« アデル Adele 「30」 | トップページ | 箱根アフロディーテ50周年記念の年として・・ピンク・フロイド »

2021年11月26日 (金)

米木康志 YASUSHI YONEKI TRIO 「SIRIUS」

真摯な叙情派演奏が心に響くアルバム

<Jazz>

YASUSHI YONEKI with Manabu Ohishi ,Ryo Noritske
「SIRIUS」

GEKKA / JPN / GEKKA0008 / 2021

Siriusf

米木 康志 Yasushi Yoneki (bass)
大石 学 Manabu Ohishi (piano except 9)
則武 諒 Ryo Noritake (drums except 9)

2020年9月25日ペンション月下草舎(山梨県北杜市小淵沢町)でのライヴ録音

Yoneki1   ベーシスト米木康志(1952年北海道函館市生まれ)の初のリーダー・アルバム。大石学(p)&則武諒(ds)という「大石学トリオ」のレギュラー・メンバーそのまま構成での、例の山梨のペンション月下草舎でのライヴ・レコーディング作品。
 彼はジャズ・ベーシストとして45年以上のキャリアーがあり、その技量は定評がある。ニヒリズムに寄った音楽観で多くのミュージャンの信頼を得て、表にでずにサポートに徹してきた人だ。来年には70歳となるベテランで、ここに自らの曲を中心に、亡き伴侶の曲と共にアルバム製作を成し遂げた。ディレクターは盟友大石学が担当しで、ピアノ・トリオであるだけに、大石の力も大いに借りながら作品と言って良いのだろう。

 米木は、天文学への深い見識も持っていると言われ、その為かアルバム・タイトルが「シリウス」となってリリースされた。大石学トリオの延長としても期待の持てるもので今年楽しませて頂いたアルバムであり、ここに登場させた次第。

(Tracklist)
1. Bonny Blue (米木 康志)
2. Chelsea Bridge (Billy Strayhorn)
3. World Peace (Harold Land)
4. SIRIUS シリウス (米木 康志)
5. Day Dream (Billy Strayhorn)
6. 夢色のノスタルジア (米木 さきく)
7. CX (米木 さきく)
8. あそびましょ (米木 康志)
9. SIRIUS (Solo)  (米木 康志) (solo bass)

*special thanks for
●夢色のノスタルジア
named by Naoshi Yoshida
●あそびましょ
arranged by Mamoru Ishida

 やはり、もともとのエヴァンス流というかしっとりとした心象情緒の世界を描きつつ、いやに哀愁感というよりはむしろある面ではクールな味のある詩情豊かな穏やかな流れの中に聴く者をして漂わせてくれるところにある。

1_20211124212601

 M1."Bonny Blue" 静かなピアノからスタートし、詩情ある深きに沈み込む心情の描きのあるバラッド曲。
 M2."Chelsea Bridge" は、"A列車で行こう"で有名なBilly Strayhornの曲。こんな哀愁漂う曲を演じていたんですね、米木と大石の流れはごく自然で聴く者の心に響く。
 M3."World Peace" ちょつと意外にベースとドラムスの推進力で引っ張って行く曲。ピアノもその流れに乗じて中盤は華々しく。そしてベース・ソロによってピアノはバックにまわり、ドラムスの展開を待って曲がおさまる。
 M4."SIRIUS" アルバム・タイトル曲でこのアルバムの中心をなす曲。ベースが思索的旋律を奏でながら深い音で宇宙に広がるように進行し、ピチカートのベースソロも重量感が広がる。又ピアノも美しく天の銀河の流れに沿うが如き旋律で更に美しさが溢れる。後半の盛り上がりも見事で素晴らしい。
 M5."Day Dream" はゆったりと心安まる流れ。
 この後、米木の亡き妻の2曲が続く。M6."夢色のノスタルジア"は、美しいバラッド曲。懐かしさのあふるる旋律に続く米木のソロは恐らく彼女に心を馳せているのだろう。そして続くピアノ・ソロも美しく、シンバルの響きも広がりを描く。
 M7."CX"は、タイトルの意味が解らないが、意外に明るく躍動的。ベースはじめ三者のそれぞれの持ち味の発揮の場となっている。
 M8."あそびましょ" 米木のベースと則武のパーカッシブな演奏音でリズム・スタートし、ピアノも乗ってリズム展開の面白い曲。ベースのソロも楽しげ。
 M9."SIRIUS"、米木のベース・ソロを重低音でじっくり聴かせてのM4.のタイトル曲の再演で幕を閉じる。

0614Noritakeryo

  スローからミディアム・テンポを基調としたところの曲群で、なかなか詩情豊かな世界に浸らせてくれて良いアルバムだ。米木が満を持して初のリーダー・アルバムを自己のオリジナル曲に亡き伴侶の曲を交えて、しかも期待されたストレイホーン等の曲をも演じての渾身の作品となった。恐らく彼は最初にして最後のアルバムの意志で作り上げたと思われ、そんな重量感もある。
 録音は、月下草舎にてのライブ録音で、オーディエンス録音風に近いところにあって、近年進化したスタジオ録音の迫る音には若干劣るところもあった。もう少し米木のベースの重量感と重低音にピチカートに発するリアルな音が聴きたかったところである。

 最後に参考までに、大石学の言葉を付け加えておこう

Profile

(大石学の言葉)     米木康志「SIRIUS」
 仕事で、たくさんのベーシストと演奏しました。リズムが速い人、遅くなる人、ハッタリをかます人、ソロだけ頑張る人、アイディア&音楽性の無い人、楽器がならないのでアンプに頼る人…
 1996年から米木さんとトリオを始めて25年たちます。もうこの人以外日本に本当のベーシストはいないと思います。若者の技術は上手いかもしれませんが、やはり音楽が浅い!ニュアンスが無いので前例の無いオリジナル曲の表現ができません♪ ずっと自分の曲を弾いてもらったので今回は、米木さんの曲3曲、亡くなった奥さん(国立音大)の曲、月下草舎の笹沼さんのリクエストで、ビリーストレイホーンの曲を山梨の月下草舎で録音しました。(米木さんは)ずっとリーダー作を断っていました。表に出たくない。できれば自分の存在を消し、人と演奏するのが楽しい♪と… 演奏するメンバーは自分のトリオですが中身は全然違います! この先トリオの作品、米木さんもこの先作りません(笑) 日本のJazzの歴史に残る1枚です。 コロナ収束しないので、ぜひ爆音で「SIRIUS」を聞いてください!

(評価)
□ 曲・演奏 :  90/100
□   録音   :  83/100

(試聴) https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008247913

|

« アデル Adele 「30」 | トップページ | 箱根アフロディーテ50周年記念の年として・・ピンク・フロイド »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

コメント

今回は、演奏のリンクは無しなのですね。

ちょっと違う話をさせてください。
最初の画像は、いわゆるジャケットですか。
なかなかのデザインで驚かされました。 これは困りましたね。
美術系のお友達がいないのかもしれません。
冬の大三角の写真ですが、これがまた、なかなかで。
おおいぬ座、こいぬ座、オリオン座、それらの扱いが可哀想すぎると思います。
シリウスを想起させる画像として、これは残念です。
大変不可解なのですが、どうしたのでしょうね。
もちろん、天文学の知識と天体写真は関係ないといえばそうですが。
全員がお気の毒に思われるのです。
素人は黙ってろと言われるなら、はいその通り、仰せのままに。

投稿: iwamoto | 2021年11月28日 (日) 19時54分

iwamotoさん
コメント有り難う御座います
 私は、ジャケ・デザインは重要と思う人間なんですが、全くの天体素人で、チンプンカンプンなんですが、そうですか、シリウスとしては納得不可なんですね。
これは面白い指摘を頂きました。
 話では、このアルバムのリーダーの米木は、天文学に通じていると言うことになってますので、そのあたりは納得済みのデザインと思いますが・・・私も知らない世界とは言え、ちょっと研究してみたくなりました。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年11月28日 (日) 22時09分

写っているのは「冬の大三角」ですので、それを調べて頂ければ宜しいかと。
国立天文台か、アストロアーツのhpなど。

天文学は大変広い分野を扱いますので、誰も「通じてる」なんて申しません。
家人は日本天文学会準会員でしたが、星空を眺めて楽しむくらいです。

投稿: iwamoto | 2021年11月29日 (月) 12時11分

iwamotoさん
どうも・・どうも・・・何となく解って来ました。
>おおいぬ座、こいぬ座、オリオン座、それらの扱いが可哀想すぎると思います
ここですね、ポイントは。いっやーー、いい勉強しました。
こうした音楽の世界は科学ではないのですから、実写を使ったのかも知れませんが、私ならやっぱり夢がもう少し欲しいと言うことが解ります。
ちなみに、Art Designは、ETSUKO MIYABAとなっていまして、調べましたがヒットしませんでした。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年11月29日 (月) 20時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« アデル Adele 「30」 | トップページ | 箱根アフロディーテ50周年記念の年として・・ピンク・フロイド »