ロッセ・マイヤー・ガイガー rosset meyer geiger 「Live at Beethoven-Haus Bonn」
スリリングにしてインパクト十分の衝撃のジャズ演奏
<Jazz>
rosset meyer geiger 「Live at Beethoven-Haus Bonn」
UNIT RECORDS / IMPORT / UTR4866 / 2021
Josquin Rosset(p)
Gabriel Meyer(b)
Jan Geiger(ds,per)
Mixed By, Mastered By Stefano Amerio
遅まきながら、これはなかなかの名盤であるのでここに取り上げ記録しておきたい。
前作でも注目した"ロッセ・メイヤー・ゲイガー"と3人のメンバーの名を配したスイス出身のトリオのこれはライブ音源。そして今回もアメリオ・サウンド・マスタリングで期待十分のアルバム。
このバンドは、すでに20年以上活動してきており、これはドイツのボンはベートーヴェンハウスでのライブ録音。過去にここで取り上げたアルバム「What Happend」(UTR4266/2010)から2曲、「Dru」(UTR4665/2016)から4曲を演奏している。
とにかく彼ら自身のオリジナル曲による独特な進歩的サウンドにて、フリー・ジャズ因子を持っての方向性を磨き上げているトリオで、ライブによる更なる充実がここに結実している。
(Tracklist)
1. Die Sau 11:20 #
2. Mountain Lake 10:42 *
3. Maude 5:32 *
4. Shell Bay 8:41 *
5. Arcs 12:08 *
6. Tritt O’Nuss 11:03 #
# : 「What happend」より
* : 「Drü」より
演奏スタイルは自由開放的なサウンドと評されるところで圧巻である。ここにライブ音源をリリースしただけあつて、その内容は、例えばM5."Arcs"は、スタジオ盤では6分21秒の演奏が、ここでは12分08秒と、なんと倍に近い時間をかけて入魂の演奏をしている。このアルバムの6曲中4曲が10分以上という彼らのライブにおいての曲に入れ込むところは凄く、聴いていても更にインパクトは増して、長さを感じない。
とにかく3者の対等なる連携プレイがスキなく見事で、おそらくその時その時のインプロヴィゼーションを大切にしているのは、お互いが理解しあっていてそれをさらに自然に深めてゆくことが出来ている為なのかもしれない。まさにトリオ演奏である。
M1."Die Sau "は、導入部からGabriel Meyerの(上中央)ベースのソロに近い形で進行するも、その情感の込め方はスタジオ盤とはけた違いに深く響いてくるし、その後のJan Geiger(上右)のドラムスとJosquin Rosset(上左)のピアノによるパンチの効いたアクセントも迫力十分であり、十分ベースにこの曲の世界を作らせてのアタックで、息の合ったところが気持ちがいい。
M2." Mountain Lake"は、Rossetの曲で、深遠なる彼のピアノが深い世界に導く。ゆったりとしたベースがリズムを刻み、パーカッシブな音の面白さ、シンバルの美しい響き。三者が空間を十二分に捉えて静かに流れる。
M3."Maude"、M6."Tritt O’Nuss "は、アバンギャルドな展開。三者のエネルギッシュな攻めがスリリングにして迫力十分なところが聴きどころ。
M4."Shell Bay" Geigerの曲であるが、ベースの優しい響きが印象的。そしてピアノの旋律も優しい。ドラマーってこうした意外性のある静かな曲をよく作るんですよね。
M5."Arcs " スタジオ盤でも印象に残る曲。ピアノの芸達者ぶりの攻めの展開に、歩調を合わせてドラムスも思い残すことなくアクティブな展開をみせ、ソロによる叩き付けで味をつける。ベースが意外に鎮静剤の役。
ライブであると、さらに音的にも空間を見事に描きつつの自由開放さが更に高揚して攻めと守りと深遠なところのメリハリが芸術的だ。なかなか味なサウンドも聴きどころで、アメリオがそれを十二分に描いてくれる。私的には名盤と言いたい。
(参考)「Rosset Meyer Geiger - Discography」
1. 「What Happened」 Unit Records UTR4266/2010
2. 「Lucy's Dance」 〃 UTR4308/2011
3. 「Trialogue」 〃 UTR4405/2013
4. 「Drü」 〃 UTR4665/2016
5. 「Live at Beethoven Haus Bonn」 〃 UTR4866/2021
(評価)
曲・演奏 : 90/100
録音 : 90/100
(視聴)
( 参考Live映像 )
*
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コメント
ちょっと判断が難しいです。
前世紀の現代音楽のように組み立てられるかと思えば、
ピアノのスケールが外れてゆかないですね。
ベースも順当ですし。
もちろん、色々なスタイルの曲があるのでしょうが、
ご紹介のものは、不思議な感じがしました。
投稿: iwamoto | 2022年4月14日 (木) 12時50分
iwamoto様
ご感想のコメント有り難うございます
ジャズとは言っても、スタンダードを演奏するといった世界とは全く異なった彼らは自己のオリジナル曲による独特なものがありますね。進歩的サウンドにて、音楽という範疇での一つの世界を求めてのフリー・ジャズ因子を持っての方向性を磨き上げているトリオですね。
ライブによる更なる充実が、アメリオの名録音(ミックスとマスター)によって、ここに結実していると思います。こうした世界は好きなんです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年4月14日 (木) 16時42分