« トルド・グスタフセン Tord Gustavsen Trio 「Opening」 | トップページ | ケイテイ・ジョージ Caity Gyorgy「PORTRAIT of CAITY GYORGY」 »

2022年4月30日 (土)

ロルフ・クリステンセン ROLF KRISTENSEN 「INVITATION」

しっとりと仕上げたギター曲。女性ヴォーカルも説得力あるソフトにして優しさに満ちる

<Jazz>

ROLF KRISTENSEN 「INVITATION」
LOSEN RECORDS / IMPORT / LOS270 / 2022

717npi1hgnl_ac_sx679_

Rolf Kristensen : Electric and Acoustic Guitars

Hilde Hefte(Vo),Torun Eriksen(Vo),Hilde Norbakken(Vo), Kari Iveland(Vo)
Allen Hinds(electric G)

 私には初物のノルウェーのピアニストでありギタリストでもある作曲家のロルフ・クリステンセンRolf Kristensen(1955-右下)のアルバム。彼は英国とノルウェーの異色二人組ニュー・エイジ・ミュージックのSecret Gardenのメンバー(Rolf Iveland)。ここでの彼の武器はギターだが、ノルウェーの女性ヴォーカリストを大学で教鞭をとっている合間に、曲により別人をフューチャーして大学のスタジオなどで録音したというアルバムだ。更にバックにも多彩なミュージシャンが参加しているが、全曲には当然ロルフ・クリステンセンはギターで参加し、それぞれ曲により共演ミュージシャンが異なっている。

 彼のアルバムとしては2枚目だが、1stアルバム『Timelines』(LOS 200-2)につづくLosen Recordsの第2作。前作は自己の曲が主であったようだが(私は未聴)、このアルバムはすべてジャズ・ミュージシャンなどの曲(『Great American Songbook』の美しくオリジナリティのある曲)のカヴァーである。癒し系の曲を得意としている彼なので、そんなアレンジと演奏が期待できる。
 

(Tracklist)

Rolfkristensen3 1 Blue in Green(Meredith DʼAmbosio/Miles Davis/Bill Evans) 05:20
Rolf Kristensen(G), Hilde Hefte(Vo), Jan Mathiasson, Jango Nilsen, Bjørn Rønnekleiv, Bernt Moen  

2 Iʼll Be Seeing You(Irvin Kahal/Sammy Fain) 05:07
Rolf Kristensen(G), Torun Eriksen(Vo), Kjetil Dalland  

3 Invitation(Paul Francis Webster/Bronislau Kaper) 06:35
Rolf Kristensen(G), Hilde Norbakken(Vo), Torjus Vierli, Jango Nilsen  

4 Broadway Blues(Ornette Coleman) 03:10
Rolf Kristensen(G), Bernt Moen(P), Håvard Henriksen, Andreas Skorpe Sjøen, Bjørn Rønnekleiv, Mengran Wu, Trygve Rypestøl, Anders Skjerdal, Reidun Ottersen  

5 Love for Sale(Cole Porter) 05:23
Rolf Kristensen(G), Kari Iveland(Vo), Håvard Henriksen, Andreas Skorpe Sjøen, Bjørn Rønnekleiv, Mengran Wu, Trygve Rypestøl, Anders Skjerdal, Reidun Ottersen  

6 Crystal Silence(Chick Corea) 07:44
Rolf Kristensen(G), Allen Hinds(electric G), Johannes Hetland, Per Elias Drabløs, Jango Nilsen  

7 You Must Believe in Spring(Michel Legrand) 04:00
Rolf Kristensen(G), Jan Mathiasson  

 単なるヴォーカル・アルバムではないが、ノルウェーで活躍している4人のベテラン女性ヴォーカリストがなかなか味があっていい。

Hildehefte680x680  Miles DavisとBill Evansの曲M1."Blue in Green"ヒルデ・ヘフテ(1956- →)は、学生時代にピアノ、そしてギター、アルト・サックス、クラリネットをマスター。作詞・作曲・編曲までもこなし、音楽の何たるかを知り尽くしたベテラン歌手とか。その活動範囲はシンガーとしてだけでなく、女優、音楽教師などもと広い。1991年に待望の初ソロ作『'Round Chet's Midnight』を発表。ダウンビート誌では" She's making waves on the Norwegian scene "と評され、その実力をとどろかせた。2001年にはビル・エヴァンスに迫り、今なお評価の高い名作『 Playsong – The music of Bill Evans 』を発表。北欧ジャズ・シーンでとびぬけた存在として現在に至る。ここでは、クリステンセンのギターとともに、その彼女の情感たっぷりにして優しくしっとりとした歌が聴かれる。

Toruneriksen  M2."I'll be seeing You"トルン・エーリクセン(1977- →)は、6歳から様々なゴスペル合唱団で歌い、19歳までに注目のソリストになったようだ。ソウル、ジャズ、ポップの味があり、合唱の経験を通して彼女は作曲もする。ジャズスタンダードの世界に大きく影響を受け、1997年にオスロに引っ越した後、ノルウェーの舞台・スタジオ研究所に入学しているという歌手。ここでも非常に聴き心地の良い易しさ溢れる好印象の歌を聴かせてくれる。

Hildenorbalken2wjpg  M3."Invitation"ヒルデ・ノルバッケン(→)は、アグデル大学美術学部のポピュラー音楽研究所でボーカルとソングライティングを教えている。歌手として活躍し、ソリスト、バックアップシンガー、ピアニストとして、ノルウェーの多くのアーティストとコラボレーションしてきている。ボーカル教師としての彼女の専門分野は、ボーカルと芸術的なキャラクター、ボーカルフィールドのジャンル知識、ボーカルテクニックとソングライティングの開発だそうだ。ポピュラー音楽の学士号の研究プログラムリーダーでもあるとか。やはりこの曲でも美しく広い世界に響くソフトな美声でしっとりと迫る。

Kari-iveland-1trw  M5."Love for Sale"カーリ・イーヴェラン(1962- →)は、インドのビハール州で生まれ,1970年にノルウェーへ。引っ越す前,宣教師の子供と娘としてバングラデシュで生活。カリは、音楽の演奏、ノルウェー音楽アカデミー/オスロ大学、ロサンゼルスのディックグローブ音楽学校で音楽/声楽研究の学士号を取得しているベテラン。やはり説得力ある音域の広い美しい歌声で聴かせる。

 クリステンセンのフューチャーした4人のノルウェーの実力ヴォーカリストは、なかなか味があって魅力的。彼の安定感たっぷりの落ち着いた説得力あるギターとともに、こうした有名ミュージシャンの曲を、彼のニュー・エイジ・ミュージックに通ずるムードの下に編曲し女性ヴォーカルの魅力を彼の世界に作り上げていて素晴らしい。

Allenhindsmasw  またChick Coreaの曲M6."Crystal Silence"は、アレン・ハインズ(→)のエレクトリック・ギターを招いて、ギター曲として聴きごたえたっぷりの味を出して納得。ハインズは、1986年にバークリー音楽大学に在籍時にアメリカのギター雑誌の『Guitar Player Magazine』のコンテストでラリー・カールトン賞を受賞し、奨学金を貰いミュージシャンズ・インスティチュートへ入学しロサンゼルスで音楽活動をスタートさせた。 現在、ジャズ・フュージョンのソロ活動をメインにナタリー・コールやボビー・コールドウェル、ロバータ・フラックなどのライブサポートを行っていると。また現在、ミュージシャンズ・インスティチュートの講師やシェファード大学やCornel School of Contemporary Musicなどでも客員教授としても教鞭をとっている。 

 とにかく気持ちが休まる安堵感を誘うアルバムいに仕上がっていて心地いい。こんなアルバムもいいものである。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌  90/100
□ 録音       88/100

(視聴)

*

 

|

« トルド・グスタフセン Tord Gustavsen Trio 「Opening」 | トップページ | ケイテイ・ジョージ Caity Gyorgy「PORTRAIT of CAITY GYORGY」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

女性ヴォーカル」カテゴリの記事

北欧ジャズ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

久しぶりのギター音が聞けました。
北欧系のギターって、馴染みがないです。
どういう方向にしたいのか、よくわかりませんでした。
ジャケは良いと思います。

投稿: iwamoto | 2022年5月 1日 (日) 15時19分

iwamoto様
コメントどうも有難うございます
ジャズはその守備範囲が広すぎて、ジャズ・ギターも、こうだというところが定まりませんね。
私はロックの泣きギターが好きですが、ジャズにはあまり向かないような。
ロックとジャズで共通するギターは、ブルースですかね。
このアルバムのギターは北欧というわけでもないようです。むしろニュー・エイジ・ミュージック寄りでしょうか。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年5月 2日 (月) 17時45分

ロルフ・クリステンセンは初めての名前ですが、女性ボーカル、Hilde Hefte、Torun Eriksenは私の好みでもあり、「北欧美女シンガー図鑑」でも取り上げたことがあります。

ロルフ・クリステンセンもなかなかいいボーカルを選んだものですね。

投稿: 爵士 | 2022年5月 3日 (火) 11時13分

爵士さん
コメントありがとうございます
そうそう、Torun Eriksenは聴いてますよね
私はこのRolf KristensenってRolf Ivelandではないかと思うのですが・・・、彼はKristensenの出身なんですよね。このあたりが味噌かなぁー-と。
こんな世界も一聴の価値ありと思いますので、アルバム聴いてみてください。ご評価も御聞きしたいです。^^

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年5月 3日 (火) 16時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« トルド・グスタフセン Tord Gustavsen Trio 「Opening」 | トップページ | ケイテイ・ジョージ Caity Gyorgy「PORTRAIT of CAITY GYORGY」 »