イザベラ・ラングレン Isabella Lundgren 「LOOK FOR THE SILVER LINING」
アメリカン・ムードたっぷりの中に訴えるものが見えてくる
<Jazz>
Isabella Lundgren 「LOOK FOR THE SILVER LINING」
Ladybird / Estonia / Ladybird79556857 / 2021
Isabella Lundgren イサベラ・ラングレン (vocal)
Carl Bagge カール・バッゲ (piano)
Niklas Fernqvist ニクラス・フェーンクヴィスト (bass)
Daniel Fredriksson ダニエル・フレードリクソン (drums)
Recorded : March 2020 at Atlantis Studio,Stockhorm
アルバム『Songs To Watch The Moon』(SOLVSV0038/2017)、『Hit The Road To Dreamlabd』(SOL SV-0040/2018)などで知ったスウェーデンの人気女性歌手イザベラ・ラングレンのニューアルバム。
彼女は1987年生まれ、高校は音楽科に進む。18歳の時にニューヨークに移り住み、2006年から2010年までニューヨーク大学で学びながら音楽の修練を積む。2010年にスウェーデンに戻り、ストックホルムの神学校で牧師になる勉強を始め、哲学的な世界にも入り込んでいるという変わり種。どちらかというと、透明感・清涼感を重んじた歌声で、ジャズ・ヴォーカルでも広い分野に挑戦している。
今回のアルバムは、彼女自身の持つ生き様からのテーマにあるようで、それはやや暗さのある世界かと思ったが、聴いてみると過去のアルバム同様、その暗さは感じられない。『「なぜ」生きるかを知っている者は「どうすればいいか」を耐えることができる』とのニーチェの言葉を出すことにより、彼女の世界を訴えているようだが、テーマは「元気をだそう」と言うところにあると言い、アメリカン・スタンダード集だ。
(Tracklist)
01. Look For The Silver Lining (希望の光をさがして) (Jerome Kern / Bobby DeSylva)
02. Pick Yourself Up (Jerome Kern / Dorothy Fields)
03. Climb Ev'ry Mountain (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II)
04. Fly Me To The Moon (Bart Howard / Kaye Ballard)
05. It's A Good Day (Peggy Lee / Dave Barbour)
06. The Sound Of Music (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II)
07. Dream (Johnny Mercer)
08. Singin' In The Rain (Nacio Herb Brown / Arthur Freed)
09. The Folks Who Live On The Hill (Jerome Kern / Oscar Hammerstein II)
10. Smile (Charles Chaplin / John Turner / Geoffrey Parsons)
11. What A Wonderful World (George David Weiss / Bob Thiele)
アルバム・タイトルは、冒頭の曲M1." Look For The Silver Lining "であり、"希望の光を探して"という内容だ、続いてはM2."Pick Yourself Up"は"元気を出して"というところで、このアルバムのテーマが明確になる。バックはピアノ・トリオを中心にストリングス(弦楽四重奏)を加え、コーラスもM7.に入っている。
冒頭からややエレガントな中に人生の生き方に迫ろうといった襟を正したくなるところにあるが、M2.によって、あのアメリカ的明るさが気持ちを楽にしてくれる。
彼女の歌声は、M3." Climb Ev'ry Mountain "、M4."Fly Me To The Moon"の中低音が多い曲だと比較的柔らかくて良いが、高音になるとちょっと堅さが気になるところにあって、この辺りが残念。そこが私が無条件に受け入れないところだ。
ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』のM6.の"主題歌"とM3."Climb Ev'ry Mountain"(すべての山に登れ)、そしてM8."Singin'In The Rain"(雨に歌えば)などは、気持ちを更に高陽せてくれる。
チャップリンのM10."Smile"が登場したり、M7."Dream"など、アルリカン・ムード一色となり、北欧のジャズ・ヴォーカル・アルバムとしては珍しいといえば珍しい。
究極ところ、このアルバムで私が気に入ったのはM9."The Folks Who Live On The Hill "だ。ビング・クロスビーとペギー・リーが歌った曲だが、恐らく仲睦まじい老夫婦を歌ったものだったと思うが、心に訴えるヴォーカルとピアノ、ベースも真摯に落ち着いて描く世界が良い。
最終的に、アルバムをM9からM11の三曲により収めたところに、このアルバムの意味があるとみたがどうなのだろうか。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 83/100
□ 録音 80/100
(視聴)
*
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コメント
ちょっとわすれていた歌手を取り上げていただきました。私にはデビュー盤「It Had to Be You(若しあなただったら) 」(2013)以来でしょうか?
チャーミングでコケティッシュな歌唱を思い出しました。
投稿: 爵士 | 2021年4月30日 (金) 10時38分
爵士さん、こんにちわ、というか・・もう夕方です。今日もまだ仕事です。・・・五月いっぱいで、かなり余裕がでます。
さてさて、このイザベラ様、選曲が北欧的で無いのですが、やっぱりアメリカンとは違って・・・と、言うところで注目はしています。
ちょっと感ずる所から、評価が微妙なんですが、案外良いところ行っているのかも知れません。聴く度に感想が変わる可能性のある面白い存在です。
ヴォーカルの高音が、私好み的にはイマイチといったところにひっかかっているのかも知れません。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年4月30日 (金) 18時00分
風呂井戸さま、、リンクをありがとうございます。
清楚とか、、可憐とか、、、なんか、古臭い言葉に縛られるな!
と、お叱りをうけそうなんですが、、他に言葉がみつからない。。汗
リンクを置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-f29c44.html
投稿: Suzuck | 2021年5月18日 (火) 16時37分
Suzuck様
こんばんわ、コメントどうも有り難う御座います。
ヴォーカルというのは、歌の出来には納得しても、その声の質に個人的感覚で好みとなったり、受け入れなかったりということがありますね。
彼女の場合、高音がちょっと気になります・・・これがもう少しソフトで優しくあってくれると、なんて思いますが、・・・・いずれにしても、ジャズ・ヴォーカルものとしての曲仕上げと歌は、嫌みが無くていいですね。Suzuckさんの評価のお話には納得しています。更に御教授をお願いします。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年5月18日 (火) 21時07分