カリ・カークランド Kari Kirkland 「Wild is The Wind」
丁寧にして説得力のあるオーソドックスなヴォーカルで好感
・・・実力者のデビュー盤
<Jazz>
Kari Kirkland 「Wild is The Wind」
Slea Head Records / / KRCD 236 / 2021
Kari Kirkland (voice,vocals)
Kevin Axt (acoustic bass)
Shelly Berg (piano,keyboards,organ)
John Daversa (trumpet)
Gregg Field (drums)
Roy Hargrove (trumpet)
Brian Kilgore (percussion)
Dean Parks (guitar)
米国西海岸を拠点として活躍の女性ヴォーカリストのカリ・カークランドのデビュー・アルバム。彼女はちょっとした異色派で、ミュージシャンの娘で、車で北米を横断して過ごしたという。又2000年代初頭にカナダとアメリカで様々なポップ、ロック、キャバレー、ジャズグループで活動した後、2003年にヨーロッパに移り住み、4年間の作曲、レコーディング、演奏を行つたという。又シアトルでプロのサーカスアーティスト(おそらく空中ブランコTrapeze)として8年間働いた後、南カリフォルニアのフルタイムのミュージシャンとしてセンターステージに立ったと言う話も伝わっている。
いずれにしても、所謂20歳そこそこのデビューでなく、実績を積み重ねたそれなりの実力を持っての大人の出発のようだ。
そしてグラミー賞ノミネートの評価あるピアニスト、シェリ-・バーグがアレンジも含め全面プロデュースした形でのデビューだ。
(Tracklist)
1. Do It Again
2. Jealous
3. It's Alright With Me
4. It's Probably Me
5. Break Your Heart
6. Too Late Now
7. Wild Is The Wind
8. Steamroller Blues
9. Too Close For Comfort
10. Secret
11. Everybody Wants To Rule The World
12. I'll Be Around.
登場する曲は、現代の曲とジャズのスタンダードのコレクションだと言うが、私にとっては新曲同様。彼女にとっては、ナンシー・ウィルソン、エヴァ・キャシディ、ジュリー・ロンドンを目標にしているようだが、小細工の無いヴォーカルは印象が良い。登場のトラックの大半は報われない愛や禁じられた愛について歌っているようだ。それを本物に表現することは、彼女にはかなり困難であったようだが、シェリー・バークの力が有効であったと言っている。
やはり、アルバム・タイトル曲M7."Wild Is The Wind"がいいですね。私の好きなDimitri Tiomkinの映画曲、Devid Bowieも歌った曲。ここで聴けるとは思いませんでした。この曲だけでも私は納得の納得(笑)。美しい旋律を奏でるピアノをバックに、素直にオーソドックスに、全域に欠点の無い歌声で、じっくり感情を込めて艶やかな歌声で丁寧に歌い上げる。印象は極めて良い。
M10."Secret"も、ピアノと会話風で後半にはギターも入って、しっとりとして好みだ。
バックは曲によって所謂ピアノ・トリオに加えて、トランペット、ギター、オルガンなどが入るが、オーソドックスなジャズを演奏して、彼女のヴォーカルとのバランスもかなりいい。
M1."Do It Again"、M6."Too Late Now"などのトランペットは、なかなかムード作りに貢献していて、うるさくなく私好み、それに彼女のヴォーカルは語るように丁寧に説得力ある響きで、なかなか良い出来だ。
シェリー・バークは、彼女を評して「彼女の歌には、非常に説得力のある真実と心の深さがあります。このプロジェクトを彼女と一緒にやったことを誇りに思い、幸せです」と言っているようだが、確かに手抜きとごまかしの無いヴォーカルは評価して良いと思う。
特徴としては、曲のタイプが異なっても表現が変わらず彼女の広く深い世界にしっかり歌い込むタイプであって、今後そのキャラクターをどう生かしてゆくかというところに興味がある。
(評価)
□ 歌・演奏 : 85/100
□ 録音 : 85/100
(視聴)
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コメント
この「Wild is The Wind」はいい。納得ですね。
梅雨入り、コロナとうっとうしい日がずっと続いていますが、何とか工夫もしながら、生活を楽しんでいます。
投稿: 爵士 | 2021年5月18日 (火) 10時56分
爵士さん
こんばんわ、コメントどうも有り難う御座います
なかなか、コロナ禍でミュージック界も低調が続いて話題も少ないのですが、ちょっと注目度のある新人ですね。オーソドックスなヴォーカルとして評価しました。
又欧米はCDからの脱皮が進行していて、我々のようなアルバムを手にしてというのは、なんとLP時代が復活しているようですね。
これからどうなってゆくか、いずれにしてもコロナ禍から脱出が行われた暁の話ですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年5月18日 (火) 20時04分