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2021年4月11日 (日)

Yuko Ohashi Trio 「KISS from a ROSE」

ピアノ・ソロに近い演奏、トリオの味に欠ける
・・・録音が頼りのアルバム作成
今回のボーナスディスクは前代未聞の「ラフミックス」

<Jazz>

Yuko Ohashi Trio 「KISS from a ROSE」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1096 / 2021

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大橋 祐子 (piano)
鉄井 孝司 (bass)
高橋 延吉 (drums)

2020年12月1日 ランドマークスタジオ録音

  寺島レコードよりの作品群にて、何かと注目を集めてきたピアノの大橋祐子(東京都八王子市出身)の5作目のリーダー・アルバム。とにかく寺島靖国の期待を担っての、メンバーを一新したニュー・トリオによる第1弾となっている。
 前作『WALTZ NO.4』(TGCS-9672/73)は、なんとスタジオ録音とホール録音をペアにしての対比を楽しませて頂いたが、今回は又々驚きの完成ミックス版と、録音時そのままのラフミックス版をペアにしての発売で、これまたおそらくオーディオ好きにはたまらない規格ものになっている。
 更にピアノ・トリオ好きにとっても、これもなかなかの企画で嬉しいのだが、恐らく・・・・と想像しながら聴いたのであったが、少々ここに登場は遅れました。つまりそれにはそれなりの理由があって、その他の傑作の後回しになってしまった。それも以下の感想でお解りになるだろう。

(Tracklist)

01. I Fall In Love Too Easily
02. Pithecanthropus Erectus
03. Englishman In New York
04. Cielito Lindo
05. I'll Be Seeing You
06. Brave Bull
07. After You Left
08. Strode Rode
09. Linna
10. Kiss From A Rose
11. No Rain, No Rainbow
12. Tennessee Waltz Part-I
13. Tennessee Waltz Part-II

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 私の個人的期待はバラード調のM01., M03.,M05., M07.に尽きるのだが、M01." I Fall In Love Too Easily"はオープニング曲で、冒頭からバラード演奏で期待度は高めるに十分。思いのほか情感があってピアノの音にも十分と言える良質の澄んだところにあり、録音はミックス効果というところか、良い線をいっている。
 M03." Englishman In New York"にきて、いよいよと期待したのだが、この曲にはニューヨークの異国人としての哀感があるのだが、どうもそれが残念ながら十分伝わってこない。演奏する音の中にふと優しさが感ずるところが欲しいような。
 M05." I'll Be Seeing You"この曲には期待した。流れに思いやりが感ずるも、もう一歩深入りして欲しい。ドラムスのブラシの音が聞こえてくるが、彼女のピアノばかりが前に出てソロ演奏のように聴こえ、やっぱりトリオとして描き切れていないのでは。
   M06." Brave Bull"彼女のオリジナル曲。一生懸命演奏しているのは解るが、トリオの楽しさと味がやっぱり見えてこない。
 M07."After You Left" これが問題曲。なんとアレッサンドロ・ガラティのアルバム『Shades Of Sounds』の冒頭の曲。なんと比較するには相手がまずかった。冒頭ベースから入って面白いかなぁと思ったが、ガラティの哀愁が滲み出て心情に触れる世界までには一歩至らずだ。メロディーのジャズ編曲された流れ、打鍵音の強弱に音の間という繊細な世界、更にガラティの中盤のベースと築くジャズ世界に対しては、やはり比較は無理があった。
 決定的なのはM12.M13"Tennessee Waltz"で解るのだが、彼女はまだまだ人間の哀愁バラードの世界というのは少々厳しく、M13のようなピアノを思いっきり弾きまくってのトリオとしての構築が好きなんですね。こちらの方が生き生きしていて、そこに魅力を感じたアルバム作りのほうが良いのかも知れない。

 とにかく寺島靖国の期待に応えるべく一生懸命演じていることが解る・・・その解るところが寧ろ残念なアルバムだったのである。どうも諸手を挙げて素晴らしかったと言うには、少々難ありといった平凡作であった。 

(評価)
□ 編曲・演奏  78/100
□ 録音     85/100

(視聴)

 

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