アヴィシャイ・コーエン Avishai Cohen Trio 「Shifting Sands」
若きメンバーを加えてのニュー・トリオでの挑戦の始まり
<Jazz>
Avishai Cohen Trio「Shifting Sands」
Naive / France / M7594 / 2022
Avishai Cohen (upright bass),
Elchin Shirinov (piano),
Roni Kaspi (drums)
Recorded at Nilento Studio , Goteborg, Sweden Augast 2021
なんとなく引き付けられるアルバムを造るイスラエル出身の天才ベーシストと言われるアヴィシャイ・コーエンの前作より引き続き、アゼルバイジャン人ピアニスト、エルチン・シリノフと昨年夏からツアー・バンドに加わった21歳という若き女性ドラマー、ロニ・カスピを迎え新体制で臨んだトリオ作が登場した。
前作『Two Roses』(Naive/M7369/2021)では、オーケストラとの共演で話題を提供してくれたコーエンだが、ここにトリオという原点に戻っての、収録されている曲は、パンデミック中にエルサレム近郊の自宅で彼がピアノで作曲したものという。
1 Intertwined
2 The Window
3 Dvash
4 Joy
5 Below
6 Shifting Sands
7 Cha Cha Rom
8 Hitragut
9 Videogame
10 Kinderblock
クラシックに通ずるジャズそしてイスラエルを中心としたルーツ音楽として評価と人気を勝ち取ってきたアヴィシャイ・コーエンだが、イスラエルというどこか異国感ただよう哀愁を帯びた曲に多様で洗練されたリズムが聴かれ、コーエン独特の現代的な音楽のエレガントさに魅力があって、なんとなく私自身も引きつけられここでも何度か取り上げてきたところにある。
今回のアルバム・タイトル曲のM6."Shifting Sands"は、このパンデミックの間、エルサレム近くの自宅に数か月間拘束された中での彼のピアノにより生まれた曲という。そしてこのトリオが昨年2021年の夏に、ようやくヨーロッパでいくつかのショーを演奏することが出来、その後スウェーデンに旅行してレコーディングを行ったもの。ここにはクラシック調の雰囲気あり、パーカッシブな音とピアノの導く世界には優美さが感じられ、後半にメロディ・ラインを演ずるベースが美しい。
M1." Intertwined"は、ピアノの低音部にてミニマル・ミュージック・パターンで流れ、ベースが協和音で響き、なかなか若き女流ドラマーが自由奔放な演奏と表現されているが、若干空気が読めていないのか、そんな"絡み合い"が面白い。
M3."Dvash"は、ピアノの旋律で静かにゆったりとした流れにより郷愁感を呼ぶ短調の曲。
M5." Below"では美しい風景が見えてくる。
M7."Cha Cha Rom" ここでも、ピアノの刻むリズムにドラマーの演ずるパーカッシブな音とベースが乗っての協和音が進行し、続いてベースのアルコ奏法が色を付け、トリオ3者の干渉がそれぞれの変化に沿って盛り上がって面白い。
M8."Hitragut" ピアノの技を楽しませる。
M10."Kinderblock"は、美しい優しさのピアノ・ソロが続き、後半に入ってベースが美しく旋律を奏で、それをブラッシ音がサポートする美世界。
コーエンが絶賛するエルチン・シリノフ(上左)の独特なタッチ・フレージングのピアノ、新加入のロニ・カスピ(上右)が若さのある伸び伸びとしたドラムを披露し、なかなかコンビネーションの良さが聴ける。
これには彼のいうトリオのメンバーについて「最も難しいのは、自分らしくあり、他人にも自分らしくいられる自由を与えることです。そして、この新しいアルバムは、私がこれまでに到達した最高レベルです。私は作曲家であり、アイデアメーカーですが、ムードと雰囲気の両方を演じている」と言っているように、年齢差を超えてそれぞれを尊重してのバンド編成そして演奏を受け入れ、アルバムを作り上げていることを話している。
(評価)
□ 曲・演奏 85/100
□ 録音 85/100
(視聴)
*
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コメント
ベーシストのリーダーアルバムで、ピアノトリオなら、やはりピアノの音に耳を奪われてしまいます。
実際に、どのようにして聴いてらっしゃるのですか。
勿論、ベーシストは他のベーシストの音を中心に聞ける能力があると思いますが。
ファツオリのピアノですね。 音では判断できないです(笑)
投稿: iwamoto | 2022年6月 4日 (土) 11時05分
iwamotoさん
コメント有難うございます
ピアノ・トリオでは一般的にはリズム隊であるベース、ドラムスよりは旋律を奏でるピアノがどうしても中心になりますね。(ベースも表に出てのメロディーを聴かせてくれるタイプもありますが)
録音にもよりますが、ベース、ドラムスの聴きとりにくいCDも結構あるように思います。近年それを超えてベース、ドラムスが生きてくる録音も私は好きです(人気のアメリオが代表的)。トリオ・ジャズ・ライブは小規模会場でのものが人気がありますが、それぞれが聴きとれるところも魅力なのかしれません。
ジャズではSteinwayのピアノが圧倒的に多いですね。続いてYAMAHAかなぁー-。お気づきになったFAZOLIは確かに少ないですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年6月 5日 (日) 11時39分
風呂井戸さま、、
コーエンは、新しい才能を見つけ出してくる天才ですよね。
「最も難しいのは、自分らしくあり、他人にも自分らしくいられる自由を与えることです。」
これって、すごくいい言葉だとおもいます。
さすが!って感じ。
で、、やっぱり、コーエンありきのアルバムで、
彼がいるから存在する世界ですよね!
リンクをありがとうございました。m(_ _)m
私のリンクも置いていきます。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/06/post-f7be8a.html
投稿: Suzuck | 2022年6月 6日 (月) 07時47分
Suzuck様
コメントどうも有り難うございます
このコーエンの世界は貴重ですね、アルバムのリリースされる度に、ふとこの世界に郷愁を感ずるようになってきました(笑い)。しかし、そうした世界を持つというか、持っているというのは素晴らしいですね。
最近、ユーロもイタリア系、北欧系が盛り上がってますが、この異色なところはいい塩案配です。^^
リンク有り難うございました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年6月 7日 (火) 15時53分