歴史を探ってゆくかのような世界に導いて、彼らの独特の瞑想性を演じてみせる。
 なるほど、このトリオはやっぱり一筋縄では行かない。"心して聴け"と前半は終わる。

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 中盤M4."uncompleted Waltz"は、須川崇志のアルコ奏法か(どうもCelloらしい)、やや優しさを醸し出すも甘さはない。
 私の求める美しい詩情性ある抒情的な世界は、なかなか簡単には現れない。成る程、"Blue"というと、これはどうも重い深い陰鬱な状況の"Blue"なのかも知れない。
 しかし、中盤以降は緊迫のスリリングなアンサンブルを織り交ぜ、時には現れるアクション演奏から、次第に趣を変える。 
 M10."Song for Nenna"に至ると、繊細にして美旋律との世界が林正樹のピアノの音にみられ、その余韻のある世界が哲学的世界に誘い、そして須川崇志のベースがアルコにてにてその流れを支え、次第に遠大な世界に盛り上がる。
 M11."Anemos"はピアノ・ソロで、一音一音が静かに余韻の世界で演じられ、思索的心象風景の世界で幕を閉じる。

 やはり、この今回のアルバムにおいては、いわゆる"美的にさそう抒情性"といった世界は主目的とはならず、アルバム全体としては甘い世界はさておいて、むしろダークな印象につつみながらも、そこに神秘性やミステリアスな世界への構築をしているように思われた。
 彼らの緊張感ある甘さを許さない硬質の世界は、更に磨きがかかっている。もう次に更なる期待を持たせるトリオだ。

(評価)
□ 曲・演奏    88/100
□ 録音      85/100

(視聴)

 

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コメント

風呂井戸さん,こんにちは。

このアルバム,第1作があまりにもよかったので,インパクトは薄れた気がしますが,今回もよくできていましたよねぇ。私は"Blue in Green"のアプローチはやや疑問も感じている部分がありますが,2曲目以降の展開には今回も痺れました。本当にレベルの高いトリオだと思いますが,次はどうなるんでしょうかねぇ,って余計な心配かもしれませんが。

ということで,当方記事のURLを貼り付けさせて頂きます。
https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2021/03/post-0cef1e.html

投稿: 中年音楽狂 | 2021年3月13日 (土) 16時52分

中年音楽狂さん
コメントいただきながら、御礼が遅れて失礼しました。
 そうなんですよね、"Blue in Green"の攻め方にちょっと理解が出来ていませんでした。もう少し別を期待していたせいもあるのか、今も懐疑中です。^^
しかし、彼らのセンスと技量はやはり一流ですね。まだまだ如何様にも発展しそうですね。私の好むところに流れて欲しいなんて淡い希望を持ってます。
 TB有り難う御座いました。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年3月15日 (月) 17時59分

リンクをありがとうございました。m(_ _)m

前作同様、3人の高い技術と幅広いい思考から生み出されるスリリングで透徹な演奏でした。
生で目の前で聴いてみたいです。
まぁ、しばらくは、、難しいかなぁ。。

https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2021/03/post-cf6b8f.html

投稿: Suzuck | 2021年3月22日 (月) 18時35分

Suzuckさん
こんばんわ、コメントどうも有り難う御座います。
 時々、このような日本人トリオを聴くと嬉しくなります。
 私は、林正樹が色をつけているところに重きをおいてますが、三者のインタープレイが生きていていいトリオですね。
Suzuckさんの応援は効果抜群と思いますので、これからも応援してゆきましょう。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年3月23日 (火) 18時24分

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