エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi 「THE REAL YOU」
ピアノとベースのデュオでエヴァンス・トリビュート・アルバム
<Jazz>
Pieranunzi , Fonnesbaek 「THE REAL YOU」
Stunt Records / Denmark / STUCD 20132 / 2021
Enrico Pieranunzi (piano)
Thomas Fonnesbæk (bass)
イタリアのベテラン・ピアニストのエンリコ・ピエラヌンツィが三年前にベースのトーマス・フォネスベック(1977デンマーク生まれ)とのデュオ『Blue Waltz』作品を発表したが、それ以来のこのコンビでの二作目の登場。それもなんと今や伝説のビル・エヴァンス(1929-1980)のトリビュート・アルバムとして気合いが入っている。
このところエンリコも多作で又々の登場となるが、意外に脇役的アルバムも多かったところに、おそらくこの企画は彼自身の意欲から産まれたものであろうと期待していたものである。
まあエンリコと言えば、私としてはソロやトリオものにおいても、美旋律叙情派演奏が期待面の大きいところだが、近年は若干その様相を変えインタープレイの妙に傾いているのかと思わせるところがある。そんな点がどうかと興味を持って手にしたアルバム。
01. Hindsight *
02. Only Child (B.Evans)
03. The Real You *
04. Passing Shadows *
05. Our Foolish Hearts %
06. Sno' Peas
07. Il Giardino Di Anne *
08. I Will Look After You #
09. Dreams And The Morning *
10. Interplay (B.Evans)
11. More Stars %
12. People Change #
13. Bill And Bach %
*印 Enrio Pieranunzi , #印 Tomas Fonnesbæk , %印 Enrico & Thomas
M01."Hindsight" 案の定、美旋律というよりはインタープレイ美学。
M02."Only child" で、ビル・エヴァンスとの対峙を演ずる。テンポ・アップで演奏しており、エヴァンスの演奏にみるところの何となく物思いの回顧に誘導される世界は、残念ながら感じない。
M03 "The Real You"は、エンリコのオリジナル曲で、アルバム・タイトル曲、聴きやすいメロディーが流れるが感動はない。
M04 "Passing Shadows "は、やや哀愁のあるピアノ旋律から入って、中盤のベース演奏も印象深い。次第にアクティブな演奏に転じて、ここでは"ビル・エヴァンス奏法"の雰囲気は、それなりにイメージさせられる。M03、M04の二曲はクラシック寄りの美的演奏。
M05."Our Foolish Hearts "ピアノが流すオリジナル旋律に、ベースが流す"My foolish heart"曲で作り上げる技に驚かされる。奇抜な手法での美しさに脱帽。見事な老獪な技の世界。
M07."Il Giardino Di Anne"は、M3に似た技法だが刺激は少ない。
M08."I Will Look After You"はフォネスベックの曲となっているが、エンリコの世界そのもの。
M10." Interplay" 再びエヴァンス曲の登場、新しさは感じなかったが、M11." More Stars "の歯切れの良い高速インタープレイが圧巻。
M12."People Change" ラスマエのゆったり美学。
M13." Bill And Bach"のエヴァンスとバッハのテクニックを凝らしての対比が面白い発想。中盤のバッハに痺れる。
エンリコのピアノは、相変わらず端正にして歯切れの良いピアノ・プレイだ。ドラムス・レスでベースとのデュオとしたところにインタープレイを描くにはとりやすかった手法か。所謂、"哀愁抒情性の美学"のアルバムではなく、"インタープレイ美学"であったと結論づける。まあ、彼らの満足度が大きいかも知れない。それがビル・エヴァンス世界のトリビュートとすればうなずけないことも無い。
(評価)
□ 曲・演奏 : 85/100
□ 録音 : 88/100
(試聴) "Our Foolish Hearts"
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コメント
アルバムリリースのペースについていけないくらいハイペースでのリリースですね。
「Afterglow」。私はそれなりに楽しめました。
それにしても、トーマス・フォネスベックの名をよく見かけるように思います。売れっ子なんでしょうね。わかるような気がしますが。
投稿: 爵士 | 2021年3月29日 (月) 22時53分
爵士さん
コメントどうも有り難う御座います
なかなか私は最近はEnricoも敷居が高くなってきています。本来のトリオとかソロとかというのでなく、企画モノが多く、それなりにピアニストとしてのセンスを発揮してきているのだろうと思いますが・・・。
その気で聴かないと・・・ということ状態が多いですね。
昔のように、ふと聴いていると引き込まれるというところとは、違ってきています。私自身の問題かも知れませんが・・・
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年3月30日 (火) 17時29分