« フレーデリク・ヴィルモウ Frederik Villmow Trio 「Motion」 | トップページ | 山本剛 TSUYOSHI YAMAMOTO TRIO「MISTY for Direct Cutting」 »

2022年2月10日 (木)

ジョバンニ・ミラバッシ Giovanni Mirabassi 「PENSIERI ISOLATI」

孤独から生まれた今を描いたピアノ・ソロの世界

<Jazz>

Giovanni Mirabassi 「PENSIERI ISOLATI」
JAZZ ELEVEN / IMPORT / MOCLD-1077 / 2022

51cnmaxvbfl_ac_

Giovanni Mirabassi (p)

71l3dddg1bl_ac_slw  私の注目しているジャズ・ピアニストのジョバンニ・ミラバッシも久しぶりです(歌手サラ・ランクマンとのデュオ「INTERMEZZO」(2019)以来)。なんと言っても彼は2001年にリリースした「AVANTI!」(→)は革命歌、反戦歌、民衆の歌をテーマとし、究極の人間の姿に美しさと哀感を描いたソロ作品をリリースし、ジャズ・ピアノの奥深さに感動させられた。それ以来20年の経過は彼の多彩なアプローチが日本にとっても印象深い世界だった。ピアノ・トリオ好きの私にとっても、彼のピアノ・ソロはあまりソロという感じがなく彼の演ずるピアノ・タッチは多くの音を流してその中に旋律が存在しているという形で、聴く方も圧倒される。演ずる世界が、何となく哀感を持って美しく聴く者の心に入り込んでくるために逃れられないミュージシャンとなっている。

  今回の久々のアルバムも、タイトルは「PENSIERI ISOLATI 」、これはイタリア語で"孤立した思考"と訳して良いのだろうか、彼はイタリアの古き町ペルージャ出身だが、もとファシスト党の流れをくむ国民同盟などと作った新党「自由の国民」を軸に活動するベルルスコーニ政権から逃れるためにフランスに亡命(アルバム「AVANTI!」は、こんな経験もあってのことか)。現在住んでいるモンマルトルの彼のアバート(マンション)での、2020年の春、コロナ禍によって数十のコンサートをキャンセルせざるを得なくなり、家族と過ごしながら内省に追い込まれ、彼の50歳の誕生日は少なくともこの世界の終わりでもあったと感じられた環境に追い込まれたとか。

 彼の言葉によると「私はこの時空のギャップを利用して、親密なメロディの記録を作った。自分で作曲したもの、そうでないものもあり、私の音楽的青春を回顧するかのようでした。 心ではなく、アルゴリズムに作品の正当性を納得させなければならない日が来るとは、誰も想像していませんでした。しかし、芸術は流れに乗って進んでいくものです。歴史の囚人である我々は、鏡という単純な効果によって、我々の時代のことを伝えます。だから、私はできる限り、今の時代を演奏しました。私たち人間のために、私の子供たちのために、他の人の子供たちのために、私の話を聞いてくれるすべての人たちのために。選んで聴いてくれる人たち、あるいは偶然に耳にする人たち、ある日耳にして、好きになってくれないかもしれないし、BGMでかかっているこのピアノ曲集に注意を払ってくれないかもしれない人たちのためにも。私は毎週、自分の孤独を録音して、明日のためにとっておく作業を繰り返しました。」と言っている。
 そんな内省的な懐古的な孤独の中でも将来を未来を描いて、今を一生懸命演奏したと言っているわけだ。

Mirabsitomusicustrw (Tracklist)

1.The Healing waltz
2.Un Peu comme cette Époque
3.Pensées isolées
4.Seascape
5.Les chants magnétiques
6.Canta che ti passa
7.Behind the white door
8.Reactionnary Tango
9.Le libre arbitre
10.What's new
11.Ovoulez vous que je m'assoie ? (Bonus track)

 もう全編に彼の指の流れから描く世界は抒情性たっぷり。
   ミラバッシのコード・アレンジの妙が多彩で、もともとのクラシカルなアプローチが全編に渡って繰り広げられ、ジョバンニ彼自身のオリジナリティを追求する姿勢は相変わらずだ。
 又例の如く彼の特徴のパッサージ奏法の凄さですね、これが途切れることなく曲中これでもかこれでもかと流れてお休みさせてくれない。聴きようによっては、曲によってピアノの一つの鍵打音の余韻の世界が味わえない感じにもなるが、曲の流れの中で聴き手の勝手な空想を越えて休む暇も無く引っ張られるのだ。

Mirabassigiovannibygille


 今回のアルバムは、どの曲がどうだのこの曲がああだのと言うところまで聴き込むには私の能力で結構大変なところにあって、全体の印象が評価というか感想になるが、まず激しい激動の感覚は完全に押さえられ、やや憂いのあるメロディーによって抒情性は高まっている。更にクラシック派の流れも顔を出して、どこかすがすがしさも感じてしまう。
 曲のタイトルが彼の曲は英語でなく、フランス、イタリア語なのか難解。したがって聴いたそのものの印象だが・・・
 私の曲のイメージからは、M1."The Healing waltz"は、優しさ溢るる曲でスタート、M2."Un Peu comme cette Époque"は、予期せぬ状況を描き、M3."Pensées isolées"では哀感が伝わってくる。
 Johnny MandelのM4."Seascape"は、懐かしさ溢れる静かな美しい展望が眼前に迫ってくる。
 M5."Les chants magnétiques"は、彼のピアノの音の余韻が美しい。M6."Canta che ti passa" 過去に思いを馳せているのか。
 Carla BleyのM8."Reactionnary Tango"は、哀感とメロディーの美しさが。M9."Le libre arbitre"は、美しいメロディーがクラシックを聴いているような気分になる。
 M10."What's new"は、静かな中に過去から未来への展望が見えてくる。

 良いメロディーで、即、取っつきやすいと言うより、何度も何度も聴くことによってその良さと凄さを感ずる曲作りだ。彼が今の時代を記録的にも残しておきたいという意欲も十分に感じられる。
 こうした作品は、それなりの専門家の技術面も含めての評価をむしろ私自身聞いてみたいと思うのである。

(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音   88/100

(視聴)

*

|

« フレーデリク・ヴィルモウ Frederik Villmow Trio 「Motion」 | トップページ | 山本剛 TSUYOSHI YAMAMOTO TRIO「MISTY for Direct Cutting」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

ジョバンニ・ミラバッシ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

ジャケットが美しいですね。
ピアノ曲らしいことが分かりますが、何故か形が裏返し。
そこに何かの意図があるのでしょうか。

ジブリを曲を弾いてましたよね。
そのときは特段の興味は湧きませんでしたが、
きょうは、なる程ね、と思われました。

投稿: iwamoto | 2022年2月10日 (木) 17時39分

同感です。なにか「AVANTI」を最初に聴いた時のような感覚がよみがえりました。

投稿: 爵士 | 2022年2月10日 (木) 23時19分

iwamotoさん
こんばんわ
そうでしたね、彼は日本のアニメソングが好きでしたが・・・あのあたりは私は余り感動がなかったです。
やはりなんだかんだと行っても「AVANTI!」ですね。
このアルバムのテーマは異なりますが、ソロのパターンは似ていると思いました。
ジャケ・・・グランドピアノは解りますが、??

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年2月11日 (金) 21時20分

爵士さん
こんばんわ
私にとっては久々のミラバッシという感じでした。
相変わらずの彼の技法が充ち満ちていました。
トリオでも、原点に返って頑張って欲しいですね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年2月11日 (金) 21時22分

風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。m(_ _)m

相変わらず、熱のこもった「鬼拍」の演奏でしたね!
ミラバッシ印の音を浴びまくった感じです。

リンクを貼っておきます。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/02/post-50a4d6.html

投稿: Suzuck | 2022年2月19日 (土) 08時10分

Suzuck様
こうしたピアニストが頑張ってくれるのはうれしいことですね。
テーマは変わっても、彼の精神はちゅんと宿っていてよかったです。
リンク有り難うございました。

投稿: photofloyd | 2022年2月26日 (土) 14時27分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« フレーデリク・ヴィルモウ Frederik Villmow Trio 「Motion」 | トップページ | 山本剛 TSUYOSHI YAMAMOTO TRIO「MISTY for Direct Cutting」 »