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2022年7月28日 (木)

ジャン・フィリップ・ヴィレ trio viret + 「in vivo」

トリオ三者の個性を生かした即興とアンサンブルの美学

<Jazz>

trio viret + 「in vivo」
ATELIER SAWANO / JPN / Mēlisse MEL666033 / 2022

Invivow

Jean-Philippe Viret - (bass)
Edouard Ferlet - (piano)
Fabrice Moreau - (drums(*2&+))
Antoine Banville - (drums(*1&+))

Jpvw (Tracklist)
01. Derives(+)
02. Madame Loire(1)
03. 3 jours de treve(2)
04. Pour El Ho(+)
05. Iode 131(2)
06. Le batard(1)
07. Par tous les temps(+)
08. Changements(1)
09. A plus d'un titre(2)

 

  久しぶりのフランスのベーシスト・ジャン=フィリップ・ヴィレ(Jean-Philippe Viret)のトリオ・アルバム(ドラマーが過去に変わった経過があるが、その両者も参加)が澤野工房から登場。 丁度彼らがデビューして20年の記念盤のような性質のものだ。

 私が彼のアルバムと出会ったのは、デビューものでなく、その後のアルバム『LE TEMPS QU'IL FAUT』(2008 - 下左)であった。これがお気に入りで過去、そしてそれ以降のアルバム全てに接することになる。彼のアルコ奏法を含む多彩なコントラバスの演奏にピアニストのエドゥアール・フェルレ(Edouard Ferlet)のどことなくある憂いのある旋律美、そしてトリオとしてのアントワン・バンヴィーユ(Antoine Banville)の複雑な音を交えての三位一体の演奏に痺れたのだった。
 その後澤野工房としては珍しくも彼らのライブ映像もののDVD『THE DUC DES LOMBARDS』(SDV004/ 2006 - 下右)の登場もあり、なお親しむことが出来たのである。

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 そして今回のアルバムは、これまでに彼のトリオに関わったミュージシャンが全員参加(と言ってもドラマーのみ二人の四人)という形で、曲目も過去の代表曲を中心に組み立てた所謂“集大成”的なもので、やっぱり記念盤だ。収録曲9曲で、リーダーJ.P.ヴィレの曲5曲、ピアニストE.フェルレは3曲、ドラマーのA.バンヴューユが1曲である。そしてそれぞれの曲を初めて聴いた当時の感動を蘇らせるものだ。選曲は、主としてやっぱり忘れられない名作のアルバム『CONSIDERATIONS(SKE333016/ 2001 - 上中央)、そして2nd『ETANT DONNĒS』(2002)からの曲が主として占められていて(7曲)、それで万歳というところだろう。

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 さてこのアルバムのオープニングのM1."Derives"を聴くと、おおジャン=フィリップ・ヴィレ・トリオだなぁー-と、アンサンブルの複雑な展開と美で懐かしさと同時に再会の喜びの開幕だ。この曲は2ndアルバム『ETANT DONNĒS』(2002)からだが、ラィブ映像DVDではトップに納められていて非常に懐かしいのである。
 又参考までに、この曲とM4."Pour el ho"、M7."Par tout les temps"の3曲は、ドラマー2人のツインドラム編成で、その他の曲はどちらかがドラムスを担当している。
 M2."Madame Loire"怒涛のアンサンブル。 ピアノの美しさが印象的なM3."3 jours de treve"M4."Pour El Ho"ベースのピッキングとダブル・ドラムスが楽しい。
   M5."Iode 131"ピアノの前衛性と美旋律の流れに圧倒され、静かに納めてゆくベース。M6."Le batard"のドラマティック展開とピアノの個性との三位一体の交錯は聴きどころ。
 M8." Changements"のゆったりとした流れのベースの世界とピアノの美が印象的。
 締めくくりは、M9."Ā plus d'un titre"でトリオ三者のアンサンブル美学。

 とにもかくにもトリオ3者の見事な個性ある即興性と創造性豊かなリズムと旋律によるアンサンブルの妙が迫ってくるこのトリオは貴重であると同時にこれからも更に発展していってほしいと思うところである。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□   録音    :  88/100

(視聴)

*

 

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コメント

風呂井戸さん、こんにちは。
このアルバム、良いですね。
私がユーロピアノトリオ好きになるきっかけとなったのがアルバム「CONSIDERATIONS」です。特に"Madame Loire"、トリオなのに圧倒的に迫ってくる凄いサウンドに感動させられました。
もう20年も前になるのですね。

投稿: baikinnmann | 2022年7月31日 (日) 11時44分

baikinnmannさん、おはようございます
コメントどうも有難うございます
やはり「CONSIDERATIONS」ですか、2001年のアルバムですから、そうですね20年ですね。私はリアルタイムでなく後から聴いたのですが、波のうねりのように3者で迫ってくるところが圧巻でした。
 ピアノ・トリオはピアノが前面に出てリズム隊は影というアルバムも多いですが、やっぱりViretのトリオのように3者が、それぞれの持ち味で迫ってくるのがいいですね。
 2006年のライブDVDを見ると、E.Ferletもやっぱり年取ってますね。^^

投稿: photofloyd | 2022年8月 1日 (月) 09時21分

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