米澤めぐみ Megumi Yonezawa 「Resonance」
若さを超越した充実ジャズ演奏に驚嘆
<Jazz>
Megumi Yonezawa 「Resonance」
Sunnyside / IMPORT / ssc1632 / 2022
Megumi Yonezawa (piano)
Mike McGuirk (bass)
Mark Ferber (drums)
私にとっての初物、ニューヨークを拠点として活躍している注目の日本人女性ピアニスト:Megumi Yonezawa=米澤めぐみ(恵実)のピアノ・トリオ作品。メンバーは従来参加していたヨステイン・グルブランドセン・カルテットのリズム・セクションを独立させたもので、ピアノ・トリオによる作品。
彼女は、北海道出身。6歳からピアノを始め、バークリーではパフォーマンスとジャズ・コンポジションの学位を修得。2016年にスペインの“Fresh Sound New Talent”から、ジョン・エイベアとエリック・マクファーソン(フレッド・ハーシュ・トリオのリズム・セクション)を迎えた初リーダー・アルバム『A Result of the Colors』を発表。この作品は、ウェブサイト「All About Jazz」で最高点の5 つ星に輝いたとか。現在ニューヨークを拠点に活躍中。
紹介を見ると、「今回のアルバムのベースのマイク・マクガーク(オレゴン州出身 =下左)はノース・テキサス大学卒業後、本格的なプロ活動へ、デイヴ・リーブマン、ドン・フリードマン、マルグリュー・ミラー等、数々のレジェンドも支えたベーシスト。そしてマーク・ファーバー(カリフォルニア州出身 = 下右)は、トロンボーン奏者/ 作編曲家アラン・ファーバーから絶大な信頼を得るドラマー」とある。ピアノ・リーダーの彼女は、若いとはいえ豊富な経験を重ねており、このリズム隊の実力を得て、なかなか味に富んだ本場現代ジャズ・サウンドを披露している。
(Tracklist)
1. Before the Wind 4:34 *
2. The Radiance 6:23 *
3. It's All That Matters 6:11 *
4. Valley In the Deep Sea 3:33 *
5. Lone Winds Blow 8:45 *
6. Countdown 6:38
7. Body and Soul 7:16
8. Everything I Love 7:01
9. Yet Again At Will 8:15 *
10. All Or Nothing At All 9:23
*印 composed by M.Yonezawa
いっやー-、結論的には私は驚いている。この本場のジャズ・テイストを自己オリジナル曲(上記*印)6曲を以てして展開しているのは驚異である。
M1."Before the Wind"は、お披露め目的のような三者の軽快な展開。
M2."The Radiance" は、冒頭から優美なピアノのメロディー、ドラムスはステツク音を生かしリムショットも交えシンバル音も明快で、更に中盤にはベース・ソロも交えて優しさと明るさそしてダイナミックさも感ずる曲。
M3."It's All That Matters"は低音のベース・ソロから、M4."Valley In the Deep Sea "はピアノの美しさ、M5."Lone Winds Blow "はドラムスからとスタートして、それぞれのトリオ構成の持ち味を生かした演奏。
J.Colyraneの曲M6."Countdown "は、難解だが、それぞれの技量をたっぷり発揮。そのエレガンスな味はお見事。
M7."Body and Soul"このJ.Greenの曲のバラード演奏はまさに一聴の価値ありだ。私はこのアルバムでは一押し。優しく、深く迫るベース、そして次第にピアノの役割に移行して、再びベースへの語り合い、どこか不思議な世界に導かれ納得。
M8." Everything I Love " C.Porterの曲、ドラムス・ソロも入ってトリオ・ジャズの醍醐味を感ずるが、ちょっと難解。
M9."Yet Again At Will"これは彼女のオリジナルだが、前のPorterの味を引き継いでいる。
M10."All Or Nothing At All " A.Altmanの曲、優しさのピアノのメロディーでスタート、軽快なステック・ワークを生かしたドラムス、ベースは結構インプロのメロディーで迫って、三者の味を効かして次第にそれぞれが盛り上がりをみせ、原曲のテーマを織り交ぜての即興の展開が見事で納得演奏。
しかし、驚きのジャズ演奏、ここには過去から現代へのジャズの変遷を見る想いの充実感があった。
カバー曲も、ポピュラーな人気メロディー曲に頼らず、ジャズの神髄に迫ろうとする過去のジャズ名演に彼女なりきの即興を交えつつ、彼女自身の解釈で演じているところが、若さの甘さを感じないなかなか老獪なところにある。
堅実な印象のある曲演奏の中でのなんとなく抒情性も持ったジャズ・ピアノに詩人的世界まで匂わせ、実は驚きの方が大きかったという聴きごたえのあるアルバムであった。
(評価)
□ 曲・演奏 : 88/100
□ 録音 : 88/100
(視聴)
*
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コメント
こんにちわ
内容は思ったより凄く良かったですね。
個人的には「ニューヨークを拠点」の時点でパスしがちですが、仰っているように過去から現代へ変遷を見る想いがしました。悪く言うつもりはないのですが、正直なところ本場ジャズに飽き飽きしている自分がいますが、新しい風が吹かないか待っている自分も何処かにいるように思います。
投稿: ランス | 2022年6月13日 (月) 18時04分
ランス様
コメントどうも有難うございます
実は私もおそるおそる聴いたというところでした。それも若干試聴出来ましたので、アルバム購入に踏み切ったんですが・・・
しかし、予想を裏切って良かったほうに転んでいただいて、ここに感想書かせていただきました。現代ジャズの世界をしっかり掴んでいて、彼女の年齢は正確には解らないのですが、ベテラン風にも感ずる世界を持っていますね、驚きました。
私も現在は殆どユーロ系に傾いているのは、どうも本場と言われる世界に飽きているためだと思いますし、昔のビックバンドものは苦手ですし、ランス様の言わんとしていることが手に取るように解ります。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年6月13日 (月) 22時10分
美しいですね。 最近ご紹介のものでは、断然聴きやすいです。
リズム隊とのアンサンブルができてると思うし。
この先、もっと個性が磨かれますよう、お祈りします。
最近のジャケットって、こんなに手抜きが多いのですか。
この書体でレゾナンスは無理があると思います。
もっと大事にしてあげてほしいです、彼女のこと。
投稿: iwamoto | 2022年6月13日 (月) 22時16分
iwamoto様
コメントどうも有難うございます
iwamoto様のお気に入りになっていただけると嬉しいです。
ジャズ的アンサンブルの世界を知っていると言ったら失礼ですが、なかなか心得ているところはベテラン風にさえ感じられる彼女ですね。(年齢はちょっと解らないのですが、経歴からもかなり若いですよね)しかもトリオという世界を十分知っていてのインプロ演奏をしているように思います。
なかなかやりますねぇー--と、言いたいです。
そうそう、ジャケは内容を反映しているようには感じませんね。昔、このジャケのLPでしたら、ジャケ買いする人はいなかったでしょうね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年6月13日 (月) 22時32分
風呂井戸さん、こんにちは。
早速ですが、米澤さん凄いですね。
実はESP-Disk(リーダー作は日本人初?)からリリースのセカンド「BOUNDARY」を先に聴いたのですが、フリージャズですが美しいアンサンブルを展開、動的でスリリング・対照的に静的で美しい曲とのコントラストもあり、フリーなのに聴いて心地よい、ホント驚かされました。
今後、何をやってくれるか楽しみな日本人ピアニスト出現ですね。
投稿: baikinnmann | 2022年7月 3日 (日) 16時55分
baikinnmann様
コメントどうもありがとうございます
>美しいアンサンブルを展開、動的でスリリング・対照的に静的で美しい曲とのコントラストもあり、フリーなのに聴いて心地よい
まさにその通りですね、私は期待以上のもので驚いたというのが実際のところでした。
本場ニューヨーク・ジャズもこのところ私は少々敬遠気味でしたが、日本人女性がここまで頑張っていて新世界を展開してくれていることに喝采したいですね。
投稿: photofloyd | 2022年7月 3日 (日) 17時54分
お久しぶりです。私も気に入ってます。
「若さの甘さを感じないなかなか老獪なところ」とのご指摘、私も同感!
リンク貼らせて下さい。
https://zawinul.hatenablog.com/entry/2022/08/17/223929
投稿: zawinul | 2022年8月17日 (水) 22時44分
zawinul様
コメントどうも有難うございます
近年ジャズ・ピアノの女性群の活躍も素晴らしいですが・・実は私はこの米澤めぐみには驚かされました。本場ジャズをしっかり身に着けて、自己の世界を力みなく(と、私には聴けたのですが)築いているところは素晴らしかったです。
zawinul様の評価も高いようで・・・喜んでます。^^
リンクも有難うございました。
投稿: photofloyd | 2022年8月19日 (金) 15時34分