ケイテイ・ジョージ Caity Gyorgy「PORTRAIT of CAITY GYORGY」
キュートで軽妙小粋な歌声だが・・・
<Jazz>
Caity Gyorgy「PORTRAIT of CAITY GYORGY」
MUZAK / Canada / MZCF-1448 / 2022
Caity Gyorgy : Vocals
#01-#07:"No Bounds"
Jocelyn Gould (guitar)、Thomas Hainbuch (bass)、Jacob Wutzke (drums)
(2021年作品)
#08-#12:"New Pronouncing"
Kyle Pogline (trumpet, flugelhorn)、Nick Forget (trombone)、Eric Wong (flute)、Virginia MacDonald (clarinet)
Daniel Barta (alto saxophone)、Lucas Dubovik (tenor saxophone)、Kyle Tarder-Stoll (baritone saxophone)
Felix Fox (piano)、Thomas Hainbuch (bass)、Jacob Wutzke (drums)
(2021年作品)
私にとっては初物です。カナダはトロントとモントリオールを拠点として活動する女性ジャズ・シンガー (ソング・ライターでもある)のケイティ・ジョージ(Caity Gyorgy、1998年5月生まれ24歳になるところ →)の日本デビュー・アルバム。彼女は自己のオリジナル曲"Secret Safe"(M8.)で2021年のJohn Lennon Songwriging Contestのジャズ部門グランプリを受賞とか。日本では、ドン・トンプソンのアルバム『Lazy Afternoon - A Place That's Quiet』で、ベテランのサックス、ピアノ演奏の中で対照的な若さと淑やかな魅力の歌声が響いて注目された。すでにビバップ、スウィングミュージックを歌うキャリアを積んできているようだ。なかなかキュートでクリアな歌声と曲作りも堅実で今後の活躍が期待されている。
このアルバムは、本国で2021年にリリースされた1stアルバム『No Bounds』(M1.ーM7.)と同年7月にリリースされたEP『Now Pronouncing』(M8.ーM12.)をカップリングし、ボーナス・トラックを1曲追加したフル・アルバム。『No Bounds』にはカナダで評価の高い女流ギタリストのジョセリン・グールドが全面参加して、ギター、ベース、ドラムスのトリオをバックを務めている。
一方『Now Pronouncing』の方は、バックがピアノトリオに加えて、トランペット、トロンボーン、フルート、クラリネットそしてアルト・テナー・バリトンの3サックスというビック・コンボでの古き時代のジャズ・アンサンブルもの。
収録曲は下のように、彼女のオリジナル曲は8曲(*印)で、5曲はカヴァー曲。
1 Postage Due *
2 East of The Sun (Brooks Bowman)
3 I Can't Get Started (Vernon Duke, Ira Gershwin)
4 A Certain Someone *
5 I Can't Give You Anything But Love (Jimmy McHugh, Dorothy Fields)
6 Undefined *
7 Bye Bye Blackbird (Ray Henderson)
8 Secret Safe *
9 There by the Door *
10 12th Avenue *
11 Why'd You Gotta *
12 The B *
13 Embraceable You (George Gershwin, Ira Gershwin)
彼女の歌声は、ちよっと低音はやや弱いが、ダイアナ・パントンのようなキュートな味付けのある高音の伸びる比較的澄んだところにある。軽妙小粋という表現もあるようだが、非常に一生懸命歌っているという印象。しかし、カナダというと私はキャロル・ウェルスマンとかソフィー・ミルマン、そしてホリー・コールなど頭に浮かぶが、そうそうダイアナ・クラールを忘れてはいけませんね、そんな大御所と比較すると、まだまだ曲の味付けは彼女らには追いつけない。まあ、日本デビュー盤ですから、今後に期待するということにする。
後は、女性ヴォーカルって好みが結構分かれるので、彼女の受けはどうかと思いながら聴いているが、おそらくジャズ・ヴォーカルとして50%50%のところかと思う。私的には高音部はもう少しソフトに、そして全体的に強弱がもっと欲しいとか結構要求がある。どこか歌い方に余裕が感じないんですね、そしてバラードものももっと情感もって迫ってきて欲しいし、全体にぬくもり感が少ない。
しかし、スキャットを交えたり結構芸達者なのかもと思わせるところも随所にあるので、これが彼女のパターンなのかもしれない。曲をかなり正確に清楚可憐に歌い上げているところは好感もある。やっぱり後は好みの問題になってゆくところだ。
私的には曲作りは前半(M1.-M7.)の小コンボをバックにした雰囲気が好きですね。ジョセリン・グールド(→)のギターがなかなか洒落た良い世界を描いている。特にM7."Bye Bye Blackbird"のヴォーカルの合間のトリオで演奏しているところでは、ギター、ベースがメロディーを流し、ドラムソロも入って情景が浮かんでくる演奏で、その後のケイテイのヴォーカルも生き生きしている。
後半(M8.-M12.)はやっぱり音作りが50-60年前の古くささがある。M8."Secret Safe"は、評判の良かった曲のようだが、私的には突然管楽器陣の古めかしい合奏でがっくり、せっかくのM7.のムードが壊れた(こうゆうオールド・タイプが好きだという人もおられるかもしれませんが)。
やはりアルバム作りというのは、こうした2つのアルバムの結合が、どんな効果をもたらすか繊細な感覚で対応して欲しい。
結論的には、今後に期待されるジャズ・ヴォーカリストの出現としてとらえたいところではある。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 85/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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コメント
う〜ん、まだ何とも言えないです。
ほんとにこういうことをやりたいのか、どれが自分のやりたいことか。
アルバムって、組写真と近いものだなと、再確認。
投稿: iwamoto | 2022年5月 6日 (金) 09時45分
風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。m(_ _)m
ギター、オーソドックスだけどとても巧いですよね。
私もギター・ヴァージョンの方が好きですよ。
完成度も高いとおもいますし。。
一生懸命な感じは、あざとくなると女性ファンは一気に退きますが、
まぁ、確かに好み、、ということになりますかね。
ビッグ・コンボの方は、未来につなげるということで。
私もリンクを置いていきます。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/05/post-eb3fd3.html
投稿: Suzuck | 2022年5月 6日 (金) 18時11分
iwamoto様
アルバム造りって、多くの曲を並べるわけですが・・それには一つの世界観が必要に思います。
このアルバムは過去の2枚の小規模アルバムを日本向けに(?)ただドッキングしたもので、思想も何もないといういやはやこの時代には珍しいもの・・聴く人はそんな程度のところが対象なんでしょうかね。
写真の「組み写真」、たった2枚のものから10枚の多いものでも、それなりにかなり意識して(自己の描く世界を)並べていると思いますがね、・・・ですよね。(「Portrait」のタイトルの意味は?、ただ2枚を並べればよいのでしょうかね)
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年5月 6日 (金) 20時48分
Suzuck様
いつもわざわざありがとうございます。丁度手元にアルバムがあって、わわてて感想を書きました。
・・・ですよね、ギター・ヴァージョンに軍配ですね。^^
このアルバム造りの手抜きはちょっとみっともなかったですね(これは日本盤なんでしょうか)。
女性ヴォーカルものって、私はかなり好みが優先してしまいますが・・・そんなところでお許しを。
更にビック・コンボものは、もともと私は弱いんです(笑い)。リンクも有難うございました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年5月 6日 (金) 20時58分
買いました。
スタンダードと遜色のない作曲できるって、すごいなあ と素人的感想(笑)
2on1で売っただけのことを
世界観だの思想だの(笑)
おもしろいことを言う人もいるんだなあ。
投稿: MRCP | 2022年5月12日 (木) 22時28分
MRCP様
コメント有難うございます
私は常にアルバムは一枚の芸術として聴きたい方なんです。(個人的なものですが・・・)しかし、アルバム造りには、それを十分考えてのミュージシャンも多いですね(ここには一つの思想があると思います)。従って、曲の配列もかなり意識してますね。
一枚聴き終わったときの満足感も、CDなどを聴くことの楽しみでもあります。
近年は、好きな曲のみダウンロードして聴くという事も一般的になってきているようですが(昔のヒット曲のシングル発売みたいなものですね)、それはそれ過去にもありました。それはそれでいいでしょうね・・・CDの聴き方は個人的なものであって、それ以上の何ものでもないと思います。
昔のロックでも、クリムゾンの「宮殿」や、特にピンク・フロイドの「狂気」「炎」など曲の配列を変えただけでもその変化はかなりで、ロジャー・ウォーターズは怒るでしょうね。(^_-)-☆
投稿: photofloyd | 2022年5月13日 (金) 12時09分