アルボラン・トリオ ALBORAN TRIO 「ISLANDS」
ジャズオーディオ・ディスク大賞2020に輝いたアルバム
・・・トリオ演奏の素晴らしさ満載
<Jazz>
ALBORAN TRIO 「ISLANDS」
自主製作 / IMPORT / ALB001 / 2020
Paolo Paliaga (piano : Fazioli F 278 Grand Piano MkⅢ)
Dino Contenti (Double Bass, Percussion)
Ferdinando Farao (Drums)
Recorded, Mixed and Mastered by Stefano Amerio
過去のアルバムが名門Act Music からリリースされ、既に話題になっていたアルボラン・トリオの新作(自主製作盤)である。
このトリオはリーダーのイタリアのパオロ・パリアーガ(ピアノ)を中心に2005年に結成された。現在のメンバーはミラノ出身のフェルディナンド・ファラオ(ドラムとパーカッション)とディノ・コンティティ(ベース)からなる。このトリオの名前のアルボランは、スペイン・アンダルシア沿岸と北アフリカ・モロッコの間にある地中海の無人アルボラン島に由来しているという。音楽の神秘性を重視し、ヨーロッパ音楽の伝統とアフリカのリズムの魅力に影響された世界を構築するを目指し、彼ら自身のオリジナリティを重視した世界を構築している。
そして今回の注目は、何と言っても今や人気のエンジニア=ステファノ・アメリオが録音担当していて、マスターからミックス全ての行程に関わっての彼のセンスで作り上げたという代物である、よってその音世界も注目のポイント。そしてそれが功を奏して、「ジャズ批評」誌の「ジャズオーディオ・ディスク大賞2020」のインストゥルメンタル部門のトップ賞(金賞)に輝いている(2021年3月号)。まあとにかく、後藤誠一氏、藤田嘉明氏らがベタ褒めであった。
1. Les Voix S’En Vont
2. Human
3. Canto Quantico
4. Earth Breath
5. Puerto Natales
6. Multiple Frames
7. In Un Altrove
8. Frug
9. Origine E’La Meta
10. Due Passi Nel Mare
11. Triodiversity
12. Essential Is No Longer Visible
13. Willywaw
14. Arriva Entre Los Picos
聴いてみてのお楽しみであるが、哀愁を帯びた叙情性と旋律美の香りが襲ってきて、それに加えアフリカの伝統のリズムのニュアンスまでも感じさせるという、さまざまな伝統の音とリズム、そして旋律までも新しい世界観を持った、ジャズ・サウンドが迫ってくる。
ジャズオーディオ賞ということで、録音の良さがアッピールされてくるが、なになに演奏もトップ・クラス。トリオのスタイルは、各コンポーネントのハイレベルな相互作用が見事で、ソロとなるとこれまた出色の演奏。いずれにしてもバルカン音楽に基礎があって、アフリカの伝統のリズムが何となく響いてきて、それもそれに傾いてしまうのでなく、あくまでもユーロ・ジヤズの色彩に色づけしたニュー・サウンドといった感じである。
M3."Canto Quantico"は、神秘的美的広大な世界が見えてくる。
M4."Earth Breath" の疾走するパーカッション・プレイが聴きどころだが、それに唸るベース、異空間にさそうゆったりとしたピアノと圧巻。
M5."Puerto Natales" ピアノのその一つ一つの音の余韻ある透明感ある響きは素晴らしい。これがFazioliをもって演奏する心意気なんだろうと聴いてしまう。この曲のドラムスの味付けも素晴らしい。
M7."In Un Altrove" の前衛性も頼もしい。しかし新メンバーのファラオはいいですね、その軽快ドラムスと重低音のピアノとベースとの対比と融合は聴きどころ十分。
M2."Human", M8."Frug"のベースのアルコ奏法も特徴的。
M9."Origine E’La Meta", M10."Due Passi Nel Mare",M14."Arriva Entre Los Picos"に聴くピアノの旋律も心に響く。
このアルバムの素晴らしさは、トリオ演奏にある。三者がそれぞれ独特な味を持ちながら交錯し融合してゆくところが聴き処だ。それもドラムス、べース、ピアノがそれぞれしっかり定位を持って影にならず聴き取れる録音技法の素晴らしさも加担している為だろう。シンバルの繊細な響き、ベースの深い低音の響き、そしてピアノの硬質にして透明感のある響き、出色である。
結論的には、オーディオディスク大賞は大賛成のアルバムであった。
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 95/100
(視聴)
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コメント
風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。
久しぶりに聴きましたが、一世を風靡しただけはありますよね。
日本人の感性にあった情緒を持ってるし、リリカル&叙情的で片付けられない個性があると思います。
トリオのレベルが高かすぎ〜♪
私もリンクを貼っていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2021/04/post-6d4248.html
投稿: Suzuck | 2021年4月27日 (火) 19時33分
Suzuckさん、コメント、リンク有り難う御座います
イタリアの叙情がアフリカン・リズムの味付けをしたという不思議な世界。そしてトリオとしての味付けが見事。更にそこにきてエンジニアのアメリオのセンスが生きていて名盤と言いたいですね。
いいアルバムでした。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年4月28日 (水) 09時39分
風呂井戸さま、こんばんわ。
エンジニアのアメリオという人は、そんなに人気のある方なんですね。演者がアメリオを指名したのか、その逆か、はたまたプロデューサーなどの第三者が指名したのか、一つの創作物ができるプロセスにも興味が湧いてきますね。
リンク貼らせてください。
https://zawinul.hatenablog.com/entry/2021/05/13/233027
投稿: zawinul | 2021年5月17日 (月) 21時40分
Zawinulさん
お早う御座います
アメリオの素晴らしさは、ミュージシャンの演ずるところによつてミックスを駆使しているところにあることのように思います。又このアルバムには、PianoはFazioli F278 Grand Piano MK3とわざわざ記していますので、演者も相当音には拘っているのかも知れません。今や、アルバム作りには、演奏と録音・ミックスは対等と言われるぐらいになっていますね。曲、演奏、録音と評価が非常に良いアルバムと私は位置づけました。Zawinulさんが取上げられたことに喜んでいます。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年5月18日 (火) 10時51分