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2021年12月 1日 (水)

箱根アフロディーテ50周年記念の年として・・ピンク・フロイド

ピンク・フロイド Pink Floyd
アルバム「原子心母」の再発と1971年来日映像、更に「完全記録盤」の出現

  今年も最後の12月を迎えました。コロナ禍ということで日本始め世界の全てが抑制され、日本で華々しく行われるはずであった「オリンピック」「パラリンピック」も無観客開催という異例の盛り上がらないものとして終わった。
 音楽界も大々的なライブ活動や、落ち着いた小さな会場でのライブも中止されて例の無い低調な年でもあった。

 思い起こすと、ロックが社会を動かしていた時代に、初来日で話題になった伝説の「ピンク・フロイドの箱根アフロディーテ・ライブ」が行われて50年、そんな記念の年でもあった。従って日本でも記念的動きがあった中でのピンク・フロイド記念アルバムのリリースもあったので、日本企画で「箱根アフロディーテ」の映像盤とアルバム「原子心母」の再発が行われた。ちょっと時間が経ったが、年末も近くなったので今年の記念行事みたいなものなので、ここに取上げておく。

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<Progressive Rock>

Pink Floyd 「Atom Heart Mother」
Sony Music Entertainment / JPN / SICP-6396-7 / 2021

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<CD>
1.Atom Heart Mother
2.If
3.Summer'68
4.Fat Old Sun
5.Alan's Psychedelic Breakfast

<Blu-ray>
1.Hakine Aphrodite Festival,1971
2.Scott & Watt

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 CDは、アルバム『Atom Heart Mother 原子心母』そのものである。このアルバムは1970年10月のリリースで、来日の前年である。従つて来日ライブの曲目としては、当然メインのものとなるが、そもそもこのアルバムは、所謂ロックの分野で"Progressive Rock"といわれるものが提唱された記念的アルバムで、これ以降キング・クリムゾン、イエスなども"プログレ"といわれる世界に評価されるようになったものだ。
 このプログレというものは、日本盤アルバムの帯に「ピンク・フロイドの道はプログレッシブ・ロックの道なり!」と書かれたことが有名で、意外に日本において世界のロックの区分けをする草分けになったととも言われていて、そんな意味でも記念的アルバムである。今回はその再発であるが、音質はそれなりに改善している(2011年リマスターしたものかとも思われる)。

 Blu-rayは、伝説の箱根アフロディーテのライブ映像版だが、内容はかなりお粗末。当時放送されたものの映像を手を加えて見やすく改善されているが、特に新鮮なところは無い。かって我々が見てきたものと大差は無い。来日の羽田空港からの映像など、これもかって見たものである。ロジャーが女房のジュディ・トリムと仲良くしているところが印象的だ。
 その他、3分ほどのものだが、ピンク・フロイドのクルーを追いかけたB-Roll映像が新発見され、ホテルから機材を積んでトラックで運び、現地で前日の大雨で泥濘にはまった機材車をブルドーザーが引っ張っている様子など、短いながらも当時の会場設営の苦労風景を見ることのできるという、貴重と言えば貴重な映像が付け加えられている。

 いずれにしても、しかし6600円で大騒ぎして売るほどのものでは無いと思った次第。

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 さて、話題を変えて、その箱根アフロディーテのライブは、映像は極めて少なくもうこれ以上は出てこないと思われるが、ライブ音源記録も実はなかなかパーフェクトなものも無く、なんと当日の演奏のセットリストも寧ろ謎になっていたところもある。しかし、ここに来てSigmaから貴重盤が出ているのでこちらを紹介する。
 上の記念盤の映像を見ておいて、こちらはブートではあるが、アフロディーテのパーフェクト音源収録盤として聴くこと出来る。それには良好の記録を選りすぐって編集して完全なライブ記録に仕上げたもので、全貌を知ることが出来るという寧ろこれこそ貴重盤だ。

<Progressive Rock>

PIMK FLOYD 「HAKINE APHRODITE 1971 2ND NIGHT」-50TH ANNIVERSARY-
Sigma 283 / 2021

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HAKONE Aphrodite, Hakone, Japan 7th Augast 1971 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)

Disc 1 (65:51)1. The Circle Game (Buffy Sainte-Marie)
2. Soundcheck / Announcement
3. Atom Heart Mother 
4. Soundcheck
5. Green Is The Colour
6. Careful With That Axe, Eugene 
7. Soundcheck 
8. Echoes

Disc 2 (43:55) 
1. Soundcheck 
2. Set The Controls For The Heart Of The Sun 
3. A Saucerful Of Secrets
4. Soundcheck
5. Cymbaline

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 これまでアフロディーテ録音もので箱根初日と思われたものも、ここに来て全て箱根二日目の記録であることが明らかになり、いわゆる注目盤は全て二日目と言うことであった。それは勿論オーディエンスものであり、主として下に紹介する五つの記録がある。しかし残念ながら、それぞれ完全なモノは一つも無かったのであった。

 ▶[記録1=モノラル録音46分] 幻の名作アナログ・モノラル録音もの
 ▶[記録2=ステレオ録音62分] 最高音質を誇るステレオ録音(『APHRODITE1971』既発)
 ▶[記録3=モノラル録音31分] 取り柄が特になし
 ▶[記録4=モノラル録音55分] 名音源、"太陽讃歌"と"エコーズ"が完全収録
 ▶[記録5=モノラル録音100分] 最長録音モノで"神秘"が初めて聴けたもの。"太陽讃歌"、"シンバライン"もノーカット。謎のあった当日を完全解明することの出来た貴重モノ

 このブート・アルバムは、これらの五つの録音モノを分析して、欠落部を補完する作業をし、完全版の制作を行ったモノである。簡単に説明すると・・・
 まず、Disc1のライブ前半は、最高録音モノ[記録2]を中心に完全化したもの。"ュージン"の中盤の30秒、"エコーズ"の終盤5分を[記録4・5]で補完。
 Disc2は、最長モノ[記録5]を[記録4]で補完。

 このように、最良のものを中心に欠けていた部分を補完して、曲間も含めて完成させた100分を超える第二日完全盤である。

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 とにかく、このライブにおいてもピンク・フロイドは手抜きをしていないことが良く解る。発売後間もなくであった"原子心母"、そして当時実験中の"エコーズ"と、更に謎であったセットリストは、過去のライブ人気曲の"ユージン"、『モア』の"グリーン・イズ・ザ・カラー"、"シンバライン"などを全て網羅している。この辺りはプロ根性ですね、手抜きはしていない。そしてその当日の記録が完全に聴けるのである。

   演奏内容は"原子心母"からスタートするが、オートバイの効果音は冒頭に配しているが、勿論アルバムのようにチェロ、ブラスバンド、コーラス隊はない。実は彼らのライブは殆どこのタイプだが、ギルモアのギターやウォーターズのベースとライトのキーボードの旋律の流れなどの演奏の味があって、このほうが私は好きなのである。そして続くは、美しいウォーターズの曲"Green is The Colour"、これはシド・バレットの抜けた後、ギルモアをなんとか売り出そうとウォーターズが彼に歌わせたモノである。そしてウォーターズの絶叫曲"ユージン"もしっかり披露している。又この年11月にリリースされた『おせっかい』の"エコーズ"も24分の演奏でほぼ完成されている。
 その他も改めて聴くと後半の"神秘"の演奏も19分で迫力満点、しかも打ち上げられた花火の音も収録されている。最後は"シンバライン"で聴衆の拍手の音頭と共に演奏され括っているのも感動もの。

 とにかくこの二枚組ブートこそ、謎だらけであった「箱根アフロディーテ」を知ることと共に感動を呼ぶ貴重盤であるのだ。

 

(視聴) 箱根アフロディーテ

*
Atom Heart Mother 1970

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コメント

この件に関しては、たくさんの方が大いに語ってらっしゃいますね。
それだけ、大事件ということでしょう。
好きなものについて語るのは楽しいし、それを聞くのも楽しいです。

ピンクフロイドは、大好きな音です。

投稿: iwamoto | 2021年12月 2日 (木) 16時07分

iwamotoさん
コメントどうも有り難うごさいます
 世界を興奮の渦に巻き込んだ"自由"をうたった「'69ウッドストック・ロック・フェスティバル」にちなんで、翌々年71年、日本初の屋外ロック・フェスとして、初来日のピンク・フロイドを旗印に箱根アフロディーテで行われた模様は、なんと謎につつまれた部分が多かった。
 リアルタイムに'60年代から愛していたピンク・フロイドの来日、当然はせ参じたいところであったが、大学卒業後〇年目の私は昼となく夜となく仕事にのめり込んでいて、とても参加出来る環境に無く、悔しい思いをしたのですが、その直後に当日のセットリストも明きらかならず謎のロック・フェスでもあったのです。当日の完全録音モノは、近年になってようやく日の目をみたという現代には不思議なフェスデモありました。
 iwamotoさんも、大好きな音とのこと・・ここでは私は彼らに関して数十のアーティクル書いていますので、暇なときが御座いましたら・・目を通していただきたいです。^^ ↓
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/cat34773480/index.html

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年12月 2日 (木) 20時55分

はい。 凄い量ですね。

投稿: iwamoto | 2021年12月 4日 (土) 14時59分

風呂井戸さん,こんばんは。

これ,私も買いましたが,まんまと騙されたって感じです。特に映像はバカにしてんのかと言いたくなりました。結局自分の審美眼がないだけなんですけど。これほど酷いパッケージはそうないです。

投稿: 中年音楽狂 | 2021年12月 4日 (土) 22時26分

iwamotoさん
はい、15年間ときどき書いてきましたので・・・量だけは多くなっています・・・^^

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年12月 5日 (日) 10時07分

中年音楽狂さん
コメントどうも有り難うございます
・・・・ですよね。映像はひどいですよね、そして当日の演奏録音も全く記録とも言えないモノ。
 これは、ほんとにピンク・フロイドを初めて知った人相手の商法なんでしょうね。

 それにひきかえ、ブートのSigmaの「HAKINE APHRODITE 1971 2ND NIGHT」は素晴らしい。当時の様子がリアルに伝わってきます。ここまで忠実な記録はまさに貴重です。当時参加出来なかった私にとっては宝物に近い。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年12月 5日 (日) 10時19分

初めまして。
 夏が近づくと思い出す「箱根アフロディーテ」の思い出。こちらのHPを発見して嬉しくなり、これを書いています。
 あの時、ピンクフロイドの通訳をしていました。その後、ディープパープルやBBA、チープトリック、プリンス、クィーンなどの通訳を務め、会場がアリーナ・サイズになって体力的にギブアップ。以後、映画の世界に移りました。
 夫は元ヒビノ、今も小さな音響会社を経営。来年で50年を迎えます。
 ここに掲載されている写真以外、何かの間違いで私も写っている写真があるのではと探しています。
 返信、頂ければ幸いです。亀淵さんとは今も交流があります。
    のり子

投稿: Noriko | 2024年7月11日 (木) 09時05分

のり子様

>初めまして
こちらこそ、初めまして 良くいらっしゃってくれました。有難うございます。
 >ピンクフロイドの通訳をしていました。その後、ディープパープルやBBA、チープトリック、プリンス、クィーンなどの通訳を務め、会場がアリーナ・サイズになって体力的にギブアップ。以後、映画の世界に移りました。
そうでしたか、びっくりしました。そこまでの経験のおありの方からコメント頂いてほんとに驚くと同時に恐縮しています。そして喜んでいます。
 私は、ロックの世界もC.C.R.以来長く愛してきましたが、非常に偏っていまして幅は広くありません。
 そしてほとんどは一般的に言われたプログレの世界にうろうろとしていました。まったく聴くだけの愛好家です。そして70年代終わりから80年代にイタリア・ロックにはまって・・・というところでしょうか。(近年はポーランドのRiversideにも興味がありましたが)

その「箱根アフロディーテ」ですが、私などは特別な資料は持っていません。写真と言っても最も大量で詳しかったのは、来日記念盤としてリリースされた50周年記念盤「原子心母」の「’71hakone アフロディーテ」の四十数ページの写真集だと思います。勿論ご覧になっているでしょうが、それらしき日本女性が写っているのは百枚に及ぶ写真の中でも最後の2ページにわたる一枚ぐらいだと思います。

 >ここに掲載されている写真以外、何かの間違いで私も写っている写真があるのではと探しています。
今頭に浮かぶ一般的な写真集はそんなところだろうと思いますが・・・
 >返信、頂ければ幸いです。亀淵さんとは今も交流があります。
亀淵さんて昭信様のことでしょうか・・・
 それにつけてもご主人様含めて・・・その筋の方々との関係などからこちらがご教授いただきたいと思うぐらいです。よろしくお願いします。
 それにしてもここで取り上げたブートは貴重と思ってます。            Photofloyd(風呂井戸)

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年7月11日 (木) 23時44分

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