カンデ・イ・パウロ Cande y Paulo「cande paulo」
ロック系含め多方面からの曲を・・・しっとりとしたジャージーな世界に
<Jazz>
Cande y Paulo「cande paulo」
Decca / International / B0033772-02 / 2021
(Cabde y Pauro)
Candelaria Buasso : Vocals, Double Bass
Paulo Carrizo : Piano, Rhodes, Celesta, Keyboard
Larry Klein : Keyboard
Anthony Wilson : Guitar
Victor Indrizo : Drums, Percussion
アルゼンチン出身のグループ、カンデ・イ・パウロ (Cande y Paulo)のデビュー・アルバム。彼らは、キーボード奏者/コンポーザーでありサン・ファン国立大学教授・研究家パウロ・カリッソ(これまでに三枚のシングルをリリース)と女性コントラバス奏者・歌手のカンデ・ブアッソというこの異色の男女のデュオである。2017年のYouTube動画が1,200万再生を超えるなど世界中で話題となったということで、2020年に名門デッカ・レコードと契約を果たし、ここに待望のアルバム・デビューとなったということのようだ。
そしてアルバムのプロデュースは、これまでジョニ・ミッチェルやボブ・ディラン、ハービー・ハンコックやメロディ・ガルドーといった錚々たるメンバーを手掛けてきたプロデューサーのラリー・クラインが担当。レコーディングはロサンゼルスで行われ、演奏にアンソニー・ウィルソン (g)やビクター・インドリッツォ (dr)といったところが、サポートしている。このデュオが持つしっとりとしたジャージーな味付けでセンチメンタルな美しさが聴くことが出来る。
(Tracklist)
1.Treaty (Leonard Cohen)
2.Summertime (Ira Gershwin / George Gershwin / DuBose Heyward)
3.Limite En Tu Amor("The Limit to Your Love" Leslie Feist / Jason Beck)
4.Deja Atras ("Walk On BY" Burt Bacharach / Hal David)
5.I Fall In Love Too Easily (Jule Styne / Sammy Cahn)
6.Tuyo (Rodrigo Amarante)
7.Esperándote ("I'm Waiting for The Man" Lou Reed)
8.Sugar Mountain (Neil Young)
9.The Thrill Is Gone (Lew Brown / Ray Henderson)
10.Barro Tal Vez (Luis Alberto Spinetta)
11.Preguntan De Donde Soy(Atahualpa Yupanqui)
12.En Blanco Estas ("Into White" Yusuf/Cat Stevens)
収録曲は上のように多岐にわたって多彩だ。特にM10,"Barro Tal Vez "は、アルゼンチン・ロックの曲だそうで、これが彼らが2017年にカヴァーした曲で、初めての映像デビューしたものという。
アルバム通して、曲仕立ては全体にしっとりムード。彼女のヴォーカルはソフトだが、ハスキーがかっているし、やや切なさのセクシーな面もある。
M1."Treaty " レナード・コーエンからスタートで、しっとり味わい深くやや物憂い感じで歌う。
M2."Summertime "はポピュラーなジャズ・スタンダード。ベースの快適テンポによるのであるが、バックのメロディーもアンソニー・ウィルソンが手慣れたギターで流し、スキャットも入って編曲も独特で面白い。
気になったのは、M3."Limite En Tu Amor"がなかなか面白い、スローでやや陰気な中に説得力のあるウィスパー・ヴォイスといったところに通ずるやはり物憂いヴォーカル。このタイプが彼女には合うと思うし、このアルパムの一つの特徴。
M4."Deja Atras"はバカラックのヒット曲。ダイアナ・クラールで一番よく聴いたが、ムードは違う。やや暗めがある。
M6."Tuyo"はラテンリズムに乗ってのしっとり美しくというところ、このデュオの典型的な味の世界なんだろう。
M7."Esperándote " ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名曲「僕は待ち人」も登場。やはり彼らの演奏は刺激の無い纏め方。
M9."The Thrill Is Gone" これもゆったりとしたウィスパーの世界だが、なかなか歌い上げも聴かせる。
M11."Preguntan De Donde Soy" アルゼンチンの曲だとか、意外にしっとりかと思ったら最期の盛り上がりと感情の高まった高音のスキャットには驚かされた。
M12."En Blanco Estas" 比較的快適テンポのメロディアスな曲で収める
このデュオは、実は2人が出会ったのはカンデが15歳の時で、マルチ奏者/アレンジャーのパウロが彼女にピアノレッスンをしていた。その後ブエノスアイレスの音楽シーンで名を馳せるようになったパウロは、地元であるサン・フアンに戻り、かつての教え子だったカンデに再び出会うこととなった。彼女はなんと独学でオペラとジャズを学び、ヴォーカルとコントラバス奏者となっていた。2人は多方面にわたっての話題で緊密性が深まり、それが彼らの音楽を築く力になって、このアルバム誕生に向かったという。
独特の世界を持っていて、YouTubeでも人気があっただけの質の高さもあって、今後どう流れるかは若干興味もある。
(評価)
□ 編曲・演奏・歌 : 85/100
□ 録音 : 85/100
(視聴)
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コメント
ご紹介の2曲、聞きました。
好みから言えば、減点も無いけれど、加点も少なく感じられました。
よく纏まっていますね、安定してる。
赤いワンピの方ですが、キーボード良い音ですね。
演出上、わたしなら、彼女を裸足にしたと思います。
あのシューズは、どうなんでしょう。
絵的に、裸足の方が良いと思いませんか。
投稿: iwamoto | 2021年7月 1日 (木) 23時06分
iwamotoさん
お早うございます、コメント有り難うございます。
この世界を作り上げたのは、キーボード奏者のパウロだと思います。
そして映像のフォトジェニックなiwamotoさんの見方、さすがですね・・・コレは裸足が言われるとおりいいですね。そう言われてみると絶対その方が良いです。実は、このアルバム・ジャケには彼女の裸足の足が写っているんですが・・・
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年7月 2日 (金) 09時21分