エプレ・トリオ EPLE TRIO 「GHOSTS」
かなり思慮深く繊細でありならダイナミックな叙事詩の世界
<Contemporary Jazz>
EPLE TRIO 「GHOSTS」
NXN Recordings / Norway / NXN2001 / 2020.12
Andreas Ulvo アンドレアス・ウルヴォ(Piano)
Sigurd Hole スィッグァード・ホール(Bass)
Jonas Sjøvaag ヨナス・ショヴァーグ(Drums)
Track 1, 3, 4, 6, 7 & 8 composed by Jonas Sjøvaag
Track 2, 5 & 9 composed by Andreas Ulvo
Recorded live in St. James Church of Culture, 2018, by Ingar Hunskaar.
River Song III Recorded in Bua Studio by Jonas Sjøvaag & Andreas Ulvo.
Mixed & mastered by faerder.audio
Produced by Jonas Sjøvaag & Eple Trio
このノルウェーのコンテンポラリー・ジャズ・トリオのエプレ・トリオについては、かってTord Gustavsenとの共演などで興味があったが、つい先頃リリースされた寺島靖国のコンピレーション・アルバム『Jazz Bar 2021』(TYR-1101)でも取上げられたのを契機に(曲"TERNPIKE"(2017年アルバム『5』から))、あらためてアプローチしてみた。
これは彼らの寺島靖国が取上げたアルバム『5』(STPWTK017/2017)の後の最新作で、2018年5月にオスロのクルトゥルキルケン・ヤコブ(聖ジェームズ文化教会)で録音されたもの。そしてこのアルバムには、2007年(デビュー・アルバム『Made This』)からリリースた5枚のアルバムから選らばれた曲が含まれ、いつものように互いに融合しつつ成熟してゆく流れから、彼らの自身の興奮をも見いだせる。
ヨナス・ショヴァーグの繊細にして格調高いパーカッションとシグルドホールの流麗なアルコ奏法のベース、それらがアンドレアス・ウルヴォのピアノから美しく優雅な音の流れを引き出している。
エプル・トリオの取り敢えずの総集編。
(Tracklist)
1.Electre 07:32
2.Chrome Hill 07:04
3.House 06:58
4.Curious Child 08:39
5.First Sun 06:25
6.First Monday in October 09:04
7.Sinking Ship 06:20
8.The Greatest Joy on Earth 07:43
9.River Song III 06:31
エプル・トリオというのは、ジャズでもコンテンポラリーな世界で、現代のスカンジナビアのジャズの世界の枠を拡大し新たな挑戦をしてきた。従って、誰もが飛びつくと言うよりかなりマニヤックで、しかもクラシックのセンス導入されていて、その筋に評価が高かい。こんなユーロの独特なジャズは、意外にも私の聴き心をくすぐるのである。
過去の4枚のアルバムを通じて、彼らは一貫してオリジナル曲により、インプロヴィゼーションをも試みつつ、リズミカルな底流にメロディーを乗せ、このジャンルに新しい見解をもたらして来た。このアルバムもそんな美と共にスリリングな緊張感が漂っている。
ベースは、その特徴として、M5."First Sun"、M8."The Greatest Joy on Earth"のように、アルコ奏法のウェイトが非常に高い。
ドラムスは、ステックのシバル音が繊細で、パーカッシブな音とテンポがその特徴を出している(M1."Electre"、M3."House"、M6."First Monday in October ")
ピアノはやはり美しいメロディーを流す(M2."Chrome Hill 、"M8."The Greatest Joy on Earth")が、リズムをベースとあるいは三者と共に刻む展開も見せる。
一曲が比較的長めで(9分以上の曲もある)、深遠さの流れ、繊細なリズム、不安げなアルコ・ベースなどを描きながら、次第に三者のユニゾン、ハーモニーの展開がアグレッシブなも盛り上がりを描きそして終息するというパターンが多い。そこにはインタープレイの妙も加味されていて素晴らしい。
聴いていて、一種の物語、叙事詩的な世界に没頭できて感動が誘発される。これこそ彼らの描く音楽なのかも知れない。
このトリオの存在は、彼ら自身の独創を根拠としていて、メンバー間の個人的で信頼できるコラボレーションに基づいているという。作曲は、主としてウルヴォ(上左)、ショヴァーグ(上中央)により書かれ、加えてホール(上右)も参加する。又アルバムカバーとデザインは常にショヴァーグ、バンドの写真撮影は主にウルヴォによるものと、全て彼らの世界そのものだ。
とにかく個性そのものを主体として、周囲に惑わされず我が道を進んできたというトリオだ。このコンテンポラリー・ジャズを受け入れているノルウェーのミュージック界のレベルの高さを感じさせられるところだが、ユーロ・ジャズの一つの重要なところを担っていて、このライブ総集編完成により、今後の新展開を匂わせている彼らで、これからも楽しみなトリオである。
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 88/100
(視聴)
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コメント
無駄に跳ねることもなく、非常に個性的ですし、ジャズっぽくしようとしてなくって、見識だとも言えるし、そういう時代でもないのでしょう。
日本では、ジャズと言えば、ま、あれですよね。
日本人がやる必要性が薄い音楽を真似ている、ような。
究極まで辿り着いたジャンルなので、違う登山口を探して探して進んでほしいものです。
これを商業的に支えている国民は、仰る通り、ハイレベルですね。
投稿: iwamoto | 2022年1月 7日 (金) 18時51分
iwamotoさん
コメント有り難うございます
しかし、今や特に欧州ではジャズの捉え方が、音楽そのものを追求するというか、一つの拘束から一歩自己の追求の場へと発展したものとしても捉えているようで、ジャズのルーツというものから一歩も二歩も別の処にあるように思います。
それを受け入れる地盤があるのが素晴らしいですネ。
ECMのような世界も大きな役割を果たしているのかも知れません。
しかし北欧が頑張っているのは驚きです。民族的な地盤があるんでしょうね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年1月 8日 (土) 12時19分
初めまして。グラハムボネ太郎さんのブログ経由できました。ユーロジャズは初心者ですがこれは良いですね。良くNHK-FMなどでラジオで良くジャズは聴きますがこういうのはあまり掛からないです。
ブログも面白そうな音楽のご紹介がありそうですのでゆっくり読ませて頂きたいと思います。
宜しくお願い致します。
投稿: bblackmore1207 | 2022年1月 9日 (日) 16時59分
bblackmore1207さん
コメント有り難う御座います
ジャズの変遷もすざましいですし、ジャンルも明確で無くなってますね。ジャズがクラシックから発展してきたり、現代音楽との境も解らないとか・・・
近年のユーロジャズは、これ又素晴らしい。かってイタリアがプログレッシブ・ロックが盛んであったが・・ジャズもイタリアの力が大きいですし、北欧の世界も素晴らしい。又音楽の国ポーランドも健闘と・・・尽きることがありません。
特に近年は私はユーロ系に惚れ込んでいます。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年1月10日 (月) 11時25分