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2021年6月13日 (日)

フランコ・アンブロゼッティ Franco Ambrosetti Band 「LOST WITHIN YOU」

ベテランのメランコリーなソフト・バラードを静かに聴き入る

<Jazz>

Franco Ambrosetti Band 「LOST WITHIN YOU」
Unit Records / Europe / UTR 4970 / 2021

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Franco Ambrosetti (trumpet,flugelhorn)
John Scofield (guitar on 1,3,9)
Renee Rosnes (piano on 2,3,4,8,9)
Uri Caine (piano on 5,6,7)
Scott Colley (bass)
Jack DeJohnette (drums except 1,2,4,7) (piano on 1)

Recorded at Sear Sound Studios. NY. January 22-24, 2020

  スイスのベテラントランペッター、フランコ・アンブロゼッティ(1941年フルガーノ生まれ、もう80歳になる)の昨年録音の最新盤。トランペット、フリューゲルフォーンものは、実は私はあまり聴かないのだが、今作のように彼の持ち味の小コンポによるハードパップ、バラード中心ものは、やはりそのムードには何とも言えない味付けがあって、つい聴いてしまうと言ったところにある。
 今作も、ジョン・スコフィールド(g)、ユリ・ケイン(p)、スコット・コリー(b)、ジャック・ディジョネット(ds,p)らの米国の実力派プレイヤー達と組んだ小コンボによるものであるが、今回はピアノにリニー・ロスネスが健闘している。

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1. Peace (Horace Silver) 10:36
2. I'm Gonna Laugh You Right Outta My Life (Cy Coleman, Joseph McCarthy) 7:13
3. Silli In The Sky (Franco Ambrosetti) 6:52
4. Love Like Ours (Alan Bergman, Marilyn Bergman, Dave Grusin) 7:35
5. Dreams Of A Butterfly (Franco Ambrosetti) 6:56
6. Body And Soul (Johnny Green, Edward Heyman, Robert Sour, Frank Eyton) 11:26
7. People Time (Benny Carter) 7:20
8. Flamenco Sketches (Miles Davis, Bill Evans) 7:43
9. You Taught My Heart To Sing (McCoy Tyner) 7:07

 しかし、大ベテランでイタリアに拠点を置きインターナショナルな活動を続けていて、前作は2019年の『Long Waves』で、それから2年でのコンスタントに新録音アルバムをリリースしているのは驚きである。今作も自らのオリジナル曲を含めて多彩な曲を取上げて、私の好むところの"もの思いにふける世界"を演じてくれて聴き応え十分。
 M1." Peace"から、フランコの刺激を感じさせない哀愁的情緒のある演奏とディジョネットのピアノに納得。
 M4."Love Like Ours"は、ロスネスのピアノのメロディーも美しく流れる。
 M5."Dreams Of A Butterfly"は彼のオリジナル曲で、この曲群の中では、珍しくなかなかリズムも軽快で、アルバムの変化にも貢献している。

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 フランコが、ここまで歌い上げるがごとくバラ-ドを吹き上げるところや、緩急の取り入れの切れ味と、全く年齢を感じさせない演奏に驚くところである。しかし何と言っても力みの無いメロウにしてマイルドでソフトな充実感のある味わい深さは渋く、さすが年の功というところである。そんなところが、静かに鑑賞できるアルバムといったタイプで仕上がっていて、私には心地よいのである。

 M6."Body and Soul"の古きジョニー・グリーンの曲は、前アルバムのピアノ・トリオとのフランコのflhによるカルテットで、11分を超える演奏で、コリーのベース、ケインのピアノ、ディジネットのドラムスが如何にも楽しそうに演奏している姿が手に取るように聴ける。
 それはスタン・ゲッツでもおなじみのM7."People Time "でも同様で、それぞれのソロ演奏を交えてのメランコリーの世界。
 今回主役のピアニスト、ソニー・ロスネスも力まず美しく演じてくれていて、その効果も大きい。特にM8."Flamenco Sketches"でのエヴァンスものでその実力発揮。
 締めのM9."You Taught My Heart To Sing"は、どんな感じで纏め上げるかと興味があったが、スコフィールドのジェントルなギターを効果的に効かせてのクインテットで、沈むことなく意外に明るく締めくくってくれた。

 このアルバムは、けっしてフランコ・アンブロゼッティの一人舞台のものでなく、年期の入ったフランコの味を、このメンバーもそれぞれ彼の世界を知り尽くしての独自の世界を持った演奏で、けっして遠慮は無くそれぞれの持ち味をきちんと出しての演奏は非常に気持ちが良い。

(評価)
□ 演奏  90/100
□ 録音  88/100

(視聴)

*

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コメント

このバラード感覚たっぷりのトランぺットいいですね。なにか昔のニニ・ロッソを思い出しました。

投稿: 爵士 | 2021年6月18日 (金) 23時04分

風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。m(_ _)m

おっしゃる通り、アンブロゼッティも良いのですが、メンバーが良いお仕事されてますよね。

リンクを置いていきます。

https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-69dffe.html

投稿: Suzuck | 2021年6月19日 (土) 12時12分

爵士さん
コメントどうも有り難う御座います
ソフトにしてテンダリーなtrumpet,flugelhornはいいでね。そしてそればっかりの演奏でなくてピアノ・トリオと時に入るギターも、ジャズとしての味わいを演じていて・・・そこも良かったと思ってます。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年6月19日 (土) 20時49分

Suzuckさん
ことらまでわざわざおいでになって、コメントどうも有り難う御座います
 おっしゃるように、これぞ小コンポの味わいですね。アンプロゼッティの独壇場だと多分飽きてしまうと思いますが、メンバーが持ち味持っているところが成功の元でしょうね。
 リンクも有り難う御座います。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年6月19日 (土) 20時54分

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