ロベルト・オルサー Roberto Olzer Trio 「NOTTURNO」
全編、美に包まれて・・・・私は絶賛!!
<Jazz>
Roberto Olzer Trio with Strings「NOTTURNO」
ATELIER SAWANO / JPN / AS170 / 2021
Roberto Olzer: piano
Yuri Goloubev: bass
Mauro Beggio: drums
L.Giovine :violin, L.Zazzaro:viola, A.Merici:cello
我が期待のピアニスト・ロベルト・オルサーは、1971年イタリア・ドモドッソラ生まれ、50歳を迎えた最強の年齢。幼少の頃からクラシックのピアノとオルガンを習い、名門ベルディ音楽院ではオルガンを専攻。その後エンリコ・ピエラヌンツィにジャズ・ピアノを師事。クラシックの発展系の中にジャズの即興性を取り込んだスタイルで人気。鉄壁のトリオはベースにユーリ・ゴロウベフ、ドラノマーはマウロ・ベッジオと組んでいる。
ここでも2014年に取上げたアルバム「Steppin’ Out」で注目を集め、私はそれ以来の追っかけ状態だ。2015年11月のアルバム「The Moon and the Bonfires」で多くの人気獲得。クラシックの強固なバックグラウンドをもってのリリシズムとジャズの楽しさを演じてのヨーロッパ最先端を行くピアノ・トリオ。
2016年11月にリリースされた「Dreamsville」はジャズ批評「ジャズ・オーディオ・ディスク大賞 2016」インストゥルメンタル部門で金賞を受賞、注目のピアニストだ。
今回ここに鉄壁トリオでニューリリースされたアルバムは、なんと曲によっては(5曲に)、ストリングスを呼び込んでの新スタイルにも挑戦。アルバム・タイトルの「夜想曲」にアルバム・コンセプトをおいてのトータル・アルバムとしての演奏に、Sound Engineerに名手Stefano Amerioを起用しての作品。
しかし事情はよく解らないが、録音は2019年で、以降澤野工房にて難産のアルバムであり、リリースまでに2年の経過が有るも、とにかく私としては大喜びのアルバムなのである。
(Tracklist)
01. Images*
02. Etude, Op. 10 No. 6
03. Andante con moto, from ‘Italian’ Symphony
04. My Funny Valentine
05. Rei I, from Neon Genesis Evangelion
06. Milano Rain#
07. Notturno*
08. Eveline*
09. Touchdown*
10. Dido’s Lament, from ‘Dido and Aeneas’
( *印はR.Olzer #印はY.Goloubev の曲 )
全曲ストリングスが入るとなると、ちょっとイメージが変わって抵抗あるなと思っていたが、5曲であり、しかも曲の急所に美しく流すというスタイルであまり気にならない。基本はあくまでもトリオであってまず納得。
彼らのオリジナル曲は5曲で、メンデルスゾーン(M3)、ヘンリー・パーセル(M10)のクラシック曲も登場。
とにかくスタートのM1."Images"から、オルサーのテンダーにして耽美性たっぷりのピアノが響き、アメリオの録音はベースをしっかり描き、ドラムスがバックで広い音場でくっきり描かれて気持ちが良い。やはりゴロウベフのベースは、単なるリズム隊でなく、見事な旋律も奏でるし、ピアノとのユニゾンも美しい。とにかくエレガンスで現代ヨーロッパ抒情派の雄だ。
M3." Andante con moto, from ‘Italian’ Symphony"の冒頭からやるせないストリングスの美しい旋律、それにベース、ピアノがアドリブ的に流れてむしろクラシックのストリングスの美しさを思い起こさせドキッとする。続くM4."My Funny Valentine"もストリングスが美しく流れるが、その取り入れが急所を心得ていて、ジャズを忘れさせない美の構築をする。
メインテーマのM7."Notturno夜想曲"はオルサー自身の曲で、ピアノの旋律と音には懐かしき時の夜の想いを回顧させる雰囲気を持っている。優しくストリングスも要所に入れるところが味噌だ。
又ゴロウヘフの曲M6."Milano Rain"も、彼らしい情感たっぷりの気品ある曲。
M9."Touchdown"のピアノの流麗な流れに、ベッジオの的確に入るシンバルの音、そして中盤のドラム・ソロもアルバムの流れを盛り上げるに適度の刺激となって快感。
M10."Dido’s Lament, from ‘Dido and Aeneas’"のベース・ソロとクラシックを思わせる美しいピアノとのハーモニーも頂きだ。
とにかく、ユーロ・ジャズの叙情性を求めるなら、このアルバムはピカイチだ。しかも曲のアクセントやインプロも繊細に適当に入り、結構緊張感の響きもあってジャズ心をくすぐるのもうまい。今年の貴重な一枚と評価する。
(評価)
□ 曲・演奏 95/100
□ 録音 95/100
(試聴) "notturno"
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コメント
ご紹介の曲、これが一曲なのですか。
意外な展開をするんですね。
オルツァーと書いたほうが、無難に感じられます。
というか、綴りを想像しやすいですが、こう決まってしまった、ということでしょう。。
「ノットゥルノ」とタイトルに謳ってしまえば、何も言えない感じもします。
確かにそうですね、と言って聞くしかないような。
全く知らないジャンルですので、毎回良い刺激となっています。
投稿: iwamoto | 2021年10月 7日 (木) 11時47分
iwamotoさん、こんにちわ、コメント有り難うございます
アルバム・タイトル曲の"notturno"一曲です。確かに途中で変わりますね。
イタリアでは"サー"になるんですかね?
今回はクラシック曲も演じてますし、もともとベースのゴロウベフはクラシックのベース奏者でしたし、ジャズとクラシックの発展系としてもユーロ的で、取り敢えず知って頂くと嬉しい分野です。
結構病みつきになってしまいます。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年10月 7日 (木) 18時36分
聴いてます。ガラティのSkynessとどうしても比較してみますが、私の好みとしては、オルサーにわずかに軍配。ガラティ―は逡巡の上、寺島レコードに、オルサーは、迷ってやっとリリース。アーティストと澤野氏の間でJAZZ観が少しずれてきたのかな?
投稿: 爵士 | 2021年10月 9日 (土) 09時18分
爵士さん
コメント有り難うございます
澤野氏によれば・・オルサーとガラティーは悩みの種だったんでしょうかねぇーーー。演奏と録音の良さは解るが、果たしてジャズ工房として相応しいかどうか??、なんとなく解りますね、悩むところが・・・。
又、美的メロディーを好む日本人に、このようなアルバムを提示して良いかどうか。
私的には、大賛成なんですが・・それは私個人の問題で、一般的なジャズ界としての評価は ??、いずれにしても澤野氏はオルサーを選び、このところの寺島氏の流れからガラティは寺島氏に・・・この結末で良かったのかも知れません。
私的には、若干の発想の違うところから、甲乙つけられずにおります。しかしこの秋には良いプレゼントでした。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年10月10日 (日) 10時37分