ヤコブ・ブロ Jakob Bro 「UMA ELMO」
明らかに別世界を描く回顧曲の出来は芸術的
<Jazz>
Jakob Bro, Arve Henriksen, Jorge Rossy 「UMA ELMO」
ECM / Germ / ECM2702 / 2021
Jakob Bro(guitar)
Arve Henriksen(trumpet,piccolo trumpet)
Jorge Rossy(drums)
Recorded August / September 2020
Enginneer : Stefano Amerio
デンマークのギタリスト、ヤコブ・ブロがECMのリーダー作としては5枚目のアルバムをリリース。
今回はノルウェーのトランペッターArve Enriksenと、スペインのドラマーJorge Rossyにより構成されたトリオによるもので、このメンバーは、初めての共演と言うところらしい。
注目は、トランペッターArve Henriksenとの競演で、彼の演ずるところ特にECMのアルバムとくると、ささやくような優しく寄り添ってくるサウンドが、かってより注目されていたのであり、私のような張り上げるドンペットの調べはご遠慮するタイプにも十分耐えられるところにあるというところから聴いてみたいと思ったものだ。又Rossyは、あのBrad Mehldauが名を上げた初期のトリオでの活躍が注目されるところで、いろいろと興味が沸くところにある。
ユーロ・ジャズとしては、ブロ自身が尊敬する故トーマス・スタンコへのトリビュート曲"To Stanko"などの収録もあり、どのような曲として演じられるか興味もあり期待を持たせる。
1. RECONSTRUCTING A DREAM
2. TO STANKO
3. BEAUTIFUL DAY
4. MORNING SONG
5. HOUSEWORK
6. MUSIC FOR BLACK PIGEONS
7. SOUND FLOWER
8. SLARAFFENLAND
9. MORNING SONG (VAR.)
全9曲と少なめだが、11分、9分、8分以上という比較的長い曲を演じており、十分聴き応えあるアルバムである。
又ヤコブ・ブロの、大自然の姿を描くような不思議なエレクトリック・ギター世界、それにアルヴェ・ヘンリクセンのトランペットの演ずるところは"別世界を描く音色"と言っても過言でなく、非常に特徴的でまさに芸術的。ホセ・ロッシのドラムスは。この二者の音色を受けてのことか、かなり控えめに押さえた演奏といったところだが、曲M3.やM5.においての如く、しっかりメリハリのあるところは、曲の特徴を模るによい色を添えて、ジャズ世界を構築している。
とにかくこの描く世界は、現実界から一つも二つも上層に普遍的に流れてゆくが如き感覚に陥り、現実界から離れて人間としての生命体に向かってゆくという感覚になって聴き入ったところだ。
全曲、リーダーのギタリスト・ブロのオリジナル曲ということで、ギターが前面に出て弾きまくるのかと思いきや、全く予想に反してむしろトランペッターのエリクセンがメロディーを流し、どちらかというとギターはサポート役に感ずる立ち位置である印象だ。それもミニマル・ミュージック的展開もみせる。
そしてそのトランペットが、こんな優しさと親しさに満ちた音色もあるのかと思わせる世界が主役となり、全編なにか静かに回想している状況を聴くモノに造らせるという不思議と言ってよいやや暗めの叙情的世界なのである。
ECMの看板でもあるアンビエント世界と言うには、ちよっと違った世界で、これも聴くものの人生の歴史から築かれる"それぞれの持つ世界の回想の世界"でもあるといいたいところ。とにかく希有世界が漂って私的には評価の高いところにある。
代表的なのはM1."Recintructing A Dream"ですね。
又、エンジニアは、既に評価が高いStefano Amerioで、特にドラムスの配置と音質は見事で、トランペットとギターの流れにビシッと決めるところは決めて心地よい。
ロンドン・ジャズ・ニュース紙によると「暗く叙情的な回想曲」で ”この音楽には大きな深みがある "と評しているようだが、成る程その世界と言ってもいいものだっだ。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(視聴)
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