グレッチェン・パーラト Gretchen Parlato 「FLOR」
久々の登場は意外性たっぷり、家族愛に満ち満ちて
<Jazz>
Gretchen Parlato 「FLOR」
Edition Records / EU / EDN1170 / 2021
グレッチェン・パーラト Gretchen Parlato (voice)
マルセル・カマルゴ Marcel Camargo (g,cavaco,moog,rhodes,add engineering,voice)
アルティョム・マヌキアン Artyom Manukyan (cello,voice)
レオ・コスタ Léo Costa (ds,perc,moog,rhodes, add engineering, voice)
グレッチェン・パーラトとにかく久々です。スタジオ・アルバム『the lost and found』(2011)から10年なんですね、私は実はCDとDVDのカップルのライブ・アルバム『live in nyc』(2013)から入ったので8年ぶりと言うことだ。この二枚で彼女はジャズ界の評価を勝ち取っている。その後は、よく知らなかったが、息子の誕生を契機に、家庭生活を優先というグレッチェン・パーラトだったようだ。しかしここに待望の最新作をリリース。彼女は1976年ロサンゼルス生れの45歳。
いずれにしても、彼女は異色のヴォーカリスト、ミステリアスな歌い回し、スキャットを入れての曲の仕上げなどがまさに個性的。そして今回それを支えるメンバーは2018年から『New Brazilian-inspired project』として始動しているという、ブラジル人ギタリスト&カヴァキーニョ奏者のマルセル・カマルゴ、アルメニアのチェリストのアルティョム・マヌキアン、パーカッション奏者レオ・コスタである。
さらに曲によって、ブラジル音楽の巨匠アイアート・モレイラ(vo,perc)、ジェラルド・クレイトン(p, rhodes)、マーク・ジュリアナ(ds)他も参加している。
1.É Preciso Perdoar 5.56
2.Sweet Love (featuring Gerald Clayton)4.11
3.Magnus (featuring Magnus, Thaddeus, and Ashley Thompson) 4.10
4.Rosa 4.32
5.What Does a Lion Say? 5.55
6.Roy Allan (featuring Airto Moreira) 4.11
7.Wonderful (featuring Gerald Clayton and Mark Guiliana) 6.02
8.Cello Suite No. 1, BWV 1007 : Minuet I / II 5.48
9.No Plan (featuring Mark Guiliana) 5.57
選曲も多彩ですね、ブラジルの曲やバッハが出たりデヴット・ボウイなどなどで驚くが、なんとグッッチェン・パーラトがアレンジし歌詞を作って、彼女の信念である彼女自身の世界になってゆくからお見事である。
冒頭のM1."É Preciso Perdoar" ブラジル作家の曲。チェロの独特な世界にマルセル・カマルゴのギターが描くバックがブラジリアン・ムードで流れ、静かに沈み込みながらも抑揚を描くグレッチェンのヴォーカルだ。
M2."Sweet Love" はアニタ・ベイカーの曲。フュージンっぽい演奏と展開、ヴォーカルも協調して流れてゆく。
M3."Magnus" 彼女のオリジナル曲。彼女の独特のスキャットで始まり、展開はブラジルムードの軽快な展開。昔の彼女を思い出す。
M4."Rosa" チェロのソロで始まり、彼女のヴォーカルもクラシック的世界に美しいスキャットで、これは注目曲。
M5."What Does a Lion Say? " ここでもチェロと協調して流れるヴォーカルは美しい。
M6.".Roy Allan" 合唱のパターンで流れるが、パーカッションなどがリズムを刻み完全にブラジル・ムード。
M7."Wonderful" これが注目曲ですね、グレッチェンのオリジナル。この明るさもこのアルバムを印象づける。子供の歌声を上手く取り入れて面白く、"I know in woderful"の叫びと歌が印象的。まさに家族礼賛の世界。
M8."Cello Suite No. 1, BWV 1007 : Minuet I / II" 得意のスキャット。バッハがグレッチェン節に変化。どこか聴くモノに真摯な気持ちを描いてゆく。
M9."No Plan " あのデヴィット・ボウイの最後のスタジオ録音曲から、人生を謳歌し、最大限に生きる必要性を歌い上げる。彼女の母親としての生き様から世界をここに見ている美しさと神秘性と。
私が過去のアルバムから描いた世界とは全くの別物の、意外性たっぷりのグレッチェンの母親としての人生賛歌のアルバムだ。「私はついに芸術的創造性と母性の育成のバランスを見つけることができました」と、彼女が言う通りの世界であった。バックの演奏陣は決して大所帯で無いが、その基礎にあるブラジル・テイストを十分に描いたり、一方人間賛歌の壮大な世界を描いたり、そこはかなりハイレベルの技量をも感ずるところである。
とにかく花で包まれたアルバム・デザインと共に聴くのが良いアルバムだ。
(評価)
□ 選曲・編曲・作詞・歌 88/100
□ 録音 85/100
(視聴)
*
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コメント
自blogへのコメントありがとうございます。
コンテンポラリー系女性ボーカリストについては、限定的に何人かの作品を聴いている程度ですが、
このアルバムは自分の好みから少々ズレていってしまっているかなぁという印象でした。
なもんで、肯定的な文章になっていないのですが、もしかしたら聴き込みが足りていないのかも。。
自blogのURLを記載させていただきます。
https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/482513436.html
投稿: oza。 | 2021年8月 4日 (水) 20時13分
ozaさん、コメント有り難うございます
もともとこのパーラトは、ジャズ・ヴォーカルとしても異色派ですね。その印象たるや、我が子を慈しみ愛して・・という世界とは全く別物と思っていましたので・・このアルバムには驚きでした。
好みと言うことでは、おそらく一般的に圧倒的にということは先ず無いでしょうね、ニュー・アルバムということになると、なんとなくその異色ぶりを聴いてみたいというところに私の興味はあります。
しかし、このアルバムには驚きました。全く予想外の世界でしたから。
リンク有り難う御座います。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年8月 5日 (木) 11時14分