ゴンザロ・ルバルカバ R.CATER, J.DEJOHNETTE, G.RUBALCABA 「SKYLINE」
R.カーター、J.ディジョネットとのトリオ・アルバム三部作の第一弾
<Jazz>
R.CATER, J.DEJOHNETTE, G.RUBALCABA 「SKYLINE」
PASSION RECORDS / / DU5P070 / 2021
Gonzalo Rubalcaba (piano)
Ron Carter (bass except 5)
Jack DeJohnette (drums except 5)
ここに来て、2021年下半期となるとコロナ禍とは言え、ピアノ・トリオのゴンサロ・ルバルカバ 、 ロン・カーター 、 ジャック・ディジョネットというレジェンド・クラスが集った超強力盤が出現した。
私はかってのアルバム『DIZ』(1993 Blue Note)からファンとなっているゴンザロ・ルバルカバ(1963年キューバのハバナ生まれ-下左)、このアルバムは、彼の立ち上げている「5 Passion Records」からリリースだ。
ルバルカバが若き日に師事したジャズメンと再会したいという長年の希望が実現したものという事で、なんとロン・カーター(1937-下中央)、ジャック・ディジョネット(1942-下右)というジャズの歴史を築き上げてきた大御所とのまさに圧巻のトリオ盤。
(Tracklist)
1. Lagrimas Negras (Miguel Matamoros) 6:49
2. Gypsy (Ron Carter) 9:00
3. Silver Hollow (Jack DeJohnette) 6:40
4. Promenade (Gonzalo Rubalcaba) 6:42
5. Novia Mia (José Antonio Méndez) (piano solo)3:26
6. Quite Place (Ron Carter) 4:45
7. Ahmad the Terrible (Jack DeJohnette) 7:34
8. Siempre Maria (Gonzalo Rubalcaba) 7:52
9. RonJackRuba (Ron Carter, Jack DeJohnette & Gonzalo Rubalcaba) 7:35
曲はほぼトリオ・メンバーの曲で、略6分以上というじっくりの演奏曲で占められていて、M2.が最長で、9分に及ぶロンカーターの作品。
このアルバムは、ピアノ・トリオの楽しさのお手本みたいな内容で、ビバップ心を下地にしてジャズらしいスイングの流れを忘れず、ダイナミックな中に、繊細に、重厚でありながらも説得力ある歌い上げるようなベース、シャープにしてパンチ力ある攻めのドラムス、そしてゴンザロの生き様のようなラテン・フィーリングを忘れないリズム感と鋭角なパンチ、やや固めの強い音と一方優しさのメロディーとを聴かすピアノと、ピアノ・トリオ・ジャズを改めて見直すような円熟演奏が聴ける。
聴きようによってはハードボイルド・タッチのニュアンスもみせたり、一方ブルース調の哀愁、ラテン色の楽しさなど三者の年期の入った技が満ち満ちていて、全9曲が楽しさの中であっという間に聴いてしまう。ジャズの心はこんな処にあるんでしょうね。
M1." Lagrimas Negras" 軽快にキューバのボレロ、三人の集合を楽しむが如く。
M2."Gypsy" さて本番だと言わんばかりにカーターの曲、ベースの深く沈む重い余韻を残した音からスタート、そこにクリアな硬質なストーン・タッチのピアノ音がのしかかる。そして軽快なスティック音が現れ一変してリズムカルな世界、後半のバトル感のある演奏が魅力。
M3."Silver Hollow" かなり深遠さを感ずる世界に空間と音の響きを意識しての世界、ディジョネットの音楽性が滲み出る。カーターのベースが深く流れピアノの美しさを添えるルバルカバの名人芸。深遠で美しい。
このM2,M3の二曲で質の高さが実感できる。
M4."Promenade" ベースの音が比較的静かに響き、ブラシ音と共にリズムを刻む。ピアノは強くならないタッチでリズムを添える。途中のドラムス・ソロも激しくない。まさに三者の手慣れた響き合いには品格すら感ずる。
M5."Novia Mia " バラード調のピアノ・ソロ、やや哀感のある情感たっぷりの流れ、このあたりがレバルカバの真骨頂。
M6."Quite Place" カーターの優しさ溢るる名曲、ピアノはクリアな音で現代調に響く。
M7."Ahmad The Terrible" 深遠さから始まって、一転してリズムカルへ、更に次第にスリリングな展開、旋律は難解。
M9."RonJackRuba" これが面白い。三人の自然発生的に演じられたセッションの録音とか。ルバルカバは中盤でベースとドラムスにリズム・デュオを演じさせ、そこに美しくピアノを添え終わらせる。インプロビゼーションの楽しさで幕を閉じる。
ビバップ精神宿るジャズの醍醐味を、ここに内省的な面を見せながらも、パンチ力とリズム展開の華々しさと、リズムが誘う楽しさも混ぜてのトリオ・ジャズを聴かせてくれた。「カーター(b)とディジョネット(ds)の圧倒的神がかりオーラを発しながらアタッキングに迫る猛襲にいささかも臆さず押されず、泰然自若の威風をみなぎらせてタフガイ然たる硬質ロマンの道を力強く歩み続けるルバルカバ(p)の、分厚く不屈の男気に溢れた甘くないアドリブ奮戦が、鋼の入ったような勇壮かつ堅牢な冴え渡り様を見せて、実に痛快だ」という評を見たが、まさにそのとおりであった。
録音も秀悦で、ベースの重厚感もたっぷりあり、又ステックやシンバル音の繊細さも気持ちが良く、何と言ってもピアノの音がクリアにして美しい。今年の 貴重盤。
(評価)
□ 曲、演奏 : 95/100
□ 録音 : 93/100
(視聴)
"Gypsy"
*
"SKYLINE TRIO"
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コメント
ここまで来ているのか・・・。
このレベルになると、違う領域に入っている感じがします。
こちらが、敬虔な心持ちになるというのでしょうか。
投稿: iwamoto | 2021年11月 9日 (火) 18時44分
iwamotoさん
こんにちわ、
おっしゃるように、ルバルカバは今以て盛んですが・・ロン・カーター 、 ジャック・ディジョネットとなるとちょっと聴く態度も改めて・・と、いった気分でしたね。
録音が三者しっかり捉えていて、ピアノ主体でリズム隊は支えといったスタイルでなく、それぞれの持ち味をしっかり味わえるところが良かったです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年11月10日 (水) 10時49分
ジャケのエンパイアステートビルを見ているだけでNYの雰囲気が伝わってきます。メンバーとジャケを見ただけで聞きたくなるアルバムですね。
投稿: 爵士 | 2021年11月10日 (水) 22時40分
爵士さん
こんばんわ、コメント有り難うございます
そうなんですね、レバルカバは私はファンでしてすぐに飛びついたんですが、このメンバーには驚いています。
この少し前のアンナ・マリア・ヨペクとのアルバムも良かったんですが、さすがこのメンバーだとスリリングなところもあって、別の意味で聴き応え十分です。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年11月11日 (木) 22時51分