アナイス・レノ Anais Reno『Lovesome Thing - Sings Ellington & Strayhorn』
驚きの若干16歳の女性ヴォーカルによるアメリカン・ジャズ
<Jazz>
Anais Reno「Lovesome Thing - Sings Ellington & Strayhorn」
Harbinger Records / Import / HCD3701 / 2021
Anais Reno - vocal
Emmet Cohen - piano, leader, arranger
Russell Hall - bass
Kyle Poole - drums
Tivon Pennicott - saxophone
Juliet Kurtzman - violin
エリントン&ストレイホーンの名曲を歌う若干昨年16歳時に録音の女性ヴォーカリスト:アナイス・レノ(リノ)のデビュー・アルバム。とにかく彼女は8 歳の時から、Birdland Jazz Club 等に出演し、有名どころのジャズメンと共演しながら、現場で実力を磨いてきた女性ヴォーカリストということだ。
支えるは、フュチャーしたEmmet Cohen (↑)のピアノだ。この支えるところが大きいと思いつつ、とにかく歴史的アメリカン・ジャズを今に伝えるハイスクール女性ヴォーカル・アルバムとして驚きながら注目した次第。
(Tracklist)
1. Caravan
2. Mood Indigo
3. Still In Love
4. Chelsea Bridge/A Flower Is A Lovesome Thing
5. I’m Just A Lucky So And So
6. It’s Kind Of Lovesome Out Tonight
7. Day Dream
8. I Ain’t Got Nothin’ But The Blues
9. All Roads Lead Back To You
10. U.M.M.G.(Upper Manhattan Medical Group)
11. Lush Life
12. Take The “A” Train
デューク・エリントンのM1."Caravan"は、私の若い頃のお気に入りの曲、いろいろと聴いては来たが、冒頭のパーカッションとのスキャットの入りが面白く16歳とは思えないジャズ・ヴォーカルなかなかやります。次第にスイング・ジャズ、サックス入りのフルバンド・ジャズと流れるところアメリカらしい。
M2."Mood Indigo" エメット・コーエンの静かな落ち着いたピアノにそってのバラード調。独特のアレンジを交えての歌い上げも様になっていて驚く。
M4."Chelsea Bridge/A Flower Is A Lovesome Thing" ゆったりした説得力の歌詞のないヴォーカルでスタート、サックスが続いてサポートして彼女のヴォーカルを最高調へと。
M5."I’m Just A Lucky So And So"これは彼女の低音でのセクシー・アッピール。スキャットも効果満点、後半のピアノも乗りに乗る。究極のジャズ・ヴォーカルといえる。
M6."It’s Kind Of Lovesome Out Tonight" やや物憂い世界もハイテイーン・ヴォーカルとして驚き。ピアノそしてヴァイオリンがいいですね。M7."Day Dream"も同様にまさに大人のジャズ・バラード・ヴォーカル色たっぷり。
M8."I Ain’t Got Nothin’ But The Blues" アカペラとスウィング・ジャズ・ヴォーカルの展開、場慣れしてますね。
M9."All Roads Lead Back To You"、 M10."U.M.M.G." 、 M11."Lush Life"と、大人のヴォーカルが続く。
M12."Take The “A” Train" 米国ジャズ・ミュージシャンの誰でも演ずる曲を、独特の編曲・スキャットを交えての、アメリカン・ジヤズの華々しさ演出し、締めくくるところはにくいところ。
いっやーーとにかく歳を考えると驚きのジャズ・ヴォーカル。バックもジャズを極める演奏で曲仕上げの質も高くハイセンス。とにかく、驚嘆のアルバム。これをいい大人がジャズ・クラブで聴いているのかと思うと恐ろしい世界である。
(参考) エメット・コーエンEmmet Cohen (Pianist)
エメットは、マイアミ大学にてクラシックを学び、その後ジャズに傾倒、2011年セロニアス・モンク・コンペティションでサード・プレイスとなり注目された。ニューポート、ノース・シー、モンタレイなどの大フェスティヴァルや有名クラブにて演奏してきている。クリスチャン・マクブライドのTip Cityのメンバー、またアリ・ジャクソンのトリオ・メンバーとして来日し演奏して好評。そして、2019年には、アメリカン・ピアニスト・アワーズのウィナーとなったとか。
近作アルバム「FUTURE STRIDE」(MAC1181/2020)がある(→)
(評価)
□ 選曲・編曲・歌 88/100
□ 録音 85/100
(参考視聴)
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コメント
スモーキーな歌声ですね。 大人のようです。
よく思うのですが、音楽の恐ろしさのひとつ。
歌でも楽器でも、特別な才能を与えられてそれを磨き出した人がいますよね。
この彼女は、年齢的に色々なことを想像出来るでしょうが、もっと若い子どもが、クラシックでは特に、酸いも甘いも、という枯れた演奏をすることがあります。
そのような現象が起こる必要があるのか、とも思うのですが。
音楽のような法則を守る世界では、奇跡のようなことが目の前に展開しますね。
投稿: iwamoto | 2021年7月12日 (月) 16時17分
iwamotoさん
こんばんわ、コメントどうもありがとうございます
クラシックを極めていてジャズに入るミュージシャンは沢山いますね・・・(勿論平行活動家も多い)自由度の問題と自らの創作性からでしょうか。
このような若い女性がジャズ畑で、所謂子供の頃からその道一筋というのは、意外にヴォーカルが一番入りやすいのかも・・・とも思ってます。演奏技術を伴っての世界はなかなか難しいと思いますので・・・
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年7月12日 (月) 20時39分