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2021年10月23日 (土)

オルガ・コンコヴァ Olga Konkova Trio 「Open Secret」

ジャズにしてもう芸術としか表現できない・・

<Jazz>

Olga Konkova Trio 「Open Secret」
Losen Records / EU / LOS244-2 / 2021

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Olga Konkova オルガ・コンコヴァ (piano except 08) (Fender Rhodes on 03, 07, 08, 10)
Per Mathisen ペール・マティセン (upright bass)
Gary Husband ゲイリー・ハズバンド (drums)

2020年3月13日ノルウェー-アスケルのMusikkloftet録音

  旧ソ連出身、モスクワ音楽アカデミーと米バークリー音大に学び、1994年に夫のノルウェーへ移り住んで以来オスロを拠点にヨーロッパ全域で精力的に演奏活動、個性派女性ピアニスト:オルガ・コンコヴァ(1969年旧ソ連のモスクワ生まれ)の、ノルウェー人である夫のベーシスト:ペール・マティセンと英国のドラマー:ゲイリー・ハズバンドとのトリオ作品。
 前作は、ここで取上げた2015年の「The Goldilocks Zone」であり、もう6年にもなるのかと思いつつ聴いているアルバム。全曲彼女のオリジナルである。

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01. Hymn For My Brother (Olga Konkova)
02. Loved Before (Olga Konkova)
03. All Sorts Of Weird And Wonderful (Olga Konkova)
04. Rest In Motion (Olga Konkova)
05. Darwin's Point (Olga Konkova)
06. No Rules (Olga Konkova)
07. The Man With The Van (Olga Konkova)
08. Les Hommes Des Sables (Olga Konkova)
09. Open Secret (Olga Konkova)
10. Grande Capitano (Olga Konkova)
11. Discovering The Truth (Olga Konkova)
12. Triste Realidad (Olga Konkova)

   今作も、現代ヨーロッパ抒情派ピアノ・トリオの一つの典型の深遠な世界、それは文学的的内省の哲学的な深遠さと詩的な耽美性に溢れるところを演じ、反面とにかく女流ピアニストとは思えない精悍なタッチのインプロヴィゼイション的ピアノのメロディとスリリングな危機感あるサウンド。そしてベースとドラムのパワフルにして鋭さのある攻勢型のサポートの展開など、高度な演奏技術と、その内容は芸術としての究極の姿を思わせる高度な作品だ。現代ジャズの発展を遂げている姿を知りたければ、最も相応しい作品である。

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 M1."Hymn For My Brother"
の穏やかなピアノの流れがブラッシと優しいシンバル音をバックに、一つ一つの音を大切に余韻を聴かせての展開。それと対照的にM2."Loved Before"は、激しいドラムスと低打鍵音のピアノで荒々しく展開とするという対比が、極めて哲学的なのである。
 M3."All Sorts Of Weird And Wonderful"では、この曲の中で優しさとはげしさの両面が描かれ、ベースの響きが印象的。ここではピアノとフェンダーローデス双方を演じて変化が付けられる。
 このように、どの曲においても、その変化と余韻が激しさと優しさとでスリリングな展開を交えて端麗美とリリカルな世界を見せつつ攻撃的とも言えるインタープレイを展開して、もはや単純には行かない中に深遠なる世界を見事に描く。
 M6."No Rules "に見せる低音の鋭さと高速のピアノ・アクション・プレイにドラムスとベースの絡みが面白い。
 M7."The Man With The Van "、M8." Les Hommes Des Sables"でも、フェンダー・ローデスを展開してコンテンポラリーな世界の色もうかがわせる。
 M9."Open Secret " アルバム・タイトル曲、ピアノの異様感と優しさと美しさの共存、そしてベースの対話が優しさの中に頼もしさがあり、又一方刺激的でもある。それはM10."Grande Capitano"ではその刺激性がインタープレイの展開が頂点に達して迫ってくる。

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 ピアノの流れは、文学的詩情の世界を単なるメロディーで迫るので無く、音の変化・余韻・強弱・リズムの変化による表現が秀悦。べースとドラムスの機動的とも言える変化との対話の中で、トリオとしての芸術的とも言える曲展開が多様な色彩をみせて迫ってくる。これは現代音楽にも通ずる音楽芸術の何物でもない。

(評価)
□ 曲・演奏 :   95/100
□   録音   :   90/100

(試聴)

① http://www.losenrecords.no/release/open-secret

 

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コメント

これも、なかなか素晴らしいですね。
この曲に限れば、協和音が多過ぎる気がしました。
不協な方が心地良いです。

ジャンルを特定できないもの全てがジャズという分野に入れられるなら、最大の音楽勢力だと思います。
クラシック音楽がまだ生きていれば、彼等のような人たちが、それを担っているのでしょうね。
音をしっかり考えるって、こういうことだと思うのです。

投稿: iwamoto | 2021年10月25日 (月) 16時49分

iwamotoさん
コメント有り難うございます
>ジャンルを特定できないもの全てがジャズという分野に入れられるなら、最大の音楽勢力だと思います。
・・・・そうですね、そう言われればジャズは何でも喰ってしまう。特に今や、欧州でその流れが強いですね。昔から、クラシックとジャズの二刀流はいましたが。
 クラシックから一歩、自己の世界へ流れようとすると、そこにジャズがあった。^^
 でも何となくジャズには規定できない枠があるようにも思いますが・・・。
 不協和の世界を楽しむ・・・いいですね、私はアルバムとしての評価をしたい人間でして、是非このトリオの不協和音にも接して欲しいと思いますし、又ユニゾンのわずかなズレが味わい深いと思うこともあります。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年10月25日 (月) 18時03分

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