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2022年4月19日 (火)

ヘルゲ・リエン Helge Lien Trio 「REVISITE」

ピアノ・トリオの原点に戻り、回顧と新しい出発への心意気か

<Jazz>

Helge Lien Trio 「REVISITED」
Ozella / Germany / OZ101CD / 2022

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Helge Lien (piano)
Johannes Eick (bass)
Knut Aalefjaer (drums)

  ノルウェーの我が期待のヘルゲ・リエン(1975年ノルウェー リングサーケルのモーエルヴ生まれ)の久々のピアノ・トリオのニュー・アルバム(前作は2019年の20周年記念アルバム『10』)。中身はちょっと珍しいパターンである過去に発表した自己のオリジナル曲群のセルフ・カヴァー集である。今回はベースにベテランのヨハン・エイクが加わり、ドラムにはかってのトリオ・メンバーのクヌート・オーレフィアールが戻ってきたというトリオ体制によるもので、アルバムの録音記録からは、曲はスタジオ録音とライヴの両方である( 半分が Tøyen 教会で録音されたもの、その他はハーマル市の Hamar Theater - AnJazz フェスでのライヴ)。


Helge-l2w  かってのアルバム『NATSUKASII』(oz036cd/2011)以来お気に入りになって、すでに10年以上の経過であるが、彼はトリオ演奏のほかにいろいろなミュージシャンとの共演をしてきてのアルバム・リリースも続いたが、やはり私の期待はピアノ・トリオだ。
 彼は何回か来日しており日本好きであり、又カメラの愛好家で、NIKONの愛用者でもあった。今回のジャケ写真も彼によるもののようだ。又2014年に来日時(丁度皆既月食があって、彼は会場の庭に出てその撮影をしてからライブという楽しいひと時もあった)には、話ができたのだが(上は、その時の彼とのツーショット、後ろには当時のベーシストのフローデ・ベルグがお茶目に顔をだしている)、彼はピンク・フロイドのファンで私と共通したところもあってなお親近感が持てたものだ。又当時のベーシストのこのベルグはなかなか楽しい人であったが、オーケストラのベーシストの方に専念で、現在は彼のトリオから離れている。

 

(Tracklist)

1. Hymne Revisited (from What Are You Doing The Rest Of Your Life)
2. Liten Jazzballong Revisited (from Spiral Circle)
3. Spiral Circle Revisited (from Asymmetrics)
4. Gamut Warning Revisited (from Hello Troll)
5. Meles Meles Revisited (from Natsukashii)
6. Folkmost Revisited (from Badgers And Other Beings)
7. Jasmine Revisited (from Guzuguzu)
8. Krystall Revisited (from 10)
9. Nipa Revisited (from 10)

 冒頭のM1." Hymne"から、透明感のあるシャープなキレのある美しいピアノのメロディーが流れ、ロマンティシズムや詩情を感じさせる。
 M2."Liten Jazzballong "は、ゆったりとした美旋律、静かな世界。

 今回のアルバムは、その録音もかなり冴えていて、エンジニアはJan Erik Kongshaugが担当しているが、かってのアルバムよりはドラマーの演ずるシンバル音などがかなり明瞭に前面に出ていて効果的でちょっと刺激的。

Helge_lien_triow


 M3." Spiral Circle "リエンの特徴のどこか牧歌的なムード。後半ベースのソロが新鮮。
 M4."Gamut Warning"原曲と大きな変化はないが、躍動感ある演奏が魅力。
 M5."Meles Meles"は、再び美しく展開。そして原曲より若干短くなっているが変化がみられ、ベースのアルコ奏法とジンバル音の主張が面白くしている。
 M6."Folkmost"この曲は特に録音の改善が明らか、力の入った鍵盤音。
 M7."Jasmine"原曲と異なって冒頭からベースのソロ演奏が続き、ドラムスがリードして、次第にピアノの主メロディーに流れ珍しく異世界に流れる原曲に。
 M8."Krystall"アルバム『10』の3分弱の原曲が、6分以上に変化。パーカッション風のドラムスから、リエンらしいクリスタル風のピアノが耽美的に迫ってくる(M9.も同様だ)。
 
 録音・ミックス・マスターリングの技が加味していると思うが、トリオとしてのベース、ドラムスの演奏のリアルな線が、リエンのメロディアスにしてちょっと刺激的な味を感じさせる詩情豊かなピアノ演奏に加味して、かなりその味を高めた演奏が聴ける。セルフ・カヴァーではあるが、単なる焼き直しでないところが良かったと思うアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音     90/100

(視聴)

 

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コメント

これで完成してるのですよね?
抑制が利いていると感じますか?
ピアノは雰囲気を変えながらユラユラしますが、
すぐに中心線に帰ってくるように聞こえます。
こういうのが、ユーロジャズなのだ、ということでしょうか。
よくこれほど道草しないで行けるものだなと思われました。
チラッと周囲を見ている感じがします。
うまく言えません。

投稿: iwamoto | 2022年4月22日 (金) 17時36分

iwamoto様
コメントどうも有難うございます
 なかなか難しいお話で、見えるようで見えていない私ですが・・・
 ユーロジャズはこうだという定義らしいものは全くありません。しかし伝統的なアメリカン・ジャズとの違いが感じられれば・・・それがそうなんでしょうね。
 ジャズであろうが、なんであろうが、ミュージックって面白いところなのですが・・・音楽論、学問的な世界、音楽技術論などはさておいて(私にはわからないものですから)、心の琴線に触れる何かがあれば・・その人にとって素晴らしいものと私は評価する人間です。ヘルゲ・リエンの世界はどこか原点に返って人間や自然環境を見つめているところが魅力ですが・・・それも私の世界なのかもしれません。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年4月23日 (土) 12時06分

いつも楽しく拝見させて頂いてます。
今回もヘルゲ・リエンの世界を味わえる内容であったと思います。私的には好みのど真ん中と言う事もあるのですが、目を閉じて聞けば聞くほど景色や物語まで浮かんでくる様に感じています。ユーロジャズの世界では外せない存在であり、出来るだけ堪能する為にスピーカー選びの基準にもしております。

投稿: ランス | 2022年4月23日 (土) 19時31分

ランスさん
コメントどうも有難うございます
 今回のアルバム、過去のアルバムのセルフ・カヴァーですが、こうして立派に一枚のアルバムとして完成しているように思います。
>目を閉じて聞けば聞くほど景色や物語まで浮かんでくる様に感じています。
そうなんですね、そこですね。初めての接点であった「Natsukasii」では、ジャケ写真を見ながら聴き、いろいろと頭に描いて聴いたのを思い出します。
 スピーカー選びの基準ですか、いいですね・・いい音で聴きたいですものね。ピアノのクリアな音、シンバル音などの迫り方・・これも醍醐味ですね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年4月23日 (土) 21時23分

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