« キット・ダウンズ Kit Downes Trio「vermillion」 | トップページ | ジョー・ファンズワース Joe Farnsworth のピアノ・トリオ作品「City of Sounds」 »

2022年3月10日 (木)

ヨエル・リュサリデス Joel Lyssarides 「Stay Now」

やはり繊細にして深淵、そして美しい欧州抒情派作品

<Jazz>

Joel Lyssarides  N.Fernqvist   R.Blixt「Stay Now」
ACT Music / Germ. / ACT 9942-2 / 2022

71zxhwprzl_ac950

Joel Lyssarides (piano)
Niklas Fernqvist (bass)
Rasmus Svensson Blixt (drums)

Recorded by Joar Hallgren at Nilento Studio, Gothenburg, Sept.7&8,2021

 3年前にここで取り上げたストックホルム音楽大学でクラシック音楽そしてジャズを学び、ピアニスト&作編曲家として幅広く活躍、スウェーデンのまさに若手俊英:ヨエル・リュサリデス(1993年スウェーデンのストックホルム生まれ)の、今回も前作A Better Place』(PCD200/2019)と不変のレギュラー・トリオを率いての今度はActからのリリース第1弾。
   彼のピアノの美しさは出色で私の注目の一人だが、一昨年、Ellen Andersonのヴォーカル・アルバム『You Should Have Told Me』(PCD204/2020)にて、華麗なピアノを聴くことができたが、嬉しいことにここにピアノ・トリオのニュー・アルバムだ。

Joellyssarides1_20220309180601 (Tracklist)

01. As Night Let Down Its Curtain 1:34
02. Sommarsnö 2:06
03. Cloudberry Hill 4:36
04. Is There A Way 4:05
05. Gowns Of Dark 3:12
06. Procession 4:30
07. Chimera 5:08
08. Stay Now 2:49
09. Echoes 2:11
10. Down And Out 3:10
11. St. Joseph 5:04
12. The Last Verse 4:02
*music composed by Joel Lyssarides, except 11 by Niklas Fernqvist

  やはりベースにはクラシックもある北欧のメランコリックな詩情たっぷりで、美しいメロディーと若さを感ずるコンテンポラリーさも秘めた抒情派作品だ。とにかくピアノタッチも繊細で、トリオのリズム隊との相性も良く深淵なところ、そして展望のある心象風景を見事に心地よく聴かせてくれる。

1200x680_joellyssaridestriow

 曲は1曲がベーシストのニコラスの曲で、残る10曲はヨエル自身の曲で、すべてオリジナルで構築し仕上げるという、かなり自身のミュージックにかける思い入れが深い。
 当然北欧にある独特の哀愁感は、日本人の我々にも心に染みるところがあって、しかもそれが暗さというところではなく深淵さというところにすばらしさを感ずるし、北欧の神秘な大地を想像させるところが心憎いのである。

 スタートのM1."As Night Let Down Its Curtain"は、物語のはじまりのようにゆったりと中・低音の旋律を繰り返し、そして続くM2."Sommarsno"のベース、シンバルの音が控えめにピアノの優しさの世界へ展開する。そしてちょっとトリオの楽しさ展開して見せるM3."Cloudberry Hill"のジャズ世界、なかなか味な流れをみせる。
 静かに美しいメロディーにうっとりさせられるM4."Is There a Way"から、一転してダイナミックな展開を見せるM5."Gowns of Dark"への流れはお見事である。
 M6."Procession"は、ややもの哀しさの美をしっとりと。
 M7."Chimera"の後半の静から動への変化は聴きどころ。
 M8."Stay Now"のアルバム・タイトル曲、ピアノとベースのユニゾンの構築が曲を進める面白さ。
 M10."Down and Out"、M12."The Last Verse"は、どこかクラシックを想わせる哀愁と優美さを持った曲作り。

 今や、ユーロ・ジャズの大きな柱となっているスカンジナビアン抒情派ピアノ・トリオの味をしっかりと堪能できるアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100 
□ 録音    88/100

(視聴)  
"Is There a Way"

"Stay Now"

 

|

« キット・ダウンズ Kit Downes Trio「vermillion」 | トップページ | ジョー・ファンズワース Joe Farnsworth のピアノ・トリオ作品「City of Sounds」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

北欧ジャズ」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!2枚目、3枚目とドンドンパワーアップしてますね。今回も心打たれました。

投稿: ランス | 2022年3月10日 (木) 18時34分

ランスさん
コメントありがとうございます
当初、このような演奏のアルバムが次はどうなるのかと・・ちょっと心配しましたが、おっしゃるように着実に進歩充実していますね

投稿: | 2022年3月10日 (木) 20時35分

風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。m(_ _)m

予約時点で、ビビッとはきていたのですが、
予想以上に素敵な作品でした。
今後は、ACTレーベルのスターたちとの絡みもあるかもしれませんね。

私のリンクです。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/03/post-0b65dd.html

投稿: Suzuck | 2022年3月11日 (金) 12時41分

Suzuck様
コメント、リンク有難うございました
以前はマイナーなレーベルだったと思いますが、ACTとなるとそれなりにジャズ評価もあがりますね。
ECMにも通ずるところもありますし、一方コンテンポラリーなちょっとスリリングな面も持っていますので、まだまだ発展する余地は若さとともに十分ありますね。
私的には美的抒情派はしっかり築いてほしいとも思っていますが。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年3月11日 (金) 21時45分

ドラムの参加の仕方は、どう考えていらっしゃいますか。
やはり、根本的に難しいものではないでしょうか。

それと、ピアノトリオは、和音の楽しみが少ないものが多いようですね。

このジャンルの音楽を支持して支えているのが、日本の大人たちであることは、大変興味深いです。
昔も、そういう時期がありましたよね、わたしたちの若い頃。

前後関係を知らないものですから、
今回ご紹介のものも、完成に近づいているように聞こえますが、まだまだ発展途上なのですか。

投稿: iwamoto | 2022年3月12日 (土) 18時38分

ジャケ写ですが、昨日、基板にビーズ付きのチェックピンを半田付けしてたのです。
この写真を見て、よく似た状景だな、と思われました。
写真としては、フツー程度かな、と判断しますが、如何でしょう。

わたしが撮った写真じゃないですが、わたしが作った作品がジャケ写に使われたことがあります。

投稿: iwamoto | 2022年3月12日 (土) 21時53分

iwamoto様
コメントありがとうございます
ピアノ・トリオにおいて、ドラムスの役割はやっぱり貴重で、大きいと思ってます。ライブでの世界でそれは実感できますが、アルバム造りでは、バックのバックにおさまってしまっている録音もありますが、近年その味をしっかり収める技法が評価されていると思いますね。
 トリオの三者のハーモニーや、ユニゾンはやはり聴きどころとして魅力があります。和音の楽しみ方が少ないというのは、どのようなものと比較してでしょうか。
 おっしゃるように、このトリオは完成型でもあり発展型でもあり・・コンテンポラリーな要素がどこまで入るかなど、それは若いのですからこれからの楽しみでしょうね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年3月14日 (月) 12時55分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« キット・ダウンズ Kit Downes Trio「vermillion」 | トップページ | ジョー・ファンズワース Joe Farnsworth のピアノ・トリオ作品「City of Sounds」 »