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2021年9月14日 (火)

マルチン・ボシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「En attendant」

鉄壁のトリオによるインプロの華と深遠なる美

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio 「En attendant」
ECM / IMPORT / ECM 2677 /2021

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Marcin Wasilewski(p)
Slawomir Kurkiewicz(double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Recorded August 2019
Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines
Engineer : Gerard de Haro
Mastering : Nicolas Baillard
Cover photo : Max Franosch
Design : Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher

  待望のマルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski(このポーランド人の名前の読み方が難しく、当初このように言っていたのでそのままとしている)のトリオによるニュー・アルバムのリリース。
 もう何年か前に彼が新進気鋭としての結成したシンプル・アコースティック・トリオの『コメダ』がお気に入りになってから、もうこのトリオも25年にはなると思うが、とにかくポーランドの音楽性の高さには何時も驚かされてきた。そして彼も円熟して最高潮の中で、こうして久しぶりにトリオのみのメンバーでのアルバムと言うことで大いに期待していたところである。
 近年はネットにての音楽配信が盛んになり、既に当アルバムの曲MQAハイレゾ・サウンドの"In Motion,Part Ⅰ"をダウンロードして聴いていたので、おおよそのこのアルバムの雰囲気も解ってはいたが、ここにやはりアルバムを手にして全7曲を一貫して聴くとその感動も大きい。

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(Tracklist)

1.In Motion (Part I)
       Wasliewski/Kurkiewicz/Miskiewicz
2.Variation No.25 from: Goldberg Variations
       J.S.Bach,Goldberg Variations
3.Vashkar
       Carla Bley
4.In Motion (Part II)
       Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz
5.Glimmer Of Hope
       Marcin Wasilewski
6.Riders On The Storm
       Morrison/Densmore/Krieger/Manzarek
7.In Motion (Part III)
      Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz

  昨年5月にリリースしたテナー・サックスのJoe Lovanoを迎えた作品『Arctic Riff』も好評だったが、今回はマルチン・ボシレフスキ・トリオとしてのECM7作目。やはり私としては純粋にこのようなトリオの作品が圧倒的に好きで、今回は大いに喜んでいる。

 そもそもこのトリオはスタートは「SIMPLE ACOUSTIC TORIO」の名前であったが、現在はピアニストのボシレフスキをリーダーとして「Marcin Wasilewski Trio 」と名乗っている。しかしメンバーは一貫して変わっておらず、鉄壁のトリオで音楽性においても三者共に乱れのない発展をしてきているところが魅力。ジャズ界では美しさと真摯なる世界としてもピアノ・トリオが燦然として輝いているが、欧州でのその発展は素晴らしい。そんな世界を堪能出来るのである。

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 三人による共作"In Motion"が、上のリストにみるようにPart 1から3と、3曲構成としてアルバムのスタート、中盤、締めくくりと位置している。このようにトータル・アルバムを一つの世界として描いていて、その美しさと深遠さとそしてフリー度が高まった世界で有りながら三者の乱れない奥深さに納得する。
 そしてなんとバッハのM2."Variation No.25 from: Goldberg Variations"が登場し、これがここではモーツァルトの美しさの如く演じられるのには驚いた。
 更に何故かCarla BleyのM3."Vashkar"の登場、彼女の実験色の世界に突入。
 そしてボシレフスキー自身の安らぎに通ずる曲M5."Glimmer Of Hope"、更にM6."Riders On The Storm"と、ドアーズの曲が気品をもって演じられるところは、かなり謎が掛けられた気分である。

 しかし、究極はマンフレッド・アイヒヤーの世界に通ずるところ、彼らのトリオの描くインプロヴィゼーションの不思議な美に纏め上げられたこのアルバム、静かにして深遠、そしてその美しさは、ピアノのメロディー・ラインや響きに止まらず、繊細なスティック音のドラムスや、ベースの単なるズム隊でなくメロディにも大きな役を担っていて、トリオとしてのセンスの高さが感じられた。
 相変わらず、このトリオは虜にされてしまう世界を持っている。

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[参考] Discography

(Marcin Wasilewski Trio)
『シネマ・パラディーゾ』 - January (2008年、ECM)
『フェイスフル』 - Faithful (2010年、ECM)
「Spark of Life」 (2014年、ECM) (with Joakim Milder)
「Live 」(2018年、ECM)
「Arctic Riff」(2020年、ECM) (with Joe Lovano)

(Simple Acoustic Trio)
『コメダ』 - Komeda (1995年、Gowi)
「When Will the Blues Leave」 (1996年、Polonia)
「Live in Getxo」 (1996年、Hillargi)
『HABANERA』 - Habanera (2000年、Nottwo)
『ララバイ・フォー・ローズマリー』 - Lullabay for Rosemary (2001年、Nottwo)
『トリオ』 - Trio (2005年、ECM)

(評価)
□ 曲・演奏 :  90/100
□   録音   :  90/100

(試聴)

 

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コメント

風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。m(_ _)m

このトリオがECMに移ってから、しばらくの間、その前の時代と比べて嘆いていた方も少なからずいたと思うのですが、ここまでくると、ご本人たちの意志が強く反映されていたんだな、、
と、改めておもいます。
更なる飛躍を期待します!


私もリンクを貼っておきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2021/09/post-25040d.html

投稿: Suzuck | 2021年9月15日 (水) 08時54分

Suzuckさん
コメント、リンク有り難う御座いました。
期待度が高いこのトリオが、又ECM思想を身に付けつつ、彼らの世界を築いていることに喝采をしたいと思います。ドラムスをはじめリズム陣も、繊細にして魅力ある演奏が聴かれ、トリオの良さが聴き取れました。
"In Motion"三部構成の曲を骨格として仕上げたトータル・アルバム佳作と評価しています。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年9月15日 (水) 11時45分

風呂井戸さん,こんばんは。リンクありがとうございました。

おっしゃる通り,「美しさと真摯なる世界としてもピアノ・トリオが燦然として輝いている」って感じですし,彼らの魅力はこのトリオ・フォーマットでこそ更に増すってところですよねぇ。

元々信頼度の高い人たちではありましたが,絶対に裏切らないって確信を持って言えるレベルになってきました。やっぱり素晴らしいです。

ということで,当方記事のURLを貼り付けさせて頂きます。
https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2021/09/post-5ade1c.html

投稿: 中年音楽狂 | 2021年9月15日 (水) 21時20分

中年音楽狂さん
コメント、リンク有り難う御座います
今回は、純粋なるトリオで感動しています。
ポーランドの音楽レベルは国民的に高く、基礎がしっかりしているために安心して聴けます。
このアルバムは、インプロの美が私は聴き所としていますが、彼らなりきの実験もちゃんとしているところが頼もしいですね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年9月16日 (木) 09時27分

こんにちは。

やはり、トリオの美学とマンフレート・アイヒャーの美学とがうまく混ざり合わさってできた、新名盤という感じでしょうか。シンプル・アコースティック・トリオ時代は残念ながら聴いてないのですが、今現在ここに到達しているアルバムを聴いていると、もう大満足です。

当方のブログアドレスは下記の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2021/09/post-2c2628.html

投稿: 910 | 2021年9月16日 (木) 12時24分

910さん
コメント有り難う御座います
いつもECMシリーズは拝見しています。
今アルバムは、アイヒヤーの企画には十分答えつつも、彼らのインプロをしっかり構築しての美学の結晶たるものとして納得しています。
そうそう、是非シンプル・アコースティック・トリオ時代も聴いてやってください。例のコメダが全て私は誘われた原点です。
リンクも有り難う御座います。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年9月16日 (木) 16時45分

ジャケが美しいですね。
意志があって、技術もある。
わたしが聞いた感じでは、緩いところも欲しいと思いました。

投稿: iwamoto | 2021年9月17日 (金) 12時42分

iwamotoさん
コメントどうも有り難う御座います
ジャケの通りのアルバムですね。ECM世界を堪能出来ます。
もう長く彼らを聴いてくると、それなりの前進が着実で私は喜んでいますが・・・ふと、昔のアルバム「Komeda」が懐かしくなります。是非聴いてみてください。(現在は、「Lullaby for Rosemary」というアルバムになっています)

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年9月17日 (金) 22時21分

紫煙たなびくジャケットの?
「Ballad for Bernt」、良い感じでした。

投稿: iwamoto | 2021年9月18日 (土) 16時58分

iwatomoさん
お聴きになられたようですね・・・Komedaの曲群ですが、ユーロ・ジャズのピアノ・トリオの良さが、ひしひしと伝わってきます。ポーランドの凄さですね。
 1995年録音ですが、この再発盤「Lullaby for Rosemary」は2001年、しかし音も良いです。これがMQAとなれば、もっと痺れそうです。
"Ballad for Bernt"この世界も頂ですね、時にスウィングしてみせたり、いいですね、
 私は更に"Sleep Safe and Warm"で、完全にノック・アウトされたんです。(笑い)

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年9月19日 (日) 18時18分

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