ボヤン・マルヤノヴィッチ HÜM 「don't take it so personally」
北欧クラシックからの発展系の即興重視のコンテンポラリー・ジャズ
<Jazz>
HŪM 「don't take it so personally」
Losen Records / Import / LOS 239-2 / 2022
Bojan Marjanović – piano/composition
Bjørnar Kaldefoss Tveite – double bass
Magnus Sefaniassen Eide – drums
2021年10月録音 Propeller Music Divisionʼs Studio(オスロ)、2020年9月録音 Norsk Lydstudio(ミョンダーレン、ノルウェー)
私にとっては初物のボヤン・マルヤノヴィッチ( Bojan Marjanović, 1981年10月26日 - )は、ノルウェーのオスロを拠点に活動するピアニスト・作曲家だが、出身は旧ユーゴスラビア、セルビアとのこと。彼は、もともとはクラシック分野の人間で、ピアノコンクールなどで国内および国際レベルで賞を授与されていると。活動範囲もヨーロッパ諸国、カナダ、アメリカで演奏している。ショパンのエチュード、スケルツォ、前奏曲などのピアノ演奏に評価があるようだ。 しかし、現在の中心は即興音楽、コンテンポラリージャズに広がっている。特にここ数年は、彼はノルウェーのジャズシーンで様々なプロジェクトやコラボレーションで活躍していて、この「HÜM(ヒューム)」は、彼のプロジェクトのひとつ。「ヨーロッパの伝統ジャズとコンテンポラリー・ミュージックの融合」による「ジャズ」により聴衆に訴えるべく始められたと。
メンバーは、ビョルナル・カルデフォス・トヴァイテ(1987- bass 下左) と、マグヌス・ステファニアセン・アイデ (1991- drums 下右)と比較的若手とのトリオで、「対等の立場のインタープレー」が彼らの哲学のようだ。
このアルバム『Donʼt Take It So Personally』(個人攻撃ととらないでくれ)が、デビューアルバム。全員の個性と演奏スタイルを重んじて、インプロヴィゼーションの世界を織り込み、マリヤノヴィッチが作曲した8曲とセルビア民謡の"Cvekje cafnalo"を演奏している。
(Tracklist)
1 Dream Beliefs
2 Kringsjå blå
3 Don´t Take It So Personally
4 After Hours
5 Sedmaya
6 Day Dreamer
7 Peculiar Being
8 Arctic Ice
9 Cvekje cafnalo
なるほど、北欧のクラシック美学と手法は室内楽的流れを感ずるが、ジャズ心の感ずる三者お互いのインプロヴィゼーション重視で形作っているという世界だ。9局中7曲が6分以上の長さにある。
M1."Dream Beliefs"の静かな情景描写に惹かれるし、M2."Kringsjå blå"ではピアノによる美しいメロディーが流れ、全体にかってのスウィングするジャズとは全くの別世界で、後半の三者の説得力ある入魂のインプロ演奏による展開は見事。
M3." Don´t Take It So Personally"のタイトル曲は比較的おとなしく展開、中盤ではベースの主旋律が響き、交代してピアノが流麗に流れる。
M4."After Hours" ここでは珍しい低音のピアノ旋律で始まり、パーカッション様の音に加え、ベースはリズムを刻む。後半ステック・ワークも色を添える。
M5."Sedmaya"の後半では、ベース、ドラムスがしっかりリスム隊の役割を進め、ピアノに自由展開させているところは、ピアノ・トリオの聴きたい味も盛り込んでいる。
M8."Arctic Ice" は、不思議な曲でベースのアルコ奏法にピアノが乗ってスケールの大きいやや不気味といったメロディー。
全体に、メロディー派でなく、それぞれのインプロを尊重して盛り上げていて、なるほど三者の対等な役割による合奏法的なところが聴きとれて、難解な展開のようでいながら意外に親しみが湧いてくる。
コンテンポラリーと言っても、難解さに押されないため、数回聴いていると親しみの湧くタイプで、なるほどクラシックで磨いた音楽の急所をとらえているのだろう。北欧ジャズの独特な詩情も感じられると同時に未知の雄大な自然への流れも感じられる。
なかなか、今後に期待してゆきたいトリオと感じた。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(視聴)
*
"Dream Beliefs"
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コメント
こんにちわ。
初物で期待してませんでしたが、ビックリするほど内容は良かったです。よく聞くと個性的で有りそうで無いのかなと?次も期待してます。
投稿: ランス | 2022年5月22日 (日) 18時08分
ランスさん、
こんばんわ、コメント有難うございます
私も初物でして・・・どんなかなぁー-と、はじめは半信半疑でしたが、冒頭の"Dream Beliefs"から、おお、やっぱりノルウェー作品の深さを知らされました。
インプロヴィゼーションを大切に、三者対等に曲を進めてゆくところに魅力はありますね。
是非とも、広く深く発展していってほしいです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年5月22日 (日) 23時12分