リタ・マルコトゥッリ TRIO KÀLA 「INDACO HANAMI」
リリカルとアクションの交錯、そこには詩的・独創性に満ちた圧巻のプレイ
・・・・・70年代プログレッシブ・ロックが生きているのか
<Jazz>
TRIO KÀLA 「INDACO HANAMI」
Abeat Jazz / Italy / ABJZ230 / 2021
TRIO KÀLA
リタ・マルコトゥッリ Rita Marcotulli (piano)
アレス・タヴォラッツィAres Tavolazzi (double bass)
アルフレード・ゴリーノAlfredo Golino (drums)
Recorded,mixed and mastered at Artesuono Recording Studios,Cavalicco,Udine,Italy on January 2021 by Stefano Amerio
人気のイタリアのベテラン個性派女性ピアニストのリタ・マルコトゥッリ(1959年ローマ生まれ)による最新ピアノトリオ・アルバム。歴史的イタリアン・プログレ・バンド "Area" の二期からメンバーとして現在も活動するベーシストのアレス・タヴォラッツィと、イタリアのドラマーのアルフレード・ゴリノを迎え、名人・達人集合作品。
収録曲は、下記のようにマルコトゥッリのオリジナル3曲と、三者によるもの1曲、そしてビートルズ、ピノ・ダニエーレなどのカヴァー曲5曲という構成。
更に注目は、録音エンジニアは名人ステファノ・アメリオだ。
1. Indaco (Rita Marcotulli)
2. Bobo's Code (Rita Marcotulli)
3. Lady Madonna (J. Lennon / P. McCartney)
4. Napule È (Pino Daniele)
5. I Think It's Going To Rain (Randy Newman)
6. Dialogues (Marcotulli, Golino, Tavolazzi)
7. Quando (Pino Daniele)
8. Cose Da Dire (Rita Marcotulli)
9. Romeo And Juliet (Nino Rota)
久しぶりに刺激的な演奏に触れることが出来た。結論的に素晴らしいアルバムだ。
70年代にジャズ寄りだったイタリア・プログレッシブ・ロックの"アレアArea"のベーシストの名前が、ここに見るのは嬉しい。
又このトリオのリーダー・女流ベテラン・ピアニストのリタ・マルコトゥッリには、アルバム「The Light Side Of The Moon」(FONE JAZZ/SACD182/2017)(→)と言うのが有り、これもプログレッシブ・ロックのピンク・フロイドの「The Dark Side Of The Moon (狂気)」が関係し、しかもその中の曲"Us and Them"をカヴァーしている。ライブでも、その他の60年代からのピンク・フロイドの曲を多く取上げていることからも、間違いなくその線なのだ。又彼女はパット・メセニーとの共演もある。こんなピアニストのジャズとなると、どうしても聴いてみたくなるのも私としては当然のことなのである。
結論的には極めて彼女のピアノは抒情的な世界である。しかし変則的なところが新鮮で有り、これが又魅力的だ。
冒頭のM1."Indaco" は、詩的な内省的な抒情的世界からスタート、ところがこの曲の前半にも早々に変調して、快速なドラムスの展開と同時にアクション演奏、しかしどことなく哀感があるのだ。そして又再び冒頭の流れの静かなバラード美的ピアノ旋律の世界へ。しかしそのままでは終わらず、更にベース、ドラムスの歯切れの良いビートの展開もみせる。こうした変調の流れが、決して不自然でなく哀感を誘って迫ってくるので不思議な感覚になる。実はこの曲がこのアルバムの凝縮のように思えるところだ。
このように、とにかく抒情からアクションの起伏・メリハリ十二分の結構ドラマティックな快演が、一つの曲の中で展開し、又一方曲単位でそのつながりの中で襲ってくる。久々に聴くトリオの快展開に釘付けになる。
そして見逃せないのがアメリオのマスター録音とミックスによる効果だ。ドラムスとベースの位置を明瞭に配置し、ドラムスの圧力と微妙な繊細な部分を見事に生かしているし、ベースのパワーも軽さと重厚さの美学で迫ってくる。まさにトリオ演奏の華を地で行っている。
M2."Bobo's Code "はゆったりとピアノがうねりを持って語りかけ、ベースの響きが安定剤。レノン・マッカートニのM3." Lady Madonna"が、驚きのドラム・ソロから展開、しかしどうもメロディーはこのアルバムでは異質感。
ピノ・ダニエレの2曲のM4."Napule È"は、リズム隊のノリのよい進行にそってピアノが起伏を造り 、M7." Quando"は、ちょっと不思議な世界に誘導する展開。
M5." I Think It's Going To Rain "ゆったりと理解しやすい説得力の曲。その後のM6." Dialogues"が、非現実的な異世界と、現実的な荒々しさとを三者の個性で展開して、トリオの頂点を築く。
M8." Cose Da Dire "ラスト前として、ここに再びマルコトゥッリのオリジナルがスウィング曲として登場。
ラストM9."Romeo And Juliet"は、ニノ・ロータ。とにもかくにも美的世界で収めるが、後半にしっかり自己のアドリブを挿入して終わるところがニクイ。
このアルバムは、ピアノ・トリオ・ジャズの抒情派ならではの美的世界と躍動感あふるるタイナミズムやドラマティック性をしっかり描いたもので、更に三者の個性を十二分に盛り込んだ快作と受け取ることが出来た。プログレッシブ・ユーロ・トリオ・ジャズ作品だ。
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 90/100
(視聴)
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コメント
難しいです。 入り込めない(笑)
音数が多いですね。
生で聞くと、素晴らしいものなのかも。
投稿: iwamoto | 2021年8月19日 (木) 12時53分
iwamotoさん
コメントどうも・・・有難う御座います
私はこのマルコトゥッリのピアノの抒情的な美と、一転してのスリリングな演奏に完全に虜になってしまいました。リズム隊も心得ていてその変調をサポート、見事です。それがアメリオの録音によって一層リアルなんですね。久々の快作。
音楽は、それぞれ感ずるところあれば良いのでして・・^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年8月19日 (木) 14時45分
書き忘れましたが、ジャケ写がとても奇麗ですね。
投稿: iwamoto | 2021年8月20日 (金) 13時04分
iwamotoさん
そうなんです・・・このジャケ・アートは良いですね。
日本のVENUSレコードに見習ってほしいです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年8月21日 (土) 09時56分