[好録音シリーズ] Three Blind Mice の思い出(2) : 山本剛 「MIDNIGHT SUGER」,「MISTY」,「GIRL TALK」etc
1974年に山本剛が初登場、一気に人気ピアニストに
1970年の「Three Blind Miceレーベル」の登場は日本ジャズ界にとっても驚異の出来事でしたね。オーディオ愛好家とジャズ愛好家が結びついた瞬間でもあった。リリースしたアルバム(LP)数は、1970年4枚、1971年5枚、1972年4枚、そして1973年9枚と上昇して私が知ることになった鈴木勲トリオの「Blow Up」(tbm-15)の登場となり、話題は最高潮。そして翌年1974年、山本剛トリオの「MIDNIGHT SUGAR」(tbm-23)が登場して、ジャズ・ファンを虜にした。
今回は、山本剛に焦点を当てて目下所持している当時の6枚のアルバムを取り上げるが、今回はそのうちの4枚にとどめ、残る2枚は次回に紹介する。
<Jazz>
1⃣
Yamamoto,Tsuyoshi trio 「MIDNIGHT SUGAR」
CRAFTMAN RECORDS / JPN / CMRS-0055 / 2019 (Original Lp 1974)
山本剛(p)、福井五十雄(b)、小原哲次郎(ds)
録音エンジニア 神成芳彦
ジャズ・ピアニスト山本剛の'74年のTHREE BLIND MICEからの記念すべきデビュー・アルバム(26歳)。74年度SJ誌ジャズ・ディスク大賞最優秀録音賞第3位を獲得した名盤。このアルバムで私は山本剛というピアニストを知った、彼はこれで全国区に。現在でもこのオーディオ・ファンを虜にした名録音はCD化しても50年近く前とは思えないリアルな音を聴かせる。当時の日本のマニアックなアナログの録音で、生々しい音を作り出している。もはやこれは日本のPiano JAZZのすばらしき時代の遺産そのものといえる。
(Tracklist)
01,ミッドナイト・シュガー / MIDNIGHT SUGAR *
02,アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー / I'M A FOOL TO WANT YOU
03,ニアネス・オブ・ユー / THE NEARNESS OF YOU
04,イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー / IT COULD HAPPEN TO YOU
05,スウィート・ジョージア・フルース / SWEET GEORGIA BLUES *
*印 山本剛のオリジナル曲
重厚なベースでスタートする山本のオリジナル曲M1."MIDNIGHT SUGAR"、スロー・ブルースがいいですね。見事な抑揚で描くハートのあるピアノに感動。シナトラらの作品でヘレン・メリルも歌ったバラードM2."I'M A FOOL TO WANT YOU"の感情移入も凄い。戦前映画"AND THE ANGELS SING"の主題歌の美旋律がナイスなM4."IT COULD HAPPEN TO YOU"、オリジナルでスゥイングが軽快なM5."SWEET GEORGIA BLUES"で締める。TBMを代表するピアノ・トリオ名盤である。若き山本剛はみずみずしい個性が輝き、彼の心情をピアノの音に込めている。
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2⃣
Yamamoto,Tsuyoshi Trio 「MISTY」
CRAFTMAN RECORDS / JPN / CMRS-0033 / 2019(Original LP 1974)
山本剛 (p), 福井五十雄 (b) , 小原哲次郎 (ds)
Rcorded Aug. 7, 1974 at Aoi Studio , Tokyo, Mixer : Yoshihiko Kannari
山本の最も人気のアルバム。この名盤は先日取り上げたので・・・そちらに→(http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2022/02/post-503e35.html)
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3⃣
Tsuyoshi Yamamoto Trio 「Live at the Misty」
CRAFTMAN RECORDS / JPN / CMRS-0065 / 2019 (Original LP 1974)
山本剛(ピアノ)、大由彰(ベース)、大隅寿男(ドラムス)、森山浩司(conga)
ジャズ・ピアニスト山本剛のTHREE BLIND MICEからの'74の3RDアルバム。1974年12月25日に六本木ジャズ・クラブ「ミスティ」でのライヴ録音アルバム。山本剛(ピアノ)、大由彰(ベース)、大隅寿男(ドラムス)によるトリオ編成に森山浩司(conga)を加えた編成。
(Tracklist)
01."SWEET GEORGIA BROWN" 9:22
02."THE LOVING TOUCH" 9:27
03."DARK EYES" 14:00
04."MOANIN'" 6:45
会場のざわめきも聞かれちょっと気になるが、演奏はかなり気合が入っている。軽快にスィングするM1."SWEET GEORGIA BROWN"、彼の出世作"MISTY"と同じERROLL GARNERの代表曲をこの上なく美しいタッチで演じてくれたM2."THE LOVING TOUCH"。この日のハイライトのコンガの入ったカルテット演奏で速攻でエモーショナルな山本剛の14分の熱演・名演が光るM3."DARK EYES"。そしてスタンダード中のスタンダートのM4."MOANIN'"の全4曲。ライブものだけあって、それぞれ彼が納得するだけじっくりと腰を下ろした演奏が聴ける。
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4⃣
YAMA & JIRO'S WAVE 「GIRL TALK」
CRAFTMAN RECORDS / JPN / CMRS-0063 / 2019 (Original LP 1975)
山本剛(p)、大由彰(b)、小原哲次郎(ds)
Produced by Takeshi Fujii , Recording Engineer : Yoshihiko Kannari
74年のデビュー・アルバム「MIDNIGHT SUGAR」、大ヒット2ND「MISTY」等で人気ジャズ・ピアニストとなった山本剛のTHREE BLIND MICEから6枚目となるアルバム。
(Tracklist)
1,追憶 / THE WAY WE WERE
2,ガール・トーク / GIRL TALK
3,風と共に去りぬ / GONE WITH THE WIND
4,A列車で行こう / TAKE THE 'A' TRAIN
5,アイ・ラヴ・ユー・ポーギィ / I LOVE YOU PORGY
6,そして今は / WHAT NOW MY LOVE
7,ニューヨークの秋 / AUTUMN IN NEW YORK
M1."THE WAY WE WARE"冒頭から美しくリリカルな曲の詩情豊かにして哀愁感たっぷりの演奏が聴ける。続いてアルバム・タイトル曲のM2."GIRL TALK "もリリカルなピアノの響きが印象的。そしておなじみのM4."TAKE THE 'A' TRAIN"がスウィンギーな演奏を展開。ジョージ・ガーシュインのスロー・バラードM5."I LOVE YOU PORGY"が情感たっぷりで最高。幕を閉じるM7."AUTUMN IN NEW YORK"もしっとりとした趣があって好感度。
ブルース・フィーリングに美しい旋律のスタンダード・ナンバーを取り上げた人気盤。「MISTY」と並びTBMを代表するピアノ・アルバム。
(参考)
山本 剛 (ピアニスト)
1948年3月23日、新潟県佐渡郡相川町に生まれる。新潟に移り、小学生の頃からピアノを弾き始める。高校生時代、アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズの生演奏の虜となりジャズ・ピアノを独学で習得。日本大学経済学部に入学する(間違えて三島校を希望し、一年間は静岡県の三島で下宿生活)。その後、妹が国立音楽大学に在学、多摩地区の東中神に住み、千駄ヶ谷、仙台坂、芝公園に移り住んだ。
1967年、日本大学在学中、19才でプロ入り。ミッキー・カーティスのグループを振り出しに英国~欧州各国を楽遊。1974年(26歳)に上記「Midnight Sugar」(TBM)でレコード・デビュー、ファンの注目を集め、続く「Misty」(TBM)が大ヒット、以後レコード各社より数多くのリーダー・アルバム・共演アルバムを発表、人気ピアニストの地位を確立する。
1977年アメリカ、サンフランシスコ、モンテレー・ジャズ・フェスティヴァル出演。1979年スイス、モントルー・ジャズ・フェスティヴァル出演。大好評を得、その後渡米、1年間ニューヨークで音楽活動を行う。
帰国後は、六本木のライヴ・ハウス"ミスティー"でハウス・ピアニストとして活動を再開。 更に国際的に多数の本場ミュージシャンと共演。その間、英国のバタシー・パーク・ジャズ・フェスティヴァル、ニューヨーク独立記念日ジャズ・フェスティヴァル、コンコード・ジャズ・フェスティヴァル等に出演した。現在も活動中。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(試聴)
「Midnight Sugar」
「Girl Talk」
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コメント
佐渡の相川、行ったことあります。
三島はウナギを食べに行くところです。
東中神の近くから、この地へ移動してきました。
ご紹介の音楽は、長いのでまだまだ聞き終わっていません。
あまり跳ねないので聞きやすいです。
sugarのジャケットは当時の雰囲気ですね。
投稿: iwamoto | 2022年7月 9日 (土) 12時15分
iwamoto様
コメントいつもありがとうございます
この山本剛は、当時20歳代で、なかなかここまで情感をいれての演奏は素晴らしかったと思います。音楽の演奏には技量は当然大事ですが、情感を込める精神的なものとの結びつきが大きい因子がありますね。
そんな意味でも現在では私はノルウェーのTord Gustavsenが一押しですね。
投稿: photofloyd | 2022年7月10日 (日) 09時53分
両方とも、聞かせていただきました。
もっと、とんがった音が攻めてくるのかと思ったら、逆でした。
鍵盤に指を置いた時間がもう少し長くても良いのかなぁ、とは思いましたが。
単なる音の好みでございます(笑)
投稿: iwamoto | 2022年7月10日 (日) 12時26分
iwamoto様
続いて聴いていただいてありがとうございます
70年代、こんな録音でジャズ喫茶をうならせた懐かしさですが、次回にも続きますので、ゆっくり聴いて懐かしんでください。^^
投稿: photofloyd | 2022年7月12日 (火) 09時22分