ハンナ・マリーケ Hanna Marieke Trio 「HYTHMS OF GRACE」
独特のクラシカルなリリカル・ジャズを築く
トータル・アルバムとしての世界
<Jazz>
Hanna Marieke Trio 「HYTHMS OF GRACE」
OAP Records / Netherlabds / OAPR2101 / 2021
Hanna Marieke - Piano & Vocals / Compositions
Ruben Bekx - Double Bass & Electric bass
Timo Menkveld - Drums
Recorded at the O.A.P. Studio, The Hague, The Netherlands, on January 18 & 19, 2021
オランダ発 新進気鋭の女性ピアニスト&ヴォーカル、作曲家のハンナ・マリーケのデビュー盤。これが恐ろしく印象に残るのだ・・・ここにもアメリカン・ジャズと異なったユーロ・ジャズの一つの形をみることなる。
彼女は、1996年アムステルダムに生まれでまだまだ若い。9歳からクラシック・ピアノを学んでいた。次第に即興と作曲に興味が湧き、ジャズ・ピアノを学ぶ為にユトレヒトの音楽院に通い2018年に卒業した。
現在のこのトリオで世界中をツアーしたいと願っているのだそうだ。と、言うことは、それだけの評価をこのアルバムで勝ち取りたいと言うことだが、・・・しかし、私の印象としては十分にしてその価値ありと評価する。
コロナ禍の大変な世の中、"多くの人々が光、希望、美しさを持って生きれるように、作曲したジャズ音楽で、自身のストーリを語ろうとしているのだ"と。そして今年1月に録音し、アルバム・リリースにこぎ着けた。
"My Music is a vulnerable expression of My Heart" (私の心の傷つきやすい表現)といっているが、自己のオリジナル曲に込めるところは大きく感ずる。
アルバム・タイトル曲"Rhythms Of Grace"を聴く機会があって、ちょっと興味をそそられ手に入れたアルバムある。ピアノ・トリオであるが曲により彼女のヴォーカルが入るという代物。
1. Groundwater
2. A Moment’s Choice
3. Its Own Time
4. Dedication Waltz
5. Eyes Of Freedom (interlude)
6. Bold But Still
7. Parachute
8. Found
9. Quiet Times
10. Whisper Louder
11. Rhythms Of Grace
All compositions by Hanna Marieke
これが、ユーロ・ジャズの一つの世界か・・・と、彼女のクラシック音楽のキャリアは詳しく窺がい知れなかったが、明らかにクラシックの世界からジャズの世界へと発展したところを感ずる。
そして全曲彼女のオリジナルにしてM3, M8,M9には彼女のヴォーカルが高音を生かした型で入ってくる。その歌唱技法は、ジャズの入門法としての人気獲得しやすいセクシーにしてウィスパーとか夜のムードとか言った世界では全くなく、彼女独特のクラシカルな世界を感ずる。どうもそこにはオランダのゴスペルの因子が入っているようで、私にとっては新鮮な世界だ。しかも曲の間の繋ぎにというのでなく、明らかにその歌が三曲ではあるが大きなウェイトを占めているのだ。
"クラシックとゴスペルの音楽を楽しめるリリカルジャズ"として聴いて良いのだろう。いっやーー、これは歴史的なアメリカン・ジャズとは明らかに異なる世界である。
M1."Groundwater"ピアノの美旋律を聴かせ、中後半の盛り上がりにはリズム隊も奮戦、明らかにクラシック世界を感ずる。
M2."A Moment’s Choice"中盤からのドラマチックか展開がうまい。
M3."Its Own Time"突如ハイトーンなハンナのクラシック調のヴォーカル。
そしてM4."Dedication Waltz"は、美しい調べのピアノとバックの静かにサポート。
なんと、アルバムの曲の展開の中で、ここにM5." Eyes Of Freedom "は、幕間として静かに美しい間奏曲をピアノ・ソロで。それに途切れなくつづくM6."Bold But Still"、M7."Parachute"は躍動的な世界。
そしてM.8"Found"は、彼女の語り聴かせるようなクラシック調のヴォーカル、それに続いてベースが静かに支える安堵感のピアノの調べのM9."Quiet Times"。
M10."Whisper Louder"最後の三者のインター・プレイの華、ベース・ドラムスの圧力が光る。
M11."Rhythms Of Grace" 低音の説得力あるゴスペル調ヴォーカルとトリオ・プレイがアルバムを締めくくる。
とにかく彼女自身のストーリーというが、そんな物語の展開が十分感じられる作品。一曲ごとに聴くというモノでなく、今日のアルバム一単位でなく一曲一曲をストリーミングして聴くという時代に、それに反して見事にトータル・アルバムとして仕上げたかなり優秀な傑作と評価する。
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 88/100
(視聴)
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コメント
jazzの発祥を説明するときに、ヨーローパが大きく関っていることを再確認させられます。
特に英仏ですが、植民地政策や、楽器の存在でさえ。
極めて特殊にアメリカとアフリカの出会いだけで発生した、というのは違うと思うのです。
地名が証明しているとも言えますね。
だから、川の上流にはヨーロッパもあるのだと。
ヨーロッパジャズの愛好家が現地以外に存在するというのは、大事なことなんだな、と考えるようになりました。
投稿: iwamoto | 2021年8月28日 (土) 15時47分
iwamotoさん
コメントどうも有り難う御座います
ユーロジャズは、やはり音楽というものの歴史を持っているところに魅力ある世界が築かれていると思いますね。
イタリアは勿論、北欧やポーランドなどのジャズの魅力もかなりのインパクトを受けてきました。
又、哀愁、叙情性、哲学的深遠さなども・・・日本人は共感するところが多く、それがユーロに寄っていく一つであるのかも知れません。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年8月28日 (土) 17時16分