エスペン・エリクセン espen eriksen trio 「end of summer」
複雑性を避けた聴きやすい自然と人間界の叙情的世界
<Jazz>
espen eriksen trio 「end of summer」
rune grammofon / Import / RCD2216 / 2020
Espen Eriksen (p)
Lars Tormod Jenset (b)
Andreas Bye (ds)
all selections by Espen Eriksen
ノルウェーのピアニストEspen Eriksen、ドラマーAndreas Bye、ベーシストLars Tormod Jensetによるピアノ・トリオの5作目となる最新作。本作はロックダウン中のオスロで2020年4月に録音されたものという。
ほぼ10年前にアルバム『you had me at goodbye』(RCD2096/2010)とうアルバムに接したのが私はこのトリオを知った初めなのだが、当時の記憶としてかなりメロディーを前面に出した接しやすい演奏のトリオという印象であった。そんなことから今回も聴いてみようとしたものだ。
1 Where The River Runs
2 Back To Base
3 Dancing Demons
4 End Of Summer
5 Transparent Darkness
6 A Long Way From Home
7 Reminiscence
北欧のピアノ・トリオは、やはりどこか情景的に自然界の不思議さに通ずる演奏モノが多いように感じているが、そこが私にとっては魅力となっている。そこでこの久々に聴いたトリオはどうかというと、まず冒頭の曲M1." Where The River Runs"が、なんと自然界の深遠さを描くが如く曲として登場する。複雑さを避けた非常に聴きやすい美しいピアノの旋律と、ベース、ドラムスは控えめで演じ、やはりそれ程深くなく、又暗くない叙情的曲として迫ってきた。
そしてM2."Back To Base"、 M5."Transparent Darkness"など難しさという感覚は全くなく、淡々と演じていていやらしさが無い。ちよっとその点はある意味では物足りないということにもなるかも知れない。
M3."Dancing Demons"は踊る魔神(守護神)というのだろうか、リズムカルな中にもちょっと伝統的な北欧の地を思わせる。
アルバム・タイトル曲M4." End Of Summer"は、なかなか美しいピアノの旋律が軽快なリズムにのって心地よく演じられ、やっぱり今回の看板曲なんだろうなぁと感ずるところ。これをやりたかったんですね、ジャズというところを超越している。
M6."A Long Way From Home"は、タイトルのせいもあるが、何となく物語的世界。それも派手さは無く、しかし暗くもなくて北欧の物語なんだと想像する。
M7."Reminiscence"は回想と言って良いのか、どこか懐かしさのある抒情性もある世界で、人間性と自然の調和が感じせられる静かでなんとなく哀愁の雰囲気も。
いずれにせよ、真摯な物語性のある世界で、非常に聴きやすい難しさの無いところに奥ゆかしさのあるアルバムだ。ジャズとしてトリオとしての三者のバトル的世界の印象は薄く、むしろ協調の世界。余計なものをそぎ落とす、というコンセプトがあるとか、所謂アンサンブルの面白さというところでは無いが、音を静かに大切にしての演奏というところを築いている。
(評価)
□ 曲・演奏 85/100
□ 録音 85/100
(視聴)
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