セリア・ネルゴール Silje Nergaard 「Houses」
パンデミック下における寧ろ救いと言える真摯なアルバム
今年も、世界的なハンデミックから卒業できなかった。そしてもう次の新年を迎えようとしている。そんな暗さの中から何とか光を得ようとするミュージック界の動きも盛んであった。そんな希望と夢のある作品を取上げて、迎える年が明るい年となることを期待するのである・・・
<Jazz, Folk, World, Country>
Silje Nergaard 「Houses」
Masterworks / EU / 19439883132 / 2021
Silje Nergaard : Vocals
Helge Lien ヘルゲ・リエン: piano
Bugge Wesseltoft ブッゲ・フッセルトフト: Keyboard
Håkon Kornstad ホーコン・コーンスタ : Sax
Kurt Ellimg カート・エリング: Vocals
Adam Baldych アダム・バルディッチ: Violin
Vince Mendoza ヴィンス・メンドーザ: Strings Arrange
All Musics composed by Silje Nergaard
昨年、デビュー30周年記念アルバム『First Rose Of Spring』(EAN 0194397246223)をリリースしたノルウェーのジャズ・ポップス・シンガーのセリア・ネルゴール(1966年生れ)、今や油の乗った彼女のニュー・アルバム。 このアルバムタイトル『Houses』と言うのは、"パンデミックによる非日常の中、彼女の友人、親戚、隣人等が家(House)に閉じ込められる事により直面した葛藤とそこから生まれた希望、夢、孤独、憧れについてのセリア自身の共感が描かれている"と言うことのようだ。
彼女に関しては、10年ぐらい前に私の好きなTord Gustavsenのピアノをバックにしてのアルバム『nightwatch』(2003)で初めて接し、その後のアルバム『UNCLOUDED』(2012)くらいしか聴いてこなかったような気がする。本質的にジャズと言った世界から、少々別物と思っているせいかも知れない。
そもそも彼女は16歳でモルデ国際ジャズフェスでステージに上がって以来、国際的なジャズシーンの先駆的なアーティスト(歌手・作曲家)として彼女なりきのサウンドとスタイルを開発してきた。パット・メセニーのプロデュースでデビュー・アルバム『Tell me where you'regoing』(1990)が世界各国で大ヒット(140.000枚以上を売り上げ)し日本でも知られるようになり、以来『A Thousand True Stories』(2010)はグラミー賞にノミネートされるなど、北欧ジャズ・ポップス・シーンを代表するシンガーとして活躍。16枚のアルバムがある。
さてこのアルバム、ミュージシャンが凄いですね、ヨーロッパから私の好きなヘルゲ・リエンHelge Lien (ピアノ・上左)、 ブッゲ・フッセルトフトBugge Wesseltoft (キーボード・上中央)、そして ホーコン・コーンスタHåkon Kornstad (サックス・上右)といった今や人気絶好調のミュージシャンが集まつていますね。スペシャルゲストとして、アメリカの世界的なジャズ・ボーカリストであるカート・エリングKurt Ellimg(下左)と、ポーランドのバイオリニスト、アダム・バルディッチAdam Baldych(下中央)が参加。また、グラミー受賞歴のあるアメリカの作曲家/編曲家、ヴィンス・メンドーザVince Mendoza(下右)もストリングス・アレンジで参加している。
(Tracklist)
1.His House / feat. Adam Baldych
2.Window Bird
3.A Crying Shame / feat. Kurt Elling
4.Rain Roofs / feat. Johannes Eick
5.The Ballet Boy
6.I Knew That I Loved You / feat. Toninho Horta
7.Night Street / feat. Trygve Seim
8.Candle in the Window / feat. Mike Hartung
9.Velvet Curtains / feat. Håkon Kornstad
Bass – Finn Guttormsen
Drums – Jarle Vespestad
Featuring – Håkon Kornstad
Lyrics By – Mike McGurk
Music By – Silje Nergaard
Orchestra – Budapest Art Orchestra*
Orchestrated By – Gaute Storaas
Piano – Helge Lien
Saxophone – Håkon Kornstad
10.Balcony Ladies
11.My Neighbour's Cat
12.My Crowded House
13.A Long Winter
14.One Year / feat. Arve Henriksen & Sinikka Langeland
新型コロナウィルスによるパンデミックによる非日常の苦しみや葛藤は世界的な事であった。しかしそこから生まれた希望、夢、孤独、憧れについてのセリア自身の共感というものが確かに感じられるアルバムだ。
そして果たしてこれはジャズかどうか・・・どこかノルウェーのトラッドから影響を受けているような(全く根拠は無いのだが)雰囲気の美しさ優しさの溢るる曲群。クリスマス・ソング的な世界もと思わせる真摯な美しい世界、そして彼女の歳を感じさせない衰えない美声が全編に響き渡る。
もう2年に及ぶパンデミック下の抑制された状況に、どこか人間らしい何かを求めている時に、今年多くリリースされたアルバムの中でも最も人間的で相応しいものとも言えると思った。
私が特にこの中で注目した曲でお勧めは、M9."Velvet Curtains"だ。しっとりとしたバラードで、優美なストリングス・オーケストラから始まり、彼女の歌声はリエンのピアノをバックに美しく優しく、後半にはコーンスタのサックスが登場し優しく歌い上げ、ヴォーカルとの取り合わせも見事。
今年の異常な一年の最後に是非とも聴いて欲しいアルバムと評価した。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 88/100
□ 録音 88/100
2 (参考) "be still my heart"
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コメント
こちらも、知らない人なのですが、
ご紹介の曲だけしか聞いてません。
なんとも素朴というか、年齢に見合う陰影がもっとあっても良いかな、と思われました。
もちろん、色々な曲があるのでしょうが。
投稿: iwamoto | 2021年12月31日 (金) 16時50分
風呂井戸さん、こんばんは。
いつも新情報ありがとうございます。
「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、それだからこそ情報が集まって来るのでしょうね。
来年はお互い良い年にしたいものです。
では、よい年をお迎えください。
投稿: nanmo2 | 2021年12月31日 (金) 18時57分
iwamotoさん
いつもコメント有り難う御座います
今年は、photoもいろいろと勉強させていただきましたが、こちらでは音楽というモノへの対峙の仕方など、お話から私も得るもの大でした。
来年もよろしくお願いします。
佳いお年をお迎えください。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年12月31日 (金) 21時25分
nanmo2さん
今年は、ときに楽しいコメント有り難うございました。
私のように、ジャズに拘らず感動を求めてのミュージック漁りですが、お付き合い有り難う御座います。
来年もよろしくお願いします。
nanmo2さんにとって来たる年がご多幸でありますよう祈念いたします
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年12月31日 (金) 21時31分
風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。
ネルゴールは、好きなのですが、見落としていましたね。
と、いうか、、次に注文、って、なっていたのですが、、
なぜか、忘れてしまいました。歳かな、、汗
風呂井戸さまが、取り上げてくれてよかったです。
ありがとうございました。m(_ _)m
私のリンクです。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/01/post-350a36.html
投稿: Suzuck | 2022年1月20日 (木) 18時15分
Suzuck様
いつもわざわざこちらまで有難う御座います
こうしたヘルゲ・リエンHelge Lien 、ブッゲ・フッセルトフトBugge Wesseltoft など、ニュー・アルバムを期待しているミュージシャンの名前と演奏があると、ほっとします。
又Suzuck様の評価も気になりまして(笑い)いつも拝見しています。
リンクも有り難う御座いました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年1月20日 (木) 21時52分